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はつえ さんのレビュー一覧

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レビュー数144

全144件 41~60 3/8ページ

※ネタバレかもしれない感想文は閉じた状態で一覧にしています。
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No.104: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

幽女の如き怨むものの感想

情緒的なラスト…犯人探しではなくあくまで登場人物の生き様を尊重する結末…はシリーズの真骨頂ですかね。但し、刀城言耶はほ謎解きだけの登場ですが。
推理小説というより、遊廓で生きる女たちの哀しき人生が作者の愛憐溢れる視点で描かれており、ひとつの人生記として読ませていただきました。また戦前から現代に至る性風俗の変遷も興味深く読みました。
第四部「怪奇」に逃げようとする曖昧さには思わず反則!と突っ込みたくなったものの、終盤で交わされる優子と刀城言耶の会話に感動させられ、これで良いといたしました。
女性にとっては刺激的で不快な描写もありご注意と言いたいところですが、こんな生き方をせざるを得なかった女性たちがいた…いることを知り、彼女たちの心情に触れることで感動とともに理解を深めることのできる作品として、読まれても良いかと思います。
幽女の如き怨むもの (講談社文庫)
三津田信三幽女の如き怨むもの についてのレビュー
No.103: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

水魑の如き沈むものの感想

刀城言耶シリーズを読み繋いできましたが、今までになく読み易い文体でコミカルな場面も多々あり、エンターテイメント性の高い作品になっていると思います。担当編集者祖父江偲とのやり取りなど、微笑ましく読みました。どちらが良いかと問われると…。複雑怪奇で難解な作品…私は好きですが。
この作品でも刀城言耶は「私は探偵ではない…」を多言し、いつも以上に強調していたかもしれません。それがまた、真相は闇のなかの謎ときに繋がっていくわけです。この有耶無耶さがシリーズの醍醐味ですよね。消えてしまった犯人(と思われる人物)が、数奇な運命に翻弄され、とこかでまた何かの事件に巻き込まれ、刀城言耶の前に現れる…なんて想像してしまいました。前作もそうですが、起きるべくして起きてしまう悪意のなき犯罪をどう裁くのか、考えさせられる作品でした。
以外にも…すみません…大きな賞をとられた作品なのですね。気軽に読める刀城言耶ものとしてもオススメします。
水魑の如き沈むもの (講談社文庫)
三津田信三水魑の如き沈むもの についてのレビュー
No.102: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

密室蒐集家の感想

つまりファンタジーなんですね…。
密室トリックはどれも現実味がなく偶然や、運命の悪戯を利用したものばかりです。直ぐに緻密なトリックを楽しむ作品でないことがわかり、作者の世界観を感じることに…方向転換をしました。最終章の三好達治の詩への解説など、心に響くものは多々ありました。
結論として、読後に気づいたのですが、これが作者の狙いであり、だから「密室蒐集家」なのでしょうか。作家について知識がありませんので、罠に嵌まったのかすらわからずにおります。
密室蒐集家 (ミステリー・リーグ)
大山誠一郎密室蒐集家 についてのレビュー
No.101: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

レイクサイドの感想

中編会話劇を見終わったような気分です。ログハウスのリビング、4組の夫婦が出たり入ったりしながら、探り合いの会話を交わす、そんなシーンが繋がっていく、頭の中で舞台を一本楽しませていただきました。ラストの作り方も戯曲らしいし…。
後で知りましたが、実際に映画化されたようですね。知識不足でした。
そんな観点から観ると、面白いといえば面白いかもしれません。直ぐに読める長さですので、休日のちょっとしたお楽しみにオススメです。

レイクサイド (文春文庫)
東野圭吾レイクサイド についてのレビュー
No.100: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

