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約束の地



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【この小説が収録されている参考書籍】
約束の地
約束の地 上 (光文社文庫)
約束の地 下 (光文社文庫)

約束の地の評価: 4.44/5点 レビュー 27件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.44pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全27件 21~27 2/2ページ
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No.7:
(5pt)

自然の驚異と人間の狂気に触れながら力強く生きていく男の物語

妻を事故で亡くし、10歳の娘と二人になった男が南アルプスの野生鳥獣保存管理センターに赴任され、自然の驚異と人間の狂気に触れながら力強く生きていく物語で読み応えがあった。山が荒れて野生動物が里に下りて農業被害が増える。お腹をすかせた野生動物は田畑の食料を食べるだけでなく人間を襲い人的被害も増えていく。人間はその原因も考えず、野生動物を駆除することを望む。もとを正せば、山が荒れたのは人間の不法投棄や焼却施設建設が原因で、その結果、水質汚染や土壌汚染が広がり野生動物たちを追い詰めていたのだから自業自得であるのだが、それを理解できない人間の様子が本当にリアルに描かれていて考えさせられることが多かった。それ以外にも、野生動物たちとの死闘や、人の死に対する考え方など、本当に読み応えが多く、最後まで飽きずに読めた。
約束の地Amazon書評・レビュー:約束の地より
4334926428
No.6:
(5pt)

都会暮らしの人間こそ読むべし!

「力作」というのが一番ふさわしい感想でしょうか。
環境省のキャリア官僚として南アルプス山麓の関連施設に赴任してきた主人公がその地で出会う人々と自然、そして動物たち。
一見、悠久の時の中で不変とも見える自然の裏で音もなく浮上する破滅の予感。
地元猟師たちに語り継がれる巨グマ”稲妻”を追う主人公たちの前に更なる「荒ぶる神」が襲いかかる。
人が山を狂わせ、そのしっぺ返しを喰らう状況の中で人と野生動物、そして自然との共生を模索する主人公たちが直面したものとは?
主人公をキャリア官僚候補とすることで、まず問題点とそれを取り巻く状況を客観的に描くことに成功しており、読み手にも事の複雑さが伝わってきます。
絶滅が危惧される動物がいる一方で動物たちによる農作物被害も深刻化し「駆除」名目での狩猟すら自由にできなくなった狩猟者たちの不満も高まってゆきます。
その根底には温暖化による気候変動の影響、植林政策の失敗による山林の荒廃、無計画な開発や廃棄物による土壌汚染の影響が見え隠れします。
これだけで十分な内容だと思うのだが過去に起きた惨劇に起因する殺人事件を巡るミステリーや主人公のひとり娘が学校で受ける苛めの問題も絡んできます。
普通に考えれば詰め込み過ぎで消化不良になりそうなものなのだがきちんと着地させている辺りはお見事。
あとがきでも書かれているように長期にわたる綿密な取材と語るべき内容をしっかりと見定めてぶれていないからでしょうね。
ですからボリュームはありますが読みにくくはありませんし、かといって薄っぺらな物語では終わっておらず、実際読んでいる内にいろいろと考えさせられます。
最大の読みどころは荒ぶる神として「人食い」となった巨大なケモノとの対決なのだが、ここはやはり「もののけ姫」を連想させますね。
巨大な山の主を病に罹らせて正気を狂わせて人里へと向かわせたのもやはり人間が原因なのだ。
失われた仲間の命や人間の業を背負った上で愛犬と二人、この獣に対峙する覚悟を決めた主人公が森の奥深くで迫りくる巨大な獣に銃口を向けるクライマックスは鬼気迫るものがあります。
決して派手な作品ではありませんが良質なエンターティメントとしては正に「鉄板」。
おススメです。
約束の地Amazon書評・レビュー:約束の地より
4334926428
No.5:
(4pt)

