凍りのくじら

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凍りのくじらの評価:

3.71/5点 レビュー 166件。 B ランク

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平均点3.71pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全315件 241〜260 13/16ページ
No.75
(1pt)

最大公約数的な文学らしさ

こんなに不愉快な小説を読んだのは久しぶりである。
藤子Fのドラえもんをモチーフに連作短篇の形を取る長編であるらしいが、そのモチーフとなる秘密道具をことごとく文系女子のヤらしさの慰み物になっている。
人間観察に長け、写真家の尊敬できる父は失踪・天然の母は入院中・元カレはストーカー・恋愛相手ではないが頼れる年上の男がいて、とこれは裏返しのお姫様ものであり、設定だけは凄いが、ヒロインはクズのような女である。
つくづく島本理生のエラさが判った。

ここで扱われるドラえもんは、文系少女のネタである宮沢賢治や太宰治の現代版でしかない。
つまりタダの鏡である。
鏡なら、ただでさえアイテムと話数の多いドラえもんなら自分の都合をやたら反映できる(その認識が無い点では歌人の加藤千恵に遠く及ばない)。
なによりこのヒロインからは責任の二文字を感じない。
それはこの女に主体がないからで、主体がないから責任が取れるワケはなく、誰がティーンエイジャーの人生訓なんか聞きたがるかってぇの!
主体がないから、セックスしても子供が出来るとかは考えない。
元カレ・若尾の自己欺瞞や見得をやたら云うが、この女はこの若尾の子供を孕んだらどうするつもりだったのだろうか?
どうしてそういう意識を書かずに、元カレに世界の悪を代表させてみせたり、オタク視点で見る藤子Fを見下して自分の感性だけを信じることができるのか?
全てがヒロインの都合のいいように進み、それには主体が無いから責任が取れない、とは、月並みな言葉で本当に申し訳ないが、この小説には一切他者がいないのだ。
メフィスト賞作家ということで、ここいらは例の自意識と見るべきなのだろうが、すると家族を想い消えた父も、元カレのストーキング行為も自意識の産物であり、ここでヒロインと作者は自意識にランクをつけるという差別をしている。
こういう女は死ぬべきである!

人生は言葉遊びでもないし、セックスはヒロインのための仕様でもない。
なにより私は他人を貶めて、自分を高く見せる手法を意識しないわり方にゲロを吐きそうになるが、こういう女はこういう感性というか生理的嫌悪を持っていない。
というか持てるハズがない。
それはそうだ。
こんな小説を自省もせずに370頁書けるのはその証でしかない。
なんかこの作者は人間として、とても大切なものが欠落している。
それなのに、小説賞に応募し、コンスタントに作品を発表する、その神経を疑う。
私だって、年下の女性をここ迄批判したくない。
だがこれだけ不愉快にしてくれたのなら、その理由は明記すべきと信じた。

希望とか理想とはどういう意味なのか?その言葉を使う人の理由は何か?などをこの作者は一度真剣に考えるべきである。
男遍歴や疎外への処世術など関係なく、一度真剣に考えるべきである。
凍りのくじら (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 凍りのくじら (講談社ノベルス)より
4061824589
No.74
(5pt)

若い作家だから書けた小説!

辻村さんのことをなんとなく、「同世代でいい女流小説家がいる」みたいな感じで興味をもっていました。

最初は、どんな作風かつかめず、読みにくいのかな?と思っていたんですが、徐々に辻村ワールドに引き込まれました。

文章、構成がうまく、500ページもあるのに無駄な描写も無い。

小道具(ドラえもんの道具ではない)の使い方が巧く、後半の郁也へのプレゼントのDVDとか、リアリティがありますね〜。

理帆子のキャラも立ってるし、こういう微妙な心理はまだ20代だったから書けたんでしょう。

多恵と郁也の最初のシーンで、理帆子の「ナイスキャラ」発言もよかった。あれを入れることで、物語がぐっと近くになります。

ふみちゃんが気になったので「ぼくのメジャースプーン」も買いました!(笑)

最近の小説家で、これほど惹かれたのは久しぶりでした。
凍りのくじら (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 凍りのくじら (講談社文庫)より
4062762005
No.73
(5pt)

若い作家だから書けた小説!

