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iisan さんのレビュー一覧
iisanさんのページへレビュー数131件
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「小説宝石」の連載を改稿した長編小説。登場人物たちの不全感、自己肯定感の低さが織り成す救いようのない悲劇を描いた現代風俗小説である。
ストーリーはしっかりしているし、状況描写も巧みなのだが、肝心の人物像にリアリティも共感を呼ぶ力もなく、ただ長々と話が流れていくだけで、読後感はよくない。 朝倉かすみ作品はすべて読みたいというファン以外にはオススメしない。 |
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アメリカのSF黄金期に活躍したカリスマSF作家・エリスンの短編集。全11編はすべて非SF作品で本邦初訳、日本オリジナルの短編集だという。書かれたのが1950年代から60年代で、時代的な古さを感じさせるが、書かれているテーマは現代のノワール、ハードボイルド、ストリート物に通じるものがある。
ただ文章が難解で(筆力があると評価されるのだろうが)読みづらい。相当に読者を選ぶ作品集である。 |
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真保裕一には珍しい愛を中心に置いたミステリー。売り文句は「慟哭の長編恋愛小説」というのだが、そこまで心が動かされることはない、恋愛小説としてはレベルが高くない作品である。
18年間、会っていなかった姉が事件に遭い緊急搬送されたという連絡を受けた小児科医の押村が病院に駆けつけると、姉は重症の火傷を負い、さらに頭に銃弾を受けて意識不明だった。暴力団絡みのあやしげな金融会社の事務所に姉が単身で乗り込み、持参したガソリンで火をつけたという。しかも姉は前日に婚姻届を出したばかりだというのに、新婚の夫は病院に顔を見せず、行方が分からないという。さっぱり状況が分からない押村が姉の事情を調べてみると、結婚した相手は殺人の前科持ちだし、姉の通帳には出所不明の大金が出入りしていた形跡が見つかった。さらに、暴力団のみならず警察も、姉の結婚相手を探しているようだった。姉が結婚した相手は何者なのか? なぜ逃げているのか? 謎だらけの18年間を辿ってみると、そこには必死に生きる姉の真摯な姿が見えるのだった・・・。 姉の秘められた過去、行方をくらませた夫の捜索、事件の背景の解明という面では、それなりに面白いミステリーである。ただ、メインテーマである「慟哭の恋愛」が、読者の共感を得にくい設定で観念的過ぎて小説としての面白さがない。 |
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10年ほど前に世間を騒がせた「婚活連続殺人事件」を下敷きに、児童虐待をプラスしたサスペンス。話題性はあるものの小説としてはやや物足りない、中途半端な社会派ミステリーである。
実際の事件とは反対に婚活詐欺を働いた女性を「誰もが認める美女」にしたところ、さらに児童虐待を加えて物語を重層的にしたところは良かったのだが、扱う課題が大き過ぎて持て余した感じなのが残念。他のレビューにもあるように、犯行の動機、取材するライターの言動など「これは、ちょっと」が多過ぎた。ただ、終章を含めて全6章のうち第4章まではまずまず読ませる作品である。 時間がある方にオススメ。 |
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雑誌「VERY」の連載を単行本化した長編小説。前作「ハピネス」から2年後の物語である。
本作も湾岸のタワマンに住む、幼稚園のママ友たちの行ったり来たりの泡のような恋物語である。最初から最後まで、自分の位置が見つけられずに悩んだり開き直ったりするヒロインの揺れ動きだけで終わってしまい、物語的な面白みはほとんどない。ただアラサー世代のちょっと見栄っ張りな女性たちの日々を覗き見るという、風俗的な面白さはある。 読むことが時間の無駄とは言わないが、積極的にオススメしたい作品ではない。 |
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デビュー作である前作「完璧な家」でイギリスの人気作家となったパリスの長編第2作。12年前に行方をくらませた元恋人が戻ってきたのではないかという不可解な事態に翻弄されるサスペンス作品である。