自然と人間の共存

間と野生動物の死闘、人間同士の葛藤(動物愛護団体、狩猟会、市長など)、サスペンス、虐め、環境問題など色々な事が書かれていて飽きさせない構成だった。
もう少し犯人当てを練りこんでいてくれたらもっといい小説になったと思う。
動物との死闘と殺人事件が独立しすぎで、終盤はそれを無理やりこじつけた印象が残った。
頭を使って読み進める推理小説ではなく、冒険劇的な小説でした。
このミステリーがすごい2010にランクインする可能性あり。
約束の地Amazon書評・レビュー:約束の地より
4334926428
No.4:
(4pt)

読み応えはあると思います。

難しい漢字が多く読むのに苦労したが、読み応えはあった。
人間と野生動物の死闘、人間同士の葛藤(動物愛護団体、狩猟会、市長など)、サスペンス、虐め、環境問題など色々な事が書かれていて飽きさせない構成だった。
もう少し犯人当てを練りこんでいてくれたらもっといい小説になったと思う。
動物との死闘と殺人事件が独立しすぎで、終盤はそれを無理やりこじつけた印象が残った。
頭を使って読み進める推理小説ではなく、冒険劇的な小説でした。
このミステリーがすごい2010にランクインする可能性あり。
約束の地Amazon書評・レビュー:約束の地より
4334926428
No.3:
(5pt)

まさに「現代の」エンターテインメント小説

今は、冒険小説やハードボイルドを書くのが難しい時代だと言われている。これは、このジャンルの登場人物に共通する「清々しい美学」や「厳しいこだわり」が、現代社会と馴染みにくくなっているのが一因だろう。しかし、才能のある書き手は、現在でも意欲的にこのジャンルに関わっている。積極的に「現代社会」と向き合うことで、ジャンルの可能性を押し広げようと模索している。
本作の著者・樋口明雄氏も、この点を慎重に考察し、見事に難問をクリアした。日本人である我々が、現代日本の自然環境や社会の問題として、今、この瞬間に向き合わねばならない事柄を取り上げることによって――さらに、それを小難しい理屈ではなく、エンターテインメント小説の枠組みで描き切ったことによって、誰にも書けない一作をものにした。
人間、土地、自然、野生生物。
それぞれの立場と、それぞれの苦しみ……。
簡単には解決できない問題を、どうやってすりあわせ、共存していくのか?
このように繊細な問題を、一方的な価値観に流されることなく、強靭な筆致で書き綴っていく。著者の誠実で真摯な態度が、ストレートに、こちらの胸の奥まで突き刺さってくる。
これは、作中で描かれた諸問題に、著者自身が日常的にかかわっていることと無縁ではないだろう。野生動物の描き方も、このような作風だとある程度の擬人化を免れないのだが、著者が経験的に知っている「自然環境の息吹・リアリズム」が作品全体から感じられるため、うまく処理されているように思う。日本冒険小説協会大賞受賞も納得の出来映えだ。
約束の地Amazon書評・レビュー:約束の地より
4334926428
No.2:
(5pt)

