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(短編集)

暗殺の年輪



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暗殺の年輪の評価: 4.26/5点 レビュー 34件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.26pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全28件 21~28 2/2ページ
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No.8:
(5pt)

うなずける直木賞

黒い縄・暗殺の年輪(直木賞受賞作)・ただ一撃・溟い海・囮からなる短編集。
どの作品が直木賞でも異論はない出来である。
その中で、一番はどれかというと、わたしは「ただ一撃」を挙げる。
のちの藤沢作品に通じるものがあり、
この題名をつけたセンスには驚嘆する。
嫁女の一撃と範兵衛の一撃、そこに「ただ一撃」と名づけた藤沢周平の力量のすごさ。
老若男女を問わず、ぜひ読んでほしい作品である。
暗殺の年輪Amazon書評・レビュー:暗殺の年輪より
4163029206
No.7:
(5pt)

理想的な女性たち

「黒い縄」「暗殺の年輪」「ただ一撃」「溟い海」「囮」の5編の短編が収められていますが、どの作品をとってもデビュー当時の作品とは思えない素晴らしさです。

特に感心したのは、それぞれ各作品に登場する女性たちで、そこはかとない恋心を抱き、最大限に頑張った行動をしながらも、儚い結末になる、その健気な姿の描き方は最高で、これは男性からすると理想的な女性に見えます。
こうした女性たちの姿が際立っているだけに、それに対する男たちも光って見えます。

登場人物たちの造型以上に素晴らしいのが、それぞれの作品の構成で、緻密に計算されつくしており、どれもなるほどと感心させられるものばかりです。
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No.6:
(4pt)

渋い作品勢揃い

藤沢周平のデビュー作が掲載されている。だから、かなり古い。

この中にある「ただ一撃」という作品。

主人公の爺さんと、爺さんの息子の妻がいい味を出している。

すごく弱そうなもうろく爺さんなのだけど、ただ一撃で強敵を倒してしまうのが印象的。

でももっと印象的なのは、そこに到る過程だけど。

この文庫の5編の中で、一番引きつけられた作品。

どれもこれも、渋い作品が勢揃い。
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4163029206
No.5:
(5pt)

絵はやっぱり怖いものだった

広重の版画を町田の国際版画美術館の2階の常設で見てしばし立ち尽くしたのは、もう十数年前。たぶん同じろころ、長谷川潔の一大個展の最終日(雨)の最後の1時間前に滑りこむようにして入ったのは、関内の横浜美術館だった。それから、この文庫所収の「クライ海」(半年前、クライを漢字にして文字化けで原稿ボツになった)に出会って驚愕するまでに、どれくらいの時間がたったのか。広重も潔も「日常」のなかに「美」を見いだした点はおなじ。明け方の宿場のあのえもいわれぬ孤絶した一瞬(広重)、福田平八郎にも似た鳥や花を象る崇高な線(潔)、その世界回復的な美の投企に藤沢周平の目は据えられていた。絵とは見るものではなく、存在への問いなのか。私はこの短編をきっかけに周平の文庫を60冊以上いっき読みしてしまったのだった。
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No.4:
(5pt)

『ただ一撃』だけを読む。

死ぬ前に、読みたい小説を一作だけ選べ。
 ぼくは、ウロウロする。
 しかし、藤沢周平の原点が凝縮している『暗殺の年輪』をえらび、その中に収録されている『ただ一撃』を読む。
 生きている時間が無いのだから。
 『ただ一撃』は爽快な作品。洟にたいしても気遣う嫁。もうろくしている老人は「剣で家臣に登用された」武士。
 彼の真の姿を誰も知らず。彼は、仕官をねがった不器用な浪人に対する主君の怒りから、脚光をあびる。不器用な浪人と戦えと言う上意。そして、かれは、野生と化す。天狗がでたという噂。かれは野からもどった。「野伏せりに似た一個の兵法者だった。」
 試合で彼は「ただ一撃」で相手を殺めた。しかし、嫁は自害した。舅と嫁の愛。これはあっていいはず。
 「−三緒がなぜ死んだかを知っているのは、儂ひとりじゃな−」
 藤沢作品がその後、明るさをもつにいたるのは、この『ただ一撃』が原点にあるからだ。その奥に潜む荒々しい現実。藤沢の結核療養所時代の体験を重くおもく想像してしまう。
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No.3:
(4pt)

