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一刀斎夢録



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【この小説が収録されている参考書籍】
一刀斎夢録 上
一刀斎夢録 下 (文春文庫 あ 39-13)

一刀斎夢録の評価: 4.29/5点 レビュー 121件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.29pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全121件 101~120 6/7ページ
No.21:
(5pt)

大好きな作者!

大好きな作者の本で状態が綺麗で早い配送で手元に届くのでうれしいです!
一刀斎夢録 下 (文春文庫 あ 39-13)Amazon書評・レビュー:一刀斎夢録 下 (文春文庫 あ 39-13)より
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No.20:
(5pt)

鬼籍を眺めるに

しょっぱなから「講談師、見てきたような嘘をつき」と作中で語るのが実にいい。
このような極上の読後感を味わうと、次の作品を渇望し、生きる希望の一つにもなると思うが、言い過ぎか?

さても斉藤一の人生観、そして死生観をみるに、死後は皆がそちらに往き、化けてでることはない様子。
昔の人ー特に侍はあの世で又会えるのが常識であり、それぐらいの救いはあって当然なのだろう。

志津川で津波にさらわれた同類でもある旧友は、その前の月に石巻の本屋で会ったときにこの本と前2作を薦めてくれた。不肖者ゆえ先ほどようやく全巻読み終えた。

そちらでもアマゾンくらいはのぞけるだろうに。
命と共に家屋敷コレクション宝物をすべて波にもっていかれては天晴れとしか言いようがない友に、この本との出会わせてくれたことの感謝を。

取り合えずば著者の続編をそちらで伝えられるよう、斉藤一のように長生きしようか。
一刀斎夢録 上Amazon書評・レビュー:一刀斎夢録 上より
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No.19:
(5pt)

浅田新撰組三部作の棹尾を飾る力作

「壬生義士伝」では吉村貫一郎の眼を通して、「輪違屋糸里」では糸里の眼を通して、幕末・新撰組を語った浅田次郎が、こんどは明治の代に生き残った、斉藤一が、元号が大正に代わった直後に近衛師団の剣士に向かって語るという形式で、幕末と明治の戦いを描いた物語。

全二作で鍛えられた浅田自叙節は冴えに、冴えて、物語は時空を自由に行き交い、今まで語られなかった秘話が、見てきたかのごとく明かされる。なんとも、練達の作品とうなるほかはない。全二作に涙した読者は、ぜひ読んでいただきたい。

徳川幕府終焉から明治建国、さらに明治天皇崩御と大正の御世の始まりと、近代国家への道を歩む日本の歴史を、凄絶に駆け抜けた、一剣士=最後の侍が語る物語は、あまりに重い。前二作で重要な事件はほぼ、語りつくされてしまっているので、竜馬暗殺と戊辰戦争のエピソードを除くて、やや落穂拾いになってしまうが、それを補ってあまりある作者の力量には驚嘆である。

ただ、本作を先に読むことはお勧めできない。全二作、せめて「義士」を読んでからでないと楽しめないと思う。
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No.18:
(2pt)

天満屋騒動は!?

フィクション大いに結構。冒頭から坂本龍馬暗殺実行犯が斎藤であった。これも結構。ただし、それならばなぜ作者は龍馬暗殺に対する報復である「天満屋騒動」に一切触れないのか?龍馬を始末したのが斎藤とするならばひねりのきいた面白い「天満屋騒動」が描けたのではないか。史実は斎藤率いる新選組が酒宴で盛り上がったところを海援隊に踏み込まれ、自身部下に命を救われたという最もカッコ悪い斎藤一。作者の筆力をもってしても物語の展開上、このエピソードはいかんともし難く、避けたいということだろうか。
一刀斎夢録 上Amazon書評・レビュー:一刀斎夢録 上より
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No.17:
(2pt)