辻村さんのことをなんとなく、「同世代でいい女流小説家がいる」みたいな感じで興味をもっていました。

最初は、どんな作風かつかめず、読みにくいのかな?と思っていたんですが、徐々に辻村ワールドに引き込まれました。

文章、構成がうまく、500ページもあるのに無駄な描写も無い。

小道具(ドラえもんの道具ではない)の使い方が巧く、後半の郁也へのプレゼントのDVDとか、リアリティがありますね〜。

理帆子のキャラも立ってるし、こういう微妙な心理はまだ20代だったから書けたんでしょう。

多恵と郁也の最初のシーンで、理帆子の「ナイスキャラ」発言もよかった。あれを入れることで、物語がぐっと近くになります。

ふみちゃんが気になったので「ぼくのメジャースプーン」も買いました!(笑)

最近の小説家で、これほど惹かれたのは久しぶりでした。
凍りのくじら (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 凍りのくじら (講談社ノベルス)より
4061824589
No.72
(4pt)

作者の使ったテキオー灯

この物語は光のイメージで始まり、一筋の光に照らされて終わる。
「ドラえもん」という名作を巧みに取り入れながら、物語の作者が送るメッセージ、その優しさを繰り返し語っている。
辻村深月さんは彼女のやり方で、テキオー灯を読者に向けている。
凍りのくじらという作品が、一筋の光になったらいいという思いを受け取った。
そんなまっすぐすぎるメッセージに、理帆子というへそのまがった主人公が、絶妙なバランスを保たせていた。

まず瀬名秀明さんのあとがきに興味を惹かれ、本作を購入しました。
登場人物が皆魅力的でありながら、自分の周りにも居るような親近感を持つ人たちだった。
後半にかけてぐいぐい引き込まれ、「タイムタシン」から泣きっぱなしだった。
まさか泣く話だと思ってなかったので、やられた!という気分。
最後の章が「テキオー灯」でなく「四次元ポケット」なのが興味深い。
エピソードも読後感よくまとまっている。その上で読者に対して余白を残しておくなど、粋な計らい。

あとがきにもあるように、理帆子は共感しづらい主人公、らしいのですが・・・。
実は現代的でとても共感できる主人公。
自分の定規でしか人を計ろうとせず、それが全てだと信じている。傲慢な少女です。
偏屈な考え方の持ち主ですが、実はこの少女も周りを見渡せばどこにでもいる人物。
「周りは馬鹿だと思ってる」
「人より自分は頭がいいと思っている」
「自分には居場所がないと思っている」
これらは典型的な中学2年が陥る病気です。
本をたくさん読んでいる人に現れやすい症状。
角度を変えてみれば「オタク的稚拙さを持った少女が、他者を受け入れられるようになってゆく、心の成長が描かれた物語」

しかし大切なことは、理帆子は悪意を持たないということです。
それが彼女の本来の人柄です。
この子は人の欠点を分析しながら、そこに好きか嫌いかの区別はしません。
前半で理帆子は気づいていないが、根底には「人が好き」という気持ちがあり、それは物語全面から受け取れます。
「ドラえもん」が好きだとあえて言うことにしている所や、「ドラえもん」が好きな理由の数々。ダメな元彼とだらだらと関係を続けてしまうところは、未熟な人間らしい魅力です。
若尾に対しては甘えた考えの優しさですが、別所がいうように、その優しさを持っていることは決して悪いことではないのです。
(ただ相手のためを思って、厳しくしなければならない場面があるということ=人と向き合って生きて行くということを学んでいるのです。)

この偏屈な理帆子がそのまま大人になったら、さぞ寂しい人間だろう。
周りにとっては困った人になっていただろう。
自分はオタク気質だと自負がある人は、理帆子にならないように読んでみるといいと思う。
しかし理帆子は成長する。彼女は人の優しさに気づく、自分の愚かさを知る。

自分が馬鹿にしている人たちの優しさに気付き、それを心から感謝できることはできるだろうか?
人は他人を受け入れながら成長していくのだと思いました。
凍りのくじら (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 凍りのくじら (講談社文庫)より
4062762005
No.71
(4pt)

