■スポンサードリンク


どうで死ぬ身の一踊り



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
どうで死ぬ身の一踊り
どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)

どうで死ぬ身の一踊りの評価: 4.08/5点 レビュー 53件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.08pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全53件 21~40 2/3ページ
No.33:
(5pt)

ダメ男の悲哀と処世術

いまどき、というよりも何時の世にもお見かけしたり、
時々お話をきくような、ダメ男ぶりをこつこつと名文で書きあげる、
大体似たようなテーマだから読んでいるうちに展開がわかるし、
暗いお話なのだがどこか笑いを誘う。
結局またまたアマゾンに注文してしまう。

しかしマニア様というか、藤澤清造なる作家の墓標まで探し当て、遂には入手してしまう経緯、
このくらい打ち込める作家の情念と執念がないと、読んで楽しくなる作品にはならないのでしょう。
故藤澤氏の霊力というか、アイアンクロ―レベルのオカルトパワーなんでしょうかねぇ・・
作家にとどまらず読者までいつの間にか魔力にからめとられてしまいそうです。
ついつい「根津権現裏」まで注文させられちゃいました。
どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)Amazon書評・レビュー:どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)より
4041076471
No.32:
(5pt)

デビュー作から凄かった西村賢太

西村賢太の本、これで6冊目か。西村賢太には中毒性がある。
所収されている3篇の最初に置かれている「墓前生活」は同人誌に発表された著者のデビュー作であるらしいのだが、「山門をくぐると・・・」で始まる文章は、小谷野敦氏が既に2007年にレビューしてある通り、実に端正できれいな日本語だ。
初めて能登、七尾の藤澤清造の墓所を訪ねる話だが、寺の副住職の母堂の喋る七尾弁の活写など実に小気味よいもので、見事というしかない。
そのまま次の「どうで死ぬ身の一踊り」に繋がり、一続きに読めるのが親切な配置だ。
最初からここまでの筆力があったのだから、2011年「苦役列車」での芥川賞受賞はむしろ遅すぎたくらいだと思うし、「解説」(参考文献という扱い)で久世光彦氏が『この「どうで死ぬ身の一踊り」以外の作品に次期芥川賞が与えられたら世の中は真っ暗闇だ』という文(2006年)に納得する。

解説といえばこの新潮文庫版には3本も解説があって、久世光彦、坪内祐三、稲垣潤一の三氏の文が読める。
何故稲垣潤一なのかは西村賢太を読んでいる人には分かるはず。

同棲生活、DVの記述については他の方のレビューにおまかせします。
どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)Amazon書評・レビュー:どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)より
4041076471
No.31:
(3pt)

下種っぷりが良かったです

西村氏の下種ぶりが非常に面白かったです。
良し悪しはわかりませんが・・・
泥臭い作品だと思います。

高尚なことを考えながら下種な行動をしたり
また下種なことを考えながら、高尚な行いをする

身勝手な理由で女を殴る。

最低最悪ですが(笑)

人間臭い作品でした
どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)Amazon書評・レビュー:どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)より
4041076471
No.30:
(3pt)

デビュー作だけに、

藤澤清造への執着は執拗で、貫多と秋恵もの前夜でもあるため作中トラブルは後に「豚の鮮血」にリサイクルされる。
どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)Amazon書評・レビュー:どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)より
4041076471
No.29:
(4pt)

「苦役列車」よりもこの作品で芥川賞を貰うべきでした。審査員の責任ではありますが・・・・・。

作者は一見、葛西善蔵。嘉村磯多の系統に属するような作品を多く描いていますが、実際はユーモア感覚を重んじる面がある方だと察しています。ですから登場人物自身が気付かぬ内に、「滑稽」とも言える行動を当たり前のように取ってしまう描写が多く見うけられまます。傾向としてはむしろ尾崎一雄氏の書かれたものを意識されているのではないかと察するのですが・・・・・。そうだとしたら、誠に嬉しいことです。

 表題作を始め、この作品群には作者のそんな傾向がよく現れていると感心します。従って読んでいる方は読みやすく、文章の流れに無理なく乗っていけます。根底にユーモア感覚があるからではないかと、自分は考えます。
 「独りよがりでない私小説」の書ける数少ない作家であると思います。かってテレビのバラエティ番組に出ている姿を見ました。気分転換も結構でしょうが、それならば風俗へ行く方がよほど糧になります。乱作・駄作になることを恐れずに創作に専念して欲しいものです。
自分が最も期待している作家のひとりなのですから。
どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)Amazon書評・レビュー:どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)より
4041076471
No.28:
(1pt)

くだらない

何が「どうで死ぬ身の一踊り」なのか理解不能。一人の作家を信奉し、自らを弟子というわりに、その作家に関する記述は何もない。いい加減な小説と思う。
どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)Amazon書評・レビュー:どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)より
4041076471
No.27:
(5pt)

読み出しは?

