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鉄の門



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鉄の門の評価: 3.86/5点 レビュー 14件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.86pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全14件 1~14 1/1ページ
No.14:
(3pt)

(2024-20冊目)「人はほかの人間の何から何まで知ってるわけじゃない」(75頁)

.
 カナダのトロントと思しき邸宅に暮らすルシールは、医師アンドルーの後妻だ。16年前に先妻のミルドレッドが惨殺されたあとに結婚して依頼、先妻の子マーティンとポリー、そしてアンドルーの妹のイーディスとともに、使用人をもつ豊かな暮らしをしてきた。
 ある日、みすぼらしい男がルシール宛てに小箱を持ってやってくる。小箱を開けた後、ルシールは激しく動揺し、家を出てしまうのだった……。
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 カナダ出身のミステリ作家マーガレット・ミラーが1945年に発表した『鉄の門』の、松本恵子訳版『 鉄の門 』(1953年)、青木久恵訳版『 鉄の門 』(1977年)に次ぐ、3度目の邦訳版です。翻訳は大変読みやすいもので、わずか2日で読了しました。

 怪異の死を遂げた先妻。そしてその妻の影に怯えて徐々に精神に異常をきたしていく後妻。この構図は、『ジェーン・エア』や『レベッカ』にも似て、同じような禍々しい雰囲気を醸しています。
 第二部「狐」は延々と精神科病棟の患者たちが描写されますので、外界との接触を断たれ、登場人物たちの正気を失って異常行動に走る姿が続く様子に、相当強い閉塞感を味わわせられることになります。

 ただ、この長編小説は明快な推理によって複雑な謎を解きほぐしていくという類のミステリーではありません。それゆえに、事件解決のカタルシスは得られません。
 家族の抱える秘密や闇を暴いていくという展開は、夫でハードボイルド作家のロス・マクドナルドと同じです。家族といえども「人はほかの人間の何から何まで知ってるわけじゃないという」(75頁)事実を悲しいまでに描いた夫婦作家だったのだなという思いを強くしました

 それにしても気になったのは、精神科病院と薬物過剰接種とがこの小説の鍵ともいえる仕掛けである点です。作者マーガレット・ミラーと夫ロス・マクドナルドには1950年に生まれたリンダという娘がいました。リンダは若い頃から情緒不安定の気味があり、長じて精神科に入院し、最後は薬物の過剰摂取で命を落としているのです。小説『鉄の門』は1945年の話なので1970年に亡くなった娘の人生が影を落としたとは言えませんが、その一方で作者ミラーにとっては奇しくも予言の書となってしまったようで、とても痛ましく感じられます。

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*73頁:助詞の誤り
✘「テーブルの上にコートを帽子を放り投げると」
◯「テーブルの上にコートと帽子を放り投げると」

*170頁:衍字
✘「心の内をすべてを打ち明ける」
◯「心の内をすべて打ち明ける」

.
鉄の門 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:鉄の門 (創元推理文庫)より
4488247105
No.13:
(4pt)

空虚な犯人像に慄然とする

後年の名作、例えば『まるで天使のような』などに比べれば、構成の歪さや真相に至るまでの展開の拙速さなど、粗が目立つが、精神病院の冷え冷えとした描写やヒロインを虜にする恐怖心理の醸成はやはり流石。そして明かされる魂を失ったような空虚な犯人像は発表から半世紀以上経った今もなお強いアクチャリティを保っている。
鉄の門 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:鉄の門 (創元推理文庫)より
4488247105
No.12:
(3pt)

簡単には読める

翻訳に違和感あり。
面白いと思ったが 、好みではない。
鉄の門 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:鉄の門 (創元推理文庫)より
4488247105
No.11:
(3pt)

普通

受け取った荷物の謎からもっとワクワクする物語になるかと期待したが、実に普通であった。
鉄の門 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:鉄の門 (創元推理文庫)より
4488247105
No.10:
(5pt)

珍しい読後感(ぼんやりとネタばれあり)

解決部というか真相パートがこれほど心に響いた作品はあまりありません。
論理の鮮やかさにしびれるとか構想の大胆さに驚くというサプライズ感ではなく、戸惑いの波紋が広がる感覚。
さりげなく張られた伏線と真相が綺麗に繋がっているのに対し、真相の奥は屈折と矛盾が満ち考えさせられます。
鉄の門 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:鉄の門 (創元推理文庫)より
4488247105
No.9:
(5pt)

新訳は素晴らしい!

