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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数236件
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ショートショート含め8本の作品が収録されていますが、軽めのミステリが多いっていうか軽すぎっていうか緩すぎですね。
ショートショートの4作品は携帯サイト向けに書かれたものらしく、なる程そりゃ字数制限やら何やらの制約もあったのかなと思わせる内容。 特に「殺風景な部屋」には脱力で、小学校低学年向けの推理クイズ並の真相には逆に意表をつかれてしまいました。 正直タイトルに惹かれたというか、かなり期待していた表題作。 相棒が盗作疑惑に巻き込まれ、右腕(?)を失い窮地に陥った火村に最後有栖が・・・てな内容を期待しながら読んでいたのですが・・・ 「パロディじゃねぇか(笑)」 面白かったですけど、この作品にこのタイトルは勿体なさ過ぎでしょう。 後は、こういう大掛かりなトリックがこの作者さんには珍しい気がして「あるいは四風荘殺人事件」が印象に残りましたかね。 それとミステリ云々とは全然関係ないんですけど「雷雨の庭で」の中で、某人物が有栖の作品を3作所有しているという記述がありまして、想像するに持ってないのは「女王国の城」だろうなぁとか思ってみたり。 実際「双頭の悪魔」から15年も開いた訳ですが小説の中ではどういう設定なんだろうか? この作品が発表された時には既に「女王国の城」は出てたはず。 |
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不倫する奴なんて馬鹿だと思っていた既婚男性が(あっさり)不倫に至り、それを正当化しようとする無理矢理な思考、言い訳、嘘、嫉妬、そして女性に振り回され最終的に主導権を握られる姿などなど・・・
実際一線を超えるまではいかなかったにせよ「あれっ?もしかして?ドキッ!!」なんて経験した人は意外と多いと思いますね? リアリティありすぎて正直笑えなかったのでは? 「俺たちは男じゃなくなった。亭主とか父親とかおっさんとか、そういうものに変わったんだ」 世の女性から相手にされなくなった哀れな自分を正当化するための言い訳にすぎないのですが、実際のところは内心まだまだやれると思っていたりします。 お母ちゃんは子育てに忙しくかまってくれないし、職場では責任の重い立場に追いやられます。 そういう弱ったところに付け込まれるのはお前が未熟なだけと(女性には)言われそうですが、男性ならこの主人公の気持ち分かるのではないかと。 かと言って不倫を肯定する気は勿論ないですけどね。 この主人公の男性が特別優柔不断、軟弱、小心者であったが故の物語ではないですよと言いたいですね。 「これが男の正体ですよ」と世の奥様連中に是非言いたい。かまってあげて。 不倫関係の板挟みのドロドロなんて読みたくないなぁと読み進めていましたが、ドロドロとはなりませんでした。 これは主人公の男性を取り巻く女性(奥さんと不倫相手)が一枚も二枚も上手だからでしょうね。特に奥さん。 普通はこういう収束はしないですね。地獄です。 この作品の嫁には何の落ち度もありませんので、男性側のバカさ加減が余計に浮き彫りにされていますが、満点嫁でも被害者になり得るって事ですね。 不倫男の行動パターンがヒントとして多く描かれています。 ある意味対策本として機能できるかも知れませんね。 ミステリっぽいイベントも描かれてはいましたが完全におまけレベルです。 |
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レーン四部作の最終章。
XYZそして最後の事件とこの順序で読み進めなければいけないのは当然だとは思う。 このシリーズには(シリーズ全体を通した)様々な伏線が張り巡らされており、この最終章に集約されるためである。 そもそもこの作品においてレーンは名探偵ぶりを発揮するに至っていない。この作品における探偵役はペイシェンスなのである。 レーンがいかに名探偵であるかはXYを先に読んでいなければわからないし、最終章におけるこのラストを成り立たせるためには、レーンに変わる探偵役(ペイシェンス)が登場するZも既読である必要があるのだ。 しかしその一方で、このシリーズを正しい順序で読み進めてきて、このシリーズに愛着を感じていた読者にとってはかなり首を傾げるラストではなかったかとも思う。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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レーン4部作の3作目。
