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(短編小説)
海と毒薬
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海と毒薬の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.35pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全84件 41~60 3/5ページ
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"ぼくはあなた達にもききたい。あなた達もやはり、ぼくと同じように一皮むけば、他人の死、他人の苦しみに無感動なのだろうか。"1957年、九州大学生体解剖事件を主題に発表された本書は、新潮社文学賞、毎日出版文化賞を受賞した、巧みな構成で【罪の意識】を問いかけてくる普遍的傑作。 個人的には連日の様に新型コロナウイルスについてのヒステリックな反応を眺めながら、ふと本書の存在を思い出して、学生時代に感想文を書いた記憶を朧げに思い出しつつ久しぶりに手にとりました。 さて、そんな本書は1945年に行われたアメリカ軍捕虜に対する【生存を考慮しない臨床実験手術】を題材に絶対的な論理規範のあるキリスト教と違って、日本人には核となる軸がないことから【集団心理と現世利益で動くのではないか?】と、ルース・ベネディクトの『菊と刀』でも指摘されていることを、医師や看護師といった登場人物たちそれぞれの視点や語りで明らかにしているわけですが。テーマは違っても、今起きている日常の出来事と重なるところがある気がして、色々と考えさせられます。 また、題材にした関係者からの【本書に対する抗議の手紙】にショックを受けて著者が当初示唆していた【第2部を断念した】と考えられているのですが。直接的ではなくても、登場人物の1人『勝呂医師)を主人公に安楽死や医療行為の是非を問う『悲しみの歌』が発表されていることを再読して始めて知り、こちらも是非手にとってみたいと思いました。 医療に関わる人はもちろん?立ち込めている全体主義的な空気にもやもやしている人にもオススメ。 | ||||
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罪とは何をもって罪となるのか、場の空気は何をもたらすのか、正当化される罪はあるのか考えさせられる本です。遠藤氏らしい内容になっていますが、重いので時間がある時にじっくり読まれる事をお勧めします。 | ||||
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複数の登場人物の物語が交差しつつ、 日本人に正義はあるのか問いかける名著。 | ||||
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「法政大学文学部日本文学科入試の課題図書」になっています。 大学生の時に読み、その後本を紛失、買いなおしました。 夏川草介氏の解説がついていました。 その中に「十代、二十代の人にこそ本書を手にとってもらいたい」と書いてあります。 その通りだと思います。 この本の根源的な問いかけは、夏川氏も述べておられるように、 「日本人の良心のよりどころはなんであるか」ということです。 これも夏川氏の解説からの引用ですが、 寝たきりの九十歳の祖母を前にして、その孫がにこやかに言った言葉である。 「ばあさんが死んじまうと年金がもらえなくなるからさ。 とにかく心臓だけは動かしといてくれよ。 医療費なんて、どうせほとんど税金だし、病院で預かってくれりゃ俺たちは楽だから」 珍しい発言ではありませんよね。 これを課題図書とするなんて、法政は「いい」。 | ||||
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人間の本質というものがストーリーの中に組み込まれているようなそんな話だと思う。人間のか弱さや残虐さがひしひしと伝わってくる素晴らしい作品 | ||||
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あまりに重いテーマなのでなかなか手に取ることができませんでしたが、ようやく心の準備ができて読みました。 中篇小説で、文章が読みやすいので早いペースで読み終わりました。 九州帝国大学医学部で米国人捕虜を使って人体実験が行われたという実話を基に描かれています。時代は第二次大戦中です。 最初の章で登場する人物が考えることがこの本の主題となっています。つまり、街中を歩いている父親、店の主人はみな出征して人を殺している。人によってはそれを楽しんでさえいた。それなのになぜ医学部の人体実験だけが罪に問われるのか? 病人は栄養失調で死に、そうでないものは連日の空爆で死ぬ。捕虜なんてどうせ殺されるのだから、医学の発展に貢献できるだけいいじゃないか、そんな論法が出てきます。 話が突然終わるので、深い余韻を残します。この後、関係した人物がどうなるのか、何が正義だったのか考えずにはいられません。 二度、三度と読み返したくなる本です。 | ||||
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日本にはキリスト教のような明確な倫理基準がなく、まわりの雰囲気に流されて悪を行ってしまうことを著者は描きたかったそうだ。これは、第二次世界大戦時の日本人にも当てはまるし、現代の学校、会社などでのいろいろな場面にも当てはまることだろう。 第二章の独白が構成として面白いと思った。 | ||||
