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マッチマッチ さんのレビュー一覧

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レビュー数149

全149件 21~40 2/8ページ

※ネタバレかもしれない感想文は閉じた状態で一覧にしています。
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No.129:
(7pt)

ホワイトアウトの感想

ミステリー要素はほぼありません。
雪山冒険エンタメ小説という感じでしょうか。
ダム関連の説明等で、やや小難しいところもありますが、全体を通して読み易いです。
スピード感もありますので、ページ数の割には簡単に読み終わりました。

内容的には主人公富樫の一人舞台という感じですかね。驚異的な体力と精神力。これを良しとするか否かで評価も分れるところでしょう。
惜しむべきは影の主人公と成り得たテロ犯笠原の最後。もう少し表舞台に出して最後を迎えさせたかった。
また、人質となったダムの職員、職員の身内の心情、これらへの書き込みも全く無かったが、これも少々拍子抜け。
さらにテロ犯リーダーらの真のテロ目的が明確に語られなかったのもマイナス点。
これらが全て描かれていれば、重厚な冒険小説に成り得ただろうに、惜しい気がした。

まあ、そこも加味して総合評価7点としたい。
ホワイトアウト (新潮文庫)
真保裕一ホワイトアウト についてのレビュー
No.128:
(7pt)

777 トリプルセブンの感想

『殺し屋シリーズ』4作目という触れ込みである。
まさに伊坂ワールド全開。軽妙で軽快。面白かった。

「マリアビードル」で出てきた殺し屋天道虫が再登場。
列車内という閉鎖空間からホテル内という空間に変更されているが、味付けは一緒。
ただし、マリアに比べるとセブンはいささか小粒。
「マリアビードル」の評価が高かった方には、マリアの番外編という感覚で読むと大いに楽しめるでしょう。

当方も気軽に楽しめました。
マリアに比べると評価は少し落ちるけど、読後感も悪くはなく、7点程度でいいでしょう。

なお、これは映像化必須ですね。
3時間程度の映画で見ると、よりスリル感・スピード感も高まり、本で読むより間違いなくバズると思います。
タイトルもそのまま『777~トリプルセブン~』ピッタリです。
777 トリプルセブン
伊坂幸太郎777 トリプルセブン についてのレビュー
No.127:
(8pt)

少女の感想

イヤミスの女王と称される湊氏のデビュー2作目の作品である。
著者の作品は本作で、4冊目[絶唱(5P)→リバース(5P)→贖罪(7P)→本作(?P)]。
著者独特のその作風は、そのまま。
人の負の心理・行動を、軽いノリで軽妙に描く。だから、イヤミスとは言え、さほど重すぎることはない。
それどころか却って、人のバカさ加減が滑稽に見えて笑いを誘う。
よって本書は、気負わず暇つぶし程度で気楽に読み、楽しめばよい。
ラストのオチも「自業自得」・「因果応報」と割り切って、笑い飛ばしましょう。

さて本書の焦点は、2人の女子高生の心理の対比であろう。
序盤はその2人の目線がどちらの目線なのか、とても分かりづらい。慣れるまで少々時間が掛かった。
しかし、後半は分かりやすく、テンポよく展開する。
ミステリー風の伏線もキチンと漏れなく回収される。もちろんその分、伏線回収はいかにも都合良い。しかしその都合良さも、この小説のライトさで考えると、違和感はない。

それで本書の評価であるが、単なるイヤミス的内容ではなく、2人の少女の友情も味わえ、当方にとっては読後感もさほど悪くはなかった。
これまでの3作の最高点7点越えの8点としたい。
少女 (双葉文庫)
湊かなえ少女 についてのレビュー
No.126: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

風に立つの感想

親子の葛藤を描いた作品。
完全なるノンミステリー。著者のイメージからミステリーを期待したい方は、パスしてOK.
でも読んで損はない。読後感はとてもよろしい。

物語は、補導委託で問題少年を受け入れた南部鉄器工房の親子と工房の職人、そしてその少年を中心にして話が進む。
工房の息子が父に思うわだかまり。少年の心のわだかまり。さらに少年の両親の思いと工房の父の思い。これらが徐々に明らかになり、ほぐれていく。

話は淡々とゆっくり進む。さほど大きな事件が起こるわけでもない。エンタメ感は一切期待してはいけない。
面白さを求めるのではなく、感動・感情の揺れを味わいたい。そういう作品であった。