作者の使ったテキオー灯

この物語は光のイメージで始まり、一筋の光に照らされて終わる。
「ドラえもん」という名作を巧みに取り入れながら、物語の作者が送るメッセージ、その優しさを繰り返し語っている。
辻村深月さんは彼女のやり方で、テキオー灯を読者に向けている。
凍りのくじらという作品が、一筋の光になったらいいという思いを受け取った。
そんなまっすぐすぎるメッセージに、理帆子というへそのまがった主人公が、絶妙なバランスを保たせていた。

まず瀬名秀明さんのあとがきに興味を惹かれ、本作を購入しました。
登場人物が皆魅力的でありながら、自分の周りにも居るような親近感を持つ人たちだった。
後半にかけてぐいぐい引き込まれ、「タイムタシン」から泣きっぱなしだった。
まさか泣く話だと思ってなかったので、やられた!という気分。
最後の章が「テキオー灯」でなく「四次元ポケット」なのが興味深い。
エピソードも読後感よくまとまっている。その上で読者に対して余白を残しておくなど、粋な計らい。

あとがきにもあるように、理帆子は共感しづらい主人公、らしいのですが・・・。
実は現代的でとても共感できる主人公。
自分の定規でしか人を計ろうとせず、それが全てだと信じている。傲慢な少女です。
偏屈な考え方の持ち主ですが、実はこの少女も周りを見渡せばどこにでもいる人物。
「周りは馬鹿だと思ってる」
「人より自分は頭がいいと思っている」
「自分には居場所がないと思っている」
これらは典型的な中学2年が陥る病気です。
本をたくさん読んでいる人に現れやすい症状。
角度を変えてみれば「オタク的稚拙さを持った少女が、他者を受け入れられるようになってゆく、心の成長が描かれた物語」

しかし大切なことは、理帆子は悪意を持たないということです。
それが彼女の本来の人柄です。
この子は人の欠点を分析しながら、そこに好きか嫌いかの区別はしません。
前半で理帆子は気づいていないが、根底には「人が好き」という気持ちがあり、それは物語全面から受け取れます。
「ドラえもん」が好きだとあえて言うことにしている所や、「ドラえもん」が好きな理由の数々。ダメな元彼とだらだらと関係を続けてしまうところは、未熟な人間らしい魅力です。
若尾に対しては甘えた考えの優しさですが、別所がいうように、その優しさを持っていることは決して悪いことではないのです。
(ただ相手のためを思って、厳しくしなければならない場面があるということ=人と向き合って生きて行くということを学んでいるのです。)

この偏屈な理帆子がそのまま大人になったら、さぞ寂しい人間だろう。
周りにとっては困った人になっていただろう。
自分はオタク気質だと自負がある人は、理帆子にならないように読んでみるといいと思う。
しかし理帆子は成長する。彼女は人の優しさに気づく、自分の愚かさを知る。

自分が馬鹿にしている人たちの優しさに気付き、それを心から感謝できることはできるだろうか?
人は他人を受け入れながら成長していくのだと思いました。
凍りのくじら (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 凍りのくじら (講談社ノベルス)より
4061824589
No.70
(5pt)

9章で印象が変わりました

40代男性です。

8章までは、「少女マンガのよう」「普通の恋と、ダメ男。それでは世界は変わらない。どうでもいい。」などと思いながら読みました。
途中で止めようかとさえ思いました。

しかし、9章で一気にペースチェンジ。
すごい緊張感をもちました。

そして、最後、意外な別所の真実。
ほっとさせられるエンディング。

とてもユニークで楽しませてくれた作品だと感じました。
凍りのくじら (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 凍りのくじら (講談社ノベルス)より
4061824589
No.69
(5pt)

9章で印象が変わりました

40代男性です。

8章までは、「少女マンガのよう」「普通の恋と、ダメ男。それでは世界は変わらない。どうでもいい。」などと思いながら読みました。
途中で止めようかとさえ思いました。

しかし、9章で一気にペースチェンジ。
すごい緊張感をもちました。

そして、最後、意外な別所の真実。
ほっとさせられるエンディング。

とてもユニークで楽しませてくれた作品だと感じました。
凍りのくじら (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 凍りのくじら (講談社文庫)より
4062762005
No.68
(4pt)