Yの悲劇から10年後という設定になっています。 主要メンバもその立場を変え、そして年齢的にも老いたなぁという印象です。 得意の変装もなしです。変装しても変装した対象と同じ動きができない程、肉体的衰えが見えると言う事でしょうか。 こういう現実に則した設定は評価していいのではないかと思いますが、若干読んでる方は歯がゆくなったりします。 そんな中この作品には、サム元警視の娘ペイシェンスが新たに探偵(もどき)として登場します。 最後はやはり主役交代して美味しいところはレーンが持っていくのですが、序盤戦はレーンが手助けをする形。 (レーンと比較して)彼女の推理のまだまだ未熟な点や青さがよく描けていると感じたのですが、ただそんな彼女の一人称で終始したのはどうなのか。 おかげでこれまでの2作品とは大きく雰囲気が異なってしまっていますが・・・どことなく軽い。 この作品がこれまでの2作品と印象が違うなと感じるのは視点だけではありません。 死刑執行過程の描写が含まれているのですが、この箇所だけ異様に浮いているように感じました。 死刑が執行された日時は推理上で非常に大きな意味があるのですが、執行される人物は事件に全く関係のない人物ですし、不必要と思えるくらいの詳細な描写がなされています。 作者は死刑制度の現状というかその是非まで含めて世に問いたかったのでしょうね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ガリレオシリーズといえば、探偵役の物理学者湯川学が一見不可能犯罪をその知識を活用して解き明かすといったものですが、この作品の場合若干趣きが異なる感じがしました。
予知夢というタイトルからも想像できるように少々オカルトっぽい題材が多く、いつものあの湯川の読み手にある意味強要するような(理解するのも大変な)解説も薄まっています。 最初の2作品など、物理学の知識に殆ど関連していませんし・・・ そして最後の作品のラスト。 短編集ってどうしても軽く、後々まで印象に残るものが少ないのですが、ガリレオシリーズでのこのラストはインパクトがありましたね。 作品の前提そのものを覆してしまいましたけど・・・(苦笑) その一言が全てを持ってったって感じですね。 |
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「皇帝のかぎ煙草入れ」に続いてカー2作目。しかしまた異端作を手にとったらしい。
「心理学的推理小説」と銘打たれた作品。 元々曖昧な人間の観察力に心理操作が加わると真実とは全く異なるものが見えてしまう。 この作品は、それを利用した犯罪という事になるのですが、正直心理トリックものの難しさを痛感した次第です。 登場人物達と同じように、我々読み手に対して同様の心理的効果を与えられるのか。 読み手を納得させるのは大変でしょうし、実際全ての読み手を納得させるのは無理でしょう。 読み手は所詮はその場にいなかった部外者ですし、読む時のコンディションや気合の入れ方も様々でしょうから、全てにおいて「そんな上手い具合にいくかよ」と思わせないようにするのは無理というものです。 だったらどこまで納得できたかが評価の基準になるはずだけど・・・一様に評価高いんですよね、この作品。 もっと評価が別れてもいいような作品に思えたのですが・・・ ▼以下、ネタバレ感想 |
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前の章に登場した人物が次の章のメインキャラとなる6編の短編連作集です。
最後の6章が再び1章に繋がっているという円状の構成になっています。 これだけ聞くと、どこか伊坂作品を思い浮かべてしまいそうですが、伊坂さんには決して描けない道尾さんらしい作品になっているように思います。 興味深いのは、前半の3章までが、如何にもこの作者らしい重く、何とも後味の悪い結末なのですが、後半の3章はどこか明るい出口を感じることのできる結末になっています。 前半が闇、後半が光。そして最初の闇に戻るという感じでしょうか。 「虫媒花」、「風媒花」という表現は作中に出てきただけでなく実際にある言葉ですが、作品タイトルである「光媒花」という言葉はないので作者の造語なのでしょう。 光により花粉が運ばれて生を繋げていく花という意味でしょうか。 人間の人生を表している気がしました。 闇ばかりじゃ続いていけない。そこに光が当たることにより続いていく。 というより、暗い影も光があるからできる、闇があるからこそ光は明るい。 難しいですが、このタイトルにはそんな深い意味が込められているように思いました。 一つ一つの章は淡々としていてヤマはないです。勿論ミステリでもない。 構成の妙と、作者が深い箇所に込めた意味を汲み取る事を楽しむ作品かと。 日本語だからこそ描ける最早芸術と評してもいいような作品。 ただ好きかどうかは別問題。 |