惜しむべきは、南部鉄器を育んだ岩手の風土、自然、季節の変化などの言及が物足りない。唯一「チャグチャグ馬コ」については、興味深く読めた。
工房で仕事をした少年が南部鉄器に何を感じたのか、ここへの言及はあっても良かったのでは。
それらがマイナス評価。この辺りを十分に書き込み本書のテーマと融合させたら、より重厚な一冊となっていたのでは、、、

よって、アマゾン評価の5点には届きませんでした。4の下で、7点です。
風に立つ (単行本)
柚月裕子風に立つ についてのレビュー
No.125:
(7pt)

あの子の殺人計画の感想

「希望が死んだ夜に」に続く仲田・真壁シリーズの二作目である。
前作のテーマが「貧困」。今作は「虐待」がテーマの社会派ミステリーとなる。
「社会派」としての要素は、前作同様よく実態をよく調べ丁寧に描かれていると思う。
虐待を受ける子供の心理。虐待をする側の親の思考。
そして両者に関わる身近な周りの人々の対応。特に、学校現場で被害児と接する教員の理解度と資質の問題点。
これらを被害児(きさら)主人公に仕立て、嫌気がするほど描き切っている。
教育現場の先生方にも研修本として、読んでいただきたいほどである。

▼以下、ネタバレ感想
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あの子の殺人計画
天祢涼あの子の殺人計画 についてのレビュー
No.124:
(7pt)

Another(アナザー)の感想

当方この小説を読む前に、先に「Another2001」を読んでいたから、流石に大失敗であった。
解答書を読んでから、問題集を読んだようなものである。
言い方を変えると、ネタバレのサイトを眺めてから、本書を手にしたということだ。

▼以下、ネタバレ感想
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Another
綾辻行人Another(アナザー) についてのレビュー
No.123: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

砂漠の感想

正真正銘の青春小説。非ミステリーです。

読んで思い出す自身の学生生活。
大学生になり一人暮らしをし、大人になったつもりでも結局は子供なんだよ。
世間に庇護され自由に生きる、オアシスのような生活。
タイトルの砂漠こそ、著者の意図するアンチテーゼ。

そのオアシスで青春を謳歌した5人の登場人物。大学生の北村、鳥井、南、東堂、西嶋。
そしてもう一人の登場人物社会人の鳩麦さん。鳩麦さんは、彼らを優しく見守っていたんだね、砂漠から。

あっと言う間に過ぎ去った4年間。卒業式での学長の祝辞。
「・・・学生時代を思い出して、懐かしがるのは構わないが、あの時は良かったな、オアシスだったな、と逃げるようなことは絶対に考えるな。そういう人生を送るなよ」
著者も自身の学生生活を振り返って、これが一番言いたかったんだろう。

懐かしく楽しんで読ませてもらいました。
★7つ。
砂漠 (実業之日本社文庫)
伊坂幸太郎砂漠 についてのレビュー
No.122: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

プロジェクト・ヘイル・メアリーの感想

先日の日経新聞で、SF界のスポークスマンとも呼ばれる大森望氏の絶賛書評を読み、手にした。

中国SFが急速に台頭する一方、アメリカSFの影が薄い。そもそも、一般に知られる作家や作品が出てこない。
そんなアメリカSF界のさびしい状況を打ち破る希望の星が、『火星の人』で2011年にデビューしたアンディ・ウィアー。・・・
・・・しかし、その『火星の人』をも上回る人気を得たのが、21年に出た最新長編『プロジェクト・ヘイル・メアリー』・・・
・・・「だれが読んでもおもしろいSF」という無理難題に果敢に挑んで見事に成功した奇跡的な傑作だ。

という書評である。これは是非読まなくてはならない。
確かにシンプルに楽しめた。
上巻の大半が、主人公グレースの一人称語りでストーリーが展開する。
ややもたもたしているが、上手く疑問を膨らませる。

▼以下、ネタバレ感想
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プロジェクト・ヘイル・メアリー 上 (ハヤカワ文庫SF)
No.121:
(7pt)

正体の感想

600ページ少々の長編小説である。ボリュームはあるが文体は軽く読み易い。
当方もあっさりと読み終えることが出来た。

▼以下、ネタバレ感想
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正体 (光文社文庫 そ)
染井為人正体 についてのレビュー
No.120:
(8pt)

