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(やまいだれ)の歌
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(やまいだれ)の歌の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.69pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全26件 1~20 1/2ページ
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「根が眠れるジゴロ」とか読者サービスが盛りだくさんなのもさることながら、終盤の宴会の描き方がさすが芥川賞作家といった塩梅である。心地よい落語を聴いているかのような、読書体験だった。それにしても、惜しい人を亡くしてしまった。合掌。。。 | ||||
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前向きに共感できた。びっくりするくらい。つらい話であるが、つらいのは主人公の胸中を思ってのことである。その主人公の救いになったのが小説だった。19歳。作家の原点となる話。心情の細かな揺れ動きの描写は相変わらず、唸るほどうまい。 酒席で失敗し、職場でハブられていたことを偶然知る。「あ、そういうことだったのか」という悔しさ。西村作品で初めて、負けるな、と強く思った。クソ野郎ども、という、口を極めたいつもの罵倒にも「もっと言ってやれ」と思った。 私だって、頭の中では何回も何回もぶん殴ってる奴は何人もいる。もちろん、それを実行に移すかどうかは圧倒的に大きな違いがあって、多くの人はいろんな何かで心のガスを抜く。著者は私小説を見つけたのだ。 古書店で偶然見つけた、田中英光を初めて読んだときの、いても立ってもいられなくなって思わず部屋から飛び出すシーン。茫然自失になるほどの作品に出会った瞬間!興奮して意味もなく叫びたくなりますよね。 あとがきは、「苦役列車」の映画を監督した山下敦弘。「西村さんの残して作品には1ミリもメッセージ性がない」という部分だけは納得できない。メッセージ性は、読み取る側の判断である。作り手が意図してなくとも読み取ることはある。少なくとも私はこの作品から感じた。 | ||||
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少々マンネリ感はあるものの、デビューよりリスペクトする作家であり、50代前半での急逝は只々残念で悲しい。 | ||||
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全てが実話かどうかわかりませんが、傍からみれば『もっと器用に生きればいいのに…』と思います。調子にのりすぎて失敗するあたりが、(大人になった)磯野カツオとかさくらまる子みたいです。でも、不器用なところに共感できる部分もあり面白いです。 | ||||
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簡単に言えば、引っ越しをしてバイト先を見つけたものの、酒と女で人間関係をこじらせるお話。期間的には約3ヶ月。とにかく貫多の心理描写をねちこく続けることで「うわあ、これは絶対本当にあったことだ」と思わせ、このどうしようもない主人公がどうしようもない結末に向かうのがわかりながら、最後まで読ませてしまう情念の濃さといったらない。 田中英光・藤沢清三を知った経緯が描かれ、他の作品との縦糸がまた一つつながったところで訃報となった。 解説は著者逝去後に「苦役列車」の映画監督が記したもので、世辞がないぶん切なくて面白かった。実際に接したら、たまらない人物であったことがよくわかった。「あとがき」対「解説」では「解説」の勝ちか。 | ||||
