煉獄の時
評判
煉獄の時の評価:
4.17/5点 レビュー 6件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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煉獄の時の評価:
4.17/5点 レビュー 6件。 B ランク
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さて、本作の時代設定は1970年代末。処女作の『バイバイ、エンジェル』からほとんど変わっていない。ファンにはご存じの通り、矢吹駆シリーズは殺人事件の単純な謎解きでなく、物語の展開に高名な哲学者たちとの思想的対決をも織り交ぜているところに特色があるのだが、『バイバイ、エンジェル』が発表された1979年ならいざ知らず、既に半世紀近くを過ぎた現在ならどうだろう。この『煉獄の時』にはジャン=ポール・サルトルとシモーヌ・ド・ボーヴォワールに擬えた人物が登場している。彼らの名を覚えていて、懐かしく思うのは還暦過ぎの面々ばかりではないか? つまり、今日の時流からは完全に外れているのだ。彼らに限らず、哲学者や思想家といった存在自体、最早知識人として敬意を持って迎えられる時代ではなかろう。となると、矢吹駆シリーズもまた、時流から外れていると言えまいか?
小さな活字で2段組、800頁に及ぶ大部な作品で、長さだけでも『哲学者の密室』以上だ。で、戦時中と現代とで時を越えて似たような事件が重なる辺りの設定も『哲学者の密室』に近い。正直なところ、本作を読み進めるのにはかなり苦労した。そもそもボーヴォワールともあろう者が紛失した手紙の探索を、凄腕 “探偵” の評判を得ているにしろ、その時点で一面識もない学生風情(矢吹駆とナディア・モガール)に依頼するところからして現実離れしている。駄作とまで言わないまでも、なかなか他人に薦めにくい代物ではあるだろう