12年前に同棲中の恋人・レイラと出かけたフランスで、レイラが忽然と姿を消し、失意のまま帰国したフィンは、7年後にレイラの追悼式で出会ったレイラの姉・エリンと付き合い始め、婚約するに至った。そんなとき、昔二人が住んでいた家でレイラを見かけたという情報がもたらされ、さらにレイラがいつも持っていた人形が、現在の家の歩道で見つかった。それと同時に、匿名のメールがレイラは生きていると知らせてきた。死んだと思っていたレイラは生きているのか? 生きているならなぜ会いに来ないのか? それとも悪質なイタズラなのか? フィンは疑心暗鬼に陥り、じわじわと追いつめられていった・・。 主人公・フィンが心理的に混乱していくサスペンスがメインなのだが、フィンがなんとも形容し難い優柔不断で身勝手な性格なのでイマイチ同情できないし、レイラが生きているのかイタズラなのかの解明も堂々巡りを繰り返すだけで盛り上がりに欠ける。最後まで物語世界に入っていけなかったという点で、まさにイヤミスの極致と言うべきか。 「イヤミス×純愛!」という売り文句通りの作品で、イヤミスファン以外にはオススメしない。 |
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1996年の吉川英治文学新人賞の受賞作。日本では珍しい、壮大な構想の冒険サスペンス作品である。
厳寒期の豪雪に閉ざされた日本最大のダムが武装したグループに襲撃され、発電所員が人質となって占拠された。彼らの要求は現金50億円を24時間以内に用意しろというもので、要求を拒否したら人質とダム下流域住民の安全は保証しないという。豪雪に行く手を阻まれて動きが取れない警察に代わって、ただひとり人質になるのを免れた所員の富樫輝男が、武装した犯人たちに徒手空拳で立ち向かうことを決意する。富樫には、どれほど困難でも挑戦しなければならない、深い理由があったのだ。 スケールが大きく、緻密な取材と確かな描写力が印象的な小説だが、ダムの構造や周辺の地形などの描写が複雑で理解するのに苦労するため、好き嫌いがはっきり分かれそうな作品である。「このミステリー」で1位を獲得したように高評価を得ているのだが、自分には合わなかった。2000年に映画化されたようだが、確かに映画の方が理解しやすい作品と言える。 最初から最後まで舞台がすべて豪雪の雪山なので、暑い夏の日の読書にはオススメだ。 |
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「行こう!」シリーズの第2弾。赤字ローカル線の再生を巡る、元気なビジネスマン小説である。
宮城県の山間部を走る、年間赤字二億円の第三セクター「もりはら鉄道」の再建を託されたのは、地元出身の31歳の女性だった。新幹線のカリスマ・アテンダントとして有名人でもあった若い女性が単身乗り込み、情熱とアイデアと体力勝負で、社員はもちろん周辺自治体や住民までを巻き込んで、鉄道を盛り上げて行くサクセス・ストーリー。ほぼ予想通りの展開で、多少のミステリーの味付けはあるもののあくまで明るいビジネス物語である。池井戸潤作品をより読みやすく、ホームドラマ的にした作品と言えば分かりやすいだろうか。 鉄道ファンはもちろん、明るく元気なビジネスマン物語を読みたい方にオススメする。 |
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ニューヨーク市警の氷の天使キャシー・マロリーシリーズの第11作。ブロードウェイの小劇場・小劇団を舞台にした連続殺人事件を巡る警察ミステリーである。
本シリーズ、最近はマロリーのルーツを探る作品が多かったのだが、本作は純粋な犯人探しミステリーである。だが、登場人物が演劇関連だけに全員一癖も二癖もあり、物語は非常に複雑な展開を見せ、ストーリーを追うのが一苦労。また、謎解きも伏線を読んで推理するより、スーパーヒーローの直感的な推理で解決されるのでミステリーとしてはいまいち。 シリーズ読者以外には、あまりオススメできない。 |
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新宿をホームとする女性探偵の活躍を描いた「村野ミロ・シリーズ」の4作品を集めた短編集。シリーズの始まり頃の作品から書き下ろしまで、村野ミロという複雑な性格の女性探偵を理解するのに役立つ周辺エピソードが綴られている。