読み出しはなんだかめんどくさい話とおもい読み始めましたが、徐々に赤裸々な男と女のズルがとても解り易く表現され始め途中コミカルあり、臨場感あり、泥臭さあり、そして人間のだらしなさがとてもおもしろく表現されていました。西村賢太をもう一冊読もうとおもいます。
どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)Amazon書評・レビュー:どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)より
4041076471
No.26:
(4pt)

藤澤清造のリターンマッチ

単純にドキュメンタリーとして読んだ。
 平成2年7月の墓標の改修によって、自由の身となって木の墓標から解き放たれた清造さんと、執念のつるさんの魂が、同時期に横浜で泥酔し燦然と金玉を晒していた男(西村氏)を発見し、清造さんの無念を晴らすのにちょうどお誂え向きだと、この男を利用していると思えてくる。この男が最初に「根津権現裏」を読んだのもこの時期のようだ。そして、この男の芥川賞も清造の平成の世でのリターンマッチの一ステップに過ぎないとも。
 それにしても、死んだ人間(清造)は決して裏切らないが、生きている人間(女)とは、情熱を失いもし、裏切られもする。純愛ものでよくヒロインが若くして病気で死ぬのもそういうことだが、そういうヒーローを発見・獲得できた西村氏のほうもラッキーだと思う。
どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)Amazon書評・レビュー:どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)より
4041076471
No.25:
(5pt)

西村賢太という名の野獣

以前新聞で目にした記事だ。小説家をタイプ別に分類し、終着地を定めない〈未完成型〉を角田光代。一貫した世界観を持ち続ける〈完成型〉の筆頭が泣く子

も黙る村上春樹という図式だ。その例に頼るなら、作品世界において同じ、(いや、こちらは文字通りの)野獣性を存分に披露する西村賢太は後者に当たる。

デビュー作の『墓前生活』は、西村にとって重要な藤澤清造の墓所へ到着したところから始まる。この小説の巧さを修飾することは坪内祐三の的確な解説に屋

上屋を架すだけなので控えるが、その代わりに恥辱作家にちなんで白状すると、解説者(言わせて)の私自身が、【展墓】なぞいう語句に躓くほど無知なのだ

から笑わせる。私にとって西村賢太の小説は未知をちりばめた博物館であり、目を逸らさずに狭い館内を歩くことは疲れるのだということだけは、彼の全ての

本を読んだ生の声として届けられるだろう。さて、書いてある一大事、(住職から清造の塔婆を預かり受ける)を境に彼の作品は、『苦役列車』を含めた〈清

造前〉と〈清造後〉に分かれる。タイトル作の『どうで死ぬ身の一踊り』はまさしく私、(多くは貫多)と霊魂の男所帯(といっていいのかどうか)に女(ま

たは秋恵)を加えた著者にとっては不足の少ない全能感に満ちた作品の一つだ。この小説において触れておかねばならない箇所は、清造の墓標建立に関しての

記述である。私はそれを、既に『墓前生活』で読んだ。一字一句は違えど同じ内容に、「なんと書けることの少ない小説家だろう」と驚いたが、この思いがマ

ンネリズムを起因させ、それを良しとしない読者の慊らなさを惹起させている。しかし、この特徴を完全に否定することは、自分の行動に対する棚上げだと思う

。貫多や私の人生と瓜二つだ、とまでは言わないが、路傍にほき捨てられる主人公の言辞に震えるほどの共感を覚えた私には、むしろそれが作者の魅力に見

える。『一夜』のラストに見た迫力(戻ってくることはない女を捜しに泣きながら夜道を徘徊する)が一助となり、結句全ての本を入手したことは先に述べ

たか。知らない語句や文士に出会う度に辞書を繰り、書き付けるという大儀な読書をほぼ全作に至りやらしめた作家である。私が考える西村の評価が五つ星

(百点の意味を込めて)以外あり得ないことは、覚えたての言葉を使いたがる小学生染みた駄文に、最後までお付き合い下さったあなたなら分かるだろう。
どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)Amazon書評・レビュー:どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)より
4041076471
No.24:
(5pt)