残念な内容

これまで、浅田次郎は好きな作家の一人だった。勿論、「壬生義士伝」も「輪違屋糸里」も楽しく拝読したし、その筋書きにワクワクしたものである。
振り返って本書である。
斎藤一というテロリスト(異論はあるにしても)を語り手に、新選組、戊辰戦争、文明開化、西南戦争を筋立てしていくのだが、そこに武士としての矜持や死生観を盛り込んでいる。プロットとしては歴史小説が大好きな自分には魅力的ではある。
しかし、書かれている内容は首を捻らざるをえない。
だらだらと続く語りは纏まりがなく、モノローグの限界を感じざるを得ない。本来は幕末3部作の掉尾を飾るはずが、どうにも消化不良を感じる内容になってしまっている。
本当に残念な作品だ。
一刀斎夢録 下 (文春文庫 あ 39-13)Amazon書評・レビュー:一刀斎夢録 下 (文春文庫 あ 39-13)より
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No.16:
(4pt)

西南の役

ノッポさん似の写真でしか見たことのない斉藤一が語る新撰組。
最後の最後まで作りモノ(嘘)っぽさは否定できない。
どれだけ史実に正確な描写があるだろう。
ただし、西南の役を描いた小説を読むのは初めてだったので、興味深かった。
あの大傑作『壬生義士伝』同様、子供を最後に持ってきてお涙ちょうだい、は浅田次郎の悪いクセだ。
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No.15:
(2pt)

冗長で独りよがりな作品

浅田次郎の作品は「終わらざる夏」に続いて二作目だが、「終わらざる夏」の大半が登場人物が手紙で自分のことを語っていたように、本書では元新撰組の斉藤一が近衛師団の梶原中尉に対して、自己の遍歴を語るスタイルとなっている。

従って、新撰組時代では無口であったとされる斉藤も冗舌に語らざるを得ないわけだが、余りに冗長すぎて違和感を感じた。「終わらざる夏」と同様にそもそも設定に無理があるのだ。

設定に無理があっても話が面白ければそれはそれでいいのだが、本書で取り上げられた新撰組は鳥羽伏見の戦い以降の負け戦と西南戦争が中心で、それはそれでこのようなことがあったのかと興味深く読めたのだが、いかんせんストーリーに盛り上がりがない。最後の逸話も「聞かせれば剣を捨てるほどの殆(あやう)い話」と勿体ぶった前振りがあった割にはさほどでもなかった。そして最後に梶原と榊の試合のシーンも、中途半端に終わるのではないかと危惧していた通りの終わり方で拍子抜け。このような終わらせ方を余韻があってよいと思う人もいるかも知れないが、自分に言わせれば一番難しい部分を描かない作家の手抜きか力量のなさとしか思えない。

登場人物に魅力を感じないのも「終わらざる夏」と同様。斉藤一を始めとするキャラクターに共感することができなかった。浅田次郎の小説はこれで2冊目だが、長い割には読んだ後の充実感に欠ける作品であり、二度と読みたいとは思わない一方で、無性に司馬遼太郎の「燃えよ剣」を読み直したくなった。
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No.14:
(3pt)

語るハジメちゃん

ノッポさん似の写真でしか見たことのない斉藤一が語る新撰組。坂本竜馬を斬った話から始まる時点で興味が半減した。
歴史の勉強も兼ねて読もうと思っていたのだが、真実は20%ほどではないだろうか。
完全なる「読み物」としかいまは捉えていない。
あの大傑作『壬生義士伝』を書いた作者にしては、進展がまだるっこくて、嘘っぽい。
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No.13:
(4pt)

幕末版浅田史観。

新撰組三部作の最終章というより、幕末に対する浅田次郎の思い入れが十二分に詰まった歴史小説。新撰組三番隊長の斎藤一を語り手に、幕末に躍動した人物たちの思い入れを熱く語ってくれます。とくに土方歳三と西郷隆盛に対する語り部分は、面白い。土方に関しては、司馬遼太郎の名作「燃えよ剣」に負けないくらい、かっこよい歳三を描いてくれています。西郷に関しては、幕末、明治に活躍した歴史上の人物たちとは別格の評価、西南戦争を起こしたくだりは、開国に向かう日本に対し、最後の愛国者的な日本人の立場で、外国の手から守るべく戦を行ったとでも解釈したらよいのでしょうか。果たして西郷さんが、もし今でも生きていたなら、TPPには賛成か、反対でしょうか?それと西郷隆盛をここまで書くなら、やはり対峙する大久保利通に対して、もっと踏み込んだ考えを書いてくれても良かったと思う。幕末から明治の激動期を上下巻二作に全て描くことは当然、困難なのですが、好敵手たる大久保の評価を、もっと読んでみたかった。
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No.12:
(5pt)