狂う(彼女はもういない)の感想

何故、改題したのでしょう。読後に「彼女はもういない」の方が意味深くてしっくりすると感じました。
西澤保彦氏の重層的な心理描写に脱帽です。気づく気づかないに関わらず、人は心中に自らも認めたくないような邪悪なる目的が生じると、それを都合の良い目的とすり替えてしまい、他人のみならず自分自身すら騙そうとするのですね。深層に潜む真の目的を探りだし白日のもとに曝して実現化する…「狂」への誘いです。
この「狂う」別な意味もあるかもしれません。いつのまにか目的が狂ってしまうという。
特に女性読者には受け入れがたい描写がありますが、その不快感を差し引いても、読んでいただたきたい作品かと思います。
狂う (幻冬舎文庫)
西澤保彦狂う(彼女はもういない) についてのレビュー
No.99: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

死と砂時計の感想

アラブのとある小国での物語です。読みやすい文体なのですが固有名詞が覚えづらく、残念ながら物語に没入出来ずに終わってしまいました。最終章のみ、生死と砂時計の砂の表現が哲学的で興味をひかれたものの、狙ったラストで一気に醒めてしまうという、ちょっと残念な結果に。醒めたのは私だけかもしれませんが…。
そうはいっても、架空の国の不可思議な物語…お好きな方にはおもしろいかもしれません。
死と砂時計 (創元推理文庫)
鳥飼否宇死と砂時計 についてのレビュー
No.98: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

復讐の協奏曲の感想

読み易いだけの作品に成り下がってしまったようで、読後に哀しさを感じました。ページ数制約の業でしょうか。残念でなりません。
ラストの駆け込み解決も皆さんの感想に同感ですがそれ以上に登場人物の心情をしっかりと描きこんでいただきたかったです。特に洋子の御子柴への感情、こんな単純なものにしてしまって…。
もう一点、過去作品の関係者これでもかと登場するのですが、いちいちの注釈とともに食傷気味でした。シリーズものであっても、単独で成立し愉しめる作品であって欲しいものです。知る人だけがクスッとできる仕掛けも、ファンにとっての醍醐味ではないでしょうか。
復讐の協奏曲 (講談社文庫)
中山七里復讐の協奏曲 についてのレビュー
No.97: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

汚れた手をそこで拭かないの感想

生理的ゾワゾワ感がじわじわと来る作品でした。こんな人たちには関わらずに生き抜きたい…と願わずにはいられないのですが、大なり小なり「この人、人格障害…?」とおぼしき方はいますよね。で、読後に背すじがゾクッというわけです。
イヤミス好きな方はぜひご一読を。
汚れた手をそこで拭かない (文春文庫 あ 90-2)
芦沢央汚れた手をそこで拭かない についてのレビュー
No.96: 4人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

虚無への供物の感想

満を持して三大奇書、私にとり最後の一冊を手に取りました。これらの作品が奇しいと謂われる所以は、読者をいつのまにかその作品の一部にとり込みんでしまうことで、読者が自らの存在を小説の終わりとともに虚構の世界に置き去りにしてしまうような錯覚に陥らせ、その存在が如何に脆く不確かなものであるかを実感させてしまうことにあるからでしょうか。
犯罪の理由は単純であれ複雑怪奇であれ、犯人にしか解らないものです、いえ犯人ですら解らないことであったりします。だから理由は何だっていいのです、人間の脳内世界では何でもありですから。なのでミステリ小説の中でどんな理由でどんな犯罪が起きても、そのまま受け入れることができるはずでした。
ところがこの作品、最後に犯行を行わなければならなかった人物と理由が特定されるとすぐさま「真犯人は…!」と人差し指を突き立てるのです。
これは現世で『御見物衆』と成り下がっていた読者への警告です。だからといって日々起こる事件や事故の当事者の苦悩を第三者がどう想像し感じればよいのでしょう。明日は我が身かと考えていても…です。60年も前の作品ですが、今こそ読んでいただきたいです。
若き日に「ドグラ・マグラ」と出会い、足下の地面がふっと消えてしまったような恐怖心に襲われ、自ら思考停止を決め込んで数日を過ごしたこと思い出しました。同じようにまたしばらく鬱々とした日々を過ごさなくてはならないかもしれません。
虚無への供物〈上〉 (講談社文庫)
中井英夫虚無への供物 についてのレビュー
No.95: 7人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