どこか遠くが見える

「蝉しぐれ」につづいて読んでみました。
これまで藤沢周平を知らずに生きてきたのがもったいなかった~。
この初期の作品集にはきっとのちのちに連なる作品のアイデアや風合いといったものが凝縮されいるんでしょうね。
風景描写がいいです。「蝉しぐれ」に比べて暗澹とした心の重さが作品の基調になっていますが、風景は美しい。美しい空と雲。川。
藤沢は人生を肯定しつつ老いたのでしょう。苦しくも輝いていた、心に残る日本の景色。そして男と女。読んでください。どこか遠いところが見えますよ。
(できたら再版は字を大きくしてね。出版社の方、お願いしま~す。)
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No.2:
(5pt)

あまりにも重い、しいたげられた人々の物語

藤沢修平は後期の比較的ノーテンキなものから読み始めた。それでたいしたこと無いと思っていたのだが、.....この初期5編をを集めた短編集は素晴らしい。いずれも重苦しく、組織や社会に圧殺されそうになる個人とその手前での諦観、.....語彙がないのでかたっくるしく言ってしまったけど、どうにもならない事ってありますね、それは老いであったり、生い立ちであったり、職業やもしかすると情熱かもしんない。そういったもんと人間折り合いをつけて生きてかなきゃなんない、生やさしいことではない厳しさを突きつけられた気がする。
どの作品からもその辛さが漂ってくる。一番明るさがある「ただ一撃」でさえ、可憐この上もない息子の嫁を自害させているわけで....表題作もあまりにも過酷な物語。この残酷さは解決のまま終る。武士を脱ぎ捨てて飲み屋に向かう主人公に救いがあるのか無いのか、ワタクシにはわからないのである。題名は失念したが出戻りの女性が主人公の巻頭の物語の行き場の無さはどうだ。老いた北斎が広重に嫉妬する「溟い海」は設定そのものにホンマかいな?あの北斎がそんなせこいことを?と思わなくもないが、そこを受け入れると逆に強烈な凄味を感じさせる。この話の前段が短編集「花のあと」にあって、そこでは広重のほうの迷いが描かれていた。そんな中一番心惹かれたのは「囮」である。これも浮世絵の刷り師と下っ引きを掛け持ちする男の残酷な物語。事件の解決後、活気立つ彫宇・徹夜仕事の達成感は一見蛇足に見えながらその後に甲吉を襲う空虚なエピソードは耐え難いものがある。見張る男の見張られる女への心理。都市に生きる孤独を時代小説の形を借りてここまで見せつけられると「グー」の音を上げてしまう。読後の幸福感は無い。日常の闇を除いたような後味の悪さ、それも本を読む快感の一つだろうか。
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4163029206
No.1:
(5pt)

作家デビュー以前の作品の完成度

再読である。藤沢周平がまだ電車で会社に通っていた頃の作品群である。
「溟い海」おそらく北斎と広重のことを調べて調べて自家薬籠中のものにした後に、ゆっくり寝かした後に書き出された物語なのだろう。短編の中に長編にしてもいいような背景が感じられるし、一つ一つの言葉が練りに練られている。物語は北斎が広重の才能を嫉妬して痛めつけようとした直前で思いとどまる、というフィクションである。その嘘を成立させるためにあらん限りの歴史的な事実をさりげなくちりばめる構成力には感心するし、この時期の藤沢はそういう嫉妬心をも作品テーマにしうるような勢いがある。あるいは一分の隙も無いような文章に返って若さ、気負みたいなものを感じる。今回再読して初めて思ったことである。しかし藤沢!!の真骨頂は嫉妬をする北斎にあるのではない。北斎が直前で思いとどまった広重の顔「人生であるとき絶望的につまずき、回復不可能のその深傷を、隠して生きている者の顔」を描いているということにあるのだ。それはたとえば通勤電車のなかで藤沢がふと窓を見て気がついた自分の顔なのかもしれない
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4163029206

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