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ミラクル・クリーク
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ミラクル・クリークの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.80pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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2008年8月、バージニア州ミラクルクリークで韓国からの移民パク・ユーの経営する複数人収容型高圧酸素治療施設で火災・爆発が発生します。捜査の結果放火によるものと断定され、治療中の病児の母エリザベス・ワードが放火・殺人の罪で逮捕・起訴されます。本編は翌2009年に開かれた法廷を舞台として展開する物語で、関係する個人、家族の様々な事情が明らかにされていく法廷ミステリーであるとともに人間ドラマでもあります。 高圧酸素治療は他の正統的な治療法で効果がみられなかったものたちが、いわば最後の頼りとする代替え治療です。ですからそこに集まってくる患者・家族は当然のように複雑な事情や家庭環境を抱えています。またこの経営者が韓国移民というのがミソで、これまた複雑な家庭事情を抱えています。ちなみに付け加えておきますと、現在米国では医学的に正統と考えられている治療で効果が得られなかった病児に対してエビデンスのはっきりしない各種代替え治療を受けさせることを児童虐待とする運動があり、この物語でも背景として描かれています。さらに患者の中には不妊治療のために高圧酸素療法を受けている若手医師も含まれており、代替え治療の問題が複雑であることを示しています。あまり書き込むとネタバレになってしまいますが、この若手医師の妻が韓国系で、かつこの施設の出資者でもあることが物語後半に明らかになり問題を複雑にします。この辺は作者のうまいところですね。 当然のようにあまり後味のよい小説ではありませんが、こうした様々な人間模様を見事に描ききったという意味で大変によく書けた小説であるといわざる得ません。とくに韓国移民の家庭事情や移住者としての複雑な心境は自身が韓国移民である作者にしか書けないものだったと思われます。実際アメリカ本国での評価は高く、エドガー賞新人賞、国際ミステリー作家協会新人賞、ストランド・マガジン批評家賞などを独占しました。 この小説はミステリーとしての形態を借りてはいますが、本来は不妊治療に悩む夫婦、病児を抱えた家庭、事情があって外国移住をせざるを得なかった家庭の悩み・葛藤を描くことの方に重点が置かれているのではないかと思われ、小説としてはとてもよく書けているものの、これがミステリーとして高い評価を受けたということは、米国におけるミステリーだけとはいわず小説の位置づけが微妙に変わっているのではないかと考えさせられました。これが現在よく問題にされる格差とか分断といった問題と関係するものなのか否かはわたしたち外国人には分かりませんが、ミステリーの向かう方向としてはやや危ういものを感じたというのが正直なところです。 なお小説の紹介としては蛇足ながら、アメリカの事情にやや詳しいもののひとりとして書き込んでおかなければならないと思われることがあります。作者のアンジー・キム自身が韓国系の移民であることから、これは自身や周囲の人々の苦しみを訴えた作品なのではないかと誤解するひとがいるのではないかと懸念されるからです。作者の略歴を見ていただければ分かりますが、11歳で移民後、スタンフォードからハーバード・ロークスクールを経て『ハーバード・ロー・レビュー』の編集長を務めるに至っています。これは移民であるなしにかかわらず、普通の社会階層のひとの経歴ではありません。勉強のできるできないという問題ではなく、この経歴が積めるひとの出身家庭は国籍にかかわりなく相当程度の資産家であるということです。わが国ではあまり語られませんが、韓国には一握りの特別な上流階級が存在することが知られており、そうした特殊な家庭の出身者であるとしか考えられません。少なくとも生活困窮から移民した一家の子弟であると考えてしまうと大誤解が生じてしまいます。作者自身が障害児を抱えているらしいことにはもちろん同情しますが、この物語を作者自身と過度に結びつけてしまってはいけないことは付け加えなければと考えました。 | ||||
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新聞の書評で宮部みゆき氏が激賞していたので、読んでみた。ミステリ界の著名な新人賞を3つも獲得しているそうで、確かに優れた作品なのだろう。でも、本作のように主観(語り手)が章ごとに替わって、しかも揃いも揃って “闇” を抱えてるという設定はちょっとね。正直疲れる。 舞台設定自体はシンプルだ。米国のとある田舎に設けられた代替医療施設で火災が発生、死傷者を出す事故になった。これが放火と断定されて、事故から1年後に裁判が開かれる。被告人は事故で死亡した受療者の母親なのだが、実は別の真相が…というわけ。 このお話。事故の通報を受けて警察が駆け付け、現場検証、遺留物を捜索するとともに関係者の事情聴取を重ねて、という具合にオーソドックスな展開だったら、恐らく大して面白くないし、犯行動機も腹落ちしないだろう。事件関係者それぞれの経歴、家族事情、心の動きを主観表現で積み重ねることによって、じわじわと事の真相を浮かび上がらせる筆さばきは実際見事だ。 でも、これって警察・検察のあからさまな失態だよな。結果的に誤認逮捕して、裁判も始めてしまって、挙句被告人が事故死(自殺?)して、その後でようやく検察官も真犯人に気付くんだから。1年間、何やってたんだ? 構成の妙で、その辺を感じさせずに読ませてしまうのだが、なんか嫌だな、登場人物が皆 “小さな不幸” と “小さな悪意” を持ってるのって。申し訳ないが、私の好みじゃない。 | ||||
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