ドラえもんへの愛が詰まった青春小説

高校生の少女の成長物語。著者がドラえもんが大好きなので、作品を読んでいる間に僕もドラえもんをまた読みたくなってしまった。

ストーリー中、良い感じでドラえもんの道具の話が絡んできて、それゆえに本来であれば少し暗い印象の話なのだが優しさに包まれているような印象を受けた。この著者の作品は、いつも Sukoshi Fukanzen(少し・不完全)だけど、それも魅力のひとつかもしれないと思う。
凍りのくじら (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 凍りのくじら (講談社ノベルス)より
4061824589
No.67
(4pt)

ドラえもんへの愛が詰まった青春小説

高校生の少女の成長物語。著者がドラえもんが大好きなので、作品を読んでいる間に僕もドラえもんをまた読みたくなってしまった。

ストーリー中、良い感じでドラえもんの道具の話が絡んできて、それゆえに本来であれば少し暗い印象の話なのだが優しさに包まれているような印象を受けた。この著者の作品は、いつも Sukoshi Fukanzen(少し・不完全)だけど、それも魅力のひとつかもしれないと思う。
凍りのくじら (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 凍りのくじら (講談社文庫)より
4062762005
No.66
(4pt)

不快感を覚えながらも読むのをやめられないすごさ。

前半の心理描写がとても好きで、ぐいぐい引き込まれた。
ストーリーはかなりシンプルで、あらすじにしちゃえば大して面白くないんだけど、
著者は本当に、「ある感情を書くための道具立て」みたいなところがうまいなぁ、と思う。

僕にとってはどうしても、若尾のことが他人事に思えなくて、
ずっと同族嫌悪に襲われながら読み進めていた。
理帆子の傲慢さにも、強く共感を覚えた。
また、読み返したいと思う。
凍りのくじら (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 凍りのくじら (講談社ノベルス)より
4061824589
No.65
(4pt)

不快感を覚えながらも読むのをやめられないすごさ。

前半の心理描写がとても好きで、ぐいぐい引き込まれた。
ストーリーはかなりシンプルで、あらすじにしちゃえば大して面白くないんだけど、
著者は本当に、「ある感情を書くための道具立て」みたいなところがうまいなぁ、と思う。

僕にとってはどうしても、若尾のことが他人事に思えなくて、
ずっと同族嫌悪に襲われながら読み進めていた。
理帆子の傲慢さにも、強く共感を覚えた。
また、読み返したいと思う。
凍りのくじら (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 凍りのくじら (講談社文庫)より
4062762005
No.64
(4pt)

後半の急転直下の飛揚がすばらしい

最初半分近くまでは、「ブンガク」なつぶやきをずっと読まされていて、少し退屈しました。思春期特有の過剰な自意識のけばだちがとらえる、周囲の不完全、違和感、欺瞞、それへの残酷な洞察力。巧いけれども閉塞感が感じられる、出口なしの文学的饒舌。
 ところが後半、その、真実なのに不快なこの「現実」のざらざらした暗さが、一挙、反転して光の中へ入ってゆくのです。
「別所」という謎の少年との出会いとともに。
 ヒロイン理帆子は何もしていません。ただ「すこし・フラット」な別所と接しているだけで、いままで馬鹿にしたり、見下げたり、批判したりしていた友達や入院中の母親や、いろいろな局面の意味が、なぜ?といいたいほど唐突に変わって、明るく素直になってゆくのです。これはどういうご都合主義なんだろう? といくらか思いつつも、物語が出口に向かっていく加速度にあおられて一気に読みました。

 このまますべてが明るくなって許しと愛に満ちてしまったら、前半と後半は水と油だったと思いますが、元カレ若尾が、どんどん心の迷路に迷いこんでゆくようすが、とてもなまなましく、それは理帆子が自分の鏡を見ているようでもあったかという気がします。なので少しとまどいつつも、前半の筆致と後半は彼によってつなげられていると、読みながら感じました。

 この後半あたりから「ドラえもん」の道具名がつけられた章が生きてきます。「先取り約束機」「ムードもりあげ楽団」「ツーカー錠」・・そしてわざと章題にはなっていないけれど、クライマックスで輝く「テキオー灯」
 びっくりしました、これ、ファンタジーだったのか。水と油だと思っていたら、この真相解明を知ると、ファンタジーにしかできない浮揚力がすとんと心に落ちました。
 理帆子とその世界観が変わっていったのは、「氷にとじこめられたくじら」をすくいあげたのは、前半と同じレベルの「頭での鋭い観察」や「自他の心理のラベリング能力」ではなくて・・・・・