本物の無頼派。DV男性が身内にいる人にも是非

本当の無頼派作家が今の時代にいたのかと圧倒された。
硬質な文章が美しい。
私小説ではあるが、決してその辺の温室育ちの作家には書けない鋭さを持った「私」のある小説。
傾倒する作家への墓参りとそれに重ねる自分の人生が巧みで引き込まれた。
ただし、そのあたりの上手さについては他の方が上手に書かれているので割愛して...
私がすごいなともう一つ思ったのはそのDV具合。
なんせうちの身内そっくりの怒り方をする。今までその理由が全く分からず
ただの(?)発達障害だろうと思ってたのだけど、どうもそんなものだけではない複雑な、あるいは特殊な心理からくることが分かった。
私にしてみれば急に怒り出す、意味もなく大声を上げる、かと思えば私への愛情は深くあるんだと泣いたりする。
全く理解しがたいので、距離を置いて常に客観的に相手を俯瞰することにしているのだが。
なんだかひとごとと思えなくなって、息が苦しくなりながらも一気に読ませていただきました。
この心理を本当にここまで上手に表現されていたらもう圧倒されますよ。
それだけでもこの作者の力量が分かります。
どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)Amazon書評・レビュー:どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)より
4041076471
No.23:
(5pt)

内容は言うまでもなく素晴らしい

2009年の講談社版を買うよりもこちらの新潮文庫の方がお勧めです。

この新潮文庫版は講談社版の解説(坪内祐三)が収録されているのに加えて、解説が稲垣潤一。参考文献として久世光彦の文章もあり、充実。

値段も講談社版よりも少し安いです。
どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)Amazon書評・レビュー:どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)より
4041076471
No.22:
(5pt)

やっぱり新潮文庫

この「どうで死ぬ身の一踊り」は講談社文庫の方を持っていたが、今回新潮文庫に登場と云うことで、迷いはしたが結局購入してしまった。
しかしやっぱり新潮文庫は読みやすい。本体の手軽さ、文字の大きさや文の間隔も良くて、講談社文庫の方よりも内容が頭に入ってくる感じ。
講談社文庫の方からの坪内さんの解説もあり、新たに久世光彦さんの参考文献と稲垣潤一さんの解説が加わっていて得した気分にもなれたから星五つ。
どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)Amazon書評・レビュー:どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)より
4041076471
No.21:
(5pt)