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西村賢太さん。 初体験だったのですが、 最初のページを開き、 数行を読んで、んん? と、 驚いて本をとじ、 表紙やら奥付やら、 著者のプロフィールやら、 あちこちをウロウロと見て、 んんんん?? と、 首を傾げてしまいました。 昭和初期の小説のような文体。 やたら漢字だらけで、 知らん言葉なのか、 知っている言葉だけど、 漢字表記が古いのか、 あるいはあて字なのか。 なにこれ? と、 たまに、思い出したように、 何度も不意打ちをされます。 (『辞書ひけ』『本読め』という、 文学マウント的な印象ですw) なにこれ!? と、 脳ミソのギアを、 昔の作家を読む覚悟へと、 カチリときりかえ、一見、 現代の小説とは思えない、 この本を読み進めました。 私小説って、 あんまり読んだことないですが、 ぼくは高野秀行さんが好きで、 彼の著作に、 『ワセダ三畳青春記』 というのがあり、 あれはそーいえば、 ノンフィクションというより、 私小説だったなと思い出し、 あ、これ、 好きなやつかもと、 どんどん夢中になりました。 いつもトイレや移動時間、 病院などの待ち時間にだけ、 読書をするので、 多くても一日、 200ページ以上読むことは、 まず、ありません。 この本も、そんなには、 急いで読んでないのですが、 本をとじると、 すぐに本に呼ばれているような、 ほら読めよと、 とじた本に引っ張られるような、 変な気分になりまして、 やたらと一日に何度も、 トイレにこもった初日の、 翌日にはルールを破り、 部屋でも本を手に取り、 気付くとまた読んでました。 (部屋では本より映画が観たい) なんて丁寧で、 そしてひねくれた小説なのか。 これはなんだ、中国語か? と言いたくなる、 見たことも聞いたこともない、 謎の漢字表記や、 これはなんだ、時代劇か? と言いたくなるような、 ふるくさい地の文の言い回し。 なのに、 会話は現代に近く、 著者はラジオ好きみたいなので、 どちらかといえば、 ラジオコントの台本のような、 小説っぽさと、 口語っぽさが入り交じる、 すごく実在感のある、 ていうか、全員ほんとに、 実在してるのでしょうが、 そのためか、 リアルな迫力があります。 なんてことない普通の場面でも、 事実という重みが加わると、 ぐぐぐと迫ってきます。 この小説の主人公は、 自慰行為をします。 それも、文学的な、 生きている主人公を描くため、 などではなく、 ふつうに、欲望のままに、 せずにおれないこととして、 自慰こ……ていうか、 オナニーをします。 これ、意外と重要でして。 男子にオナニーが必要だと、 知識として知っているのと、 あの哀しさ、虚しさを、 実体験しているのとは、 全然ちがうんですよね。 長い長い年月、 モテなかった人のオナニーは、 あれはもう、 下品を極めすぎていて、 逆に神聖です。 これは、 愛をたっぷりうけて、 恋をすんなりえられた人や、 女性には決して理解し得ない、 性欲のある男子だった経験が、 あるかないかだけの、 シンプルかつ、 絶対的な問題でして。 どれだけ知識があっても、 どれほど想像力があっても、 そうじゃない人にはマジで、 絶対に本物は描けません。 オナニーなんて女もするよとか、 モテても、彼女いてもするよとか、 そーゆーのは、 全然関係ないのです。 女性の月経を、 男性が絶対に理解できないのと、 まったく同等なのです。 モテない時間が長く、 愛を知らず、 暴力の恐怖や痛みだけはわかる。 そんな世代の、 哀しい男性だけが知る、 あの七転八倒ものの懊悩。 この本の主人公はちょっと、 ひねくれすぎではありますが、 でも、刺さる人には、 オナニーの寂しさが本物なだけで、 深く深く刺さると思います。 極度に男性向けの本ですね。 | ||||
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北町貫多19歳。 時間軸で言うと『苦役列車』で冷凍倉庫での日雇い仕事を辞め、心機一転横浜に居地を改めるというラストから繋がり、新たな居室を求め不動産屋を探す場面から始まる本作。 従って『苦役列車』から北町貫多ものを読み始めた方が次に何を読もうかと思ったら、本作は最適かもしれない(もちろん時間軸を遡り17歳の北町貫多を描く傑作長編『蠕動で渉れ、汚泥の川を』を読むもよし)。 今回見つけたアルバイトは造園会社の肉体労働。 肉体的にきつくともアットホームな雰囲気のある職場に、意外と自分にあっているのではないかと、いたって前向き。 仕事から帰ったら、古本屋で3冊100円で購入した文庫本に没頭、夜11時になると、ラジオに耳を傾けながら、宝焼酎をちびちびするのが貫多にとって至福の時。 そんな職場に事務員として貫多と同年代の女性が働きだし、彼女に対する貫多の片思いが増大していくにつれ、ああ、またしても貫多、暴発への道へまっしぐらか、とある意味予想とおり。 