medium 霊媒探偵城塚翡翠の感想

間違いなくSランクの作品、オススメします。
短編集とあるのはなぜでしょう…全編通しで完成される作品だと思うのですが。
犯人は途中でわかるかもしれません。しかし、謎解きをする間を与えてもらえないくらい面白くてテンポよく読まされてしまうので、ラストを最高に愉しめるように出来ています。脱帽です。
私が犯人特定に至った経緯を書いてもよいでしょうか。
私が犯人予測をするのは違和感です。今回もざわざわといくつかの違和感に苛まれました。それを取っ掛かりにトリックを想像するのですが…上記の理由でできず終い。なので初歩的で単純なトリックに愕然とさせられ、二重にやられた感を味わうことができました。
因みに違和感の源は①女性作家②タイトル③オカルトです。(この一文問題ありだったら警告下さいませ。)
近い将来「読むべきミステリ作品一覧」に載る作品だと思います。オススメです。
medium 霊媒探偵城塚翡翠
相沢沙呼medium 霊媒探偵城塚翡翠 についてのレビュー
No.94:
(6pt)

フシギの感想

真梨幸子ファンは必読ですね。ある意味マニアックです。初めての方もよいのでしょうが、ファンでないと楽しめない角度が数倍です。真梨氏もさぞ楽しんでいるかと思います。
私にとって真梨氏作品はミステリ読書生活の閑話休題、なくてはならない存在です。
フシギ
真梨幸子フシギ についてのレビュー
No.93: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

密室の如き籠るものの感想

このシリーズの特徴…面白さ…は刀城言耶が小説家という設定であることだとつくづく感じさせられました。つまるところ、謎が解明されなくても真犯人がだれであっても構わないし、トリックが真実である必要もないのです。登場人物がそれで良しとすれば小説家刀城言耶の役割りはおしまいです。読書がそこで納得すれば作品自体もおわるのですが、三津田氏はちゃんと種明かし?という、魅力的なおまけをつけてくれたりします。それとて真実かどうか…。最後は読書が良しとして、完結となるわけですね。真実は闇のなかなんて、人生そのものです。
この作品は少し前に読んだのですが、シリーズ次作を読もうと思っておりますので、感想を記しておきました、
密室の如き籠るもの (講談社文庫)
三津田信三密室の如き籠るもの についてのレビュー
No.92:
(6pt)

転落の感想

あまり話題にはなりませんが、イヤミス好きにオススメの作品でした。
他人を踏み台にして生き延びようとするのは本能のひとつだと思います。もちろんその人を思いやる気持ちやモラルが勝るので、実際そんな考えは意識の表層まで浮かび上がって来ないのかもしれませんし、例え一片を感じても否定するのが普通の人間です。そこを意図も簡単にやってのけられる人は存在します、隠れサイコパス怖いです。
転落 (講談社文庫)
永嶋恵美転落 についてのレビュー
No.91: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

後妻業の感想

娯楽小説として充分に楽しめました。最後のスッキリ感は時代劇みたいです。勧善懲悪万才!
ふだんはイヤミスを読み、読後に人間の心理についてじっくり考えるのがすきなのですが、この作品は登場人物に感情移入せず、ストーリーを楽しむことができました。しかし、現実と照らし合わせると空寒さも感じますが…。
後妻業 (文春文庫)
黒川博行後妻業 についてのレビュー
No.90: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

果断: 隠蔽捜査2の感想

竜崎伸也が少しずつ人間に見えてきました。「隠蔽捜査」では清廉潔白、真面目過ぎ、家族も妻も出来すぎで人間としての魅力が感じられずに少々うんざりしたのですが。
「果断」はシリーズ最高評価作品のようですね、納得です。愉しんで読むことができました。警察ものはあまりよみませんが、機会をつくってシリーズ読破を目指します。
果断―隠蔽捜査〈2〉 (新潮文庫)
今野敏果断: 隠蔽捜査2 についてのレビュー
No.89:
(6pt)