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重い読書感でした。世の中良心のかけらもない人がいますが、そういう人が医者だったら…。良心はあっても意志の弱い人が医者だたら…。確かにこんな事件は起こりそうです。大学病院の中という特殊な環境でドラマは展開しますが、登場人物はそこら辺にもいそうな感じなので、余計にぞっとします。どこの組織にもいそうな人々が医療関係者としての職業倫理を忘れたために恐ろしい事件を起こしてしまいました。良く耳にする組織ぐるみの犯罪もこのようになんとなく起きているのかなと余計に怖くなります。多くの人に読んでもらい、職業倫理について考えるきっかけにしてもらえたらと思いました。 | ||||
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生体実験ときくとグロテスクなイメージが先行してしまい 読む事に躊躇しましたが、読んでよかったです。 生体実験に携わる複数の人間の関係や境遇や心理が描かれています。 生体実験は医療の視点だと進歩につながる重要なデータになり得るのかもしれない。 しかし、人間を相手にする医師にとって道徳的な感覚も重要なのに 権力や立場や環境など様々な要因で麻痺してしまうのか。 このような道徳観に疑問を感じるシーンは医療の世界だけではなく 他の社会でも見られます。 人間としてどうあるべきか、考えさせられました。 10年後に読んだら、どう感じるか、また読んでみたいと思いました。 | ||||
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米国人捕虜に生体解剖を行った戦時中の九州大学生体解剖事件をモチーフに、解剖に携わった医師達の心情を描いた物語。 みんなが戦争・病気で死んでいく世の中であったとしても、自分が同じ状況に立てば拒否するのか、良心の呵責を感じるのか。恐れを感じるとすれば何に対する恐れなのか。または、何も感じず流れのままに行動して、自分自身の”不気味"な心に気付くのか。 重苦しいテーマであるが、真っ白とはならない人間心理を描いていて、読んで良かったと思える小説だった。 「あなた達もやはり、ぼくと同じように一皮むけば、他人の死、他人の苦しみに無感動なのだろうか。多少の悪ならば社会から罰せられない以上はそれほどの後めたさ、恥しさもなく今日まで通してきたのだろうか。そしてある日、そんな自分がふしぎだと感じたことがあるだろうか。」 | ||||
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著者は実際にあった事件を題材にしてフィクションを書いたのだが、解説で「しかしあの小説を書いてから、ぼくは実際に事件に参加した人たちから手紙をもらった。そのなかのある人たちは、ぼくがあの小説によって彼等を裁断し非難したのだと考えたようである。だが、とんでもない、小説家には人間を裁く権利などないのである。ぼくはその人たちに返事を書いたが、この誤解はぼくにとって大変つらい経験だった」と。 実際は日本を空襲した爆撃機や戦闘機のパイロットが本土に不時着したら、搭乗員を見つけた住民らが寄ってたかってリンチを加えた話もあるし、「戦陣訓」で捕虜をさげすむ意識が一般化していただろうから、人体実験をしてもさほど罪悪感を持たなかったろうし、軍からの命令であれば逆らえなかっただろう。そして当時結核は死の病で、死が身近にあったという現実があった。 著者は人間の暗部と尊厳を考えさせるために勝呂、戸田、浅野などの医師と大場看護婦長や上田ノブ看護婦を登場させている。この辺りの一人一人の役回りは絶妙で、いらない登場人物は一人も出てこない。最初に現在を描いて、その後に過去の事件の詳細を描くという構成もうまい。 | ||||
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流される人の物語。 それはきっと、多くの人に当てはまる物語なのではないでしょうか。 海の描写、特にそれを音で表現しているのが印象的でした。 | ||||
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二十数年前の未だ若き頃、食費を削ってまで手にした本作。遊びに行く余裕も無い中、薄汚い下宿で一気に読み干しました。氏が旅立ちのニュースを聞いたのは、あの時、初めて本作を読了してから数か月後、就職先の社員寮ででした。そして、中年期、現在と遠藤作品は、折に触れて私の人生に登場します。 遠藤氏と同じくクリスチャンとなった今、「神と人間」の断面から読破した氏諸作品の中で、再読した本作は、諄く神を語っているとは思えない。ただごく一部の表現と行間から読み解けるものは、『海と毒薬』は別称「神と人間」なのだと言うことに、気付かされる。 | ||||
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読み進めるのがしんどかった。 終始じわじわと首を締めらてているような、息苦しい逃げたくなるような空気が漂う。 特に自分は、第一章には生理的嫌悪感がひどく、読みやすい文にもかかわらず、なかなか読み進められなかった。 「罰は恐れながら罪を恐れない日本人」という解説の文が心に残る。 | ||||