新訳がとても良かったです。旧訳では訳されていないところがあり、新訳で訳されたことにより、ミラーの原作の重みを遺憾なくはっきしています。
鉄の門 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:鉄の門 (創元推理文庫)より
4488247105
No.8:
(5pt)

『ドグラ・マグラ』は無限ループだが、この心理スリラアの結末は?

帯にて「大乱歩が〝心理的純探偵小説の曙光〟と感嘆した」と煽ってあるも、
巻末解説の中で、乱歩がどういう感想を述べたか、その詳細へはノー・タッチ。
初めて本作にふれるにあたり、それを知りたい方は『海外探偵小説作家と作品』を読むといい。
手っ取り早い現行本なら、光文社文庫版江戸川乱歩全集/第30巻『わが夢と真実』。
そこでマーガレット・ミラーの事は夫のロス・マクドナルドことケネス・ミラーと並んで言及されているから。


ちょっとした古書価格も付いていたサイコ・スリラア『鉄の門』の新訳。発表は1945年。
怪しい人物から医者アンドルー・モローの現在の妻・ルシールへ渡された小包の箱に入っていたのは、
動かし難い証拠となるような〝それ〟でなければならぬ必然性が無い、あるシンボリックなもので、
謎の解決にしても理論・物理上言い逃れのできない局面へ犯人を追い込む〝本格〟の流儀でもない。
単純なサスペンスじゃないんで詳しくは書けないのだが。

そもそも第二部の閉じ込められた病獄を意味する『鉄の門』をタイトルにして、どうなの?
そんな声さえ上がりそうだが、最後まで読めばこの物語の主眼が見えてくる。

前提としてのアンドルー・モローの先妻ミルドレッド十六年前の死の事情を途中まで明かさなかったり、
第二部での『ドグラマグラ』状態に陥った、誰も信用できない錯乱の描写だったり、
作者の筆は捨て難い妙味があり、同じパターンで何作も繰り返すと厭きるかもしれないけれど、
陰鬱なわりには、読む者を物語の中にズルズル引きずりこむ魔力がある。

なによりもマーガレット・ミラーの、4÷2=2とは単純に割り切れない女のもつ複雑な心情や残酷さ、
後妻として生さぬ仲を埋めることができないルシール対家族達の疑念、微妙な立場の描写が実にリアルだった。


長い間つきあって、週末会う時に昼は聖女のような笑顔、夜は娼婦のような媚態を見せていたのに、
突然何のきっかけも無く「別れたい」とか言い出す。それが女という生き物の〝性〟(サガ)よな。
鉄の門 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:鉄の門 (創元推理文庫)より
4488247105
No.7:
(5pt)

不気味で美しい幻視の風景

以前ハヤカワミステリ文庫で読んで、今回新訳での再読。『狙った獣』『殺す風』『まるで天使のような』など、数あるミラーの傑作のなかでも、筆者がもっとも好きな作品。

物語の最初と最後に描きだされた二つの風景だけでも、その鮮烈な美しさに酩酊させられる。冒頭、白雪のカンバスのなかに、遠近法を無視して立ち現れた血まみれの立像。掉尾に広がる、個の精神の鏡面に映りだした、世界の終末をおもわせる光景。不条理でグロテスクでありながら幻想的で美しい、ダリやエルンスト、マグリットなどシュールレアリズムの絵画を見るような二つの画像が、初めて読んだ時から、ズッと脳裏に強烈に焼きついている。

送りつけられてきた過去を秘めた箱、家庭という箱、鉄の門にかこわれた精神病院という箱、自己という箱…。それらの内と外、表と裏、虚と実のアンバランスな相克のなかで引き裂かれてゆく人格。絶望の悲鳴や悽愴の慟哭をにじませた個と世界の崩壊が、不吉の絵画にうつされて、静かに筆をかさねられてゆく。恐ろしくも忌まわしくもありながら、ミラーによってイメージ化されたその幻視の風景のなんと美しいことか…。
鉄の門 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:鉄の門 (創元推理文庫)より
4488247105
No.6:
(3pt)