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島田御大の作品はこれまで数多く読んできましたが、その中で最低の評価をしたのが「眩暈」
この作品はその「眩暈」と同じプロット。 汚染障害者の書いた妄想レベルの手記が、記憶障害者の書いたファンタジーな童話に置き換わっただけである。 要するに、冒頭で(どう回収するつもりなのかと思わせる)大風呂敷を広げ、それを論理的に推理していくという流れ。 確かに論理的といえるのだろうが、そのやり方は強引にねじ伏せるという表現がぴったり。 どう考えても御手洗の推理が「唯一無二」なものとはとても思えないのだ。 しかしそれを「当然」というように断言してしまう。 普通の読み手には追従を許さないようなある意味特殊な分野に対するスーパー薀蓄披露により、推理に対して「正当性」という鎧を被せているだけな気がする。 御手洗補正がかかっているだけで、よくよく考えれば説得力がないと言えないだろうか。 その割にその推理は、無理矢理辻褄を合わせているだけでこじんまりしているのだ。 御大の本来の持ち味といえば大技物理トリックではなかったのか。 これも島田荘司らしい作品といえばそうなのかもしれないが、私が作者に期待する作品ではないなぁ。 それにしてもこの作者のページ数の多い分厚い作品は冗長な部分が多過ぎないか。 |
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まず驚いたのは、刀城言耶シリーズにしてはリーダビリティが高いこと。
登場人物が多く、読みづらい名前、地名は相変わらずだが、文庫本にして700ページ超えの割にさほど苦労せず読めてしまった。 ホラーとミステリーの融合がこのシリーズの特徴と言えますが、この作品に限って言えば、ミステリーの部分とホラー的要素が結びついていないように思います。 というかホラーっぽいところは余り描かれていませんし、その数少ないホラー現象に対する論理的解決が全くないというのも寂しい限りです。 最後言耶の推理が二転三転するのはこのシリーズのお約束ですが、それにしても今回は派手。 犯人を指摘するにはまだまだまとめきれていない段階で推理を披露している感じで、偲に覆されているようでは・・・ 最終的に行き着いた結論に関しても、一応辻褄は合っているが・・・というレベルではないか。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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物語の舞台はその殆どが別荘風の一軒家の中、期間はわずか一日、そして登場人物は僅か二人。
一軒家の中で見つけたある少年の日記を元に、主人公の元カノの失われた記憶を紐解く物語です。 「伏線の応酬」と評されることの多いこの作品。 確かに思い出したり読み直したりすると「ほお」と思う箇所は多いです。 プロット自体シンプルでリーダビリティも高く、読み出したら止まらない系の作品なので、仕込まれた伏線を「ここ怪しいな」と感じながら読むのは少し難しいかなと思いました。 ただ私の場合、伏線がどうこう言うよりも「タイトルに騙された」という印象が強いです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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謎の占い師の予言から始まる辺りにミステリらしい展開を予感できます。
しかし、序盤で主人公の婚約者が亡くなるものの、単なる事故死として物語は進行し、その状態のままラスト近くまで進みます。 全くミステリらしさを感じる事ができぬまま終盤、偶然主人公と知り合うことになった例の芸術探偵により殺人事件として掘り起こされるという、読み手には不意打ちとも言えるような展開。 これを構成の妙として高評価するレビューも見られますが、余りにも唐突ですし、物語の流れとしてもどこかおかしな気がしました。 「えっ?!」「忘れてました」「遅いよ」「いまさら・・・でも残りページが・・・」「おいおい、推理自体ももイマイチでは・・・」 正直ミステリとして評価するのは難しいです。 また、「ニーベルングの指輪」というオペラを下敷きにした作品のようですが、確かにオペラの知識がないと読めないかといわれるとそうではないでしょう。 