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虚の聖域 梓凪子の調査報告書
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虚の聖域 梓凪子の調査報告書の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.14pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全1件 1~1 1/1ページ
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元警察官で興信所勤務の主人公が甥の死の調査を依頼され、その死の真相に迫る物語。 姉・未央子の人物造型が素晴らしい。母の代理を務めてきたという経緯から主人公・凪子の人生に暗く濃い影を落とし、互いにいがみ合い、憎み合いながら、それでも血の束縛から逃れることができない。 女性版ハードボイルドと形容される本書は主人公・凪子の直情的な性格に感情移入がしづらいものの、その際立った個性の強さに引き込まれ、軽やかな文体もあってどんどん読み進められる。 すでにいくつもの文学賞を受賞しているだけあり、文章はこなれており、テンポも良かった。 しかし肝心のミステリーの部分は難がある。 どう考えても自殺に見える甥の死が、「自殺ではない気がする」という曖昧な姪の発言から唐突に事件性を匂わせるものとなり、大した事実も掴んでいないのになぜか犯人に襲撃され、それで事件性を確信するに至る。 論理ではなく勘と運で推理が進んでいくため、その唐突な物語の展開に読書は置いてきぼりになる。 特に、ご都合主義的な展開がとても目についた。例えば公団住宅で話を聞いた主婦からあっさりと重要な目撃証言が得られたり、ゲームセンターで見つけた学生を尾行すればいきなり期待通りの、そして物語の核心に繋がる成果を得られたりといった具合。捜査がこんなにうまくいくなら誰でも名探偵になれるのではないだろうか。 巻末の選評では島田荘司がトリック不在をマイナス点に挙げているが、一番の致命的欠陥は、犯人を検挙するための物的証拠がないにも関わらず推理が完結するところではないだろうか。 推理の根拠は、犯人と被害者の血縁関係、および目撃証言のみ。簡単に言い逃れができるにも関わらず、犯人がいきなり凪子に襲い掛かって馬脚を現してくれたがために逮捕できた。一か月以上前の事件の配達員の証言など参考程度にしかならず、見間違いのひと言で逃げられるにも関わらず犯人が自ら白状してくれたおかげで事件が解決できてしまうというのはあまりにもお粗末に感じた。 著者の特異な経歴から、てっきり警察内部の話を切り売りするものかと予想していたが、むしろその経歴を武器にすることなく地に足のついた文章とストーリーで挑戦する姿勢はとても良いと思う。 なにより物語を占める一文が不思議な読後感をもたらしてくれて、それがミステリー部分の難を補って余りある。読んで損のない一作。 | ||||
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