「家庭の悲劇」、「何もない世界」

私がミステリを読み始めた頃、マーガレット・ミラーの名前は、「ロス・マクドナルドの配偶者」としてまず記憶されました。また、一時期だけかもしれませんが、夫よりも高い評価を得ていたため、彼女が書いた旧作を手に入れようとしましたが、古本屋を歩いても見つかることがなかった。よって、初めて読んだミラーは、「これよりさき怪物領域(1976年)」だったと思います。その後、遡って何冊かのマーガレット・ミラーを読むことになりました。「狙った獣」、「殺す風」そして本書。
 二回目の新訳によって「鉄の門 "The Iron Gate"」(マーガレット・ミラー 創元推理文庫)を再読しました。

 舞台はトロント近郊?ルシールは16年前に謎の死を遂げたミルドレッドの夫であり婦人科医師でもあるアンドルーと再婚しています。ルシールは、アンドルー、その妹・イーディス、前妻ルシールの二人の子供、使用人と共に暮らしています。そして、ある冬の日に、謎の男から小箱を受け取ったルシールは失踪します。箱の中身はいったい何?彼女はなぜいなくなったのか?
 スリラーですから、書けるのはここまでだと思います。再読にあたっては、物語がペンウッド病院に移行したあたりから様々なシーンを思い起こすことになりました。導入部は見事だと思います。次から次へと登場する人物を書き分けながら、まるで良くできた舞台劇のようにその人となり、感情、さりげない「過去」を散りばめてみせます。1945年に書かれた本ですから、第二次世界大戦の「影」もまたこの小説に重くのしかかっています。「鉄の門」の中、病院に入院している「精神」を患った患者たちもまた、フロイディズムの影響、その深い洞察力を示しながら描写され、心理ミステリのマスターと呼ばれる所以なのだと思います。「謎解き」についても語ることはできませんが、美しい「詩」のような幕切れを持っています。

 鍵は、妹・イーディスと同居している婦人科医師・アンドルーに内在するエディプス・コンプレックスにあり、そのことがこの物語を「遠心分離機」のようにブン回していますね。そして、思うことはマーガレット・ミラーとその夫でもあるロス・マクドナルドは、終生に渡ってその作品世界の中、夫婦揃って「家庭の悲劇」を熟成させながら描き続けていたことにあります。あくまでも私見ですが、このマーガレット・ミラーが描いた「何もない世界」に比べると、ロス・マクドナルドの「ブルー・ハンマー」、青い"心臓の鼓動"ですらがとても懐かしい。
鉄の門 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:鉄の門 (創元推理文庫)より
4488247105
No.5:
(4pt)

誰にでもある心の暗部を見つめたサスペンス

普通の家庭を営んでいた主婦にある日奇妙な箱が届けられ・・・というお話。

一番最初に本書の前訳を読んだ際は、届けられた箱の中に何が入っていたかが強烈なサスペンスとなって最後まで一気に読んだ記憶がありますが、今回の新訳では内容を知っての読書だった為若干サスペンスの凝集度が落ちたのも真実でした(昔、ミラーについての評論を書いた評論家の方があっさりネタを割って書いておりましたが怒られなかったのでしょうか)。

それでもミラー流の透き通る様な文章で読ませるので、今回も一日で読み終わるくらい割と早く最後まで読めました。全体のテンションも禍々しく、さすがミラーと思わせます。

箱の中に何が入っているかが判ってからは人によっては落胆したり、驚いたりと千差万別があると思うので、評価はご自身で実際に読んで確かめてください。

これが書かれた頃はブロックの「サイコ」やブラウンの「3、1、2とノックせよ」以前だったせいか、登場人物をサイコ・スリラーっぽいモンスター扱いはしておりませんが、誰の中にも精神的に破綻する可能性があるという事を小説として提示したかった部分もあるのかも。最高傑作とは言えないと思いますが、出来栄えはかなり良いと思いました。

誰の心にもある暗部を見つめたサスペンス。機会があったら是非。

蛇足ですが、トルーマン・カポーティがミラーの大ファンだったとか。
鉄の門 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:鉄の門 (創元推理文庫)より
4488247105
No.4:
(4pt)