生きてる人間の生臭さが、ただよいまくる

主人公:北町寛多は、(この本では単に私だが)著者:西村賢太の単純変換だそうです。ということで
、著者の私事をデフォルメ脚色したまさしく私小説。本書は、著者一連の寛多シリーズ?で、寛多40前後?。「どうで死ぬ身の一踊り」は第134回芥川賞候補、第19回三島由紀夫賞候補。一夜は第32回川端康成文学賞候補。哀愁の秋江編が盛り上がります。外では藤澤趣味への傾倒、家ではDVの両輪がフル回転。藤澤のお墓と暮らそう編と、藤澤趣味本格驀進DV編、俺の蟹食えねぇのかDV編。どれも主人公寛多がうれしい喜んだ頭にきたむかついたしょぼん殴る蹴る暴言土下座でまたDVってあくまで自己中心、やりたいほうだいの心情がネチネチネチネチ昭和初期風文体で描かれる。どうで死ぬ身の人踊りは芥川賞候補。秋恵編の最後「一夜」の秋恵の描写が秀逸。秋恵の心情は相変わらずないが、その言動描写は彼女が別れを決意していることが察せられ、寛多の気づかぬDVぶりに別の緊張感が高まる。このDVまずくね?時効なのかな?フィクション?これで逮捕されたらすっげー。
相変わらずストーリーではなく、著者独自の世界観を堪能するというか、これマジっすか?サイテーっスッゲーなどといいつつ、夢を求めましょうなどと言う文部省推薦の薄っぺらさでない、生きてる人間の生臭ささに圧倒される。驚愕と苦笑という複雑な感情を惹起させる作品なので、この本だけでは、はあ?でよくわからないかもしれない特に「一夜」。他の著作も併せて読む必要あり。
 一連の作品のどの辺がフィクションかは著者のみぞ知るですが、著者曰く相当ノンとのこと。現実著者は性犯罪者の親、自身も暴力沙汰で前科持ち、学歴中卒、容貌醜悪、風呂も入らず衛生観念なし、女性は単に性のはけ口で、風俗通いは日常の重要関心事、肝心の人間性もネガティブかつ、自意識過剰という、社会的にも人間的にも破綻者。最近TVでよく見るが、暴言の数々は伝説的ともいえ、芥川賞授賞式における風俗発言を始まりとし、中でも「笑っていいとも」で、お昼時間にもかかわらず、風俗通いや女性蔑視の言行は、放送事故スレスレ、現場の女性客、日本中の良識ある人々を激怒させ、良識のない人々、下品な中高年男性を驚喜させた。著者によると、やっと得た異性のパートナーに些細なことでDVのあげく逃げられた。酒ぐせも悪く、暴言暴行も茶飯事だが、たいていは自分で起こしたトラブルの返り討ちにあうという情けない結末。また、関係した人々に小金を土下座で借金し、それを風俗で使い踏み倒す。風俗通いで、たまに相手に惚れたりすると、金をだまし取られたりする。著者は、まさしく社会的破綻者で、そのうちカッとして殺人などおこして、殺意はなかったんですなどと主張しつつ刑務所に入る確率120%であろう人物だななどと周りから思われ、常識ある人々から関わらんとこなどと見られていたのだろうと想像する。
 しかし、そうはならず、この破綻者の著作が数々の賞をとり、現実受けて判を重ねているのは、自業自得のくだらぬトラブルと同列に、幸運の出会いや運も相当にあるという奇跡。さらにの注目は、人を楽しませるのが好きであったという、かの太宰治と同質のサービス精神が根底にある点。自身のだめ人間ぶりが、実は他人を喜ばせ楽しませるネタとしての価値に気づき、それを提供したいというサービス精神。そこにそれをうまく提供できる文才に恵まれるという希有なコラボ。そこにそんなものが世に出るなどけしからんと、常識ある人々が押さえつけたが、それがまさしくたまったマグマの大爆発ということになった奇跡。我々は、新たなる何者かの登場を見ているのかもしれません。ただ著者の成功を複雑な思いで見ているであろう、関わってひどい目にあった被害者?の方々、特に逃げた同棲相手の心情を思うと、今後、猛獣注意の看板、檻に入れての厳重管理は必要(笑。
 著者にぞっこんで別作品で解説もしている石原慎太郎は、今後の活躍を期待しつつ、金も名誉も得た彼を逆に心配もしている。それを知ってか知らずか、著者は、私小説しか書けないので、今後は題だけ変えたようなモノを書くなどと、ファンをも愚弄するかの、さらなる暴言を重ねている(笑。きおつけろっ!
どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)Amazon書評・レビュー:どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)より
4041076471
No.20:
(5pt)

「アキエ」との別れの真相(?)

氏の初期作品ですがこの後の作品に度々登場する同棲女性「アキエ」(この作品中では
名前は言及されませんが)との別れに至る経緯・エピソードが一番詳しく書かれていま
す。(そこが笑える)実家に帰られた後の「哀願」そしてその後また繰り返される狂気
の?暴言暴力。。氏本人が校正していて情けなくなるほどのダメっぷり。「原点」ですね。
どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)Amazon書評・レビュー:どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)より
4041076471
No.19:
(4pt)