分厚い本だが、一気に読み切ってしまった。

冒頭で描写される殺人事件をはじめ、張り巡らされた伏線がクライマックスへ向かって収斂していく様は見事。
第一級のエンターティメント冒険小説として一気に読み切れる、と同時に、安易に流れることなく重いテーマを描き切る、という困難な両立を果たした大作である。買って損はないだろう。
本書の舞台は、八ヶ岳山麗の架空の市「八ヶ岳市」。
時代はほんの少し未来を想定し、架空の野生鳥獣管理保全管理センターを設定している。
主人公は、その八ヶ岳支所へ赴任してきた環境省キャリア官僚の七倉航(ななくら わたる)。
妻を喪い、娘と二人での赴任である。
七倉を着任早々に迎えたのは、巨大な体躯の熊が農家を襲い死者がでた、という知らせだった。そして事件の調査を進めるうちに見えてきた相手は、熊を超える恐怖の巨大生物だった。
だが、その生物の存在が、最終的な脅威ではなかった。
やがて明らかになる真に恐るべき「闇」は…。
いや、これ以上書くとネタバレになってしまう。口がむずむずするけれど、ここは自重しよう。
ホラーと冒険小説を能くする作者の面目躍如である、とだけ言って置こう。
七倉が任地で出会う人々は、どいつもこいつも一筋縄ではいかない連中だ。「独立愚連隊」のようなワイルドライフ・パトロールの同僚たち、非協力的な住民たち、旧来のやり方にとらわれた猟師たち、科学的調査すら否定し感情論だけで野生動物の“保護”を叫ぶ“環境保護団体”などなど…。
-- 人が山を汚し、じわじわと殺しつつある。
 その苦い現実をどうにか変えて行けるのか。--
これは大変重いテーマだ。
だが、主人公たちは現実の現場と同じように、限られた予算と人員と制約の中で、出来ることを地道にやっていくしかない。
そこには、安易な万能の解答など存在しないのだ。
仕事では人間模様と現実の困難さに翻弄され、私生活では娘がいじめにあいはじめる。
どちらを向いても問題だらけの四面楚歌生活。
しかし、七倉は逃げない。
悩み、苦しみながらも任地に踏みとどまり、問題に向き合い、課された制約の中で己に出来ることを力を尽くしてやろうとする。
その姿に「一所懸命」という言葉を想起した。
昔、武士が領地を守るにあたって「一所懸命」という言葉が生まれたという。
自分にとって身命を捧げるべき「一所」はどこなのか。
いや、自分はどこを「一所」と“する”のか。
-- どこでどう生きていくのか。
自分が根を下ろして、生きていく場所は…? --
周りの人たちとのかかわりや、土地への愛着などなど、そんな有形無形のものを全部ひっからげた「自分の居場所」。 共に生きること。
これは樋口明雄氏の小説に繰り返し現れるテーマだと思う。
単に地面のある地点、あるエリアをさすのみならず、人や獣や大地との絆を広く包括する「自分にとっての一所」を見出していく。
このテーマを担って本書の物語を生きるのが、主人公の七倉航であり、彼を取り巻く人々なのだ。
そしてもうひとつ、この作品の底流をなすテーマとして「死」がある。
愛しい者の死を、残された者たちがどう受け止め、生きていくのか。
重いテーマだが、繰り返し本書で語られる大切なテーマだと思う。
それぞれが抱える死の重み。そして物語が進むにつれて、変化してゆく死との関わりのありよう。
それは、先に述べた「どこをどのように一所とするのか」というテーマとも深く関わっていると思うのだ。
そういった人の心の変遷と成長もまた、本作の見所のひとつではないだろうか。
本書は重いテーマをはらみつつも、娯楽としての醍醐味を存分に堪能させてくれる。
もしもページ数に及び腰の方がおられたら、買って損はないはず、と重ねて申し上げたい。
ぜひ、主人公とともに困難を潜り抜け、あのラストシーンで清冽な八ヶ岳の冬の大気を感じて欲しい。
約束の地Amazon書評・レビュー:約束の地より
4334926428
No.1:
(5pt)

どうしようもない世界で

読みごたえのあるボリュームなのに、あっと言う間に読み終わったしまいました。ここ数年で読んだ本の中で、最も共感出来て感動した本です。
山を壊す人間、山を追われる動物、里に下りた動物は畑を荒らし、ヒトを襲い始める。
これは警告では無いでしょうか?人間の消えることの無い、果てしない欲望の末に起きるであろう近未来を描いているようにも思えました。
作者が書いた南アルプスの地に、私も同様に十年以上暮らしています。
山が何か変わってきた。川が何か変わってきた。何よりも動物達に落ち着きが無く、妙な苛立ちを持って里に下り始めています。農作物の被害のみならず、人に遭遇して怯えたクマが攻撃する事件も増えてきました。
深く、考えさせられた作品です。
約束の地Amazon書評・レビュー:約束の地より
4334926428

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