閉ざされた心

自らも若い頃精神を患ったせいか、異常心理物を得意とするM.ミラーがその本領を発揮した代表作。
ヒロインは婦人科医の後妻で、前妻は惨殺されている。ヒロインはその問題に不安を感じると共に、前妻の子供達ともうまくやって行けない悩みを抱えている。ある日、ヒロインの元に贈り主不明の品が届く。その品を見た事をキッカケにヒロインは精神の均衡を崩し、とうとう精神病院に入院する。この精神病院が題名の「鉄の門」そのものであるが、「鉄の門」は閉ざされた心をも意味しており、その歪んだ心が生み出す狂気が本作の主題である。
ヒロインは身の危険を感じてワザと精神病院に入れられるように仕向けたように書かれているが、その虚実は分からない。一見平凡に見える家族の誰が狂気を孕んでいるかも分からない。こうした日常性に潜む人間の心の闇を炙り出す事が本作の狙いであろう。
身近な環境の中に狂気を孕む人間がいるという恐怖を緊迫感溢れる展開で描いたM.ミラーの会心作。
鉄の門 ハヤカワ・ミステリ文庫Amazon書評・レビュー:鉄の門 ハヤカワ・ミステリ文庫より
4150722021
No.3:
(4pt)

閉ざされた心

自らも若い頃精神を患ったせいか、異常心理物を得意とするM.ミラーがその本領を発揮した代表作。

ヒロインは婦人科医の後妻で、前妻は惨殺されている。ヒロインはその問題に不安を感じると共に、前妻の子供達ともうまくやって行けない悩みを抱えている。ある日、ヒロインの元に贈り主不明の品が届く。その品を見た事をキッカケにヒロインは精神の均衡を崩し、とうとう精神病院に入院する。この精神病院が題名の「鉄の門」そのものであるが、「鉄の門」は閉ざされた心をも意味しており、その歪んだ心が生み出す狂気が本作の主題である。

ヒロインは身の危険を感じてワザと精神病院に入れられるように仕向けたように書かれているが、その虚実は分からない。一見平凡に見える家族の誰が狂気を孕んでいるかも分からない。こうした日常性に潜む人間の心の闇を炙り出す事が本作の狙いであろう。

身近な環境の中に狂気を孕む人間がいるという恐怖を緊迫感溢れる展開で描いたM.ミラーの会心作。
鉄の門 (1977年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:鉄の門 (1977年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
B000J8U2HE
No.2:
(3pt)

全編を貫く閉塞感。

温厚な性格の夫を持ち、何不自由なく暮らしているルシール。でも彼女は後妻であり、夫の妹であるイーディスとはいい関係を保っているが、先妻の残した二人の子供マーティンとポリーは成人した今にいたるまで一度も彼女になついたことはない。ルシール自身も未だに16年前に変死した先妻ミルドレッドの夢を見るほど不安定な精神状態だった。
そんなある日、ルシールのもとに見知らぬ男から小さな小箱が届けられる。その中身を見たルシールは悲鳴を上げ、忽然と姿を消してしまい・・・・・。
という感じの話なのですが、話がどういう風に落ち着くのかまったく読めない。読了したいまとなってはミステリ的な満足はあまりないと思うんですが、心理的な薄ら寒さはなかなかのものでした。さすがに時代を感じさせる作りであるものの、キラリと光るものがある。濃い霧の中を手探りで進むような閉塞感に始終とらわれている感じがしました。
鉄の門 (1977年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:鉄の門 (1977年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
B000J8U2HE
No.1:
(3pt)

全編を貫く閉塞感。

温厚な性格の夫を持ち、何不自由なく暮らしているルシール。でも彼女は後妻であり、夫の妹であるイーディスとはいい関係を保っているが、先妻の残した二人の子供マーティンとポリーは成人した今にいたるまで一度も彼女になついたことはない。ルシール自身も未だに16年前に変死した先妻ミルドレッドの夢を見るほど不安定な精神状態だった。そんなある日、ルシールのもとに見知らぬ男から小さな小箱が届けられる。その中身を見たルシールは悲鳴を上げ、忽然と姿を消してしまい・・・・・。という感じの話なのですが、話がどういう風に落ち着くのかまったく読めない。読了したいまとなってはミステリ的な満足はあまりないと思うんですが、心理的な薄ら寒さはなかなかのものでした。さすがに時代を感じさせる作りであるものの、キラリと光るものがある。濃い霧の中を手探りで進むような閉塞感に始終とらわれている感じがしました。
鉄の門 ハヤカワ・ミステリ文庫Amazon書評・レビュー:鉄の門 ハヤカワ・ミステリ文庫より
4150722021

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