捨て身の賢太、大いに踊る

デビュー作を含め三作を収載した著者の第一短編集。
 「墓前生活」は、著者が師と仰ぐ藤澤清造の墓碑を譲り受ける顛末を描き、他の2作はそんな清造フリークの著者と懇ろになった女性との中々に壮絶なバトルを繰り広げる日常とを描いた作品。   著者の私生活をほぼ忠実になぞったと思しき「私小説」ということだが、ここで作品の完成度がどうのこうのといってみたところでせん無いことで、どの作品にも共通する西村賢太の捨て身の生き様が爽快に描かれる所に、大いに溜飲が下がる思いだ。人間として、男としての靭さと弱さが率直に描かれており、なぜかしらねど不思議と勇気を与えてくれる小説だ。
  男ならウジウジせずに、一発勝負で好きな事を一途に追い求めてみるのも良いんじゃあ無かろうか?確かに、いじましくも慎ましい堅実な生活を送ったところで、「どうで死ぬ身」に変わりは無く、せめて死ぬ前にこの世の思い出に「ひと踊り」するのも悪くは無い、という気にさせてくれる。
 そういう意味で、読む者に何かしらクソ度胸めいたものを抱かせる小説であり、そんな作家は文学界広しと言えどもとんと御目にかかったためしのないくらい稀有な存在だ(H23.6.13)。
どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)Amazon書評・レビュー:どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)より
4041076471
No.18:
(5pt)

DVの被害者としてつらかったけど後味はなぜか悪くなかった

DVの被害(これより軽度ですが)にあったことがある私としては仲よくやっていた男女がささいなことからいさかいになり最後は暴力が爆発し破綻にいたるまでが当事者だけがわかるリアルさで書かれていて、他にはいっぱいいい所もある人だし、いい思い出もいっぱい作ったのになんでこの人とはこうなっちゃうんだろう、という悲しさつらさを思い出して号泣してしまいました。

「謝まったのに男作って逃げ出しやがって」というこの主人公(作者)の、被害者の恐怖と心の傷をまったく理解していない言い分もリアルでした。やっぱり暴力を振るう人の頭の中では自分は怒りが収まったので謝ったら済むと思ってるんだな、と思いました。でも被害者は怒ってないときでもいつそれが始まるかと思って片時もやすらげなくなるんですよ。暴力は一瞬にして信頼関係を壊してしまい、2度、3度続くともう絶対取り返しがつかないんです。

DVにいたるまでにはいろんな、特に幼少期の心の傷があるので(他の作品を読むと作者も母親に暴力を受けていたようです)被害者はもちろんですが本人もつらいんだなあ、としみじみ思いました。でもこの絶対明かしたくない認めたくもない工程を作品にして公共にさらす勇気といさぎよさは普通ではできませんね。自分を突き放していて自己憐憫もないし。ユーモアのセンスがいいのが救いでした。だから読んだ後つらかったですが後味は悪くなかった。今はDVとはまったく無縁の私ですが、賢太さんは憎めません。
どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)Amazon書評・レビュー:どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)より
4041076471
No.17:
(1pt)

読むに耐えない

私は私小説が大嫌いである。というのは、私小説作家が一般的な文学を書く作家とは異なって、作者の破綻した生活の上に基礎づけられた劣悪な小説だからである。自分の愚行の果てに、惨めな生活を強いられ、不幸な人生を送るに至り、その恥の垢にまみれた己の体験を書くことによって、救済を求めることを思いつき、私小説が出来上がるのだろうと思う。そして、運よくその私小説に読者がいて、しかも金を得ることが出来れば、私小説を書く為に生活を崩壊させて、真面目な受難者を演じさへするのであろう。そんな下卑た私小説を読みたいとは全く思わない。そもそも、私小説なんぞは、作者の賤しい精神から排泄された汚物の如きものである。金を出して買うなんて、馬鹿馬鹿しい。ところで、私小説であっても評価できるものもあって、島尾敏雄の作品である。彼の作品はすべて、愛と夢の結晶といっていいすぎではない。ひょっとしたら、私小説とはいわないのかもしれない。新たなる小説、日本のアンチロマンなのやもしれぬ。
どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)Amazon書評・レビュー:どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)より
4041076471
No.16:
(2pt)

昇華しきれない無頼気取りの煩悩語り

読了して残ったのは、ゲテモノを好奇心だけで食ってしまった後悔と臓腑の不調感である。骨の髄まで信奉し敬愛する作家への偏執狂とでも言うべき傾倒はひっきょう自己愛からくるものだ。そこに自分と重なるものを見出していとおしんでるにすぎない。
一方目の前の身近な他人は愛することができない。愛してもらってるときだけ重宝し、拒否・批判されると幼児が癇癪を起すように徹底的に攻撃し叩き潰す。その後の後悔も愛してくれるものを失いたくない恐れからくるものだ。良心のうずきや傷つけた者への気遣いではない。