ただ、作者の芸術探偵シリーズにおいて、予備知識があるか否かで変わってくる作品としてはこの作品がダントツな気がします。 私はというと、オペラに対してはド素人もいいところなため、正直作者が登場人物の口を借りて演出論を訴えているだけにしか思えず中盤の中だるみ感は半端無かったです。 多くのレビュアの方が評する感動のクライマックスについても、頭の中で音楽を響かせながら読むことの出来ない私には・・・そこまでは・・・ というより、主人公に感情移入できないような序盤の設定は意図的なのでしょうか? 下敷きにされた作品を知らないが故の無知と思われても仕方ないのですが、不義理を続けてきた主人公の突然の心変わりなど、展開的に理解できない部分が多いです。 また、クライマックスに向けての伏線を伏線として読み取ることが出来るかは原典を知っているかにかかっているのではないでしょうか。 作者の主眼は演出論にあって、ミステリ的な部分は後から取ってつけたような印象を受けました。 これから読まれる方は、予め簡単にでも予備知識を入れておかれた方がよいように思います。 |
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タイトルにもある「蟹」は、人間の身体を蝕む、癌や脳の中でじわじわ広がっていく出血の影の比喩として用いられています。
また、「月の光が上から射して、海の底に蟹の影が映ったとき、その自分の影があまりにも醜いもんだから、蟹は身を縮こませてしまう」 とあるので、人間の体内に巣食う「醜いものの象徴」と考えていいのかも知れません。 作品では蟹ではなく実際はヤドカリですが、殻に身を隠す様や、殻から炙りだされて慌てふためく様など、人間の暗の部分の象徴としてより効果的であったように思います。 醜さを自覚しているという点でヤドカリは大人を象徴していると思うのですが、それが無色透明の人型生物である子供の浅はかな儀式であざ笑うかの如く焼き殺されるというのは、何を意図しているのでしょうか。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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プロローグが衝撃的な?信濃譲ニが命をかけて謎解きに挑む?シリーズの3作目。
「信濃譲ニ?誰?」では話しにならないので、これまでのシリーズ作品を読み終えていないとだめですね。 これまでの2作品は、ワトソン役市之瀬の視点でしたが、今作品は信濃譲二の視点で語られます。 これが最大の違いであり、(作品の最大のからくりに対する)最大のヒントだったのかもしれません。 市之瀬の視点による信濃はとにかく超人的でブッとんだ人物であったはずなのに、信濃本人による彼自身の人物像はいたって普通。 信濃が出ずっぱりな割に面白味が半減しているのでは、と思いながら読んでいましたが・・・最後はやっぱりねって感じでした。 関係を持った女性を都合のいい理由で真っ先に容疑から外している時点で気付きますよね。 それにしても、こんな格好悪い形でシリーズを終えなきゃならなかったのか? ▼以下、ネタバレ感想 |
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作者の代表作とも言えるのがこの作品と「ゼロの焦点」「砂の器」だろう。
しかし個人的に「ゼロの焦点」「砂の器」と比較すると社会派推理小説としては大きく水を開けられている印象があります。 社会派推理小説とは、トリックよりも動機を重視したもののはずです。 しかしながらこの作品は、官僚による汚職だとか情死という如何にも心理描写が必要な題材を扱っているにもかかわらす、動機云々よりも、アリバイトリックを主眼にしている気がします。 本作品は、我が国における「アリバイ崩し」の先駆的作品なようですが、そこに集約しすぎたが上に人間が描けていない。そんな気がします。 「本格ミステリ」に分類した方が良いのかも知れません。 この作品で有名なのは、やはりあの東京駅における「空白の4分間」を使ったトリックでしょう。 今読んでも、そのプロットの秀逸さには賞賛を送らざるをえません。 しかし、これがトリックの「肝」ではないのが残念なところ。 一方で、トリックの「肝」となる部分は、今読むと・・・なのである。 ここで言及はしませんが、かなりがっかりさせられる読者が多いように思います。 新幹線が開通する7年も前の物語。何かと時代を感じさせる作品と言えるのではないだろうか。 |
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