しかし、貫多の面白いところは、性犯罪で逮捕された父親への反発から父親が嗜まなかった酒を大量に飲んで自身を改造し、日雇いで稼いだ金は酒・たばこ・風俗で使い果たして家賃は踏み倒し、短気と開き直りを随所で発揮するものの、それ以外の金の使い道が古本屋で本を購入して読むことだというところ。 自業自得とは言うものの、信用していた職場の人間から疎まれていたことを知り、自暴自棄になりかけた彼を救ったのが、田中英光の著作。 後悔と自己嫌悪、やり場のない焦躁感に襲われながらも、古本屋で見つけた田中英光の私小説を一晩中読み続けることで、「救われた思いと、何か一縷の望みかとも感ぜられる光明を、生まれてこのかたようやく見つけたとの興奮で、他のことは一切合切が、もうどうでも良いとの心境になっていた」という貫多。 このあたり、貫多という人間の面白みが感じられます。 ところで、西村賢太の小説は、いずれもタイトルが斬新というか、巧いタイトルをつけるなあと思っていましたが、本書の中で、北町貫多が「題名の上手い小説にハズレはないとの経験則を持っている」との文章があり、なるほど、それで西村賢太の小説のタイトルもユニークなんだ、と納得。 | ||||
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本書『やまいだれの歌』の単行本が発行されたのは2014年。今年2022年の本日にようやっと文庫が出ました。嬉しくて2冊買いました。単行本持ってるのに。 本書『やまいだれの歌』の良さはなんといっても西村文学の小説スタイルが田中英光からきていることが詳しく描かれていることで、トータルでみても内容は西村作品の中でベスト3には入るのではないかと個人的に思います。 それはともかくとして、解説を書かれているのが映画監督の山下敦弘さんというのは納得できないです。 山下さんは『苦役列車』の監督をされた方ですが、西村さんはこの映画の出来に納得できずに公然と酷評し、それに対して山下さんがキレたという経緯があります。睨み合いの関係にある方に解説を依頼するとは。しかもそれを引き受ける山下さんもどうなんでしょうか。 納得できないんですけど、それでも一通り山下さんの解説に目を通しました。やっぱりダメでした。自ら好んで本を読まないと書いている通り、本当に小説に限らず本を読まないんだろうなとわかって。 新潮社から出る最後の西村さんの作品であろうに、どうして山下さんなんでしょうか?できれば藤野可織さんか、もしくはすでに解説を書かれている友川カズキさんが個人的にはよかったなあと。このおふたりは西村文学を深いところで理解されている方々だと思うので。愛をもって西村文学を読み、西村さんの作品に限らず文学にすがりながらどうにか生きている、そんな方に書いてほしかった。無念です。 | ||||
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デビュー当時注目してしばらくは読みましたが、あまりに題材が三畳なので最近は読んでいませんでした。。 本作も主人公は同じく北町貫多。 自分の若いころを見ているようで何とも言えません。 ただこの作者は決して世の良心や良識に繕うことなく、言い訳もしないし、視点もぶれません。 主人公はスタイリストを自負しますが、ここまで書ける人はいないと思います。 長編という事ですがスラスラ読めます。 そしてやはり藤澤清造の前に田中英光全集を読んでいたのかと納得しました。 | ||||
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19歳になった貫多は横浜へ移住し、造園業者で働いています。 職場の事務の女の子への片恋ではお得意のポジティブシンキングを発揮し、酒に溺れ、 ほんっとーに相変わらず勘違いのクソ野郎です。明らかに女性向けとは言えない作品! でも、言葉のチョイスと文章のうまさに引きつけられて読んじゃうんですよね。 西村さんは他の人が使わないようなおもしろい言葉を引っ張り出してくる天才です。 「うわー、こんな言葉使うんだ!w」とそのセンスにはゾクゾクしちゃいます。 私小説ということですが、どこが真実で、どこが脚色なのかを知りたいなぁ。 酒や女での失敗、「台所の流しで用をたす」などのサイテー行為・・・ここまで書ける度胸に感服。 最終的にはこの職場でもお約束通りに負の方向へ進んでいく貫多ですが、仕事納めの日の出来事はさすがにかわいそう。 こんなクズ野郎でも「かわいそう」と同情できるその憎めなさ・・・貫多のそういうとこが読者にはたまらないのです。 このシリーズ、ずっとずっと読み続けたいです。 | ||||