表題作「ローズガーデン」は、ミロの夫である河合博夫の視点から高校生時代のミロを描き、衝撃的な過去が明らかにされる。残り3作はミロが引受けた仕事を通して、欲望の街・新宿に生きる人々のしたたかさと人間くささが描かれ、同時に、長編ではハードボイルドに徹しているミロの意外な人間くささが滲み出している。 シリーズ読者にはオススメ。それ以外の方には、さほど刺激的な作品ではない。 |
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無声映画時代のハリウッドを舞台にした、コメディタッチのミステリー。1983年(邦訳は1958年)の作品で、全体的に古臭さがあるのは仕方ないところ。
イギリス人のヴォードヴィリアン・イーストンは、コメディ作品が主力のハリウッドの映画会社キーストン撮影所に、間抜けな警官隊「キーストン・コップ」の一員として雇われた。そこで出会った新人女優アンバーと仲良くなり、楽しく仕事をしていたのだが、ローラーコースターを使ったスタント撮影中にコップ仲間が死亡する事故に遭遇。さらに、アンバーの母親が殺害される事件が起き、アンバーが容疑者とされたことから事件捜査に巻き込まれ、一筋縄ではいかない撮影所長、監督、女優や喜劇俳優たちを相手に、ドタバタ劇を繰り広げることになる。 犯人探しが中心になった構成だが、謎解き・犯人探しミステリーというより、軽快なアクション小説であり、青年の成長物語でもある。 無声映画時代のコメディに興味がある方にはオススメだ。 |
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デビュー作ながらNYタイムズのベストセラーリストで初登場1位を獲得し、連続29週ランクインしたという話題作。精神分析医でありながら、アルコール依存症で広場恐怖症のために家に閉じこもり、近所を覗くことと古いミステリー映画で自らを慰めているという、風変わりな女性が探偵役を勤める心理サスペンス作品である。
38歳でハーレムの高級住宅街のタウンハウスに一人で暮らすアナは、広場恐怖症のために外出できず、ワインと古いノワール映画を友だちに引き籠もり生活を送っていた。ある日、いつも通りに近所を覗いていて女性が刺し殺されるのを目撃する。ところが、被害妄想的なところがあるアナの証言は周囲に信じてもらえず、自分自身でも妄想ではないかと不安になっていた。しかし、身の回りでは奇妙なことが続発し、アナは一人で事件の真相解明に立ち向かうことになる・・・。 「ガール・オン・ザ・トレイン」や「ゴーン・ガール」などを引き合いにした評価が多く見られるように、「信頼できない(女性が)主人公」というジャンルのミステリーである。それにしても、物語の途中での主人公の壊れ具合がひど過ぎて「どこまでが現実、どこまでが妄想」かの境界が不明になり、心理的なサスペンスを味わう以前に疑問点ばかりが気になってストーリーに没頭できなかった。2019年公開予定で映画制作が進んでいるとのことで、映画化されればもうちょっと整理されて分かりやすくなるのではないだろうか。 女性が主人公の心理ミステリーがお好きな方にはオススメ。また、1940年代から50年代のフィルム・ノワール愛好家には魅力的なマニアックな作品と言える。 |
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ヘレン・マクロイを代表する「ウィリング博士」シリーズの10作目、1955年の作品。シリーズの特徴である、犯人探しの本格派ミステリーをオカルト風味で盛り上げたサスペンス作品である。
転落死した夫の遺品の整理を始めたアリスは、「ミス・ラッシュ関連文書」と書かれた、中身が無い封筒を発見する。聞き覚えの無い名前を疑問に思ったアリスだったが、一人息子のマルコムが連れてきた魅力的な女性が「クリスティーナ・ラッシュ」と名乗ったのに驚愕する。しかも、彼女が帰った後、封筒が消えていた。クリスティーナ・ラッシュとは何者なのか、夫との関係は何なのか、何の目的でマルコムに近づいてきたのか? 疑心暗鬼にとらわれたアリスは、強引にミス・ラッシュの正体を暴こうとするのだった・・・。 ミス・ラッシュの正体に迫るプロセスはなかなかのサスペンスで、犯人探しの面白さが味わえる。しかし、事件の動機の解明になると、途端に平板で中途半端になってしまう。探偵役のウィリング博士も魅力的ではないのが惜しい。 シリーズの中では最後に邦訳された作品ということで、シリーズ愛読者には必読。それ以外の方には、まあ時間があれば読んで損は無いという程度だ。 |
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2016年に刊行された書き下ろし長編。著者が好きなスノーボードを題材にしたゲレンデものの一つで、読みやすいミステリーである。