構想力に脱帽

思えば、ここで語られた死生観は一連の浅田新撰組に共通するものだと思いました。
「殺すは易く、生かすは難い」
数々の登場人物はこの観念に従い行動し、散っていくからこそ多くの人の感動を誘ったのかもしれません。
そして、この観念は次代を担う者に受け継がれてゆく。

読み終わって、どこかすがすがしい気持ちになりました。

壬生義士伝から親しんだ浅田新撰組ですが、もう一度読み返してみようと思いました。
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No.11:
(5pt)

浅田次郎よもっと新選組を書いてくれ。

これまでも私は新選組のなかでは最も斎藤一が贔屓だったのだけど、『一刀斉夢録』を読み、新選組結成から西南の役まで15年、闘争また闘争を生きた斎藤一が改めて好きになった。その斎藤が語る甲州鎮撫に赴く土方が、日野宿で盲目の兄為次郎と再会するシーンには泣けた。NHK大河でやった時、土方を山本耕史、為次郎を土方役者NO.1の栗塚旭が演じていて(年齢差もあって)これはあんまりだなあと思ったのだけど、この場面のイメージにはぴったりで驚きました。冷酷、荒ぶるばかりではない人間土方歳三が描かれていて、やっぱり浅田次郎は土方歳三が好きと見ました。ただ征韓論〜西南の役が西郷、大久保の出来レースだったというのは俄かには肯んじる訳にはいかないけど。まあ陰謀史観の類だね。剣の残心のようなラストも良く、大好きな新選組の“見てきたような浅田講談”と云ってしまえばそれ迄ですが、満足の一冊。三部作で終わらずこれからも新選組ものを書いて下さい、浅田さん。
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No.10:
(5pt)

独特の世界観に夢中

壬生義士伝にも登場する吉村貫一郎に感銘を受けた者ですが、
再び物語で出会えたことに、単純に懐かしい思いがとまりません。

浅田先生の特徴となりつつありますが、各作品がちょっとずつ邂逅し、
物語全体に奥行きをもたせる手法にすっかり浸りました。

斉藤一の独特の語り口調の中に垣間見られる人情深さもよい感じで、
浅田新撰組の世界に引き込まれました。

下巻が楽しみです。
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No.9:
(3pt)

ストーリーでない部分で楽しんだ

新撰組をはじめ、幕末の有名人たちが登場するので
面白く読めますが、読後感がいまいちでした。
主人公(斉藤)に共感できないからでしょうね。

人間=糞袋、という人間観をもつ斉藤ですが、
親の愛情を十分に受けていないことが語られるにつれて、
やはり親子関係が人としての土台を作るのだというメッセージを受け取りました。

幕末の様子が細かく描かれている点は、とても興味深かったです。
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No.8:
(2pt)

人斬りが人の命と命の絆の尊厳を

既に「上巻」のレビューとして書いてしまったが、浅田 次郎が、大衆小説作家であることは充分理解しているものヽ、この程度の死生観で、世のinnocent な読者を煙にまくのは、ここまでにして欲しい。左利きを生かして「竜馬」までも殺しながら(竜馬斬りと西郷決起の筋書読みが今回の売りか)生き残り、逃げ残った人斬り哲学をこうまでグダグダ喋られるのを読むにはかなりの辛抱が要った。書く必然性がある作品はもっと良い意味の緊迫感がある。代わりに、黒鉄 ヒロシの「新撰組」(PHP版)396頁を是非一見されることをお勧めする。たった文庫本の1頁で斉藤 一のご面相から、裏表のある不気味なキャラまで書き込まれている。本来、無思想集団の一員に筋の通った史観を語らせようとすると、何と持って回った切れの悪い語り口になるものか(語り手の視点という利刃を与えても)、改めて痛感せざるを得ない。もっとも、浅田ファンは宝塚ファンと一緒で、男役のダンディズムに白目を剥いて興奮する傾向があるが、それも又結構なことではあろう。
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No.7:
(5pt)