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以前からの西村作品のファンで、著作は概ね読んでいる者です。 前半はまあいつもの西村節ですが、「根が〇〇にできている貫多」の繰り返しはあからさまな受け狙いで、バラエティ番組調でちょっと品がありません。受け狙いもいつもはもっと抑制が利いたクスっと可笑しい感じなんですが。 後半、主人公貫多が飲み会で暴走した後に周りが行った仕打ち、逡巡しながらも再び職場に出勤するくだり、結局職場をクビになって「文学」に自分を重ねて耽溺してしまうところのリアルさは、今までの西村作品にない展開を感じました。コント調の話なんですが、何事もやりすぎてしまって世間と折り合えない人間の悲哀がリアルに出ていて、非常に身につまされました。 | ||||
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根が屈折し酒乱な貫多の愚行に救われる。自意識過剰な彼が恋の錯覚から真の救いを自覚するまで。 | ||||
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激烈に面白い。時折り吹いてしまうので電車じゃ読めない。 イタさが兎に角リアル。 一文一文に高い価値を感じる。読んでしまうのが惜しいほど。 次作が楽しみ。 | ||||
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短編のいわゆる秋恵モノは、どこか週刊誌的な興味から読んでいた部分もありました。 こちらの「やまいだれの歌」も、西村氏の恋バナや職場での恥ずかしい振る舞いを軸として書かれているようですが、 恋は惨敗、仕事も失う、そこで出会った友達(?)も失う中で、文学に一筋の光明を見出す過程と描写が素晴らしいです。 今までの週刊誌的な興味ではなく、文学にすがるしかない人間の哀しさやそこから生まれてくる希望や強さに関して大いに興味を持ちました。 もし、続編があるなら、貫太が今後ますますどういう風に文学にのめりこんでいったのかを読みたいです。 西村賢太の小説は、春は青いバスにのって・二度はゆけぬ町の地図・どうで死ぬ身の一踊りなど、タイトルにセンスを感じるものが多数あるのですが、それはやはり彼の「読育」の結果、彼が狙ってしていたことだとこの小説を読んで再確認できとても満足しています。 また、彼の「読育」のことも書かれてあって、芥川賞作家誕生(というのはミーハーなので、藤澤清造没後弟子の誕生としておきたい)の過程が読めて楽しかったです。 文体や内容の多くは、吹き出したりこっちが冷や汗をかいたりして、いつも通りといえばいつも通りの西村作品です。 私は、根が〇〇にできているシリーズが好きで、今度はどんな性根を書くんだろうかなと今後の作品からも目が離せません。この本の中で一番笑ったのは、根が眠れるジゴロですね。 彼がどこまで自分を把握してどう受け止めて咀嚼して表現しているのかを知るために、彼を取り巻く状況と彼が自身を表現した文章を対比させて読むと、とてもおもしろいです。私が西村氏ならば、咀嚼しているときに吐き戻してしまってとても書けませんが、それをあんなにすごい文章で表現できるというのが、やっぱり、最高にイカしますね!! あきえさんのモデルになった人は、彼がわかれたあとに芥川賞をとったので自分が逃げたことを後悔してるんじゃないかなとふと思ったときもあったのですが、彼の私小説を読めば読むほど、それは100%ないだろうな。もうかかわりたくもないだとうなぁと思います。 今後の西村作品からも、目が離せません。次回作も楽しみにしております! | ||||
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前作があまりに駄作だったのでしばらく西村断ちをしていた。この男は裕福になって堕落してしまったもうダメだ、と思っていた。 こいつに印税収入など与えて裕福になるといい作品を書けなくなるから、古書以外は絶対に買わないと心に誓っていた。 ところが古書相場が強気で、なかなか1000円を切らない。ようやく1000円を切ったから読んでやった次第だ。 社長以下素朴でやさしい人たちばかりの造園会社で次々と彼らを傷つけ、ついに居場所を失う男の描写は息が詰まります。 自業自得で孤立無援となった彼の心を支えた田中英光にも興味が湧きます。いつもの西村が甦りました。次作も期待します。 | ||||