 前半と後半ではっきり折れ曲がった屏風のような作品ですが、旧来のオーソドックスな文学性を、新しい次元へもちあげた(放りあげた)後半はすばらしかったし、またそれは前半の、地に足をつけて現実の微細な違和感を落とさずに書いた部分があってこそ、そこが踏切台になって生きたのだとも思います。
 このふた色を合わせて書くことのできる著者の力量に感服しました。

(「カワイソメダル」「どくさいスイッチ」などドラえもんの道具が、ひとの心理をいかに鋭くつかんでいるかにも驚きました。「ドラえもん」読み返してみたくなりました。)
凍りのくじら (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 凍りのくじら (講談社ノベルス)より
4061824589
No.63
(4pt)

後半の急転直下の飛揚がすばらしい

最初半分近くまでは、「ブンガク」なつぶやきをずっと読まされていて、少し退屈しました。思春期特有の過剰な自意識のけばだちがとらえる、周囲の不完全、違和感、欺瞞、それへの残酷な洞察力。巧いけれども閉塞感が感じられる、出口なしの文学的饒舌。
 ところが後半、その、真実なのに不快なこの「現実」のざらざらした暗さが、一挙、反転して光の中へ入ってゆくのです。
「別所」という謎の少年との出会いとともに。
 ヒロイン理帆子は何もしていません。ただ「すこし・フラット」な別所と接しているだけで、いままで馬鹿にしたり、見下げたり、批判したりしていた友達や入院中の母親や、いろいろな局面の意味が、なぜ?といいたいほど唐突に変わって、明るく素直になってゆくのです。これはどういうご都合主義なんだろう? といくらか思いつつも、物語が出口に向かっていく加速度にあおられて一気に読みました。

 このまますべてが明るくなって許しと愛に満ちてしまったら、前半と後半は水と油だったと思いますが、元カレ若尾が、どんどん心の迷路に迷いこんでゆくようすが、とてもなまなましく、それは理帆子が自分の鏡を見ているようでもあったかという気がします。なので少しとまどいつつも、前半の筆致と後半は彼によってつなげられていると、読みながら感じました。

 この後半あたりから「ドラえもん」の道具名がつけられた章が生きてきます。「先取り約束機」「ムードもりあげ楽団」「ツーカー錠」・・そしてわざと章題にはなっていないけれど、クライマックスで輝く「テキオー灯」
 びっくりしました、これ、ファンタジーだったのか。水と油だと思っていたら、この真相解明を知ると、ファンタジーにしかできない浮揚力がすとんと心に落ちました。
 理帆子とその世界観が変わっていったのは、「氷にとじこめられたくじら」をすくいあげたのは、前半と同じレベルの「頭での鋭い観察」や「自他の心理のラベリング能力」ではなくて・・・・・

 前半と後半ではっきり折れ曲がった屏風のような作品ですが、旧来のオーソドックスな文学性を、新しい次元へもちあげた(放りあげた)後半はすばらしかったし、またそれは前半の、地に足をつけて現実の微細な違和感を落とさずに書いた部分があってこそ、そこが踏切台になって生きたのだとも思います。
 このふた色を合わせて書くことのできる著者の力量に感服しました。

(「カワイソメダル」「どくさいスイッチ」などドラえもんの道具が、ひとの心理をいかに鋭くつかんでいるかにも驚きました。「ドラえもん」読み返してみたくなりました。)
凍りのくじら (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 凍りのくじら (講談社文庫)より
4062762005
No.62
(4pt)

やはり Sukoshi Fushigi (少し・不思議)

理帆子の内面が深く語られているが、世代感の差なのか、なかなか主人公への感情移入が難しく、ちょっとやっかいな小説だと思いながら読み進めていると、別所の登場あたりから、だんだんと整理されて展開が面白くなってくる。作者のドラえもん への深い愛情が背景に感じられるが、物語の終りに向けて、それなくしては成立しないことがよくわかる。最後はやはり Sukoshi Fushigi。 長い小説だが、途中であきらめずに読んで欲しい。