初めて知った幕末動乱期

上下2巻とも一気に読みました。
幕末動乱期には幾多の心に響く歴史が書かれていますが作家浅田次郎氏の筆誦にはただただ驚くばかりです。
学校の教材で教えない人間模様が切実に書かれており、今の世の中にも反映されるほどの貴重なアドバイスが
たくさん出ていることに今の政治家にも是非読んでもらいたい歴史物語です。
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No.6:
(4pt)

夢の続き

当方、浅田氏の『壬生義士伝』で号泣した者です。

本作は、第三者に対し、新選組の元隊士、関係者が当時を語ると言う『壬生義士伝』と同様の
構図で物語が進行します。ただし、本作の語り手は、あの斎藤一のみ。

『壬生義士伝』の斎藤に惚れ込んだ当方としては、「あのイメージが崩れてはいまいか」と
気を揉んで手に取った作品ですが、杞憂でした。読了しましたが、あの斎藤を掘り下げ尽く
した感じです。

 上下巻、あの斎藤が語る、語る。夢中で読んだ、あの『壬生義士伝』の脇道に入り込んだ
様な至福。ただし、個人差があるとは思いますが、読後感は『壬生義士伝』のそれとはかな
り違います。私個人は『壬生義士伝』で流した涙とは全く別種の感慨を抱きました。その点、
お覚悟を。

とまれ「傑作『壬生義士伝』の、あの斎藤の話をもっと聞きたい」と言う方は、是非。
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No.5:
(4pt)

史実をもとにしたフィクション

内容は、主人公の陸軍梶原中尉が、元新撰組の斎藤一に過去に起こった出来事を聞くというものである。そのため、斎藤一の語り口調で物語が展開する。従って過去の出来事は斎藤一目線で語られるためもう一人の主人公は斎藤一ともいえる。
新撰組時代から西南戦争までの出来事を時系列ごとではなく時を前後して語られる。新撰組隊士の市村鉄之助との交流がメインとなっている。
作品内で起こる出来事はほぼ史実通りだが、あくまでも浅田次郎が考えたフィクションである。
はじめのほうで語られる龍馬暗殺は、斎藤一自身が実行犯であると書かれているが、これは全くのフィクションで実際は、作品内でも語られている通り、京都見廻り組の犯行であることはもはや通説となっている。実行犯は、今井信郎若しくは、小太刀の達人である桂早之介とされている。
また、西南戦争は大久保と西郷2人の出来レースであったというのも無理がある。市村鉄之助は西南戦争当時にはすでに死亡しているという事が通説とすると最後の斎藤一の語りももちろんフィクションということになる。
斎藤一の語り口は魅力的で、ストーリーも面白いので新撰組ファンには楽しめると思うが、あくまでもフィクションであると理解したうえで読むことをお勧めする。
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No.4:
(5pt)

畏るべし、斎藤一。畏るべし、浅田次郎。

今まで読んだ浅田さんの長篇歴史小説の中で、最高傑作か。

まず、反省から。
自分にとって、『壬生義士伝』は良作だが、続く『輪違屋糸里』は筆が達者すぎて
むしろ佳作以上ではなかった。その結果、やはり、この作家はもっと大きな舞台
(中国大陸とか、国境とか、海の上とか……)で、虚実をもっと超えて描いた方が、
その骨太のエンターテイナーとしての魅力が充分に発揮されると、漠然と思っていた。
だから、新選組に取材した第3作目、つまり本作に、あまり期待していなかった。

それでも本作を開いてしまったのは、今回も、新選組幹部でただ一人、近代日本の
転生に身を置いた実在の剣士・斎藤一が登場、という設定に惹かれてしまったから。
しかも、今回は『壬生義士伝』以上に、斎藤の境遇と、聞き手である陸軍士官との
対比など、残余の陰と、新興の光のコントラストが惹きつけた。

では、結果は?……ただただ、ひれ伏すのみ。
何に?……もちろん、「士道」の本質、「帯剣」の本質に。

そして、それらを見据えた上で、幕末維新と明治草創の逸話を見事に
とり込み、新選組隊士としての「行蔵」と、先輩後輩、同士同輩の意味を、
かくも凄絶に問いかけた浅田文学の風姿に、深くこうべを垂れざるを得ない。
『壬生義士伝』ほど肉親の情愛描写で涙腺を攻撃しない分、いっそう敬服。