強欲な羊の感想

イヤミス好きなので評価点はつい高めになっていると思われます。ご注意下さい。
たまにこういうイヤミス小説読みたくなるんですよね。自分はここまで嫌な女じゃない…そんな確認をして、負の感情を昇華する作業をする、といったところでしょうか。
女性は誰でも多少なりともこんな一面を持っています。男性の皆様、くれぐれも女性不振になりませんように。というか、男性はこの手の作品はお読みにならないでしょうね。
強欲な羊 (創元推理文庫)
美輪和音強欲な羊 についてのレビュー
No.88: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

新世界よりの感想

どう評価すればいいのでしょう。エンターテイメントとして楽しんで下さい…と言い切ることができません。投げ掛けられた問題があまりに重く、読み手がどんなメッセージを受けとるか不安でならないからです。
数日前、ここで「GWにどうですか?」というコメントを目にして手にしました。初めは『私を離さないで』を連想させるような、透明で無垢な魂に潜む不安定さを享受していたのですが、次第に傲り昂る人間への違和感が湧き始め、繰り返される殺戮の場面は嫌悪に苛まれました。何度も止めようかと迷いましたが、ラストにどんなメッセージをどんな手法で投げ掛けてくるのか…知りたくて読破しました。そして、上の感想です。
10代の初め、星新一氏のSFショートショートに出会った時「これはずっと先の未来であり、人間がこんなに愚かであるはずはない…」と感想を持ちました。あれからうん十年、しばしばそのままの世界が目の前にあることに驚いています。
そして現在、人種や貧富の違いによる差別、エリートの選民意識、権力による支配が溢れ、個人、社会、国家レベルでの有血無血の殺戮が行われている…。今、この作品に出会い底深い恐怖を覚えずにはいられないのは私だけでしょうか。
人間はきれいごとでは生きていけません。しかし、命のレベルでの奢り昂りは人間が人間としての存在を貶め、否定することになるのではないでしょうか。選ばれし人間などはいません。命の価値は平等であり、ただ運の違いであるだけだと、思うのですが。
GWにこのような思索の契機を与えてくれた作者、作品に感謝します。
新世界より(上) (講談社文庫)
貴志祐介新世界より についてのレビュー
No.87: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

ナミヤ雑貨店の奇蹟の感想

今まで手にとってこなかったのは読まず嫌いの最たるものと反省しかりです。
東野圭吾氏は善人悪人全ての人間を尊び愛している人なのだと思います。この作品にもナミヤ雑貨店と丸光園に繋がる、ただの人々、理想化も粉飾もされない人たちの運命と生き様がえがかれていました。考えてみると東野氏は作品の登場する人物の、例えサイコパスであっても、その生き方を否定することなく、受容する神の視点から描いているような気がします。
じわりじわりと感動がわいてくる、そんな気分を満喫しました。波矢氏からの白紙の手紙への返信は読者へのメッセージ。若者たちにはぜひとも読んでいただきたいものです。
ナミヤ雑貨店の奇蹟 (角川文庫)
東野圭吾ナミヤ雑貨店の奇蹟 についてのレビュー
No.86: 4人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

出版禁止 死刑囚の歌の感想

下世話なタイトルやフェイクドキュメンタリー形式の胡乱さに惑わされてはいけません。素晴らしい作品でした。「Why」探しに夢中になっていたら…。「虚実混交で逆転につぐ逆転」と紹介されていた通り翻弄されました。そして最後は魚質竜文…真実は意識して見ないと見えないということですね。
オススメします。
出版禁止 死刑囚の歌 (新潮文庫)
長江俊和出版禁止 死刑囚の歌 についてのレビュー
No.85: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

隠蔽捜査の感想

人間性に欠ける主人公の正義感が腹立たしくて何度も放り出しそうになりました。ここまで清廉潔白な人いたら凄いです。理想的な官僚の姿なのでしょうが…それを求めて読むのが正解ということですね。感情優先で物事をとらえてしまう私などには、受入れ難いレベルでした。
ラストも何だか上手く収まって、しっくりきませんでしたが、次回作への伏線と考えました。なので二作目も読んでみようかと思いますが。
隠蔽捜査 (新潮文庫)
今野敏隠蔽捜査 についてのレビュー