あの日、君は何をしたの感想

第1部 2004年 前林市(「東京から新幹線と在来線で2時間弱の北関東にある」と、第2部本文中で紹介されている架空の市らしい)で起こったある少年の事故死に関する内容。
第2部 2019年 東京都新宿区で起こった若い女性の殺人事件と容疑者の失踪に関する内容。
ミステリーとしての本書の読みどころは、2つの事件がどう絡んで、最後のオチに繋がるのかという点にあると思う。
そして、この小説のもう一つの読みどころは、少年とその母、容疑者とその母、そして容疑者の妻とその母、その関係性と両者間の心情を扱ったところです。
特に少年と容疑者のそれぞれの母親の心情は、母親の愛情が持つ負の側面をうまく描いていると思います。まさに異様な母子愛ですね。

感想ですが、なかなか面白かったです。読み易く、ストーリーがどう展開するのか気になり、あっと言う間に読み終えました。
ミステリー面としては、一体全体どこで両事件が結びつくのか、ラスト近くまで判然とせず、もしかすると両事件を結ぶことなく、母親の異様な愛を扱っただけの小説家かと危惧した位です。
でもキチンと解答は与えられていました。

▼以下、ネタバレ感想
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あの日、君は何をした (小学館文庫)
まさきとしかあの日、君は何をした についてのレビュー
No.119: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実の感想

一作目の「殺人鬼フジコの衝動」を読んだのが2022年の冬。
ちょうど二年後に本作に辿り着いたことになる。シンプルに面白かったです。
二年前に書いた一作目の自身の感想を読んでみると、「ちょいと難しいが、後味の残る癖になりそうな小説」という風にコメントしている。
それを踏まえて本作を振り返ると、一作目の「…衝動」が問題集。本作である「…真実」がその解説集ということか。
解説集ということもあって、本作は前作より内容が分かり易い。前作を読んでいなくても、ストーリーとしては成立している。
また、読み手の心身が健全で体力も充実している時に読めば、ギャグとして笑い飛ばせるが、心身不調で衰弱してるときに読めば、深くて暗い淵に引き込まれようなイヤミス感も前作同様しっかり残されている。
とはいえ、ミステリー小説として、事件本体のディテールを冷静に眺めてみると、非現実的でぐちゃぐちゃ。「これはないでしょう(笑)」という感じのB級感ツッコミどころ満載。
しかし、これをツッコんでも始まらない。ご愛敬でいいと思います。本作はサイコ感と不穏な雰囲気を楽しむためにあると思います。


▼以下、ネタバレ感想
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インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実 (徳間文庫)
No.118: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

飢餓海峡の感想

著名な大作である。入手する機会があったので手にした。読んだのは新潮文庫の文庫版(上・下)である。
とにかく読み応え十分。特に上巻は面白い。
著者のあとがきに書かれている「…無理な事件を設定しておいて、それに現実性をあたえる営為の苦しさは、よく出来上がれば楽しいが、なかなかうまくゆかないのが常だから…」とその苦労を書いている。
まさにこの小説の本質はそこにある。戦後から昭和30年初頭にかけての日本の地方の貧困。舞台となった北海道積丹半島・青森県下北半島・京都北部の舞鶴や丹波山地。その僻地ににある寒村・僻村。そこで生活する人々。なかなかリアルである。
Wikiで調べてみると、何度も映像化されている。主要登場人物の俳優陣もなかなかの顔触れ。確かに映像化にはもってこいのストーリーだと思う。
    1965年(映画)   1968年(TV)  1978年(TV)  1988年(TV)  1990年(TV)
杉戸八重 :左幸子     :中村玉緒   :太地喜和子   :藤真利子   :若村麻由美
樽見京一郎:三國連太郎   :高橋幸治   :高橋悦史    :山﨑努    :萩原健一
弓坂刑事 :伴淳三郎    :宇野重吉   :金内喜久夫   :若山富三郎  :仲代達矢


▼以下、ネタバレ感想
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飢餓海峡(改訂決定版) 上
水上勉飢餓海峡 についてのレビュー
No.117: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

戻り川心中の感想

短編集である。
当サイト内で偶然に見つけ手にする。著者初読み。
大正から昭和初期にかけての動乱期に、男女が織りなす綾を描いた小説。
ミステリー小説らしからぬ格調高き文体で、文学的に書かれてはいるが、これは歴然としたミステリー小説である。
特に表題の短編「戻り川心中」では、冒頭での歌人「苑田岳葉」についての解説が、まるで実在する歌人であるかのように描かれ、騙し絵のように騙される。
「ひと枝の花をかたみに逝く春を雲間のかげに送る夕月」…ただ初期の作品は、表面的な物象にとらわれ、才に溺れすぎ、現在では大した評価を受けていない。
うーん、著者が詠んだ作中歌なんだ。そしてそれを著者自身で解説する。
「明日はまた涸れぬ命をつかの間の朝陽に結び蘇る花」「世の中は行きつ戻りつ戻り川 水の流れに抗ふあたはず」
こんな感じで、なかなか本格的。著者紹介に早稲田大卒と書かれていたので、Wikiで調べてみたら文学部ではなく政経学部卒なんですね。意外でした。