殺人事件の容疑者にされた大学生が、自分の無実を証明してくれる女性を探して、警察の手を逃れて長野のゲレンデに行き、いろんな人に助けられながら証人を発見する物語。文庫の紹介文にある「どんでん返し連続の痛快ノンストップ・サスペンス」というのは、売り言葉が過ぎる。ノンストップで読める軽快さはあるが、ミステリーとしての完成度は低い。旅行中の乗り物で読む、休みの日の午後に読むなど、軽い暇つぶしには最適。 スノボファン、軽いミステリー好きにオススメ。 |
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フランスの人気作家の「彼女のいない飛行機」に続く、邦訳第二弾。訳者いわく「反則すれすれの大技」を使った作品ということだが、読後感としては「これは、反則技だろう」だった。
内容について反則技に触れないで説明するのが難しいので、読むなら「何の予備知識も持たないで読む」ことをオススメする。 |
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アメリカの新人作家のデビュー作。セールストークの「究極のサスペンス!」というより、ホラー作品である。
美しい庭に閉じ込められ、背中に蝶の刺青を入れられていた若い女性たちが救出された。被害者中でも仲間の信頼を集めていたマヤという女性が、FBI捜査官の事情聴取に答えて語った事件の全貌は、歴戦の捜査官をも驚愕させるものだった。しかも、マヤは容易には正体を明かさず、ひょっとして共犯者ではないかという疑念をもたれるのだった。 まさにグロテスクでおぞましい物語。犯人は「庭師」という男で、マヤたちは最後には救出されると分かっているので、ミステリー的な要素は弱く、監禁にまつわるおぞましさで読者を引っ張るホラー作品である。監禁物ミステリーと思って読むと失望するだろう。 ミステリーファンよりホラーファンにオススメ。 |
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アメリカ生まれでスコットランド在住の女性作家の本邦初訳作品。第二次世界大戦中の若いイギリス人女性2人の友情物語であり、スパイ小説であり、ミステリー仕立ての歴史小説である。
スコットランドの貴族の少女とユダヤ人のバイク商人の少女が、イギリス空軍の補助部隊で出会い、ふとしたきっかけでスパイとパイロットとしてフランスに侵入するも飛行機が撃墜され、スパイはゲシュタポに捕虜にされ、パイロットはレジスタンスに助けられながら英軍の救助を待つ。それぞれが書いた手記が一部と二部になっていて、全部を読み終えると全体像が見えてくる・・・のだが、スパイの手記がパイロット視点のフィクションになっているという複雑な構成で、とにかく話の大筋がなかなかつかめなくて読むのに非常に苦労した。 物語のテーマ、物語自体は面白いのだが、面白いと思えるようになるのが最後の50ページほどになってからなので、忍耐力のある読者にしかオススメできない。 |
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雑誌掲載の7作品を集めた短編集。
どれも、桐野夏生らしいといえば言えるダークな世界を描いた作品であるが、次の長編作品のための習作のような物足りなさがある。 桐野夏生作品はすべて読破したいという方以外にはオススメしない。 |
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2007年から14年までに書いた短編13本を集めた短編集。さまざまなジャンルの作品集なので形容が難しいが、合う合わない、好き嫌いが激しく分かれる、評価しづらい作品集である。
私には難し過ぎて、読み通すの苦痛でしかなかった。 |
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東野圭吾のオカルト風味のミステリー。構成や文章の巧さでかなり読めるんだけど満足感がない、ストーリーテラー東野圭吾の弱点が出た作品である。
交通事故で女性を死なせたバーテンダーが、その女性の夫に襲われるという発端から、被害女性に似た謎の女が現われてバーテンダーが虜になって行くってあたりまでは面白く読めたのだが、その女が被害女性のクーロンというか蘇りというか、人工的な存在ってあたりからしらけてきた。 東野圭吾にしては駄作、と言わざるを得ない。 |
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