凍りのくじら (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 凍りのくじら (講談社ノベルス)より
4061824589
No.61
(4pt)

やはり Sukoshi Fushigi (少し・不思議)

理帆子の内面が深く語られているが、世代感の差なのか、なかなか主人公への感情移入が難しく、ちょっとやっかいな小説だと思いながら読み進めていると、別所の登場あたりから、だんだんと整理されて展開が面白くなってくる。作者のドラえもん への深い愛情が背景に感じられるが、物語の終りに向けて、それなくしては成立しないことがよくわかる。最後はやはり Sukoshi Fushigi。 長い小説だが、途中であきらめずに読んで欲しい。


凍りのくじら (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 凍りのくじら (講談社文庫)より
4062762005
No.60
(5pt)

うまいなぁ

主人公の女子高生の気持ちが全然理解できないか、多少なりとも共感できるかで
評価の分かれそうな話だなぁと思いました。個人的には、彼女の抱える歪みと淋しさを
「少し・不在」という言い方で表したのはとても上手いと思うし、この年頃の女の子なら
「自分のことかも」と感情移入する人も少なくないのではと感じました。

ただ、この作家の小説では常のことなのですが、主人公の考え方は結構「イタい」です。
そのイタさに著者がどれだけ自覚的なのか、ということがひっかかります。
つまり、主人公も客観的に見たら「イタい」のだという描写があまりなかった。
ただ、これが書かれたのは6年前のことですし、今の辻村さんならそこら辺はもっと上手く書くんじゃないでしょうか。

いつものことながら、伏線の張り方はちょっと不自然で、オチは結構早く分かってしまいます。
でもドラえもんの使い方はとても上手く、「テキオー灯」の使い方には感動してしまいました。
こういうモチーフの使い方がとても上手い人ですね。
凍りのくじら (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 凍りのくじら (講談社ノベルス)より
4061824589
No.59
(5pt)

うまいなぁ

主人公の女子高生の気持ちが全然理解できないか、多少なりとも共感できるかで
評価の分かれそうな話だなぁと思いました。個人的には、彼女の抱える歪みと淋しさを
「少し・不在」という言い方で表したのはとても上手いと思うし、この年頃の女の子なら
「自分のことかも」と感情移入する人も少なくないのではと感じました。

ただ、この作家の小説では常のことなのですが、主人公の考え方は結構「イタい」です。
そのイタさに著者がどれだけ自覚的なのか、ということがひっかかります。
つまり、主人公も客観的に見たら「イタい」のだという描写があまりなかった。
ただ、これが書かれたのは6年前のことですし、今の辻村さんならそこら辺はもっと上手く書くんじゃないでしょうか。

いつものことながら、伏線の張り方はちょっと不自然で、オチは結構早く分かってしまいます。
でもドラえもんの使い方はとても上手く、「テキオー灯」の使い方には感動してしまいました。
こういうモチーフの使い方がとても上手い人ですね。
凍りのくじら (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 凍りのくじら (講談社文庫)より
4062762005
No.58
(5pt)

引き込まれた

けっこう厚い本だったのに、ぐんぐん引き込まれて、先が気になって気になって、一気に読んでしまった。それは、主人公・理帆子に思いっきり感情移入できたから。

 瀬名秀明氏のあとがきには、一般的には感情移入しにくい主人公だろう、という趣旨のことが書いてあったが、私自身が本をよく読む子どもだったこと、周りの子が自分よりも子どもっぽく見えたこと、それは、理帆子のように周囲をバカにしていたのかもしれない。バカにしながらも、そこで「生きている」友達たちがうらやましかったのかも。

 だから、理帆子のこころの動きに共感してしまい、すじそのものもSF(少し不思議)で面白かったけれど、理帆子がどういう成長をしていくのか、というところにも興味を引かれ、あっというまにこの世界に引き込まれた。

 父親の影響でドラえもんが大好きだった理帆子は、周りの人にSF(少し・ナントカ)というあだ名を付けるのが密かな楽しみ。それは、藤子先生がSFとはサイエンスフィクションではなく、少し・不思議と解釈しているから。