▼以下、ネタバレ感想
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戻り川心中 (光文社文庫)
連城三紀彦戻り川心中 についてのレビュー
No.116:
(7pt)

異色のマイホームミステリー(前の家族)

履歴を見ると、著者の青山七恵氏は2007年第136回芥川賞受賞、2009年第35回川端康成文学賞受賞とある。しかも受賞時の年齢は20代前半。お若い!
とは言え、当方全く知らない。
なのに何故本書を手にしたかというと、本年8月頃、愛読している日経新聞の書評欄でこの小説が紹介されていたからである。
当方、未読本の書評は出来るだけ避けるようにしている。もちろん、オチを想像してしまうことを避けるためだ。
日経の土曜日の書評ページは、基本的にお堅い書籍・専門書が多数である。ただ、たまにはこうした娯楽的な小説も取り上げられる。
という事情でついつい軽く読み流してみると、「不穏な気配」というフレーズが目に飛び込んできた。
これは大好きなフレーズである。
ということで、今回、手に入れ読んでみた訳である。

さて、主人公の猪瀬藍は37歳で独身の作家だ。
思い立ち、やっとのことで購入した中古の1LDKマンション。
ここからなにやら怪しげなことが起こってくる。
マンションの売主小林家は、妻と夫と小さな二人の娘の4人家族。
主人公がマンションを購入後、しばらくしてから、この娘たちがマンションを訪問してくる。
さらにしばらく経つとその母親まで。
うーん、その目的というか意味は?
そしてさらに時が進むにつれ、藍は小林家の新居を訪問するようになり、歓待される藍は、ついには連泊するまでになる。
いやいや確かに不穏である。
不穏・不思議と言えば、この小林家の夫。目立たないようではあるが、何か秘密が?
娘たちも可愛いんだけど、藍に懐いているようで懐いていない。
主人公の藍も何やら頼りないし、小林家の妻の歓待は、無償の愛なのか。
うーん、なにやら本当に不穏である。

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前の家族
青山七恵前の家族 についてのレビュー
No.115:
(8pt)

果鋭の感想

マル暴担コンビ、堀内と伊達シリーズの3作目。
また読んじゃった(笑)
相も変わらずの3匹目のなんとか、という作品。
でも分かっていても面白い。止められないお手軽の娯楽作品。
当方、きっと4作目の「熔果」もいずれ読むんだろうね。まだ文庫は出ていないようだから、出たら読みましょう。

まあしかし、3作目になるともう完璧にヤクザみたいになっちゃったね、お二人。
でも元は刑事。ハチャメチャに悪を懲らしめる。痛快で面白い。
上手くいきすぎて最後のオチが少々ハラハラしたけれど、まあまあ無難な不時着で一安心。
伊達もあの程度の傷なら、堀やんと次のシノギを見つけることだろう。
解説はハードボイルドなんて書いてあったが、これはエンタメだよね。
息抜きに持って来いです。
果鋭 (幻冬舎文庫)
黒川博行果鋭 についてのレビュー
No.114:
(8pt)

邪魔の感想

奥田氏の初期作。3作目。
味付けは2作目の「最悪」と同じ。犯人探しのミステリーではなく、展開を楽しむエンタメ系の小説。
でも決して楽しんで読める小説では無く、読み手によっては、そのエンディングも含めて、イライラ感やストレスが溜まる小説だったかもしれない。
しかし、当方、こういう流れ好きですね。奥田作品は、伊良部ドクターのギャグ系より、こっちの人間模様系の長編が面白いと思う。
世相を皮肉るちょっとした社会現象、脇役の何気ない癖や行動。こういった描写が、小説に妙にアクセントを付けてくれ、時には笑わせる。
当方、文庫本新装版で読みましたが、上下で800ページ強、あっという間に読み終えました。

メインの登場人物は、主婦・恭子と刑事・久野。
でも、主役は恭子だろう。

▼以下、ネタバレ感想
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邪魔〈上〉 (講談社文庫)
奥田英朗邪魔 についてのレビュー
No.113: 4人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