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僕はこの作品は好きですね。 トゲが無くなった的な評価の低いコメントもありますが、最近の小説家気取りの女流作家の作品は1ページも読める代物ではなく、西村賢太の作品はあっという間に読み切れる、毎ページ毎ページ共感出来る楽しい内容であり、その独特な言葉使いは大好きです。 これはデビュー当時からまったく色あせない魅力であると私は思う。 | ||||
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内向的で普段は大人しいが、プライドが高く内心周りを馬鹿にしていて、酒が入ると地が出る肉体労働の若い男の失敗談(失恋談)というところ。ちょっと西村ファンの人以外は厳しいんじゃないかと思う。 私自身は10年来の熱心ではない読者というところで、「けがれなき・・」をたまたま文芸誌で読んで、芥川賞受賞作や他短編をいくらか読んでというところ。初の長編小説ということで手に取ってみたが、プロットや話のスケール(時間軸、登場人物)を考えるなら、長めの中短篇小説ってところだと思う。章ごとに簡単にまとめると、 1.2.新天地での家探し、家族のことの回想 3.新しい職場 4.帰宅後や休日の過ごし方 5.職場の人間関係、事務員の女性の登場 ここまで言わば導入部で4割 6.事務員に対する恋愛感情などの自問自答、生活の変化(その日暮らしから、布団など耐久消費財の購入など) 7.若手だけの飲み会で失敗 8.休日、田中英光との出会い 9.10.11.忘年会での一幕。田中英光への没頭 12.離職。また新天地へ と、作家(本)との出会いを除けば、プロット的には苦役列車とそう変わらない。むしろ、長くなった分、個人的には今までこの作家にあまり感じたことのない自己愛臭がちょっと鼻についた。 基本的には、昭和後期の金のない独身男性の暮らしを露悪的に描いてみせた、ってところは他の作品と変わりはないし、家探しで2章も費やしてるあたり、面白く読めるのはファンの人だけじゃないかと思う。この作家が未読なら、他の作品を薦めます。 | ||||
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恥の多さでは人に負けない変な自負のあった私が、モノが違う・・・と思わせられると同時に現時人生最強の心の援軍になっている。 まさに今作の貫多にとっての英光が私には西村賢太。はっきり言って人間失格なのである。が、全体を綴るオーセンティックな文体とピンポイントで射抜くダサモダンな氏独特の表現は更に研ぎ澄まされた感があり、故に社会不適格者によるただの面白自虐エピソードに成り下がらない。 傑作であります。 | ||||
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いつもの、アア、マタヤッチマッッタ系の作品かと思いきや、19歳の貫多の純情恋愛(不埒な妄想もあるが)の顛末である。読み進むごとに、何かやらかしてしまうんじゃないかとハラハラドキドキするのは、この作者のものを読む時の常態となってしまった。そういう意味ではスリルとサスペンス物の新しいジャンルとなっているのでは、と思わせる。あらすじは諸氏が書いておられるので省くが、この表紙絵を西村氏はえらく気に入っている様子だが、内容とかけ離れていると感じるのは私だけだろうか?ともあれ西村ファンを裏切らないおもしろさにかわりはない。(もちろん、アア、マタヤッチマッタ系である。) | ||||
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氏の大ファンだが流石に「秋恵もの」には食傷気味だっただけに、いわゆる「秋恵以前」のヤング貫多を描いた本作のヤング貫多は非常に新鮮、氏作品にしては長編もその長さを全く感じさせず貫多のキレのいい節回しに度々ニヤリとさせられた。キレるまでのタメにも注目。作品の出来とは関係ないし著者がそのテに興味が無いのは承知しているが、電子化もお願いしたい。(貫多の気に入ったフレーズをブックマークしたい。。) 2015/6/27追記 その後、電子化されたのでkindle版で繰り返し読んでいる。氏の著書、電子版は随筆も含め全て買っているが、本作品の復読率は「苦役」「小銭」に匹敵。氏の作品の中では白眉だと思う。あとまだ電子化されていない「暗渠の宿」もいい加減電子化してほしいのだが... | ||||
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