 ちょっと引いた目線で周りを眺める理帆子の世界は、このまま淡々と流れていくのかと思いきや、母親は余命幾ばくもなく、元カレとの関係も微妙なほつれが生じていく。理帆子の前に現れた、一つ上の学年のあきら。口の聞けない小学生郁也。これらの人物を巻き込んで物語は急展開する。そうなると、もうじっくりと読んでいる暇などなく、私も一緒になって、理帆子ともがいた。頭ではわかっていてもこんな風に行動してしまう気持ちもわからないでもないから、よけい感情移入してしまったかな。

 後半の母から夫へ、理帆子へあてた”ラブレター”は涙なしには読めなかった。勝手にじわじわと涙があふれてきて・・・そのときは、理帆子の立場ではなく、妻・母として読んでいたのだと思う。

 辻村作品を初めて読んだのだが、これまでにない世界観に圧倒された。他の作品もぜひ読んでみたい。
凍りのくじら (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 凍りのくじら (講談社ノベルス)より
4061824589
No.57
(5pt)

引き込まれた

けっこう厚い本だったのに、ぐんぐん引き込まれて、先が気になって気になって、一気に読んでしまった。それは、主人公・理帆子に思いっきり感情移入できたから。

 瀬名秀明氏のあとがきには、一般的には感情移入しにくい主人公だろう、という趣旨のことが書いてあったが、私自身が本をよく読む子どもだったこと、周りの子が自分よりも子どもっぽく見えたこと、それは、理帆子のように周囲をバカにしていたのかもしれない。バカにしながらも、そこで「生きている」友達たちがうらやましかったのかも。

 だから、理帆子のこころの動きに共感してしまい、すじそのものもSF(少し不思議)で面白かったけれど、理帆子がどういう成長をしていくのか、というところにも興味を引かれ、あっというまにこの世界に引き込まれた。

 父親の影響でドラえもんが大好きだった理帆子は、周りの人にSF(少し・ナントカ)というあだ名を付けるのが密かな楽しみ。それは、藤子先生がSFとはサイエンスフィクションではなく、少し・不思議と解釈しているから。

 ちょっと引いた目線で周りを眺める理帆子の世界は、このまま淡々と流れていくのかと思いきや、母親は余命幾ばくもなく、元カレとの関係も微妙なほつれが生じていく。理帆子の前に現れた、一つ上の学年のあきら。口の聞けない小学生郁也。これらの人物を巻き込んで物語は急展開する。そうなると、もうじっくりと読んでいる暇などなく、私も一緒になって、理帆子ともがいた。頭ではわかっていてもこんな風に行動してしまう気持ちもわからないでもないから、よけい感情移入してしまったかな。

 後半の母から夫へ、理帆子へあてた”ラブレター”は涙なしには読めなかった。勝手にじわじわと涙があふれてきて・・・そのときは、理帆子の立場ではなく、妻・母として読んでいたのだと思う。

 辻村作品を初めて読んだのだが、これまでにない世界観に圧倒された。他の作品もぜひ読んでみたい。
凍りのくじら (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 凍りのくじら (講談社文庫)より
4062762005
No.56
(1pt)

男性には向かないと思う

主人公の成長を描いた作品、だと思います。
だと思う、というのは、主人公は何も努力をしておらず、単に夢のような願望を夢のような存在と周囲の善人が都合よく叶えてくれただけ、としか思えなかったためです。終わり方が美しいので騙されそうになりますが。

主人公の計算高さ、「好きになったのだから仕方ない」みたいな言い訳をしながら元彼と会い続けるところなどは読んでいて不快感しかなかったですが、女性たちの叱責を恐れずに言うなら非常に女性的ではあります。主人公が遭遇することになるトラブルも、私には自業自得としか思えませんでしたが、計算高い性格や恋による盲目(といってもこの主人公のはこれもひどく身勝手で偉そうなものですが)に理解を示せる人なら、あるいは共感できるのかもしれません。

文章はところどころ美しいし、部分的に切り取れば名言と言える文もありますが、都合のよい話の中で読むとこれもまた「計算」にしか思えません。
ご都合主義な展開を見ると興ざめする方には、本作はまずお勧めできません。
凍りのくじら (講談社ノベルス) Amazon書評・レビュー: 凍りのくじら (講談社ノベルス)より
4061824589