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・サノーさん一言コメント 「人間は救われない存在なのか。戦時下の記憶が与える贖罪の日々」 【サノーさんおすすめ度★★★★★】 ・ウノーさん一言コメント 「人間が人間を殺めることは、摂理に反しているのでしょうか。戦争における一場面から、良心とはなにかを学びます」 【ウノーさんおすすめ度★★★★★】 ・サノーさん、ウノーさん読書会 サノーさん(以下サ):周作先生の作品は、ここで書くのは初めてかな。 ウノーさん(以下ウ):意外ですね。けっこう読んでたのに、紹介してませんでした。 サ:最初が「これ」というのも、ちょっと「あれ」だが。 ウ:普段は軽妙でユーモラスな作風の方が、「人間の本質」に迫るものを書くと、驚くほど「響く」作品になります。 サ:戦時下の日本において、「生きたまま」の捕虜を解剖する、あったかもしれないし、なかったかもしれない。 ウ:医学の歴史では、ヨーロッパでは死刑囚が「献体」することによって、様々な研究が行われていましたから、「流れ」としてはそれと同じです。 サ:参加した助手の視点であること、この行為が「罪」であり、いつか来る「罰」を覚悟していることが、戦時下における矛盾を伝えている。 ウ:「神」についての疑問もです。この著者らしい宗教観が、全編にわたって横たわっています。 サ:戸田のつぶやきに対し「わからない」と答えつつも、この「研究」を断らなかった自責と迷いを、一つの答えとして描いている。 ウ:『看護婦の手記』からの「告白」も、この作品の「生々しさ」と「人間の業」を強く伝えてきます。 サ:「自分でも信じていない理由」で手伝いを依頼する愛人、「そんなことはどうでもいい」という理由で参加する女の「性(さが)」は、戦争という「大きな流れ」における、個別に波打つ「滴」を連想させる。 ウ:「流されること」の矛盾と哀しみを、知ることが出来ます。 サ:「流されること」によって「しんどかった」とならないよう、日々を大切に生きよう。 【了】 | ||||
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[沈黙]の作者繋がりで読みました。 戦争中とはいえ、人間がしでかした事。 極限に置かれたとき人はどう行動するか、を考えさせられました。 | ||||
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太平洋戦争中に行われた捕虜に対する生体解剖実験の事件が、いくつかの視点から語られる。 戦時中で多くの人が死んでいくという異常な状況だから、医師たちは良心の呵責を感じることなくこのような異常な行為に走ったのだろうと、本書を読む前は思っていた。実際そのような側面はあるだろう。しかし読み進むうちにだんだんゾッとしてくるのは、彼ら医師たち看護師たちが、精神異常者でも過激な軍国主義者でもなく、“普通の”人たちである、いうことだ。 医学部研究員の一人である戸田の手記の章は、特に印象的だ。生体解剖実験に罪の意識もなく関わった戸田は、子供の頃からのいくつかのエピソードについて語っている。それらの話から、次のようなことがわかってくる。残虐な解剖を行うことができるメンタリティは、子供の頃に、教師に気に入られるために嘘を盛り込んだ作文を作るメンタリティの延長線上にある、ということだ。バレない嘘を平気でつくようなことは、私にだってある。そう思うと愕然とする。自分も、同じ状況に置かれれば、彼らと同じように振る舞うのかもしれない。 解剖に参加したもう一人の研究員の勝呂が、戦後何年も経った時点でいう次の言葉が、胸に刺さる。 「これからもおなじような境遇におかれたら僕はやはり、アレをやってしまうかもしれない……アレをねえ」 | ||||
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他の本でこの事件のことは読んだことがありますが、 この作品はその当時医学部助手だった医師が戦後2年の懲役の罰を 受け、老医師となり片田舎で開業しているところから物語が始まります。 (神を持たない日本人とっての罪の意識とは何か?)と解説に書かれてありました。 | ||||
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逝く前にもう一度読みたいと、取って置いた本がKINDLEで買えるようになり読みやすくなりました。 昔読んだのですが矢張り忘れてました。 こんなバカなことをして居た時代があったのかと改めて読みました。 731部隊もそうですが戦争と言うのはこんな事が出来るんですね。誠に恐ろしい事です。 二度とこんな時代が来ないことを、少なくとも日本で、願ってます。 | ||||
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粗筋はレビュー・解説にあるので省略します。 捕虜となった米兵の人体実験に足を踏み入れた勝呂医師。割り切った同僚の戸田医師に比べ 葛藤を抱えながらも加担する。 彼の魂の売り先は悪魔ではなく、学内の立場であり、社会のポジショニングにか過ぎない。 普通のだからこそ、形を変えこそすれ、現代の私達にも降りかかる事象であり、勝呂医師と 自信を重ねて物語に引き込まれてしまうー。 文章は平易で読み易いですが、非常に重たくて考えさせられるテーマです。 お薦めの一冊です。 | ||||
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