人は成長期愛されてやがて人を愛し自己犠牲もいとわないというほどの愛する対象を得ることができると改めて思った(小説ではあるが書き手がほぼそのまま自分であるというので)
こういう他人への愛情の欠落した、自己愛の肥大した大人と付き合わなければならない人間は気の毒だ。僧侶等他の者への接し方にもおよそ誠意というものが感じられない。計算づくなのだ。主人公は自分の性格のけんかいさや獣性をさらけ出して潔いように見せるが、まだまだ多く繕っている。
完膚なきまでに自分をさらけ出せば無頼文学にもなろうが、ほめてもらえる分だけの計算ずくのさらけ出しだと感じる。

小説は商品であり、こうしたら売れるだろうという魂胆が透けて見えてほとんどいかがわしい。結末はもっと詳述しなければバランスが取れない。続編予告の梗概のようだ。
詳しく書くに自身が堪えない事実があるのだろう。卑怯な遁走であり、とり繕いだ。小説は道徳本ではないから、どんな悪党や出会ったことのないような奇異な人物を描いても人物が生きているように動いて読者に衝撃を与えれば読む価値があるのだが、この主人公は書き手の姿勢とともに生半な人物で感情移入ができない。
どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)Amazon書評・レビュー:どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)より
4041076471
No.15:
(5pt)

日本文学の手触り

「二度は行けぬ街の地図」を読んで免疫が出来ていたので、落ち着いて読むことができました。
西村さんの自伝的小説は私にとっては衝撃的な内容で、あまりのも書いてある出来事にばかり囚われてしまいましたので、今回、多少の覚悟を持ってから読むとまた違いました。

確かに書いてある内容は、働かない、女の稼ぎをあてにする、DV…など悲惨なものですが、その文章のせいか人間の誰もが持っている「どうしようもなさ」のようなものが伝わってきました。

現代作家というより明治〜昭和初期の日本文学の芸術性をたずさえているからだと思いました。
流行の文章に染まっていない、凛とした古典を思わせる日本文学の手触りは、読んでいて心地の良いものでした。

著者の私生活、人生の辛さ…、文学とはそういう生活の中から生まれてくる芸術の一つだと改めて考えました。
どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)Amazon書評・レビュー:どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)より
4041076471
No.14:
(3pt)

書かずにはいられなかった何かがある

昭和7年に満42歳で、芝公園で凍死した作家 藤澤 清造に深く傾倒する私の1人称で描かれる非常に不思議な感覚に陥る作品です。跋(後書き)で書かれているように私小説であるのでしょうけれど、まだそれを強く意識して書かれたというよりも、書かずにはいられなかった、という作品のように感じますし、だからこそ処女作を読んでみて良かったと思いました。

傾倒する作家の墓を月命日ごとに墓参りする(菩提寺は石川県!にある)勤勉さ(精神的、あるいは自身を肯定できる存在だからこその)、というよりは執着を見せ、その同じ執着に酒が入ったり、性欲が滾ったりするたびにそれなりの一悶着を起こす「私」の、全くそういう(犯罪的、あるいは暴行的)傾向は無いものの何処かしら同じ境遇だったら、と思わせるこの後どうなるのか感で、読むものをぐいぐい惹きつけます。犯罪を犯してまで、あるいは同居する女に暴力を振るってまで守り固執する自らの尊厳が薄っぺらく感じさせます。しかも欲している何か(女であり、尊敬されることであり、)を手に入れられない憔悴感が、何も無いという自己への不安と相まって非常に切実になったあげく短絡な、これ以上短絡になれない経路を辿るその顛末が、予想を外れることはないにしても気にさせるのです。

どこまでも開けっぴろげであり、心の暗部であろうとも容赦なく、また淀みも、躊躇も感じさせないで文章に出来るところも私小説家としてもちょっとびっくりさせる作家です。そうしたどうしようもない無為無策と言いますか、自暴自棄にさえ感じさせる著者の今後が気になります。

無頼派という流れをさらに、強力に推し進めたことになるのかどうか、ちょっと今判断できませんが、かなりショッキングな作品です。

この「私」が話し言葉で「ぼく(ひらがな表記)」と言われるとそこはかとなく怖い感じがします。

基本的に男性に、オススメ致します。
どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)Amazon書評・レビュー:どうで死ぬ身の一踊り (角川文庫)より
4041076471

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!