すべてがFになるの感想

文庫本の解説を読んでみると、本作の初稿完成時期が1995年12月となっている。
今から約30年前で、阪神淡路大震災があり、オウム真理教による地下鉄サリン事件があったあの頃である。
果たしてあの頃に、巷でVR(仮想現実)の話題が上がることはあったであろうか。
本書では、終盤の犯人とのやり取りが、カートに乗ってVRで行われる。この辺りは凄く新鮮。30年ほど前の小説とは思えない新しさだ。
AI(人工知能)についての記述は無かったが、その初歩的発想のロボットも出てくる。
著者の履歴を調べてみると、執筆当時は現役の名古屋大学工学部助教授。うーむ、これはバックボーンが全く異なる。
こういう肩書でありながら、こうした大衆向けの娯楽小説が書けるわけだ。その当時、著者は大学でどのような趣向で学生に講義していたのだろうかと、色々と想像してしまう。

さてそういうことを含めて、本書のミステリー本としての感想だが、内容的にはクローズド・サークルのミステリー小説であった。
当方、基本的に、この手の謎解き本格物というものは、余り好みでは無い。
しかしながら、今回は妙に楽しく読ませて頂けた。理系ミステリーを標榜するだけあって、ややマニアチックな用語や数値が頻出したが、さほど苦にはならなかった。
謎解きの説明も、そこそこに納得できた。

▼以下、ネタバレ感想
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すべてがFになる―THE PERFECT INSIDER (講談社文庫)
森博嗣すべてがFになる についてのレビュー
No.112: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

悪い夏の感想

終盤近くまでとても面白かった。
生活保護受給者や彼らに群がるヤクザや医師、そして、保護申請の受理に関わるケースワーカー達のお話。
とは言っても、社会派という要素は殆ど無い。底辺に生きる人たちを扱ったイヤミス的エンタメ小説でしょうか。
登場人物がすべてワルかバカばかりという殆ど救いが無い内容。
でも、それはそれで問題ないし、妙に引きこまれる。終盤近くまでは、ワクワクしながら読めました。

▼以下、ネタバレ感想
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悪い夏 (角川文庫)
染井為人悪い夏 についてのレビュー
No.111:
(7pt)

望みの感想

「サスペンスミステリー」というキーワードで、引っかかった作品。
でもこれは、ミステリー小説でも無ければサスペンス小説でも一切ありません。
少年犯罪に関わった4人家族の揺れ動く心理を扱ったリアルな家族小説です。

登場人物は、設計事務所を構える夫、校正の仕事を請け負う妻、サッカー部を怪我で辞めた高校生の兄、高校受験を控えた中学3年生の妹の4人。
あらましは、兄が行方不明になり殺人事件という少年犯罪に関わっていることが判明。数限られた情報から、兄が事件の加害者であるか殺されてしまった被害者であるのか、その2者択一。
こうした状況下で、夫・妻・妹は、兄が加害者と被害者のどちらであることを望むのか、この心理の様をリアルに事細かく描いていく。

特に長男である兄のことを考える夫と妻の心理の対比はリアルです。
ストーリーはほぼ最後までこの描写が続きます。これを良しとするか悪しとするかは、読み手の年齢・家族構成によっても違うでしょうね。
また、この小説をミステリ本と思って手にした方は、正直、何の面白味も感じなかったでしょう。
当方は結構、夫や妻の思考・心理にそれぞれ同調でき、考えさせられました。
まあ、しかし、最後は親の立場として、見舞いに来た妻の母親がアドバイスした考え方が、道理でしょう。

読み手の立ち位置によって評価が分かれる本と思います。
私はある程度高評価のアマゾン評価4点にしました。
望み (角川文庫)
雫井脩介望み についてのレビュー
No.110:
(7pt)

ストロベリーナイトの感想

「サイコミステリー」という検索ワードで引っ掛かった小説。
しかし、サイコというほどの内容ではなかった。まあ、エンタメ感たっぷりの警察小説というところでしょう。
と言っても、王道の警察小説に見られる重厚さは一切無い。
軽くてスピード感たっぷり。リアルには拘らず、筋書きの細かい齟齬にはお構い無く、娯楽色を全面に打ち出してストーリーが展開する。
だから、面白さは抜群。文庫本で400頁少々だが、あっという間に読み終える。
そして、事件の真相も影の主犯も、主人公の女性刑事姫川の直感で炙り出される。
ただし、これを良しとするか否かは読み手次第。
※当方にとっては正直物足りない。娯楽だけに拘ればこれでもいいんだが、、、

▼以下、ネタバレ感想
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ストロベリーナイト (光文社文庫)
誉田哲也ストロベリーナイト についてのレビュー