『壬生義士伝』のときも、語り口のあまりの巧みさにはまって、読後は、
史上の有名人物をみな、浅田さんの造型に沿って見てしまいがちだった。
本作では、いっそう斎藤一がつぶさに対した(…ように浅田さんが描いた)
彼らの容姿・声音が圧倒的。したがって、今後しばらくは、本作における
(斎藤自身をはじめとする)人物のイメージを思い浮かべずに彼らを
読み解くのは、かなりむずかしくなってしまうかも知れない。

さらに本作では、過去の人物たちの迫力だけではなく、下巻でさらに深まる
(読者もそこに対峙させられる)近代国家の軋みに、畏怖させられる。
作品の背後からまぎれもなく聞こえてくる、軍靴の響きの現実感。

そして読了後も、あたかも無人の一室に無造作に置かれた「抜き身」に
相対するような緊張感が、しばらくたっても、消えない。
この読後感は、浅田さんの筆致にひたすら浸り、「とことん泣きたい」
という方にとってはどうか分かりませんが、自分は、充分満足。
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No.3:
(3pt)

「浅田節」全開! 読者を魅了する一冊。(2冊だけど…)

新選組の斉藤一が明治天皇の御大葬後、休暇中の近衛連隊の
士官に語る半生の記。
「天切り松」も「マンチュリアン」も、語りの上手さは著者の
得意とするところ。
 本書も「浅田節」が存分に発揮されている。

 斉藤一は大正4年に亡くなっているそうなので、本書の時代背景
からすると、この語りの3年後に没することになる。
 時代考証はきちんとしていて当然として、この時代を描く作家は
その解釈がそれぞれにあって面白い。

 たとえば本書では、斉藤が乃木将軍の殉死について、夫人とともに
逝ったことを非難している。
 静子夫人を残さなければ後の始末がまづかろうよ、と語っている
部分だが、わたしには違和感がある。
 斉藤は、父が金で御家人の株を買った家に生まれた。
 根っからの武士ではない。
 だから、自分についてくる若者を「どこででも野垂れ死ね」と
突き放したりもする。
「死」について「後の始末などどうでも良い」と考える方が、斉藤
らしいのではないか?

 死後の始末を考えるのは武士の思想だろう。
 二人の息子を戦死で失い、夫妻が殉死したことで「乃木伯爵家」は
断絶した。
 静子夫人を連れて行ったところに、乃木の死生観があらわれている
のではないか…?
 それもまた、一つの武士としての「死後の始末」だろう。
 仮に斉藤が武士の立場で評するならば、それが理解できないはずはない。

 明治維新の主役たちはほとんどが早くに亡くなっている。
 その故に、早くから小説やら舞台に描かれるようになったが、
もちろん同時代の人は、まだたくさん生き残っていた。
 上野の西郷さんの銅像ができたとき、夫人が「うちの人はこんな
人(顔)じゃなかった」とか「こんな格好で外を歩く人ではなかった」
とか言った、という話は有名だ。

 それぞれに伝説があり、われわれは知らず知らず頭の中で人物像を
形作っている。
 そのような先入観が、歴史と小説の間という近代物の鑑賞を難しく
させているともいえる。
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No.2:
(5pt)

ツンデレオヤジ録

壬生義士伝でも語り手の一人として登場した斎藤一が今度は唯一の語り手として語りに語る。
時系列的には壬生義士伝で子母澤寛がインタビューを重ねる前のことのようで、永倉がまだ生きているし、斎藤も体を壊していない。

壬生義士伝でも、敬愛する吉村貫一郎相手に素直になれないツンデレっぷりを散々示してくれた斎藤は、本作においても全く同様で、これはもう、凄い。充分に萌えられます。そしてその素直になれない斎藤が小さな幸福を素直に受け止められるようになる理由が最後に描かれますが、これはもう壮絶です。

ところで作中各所から感じられるのは作者浅田次郎の土方への思い入れ。これは壬生義士伝でも輪違屋糸里でもそうでしたが、本作ではさらに強烈。土方が郷里を訪ねるシーンなどちょっとくどすぎるのではないかという程。素直になれないという意味では、素直に土方を正面から書こうとしない浅田次郎も同じなのでは、とちょっと思います。
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