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輝くもの天より堕ち
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輝くもの天より堕ちの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.70pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全10件 1~10 1/1ページ
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本書は日本語で読むことができるティプトリーの唯一の長篇。米本国では1985年に出版された著者2冊目にして最後の長編。著者が悲劇的な死を遂げる2年前、70歳の時に出版された作品である。 評者はティプトリーの翻訳作品を基本的に米本国での出版順に読んでいるので6冊目になる。残るは『たったひとつの冴えたやりかた』と『あまたの星、宝冠のごとく』の2冊になってしまった。 ティプトリーは本書を執筆した頃、心疾患などで死と苦痛を身近に感じていたらしい。本書は遥か未来の辺境惑星を舞台とするSF作品だが、そのような作者の状況が各所に反映している。 舞台となっているのは銀河辺境の惑星ダミエム。昆虫から進化した羽を持つ美しい人びとが住んでいる美しい星だが、彼らの体液が高価な酒〈星ぼしの涙〉の原料になるという理由で大規模に虐殺された歴史があった。 現在は彼らを保護するために連邦行政官のコーリーとその夫キップ、医師バラムの3人が駐在しており、この3人を交互に主人公としてストーリーが語られる。 その惑星に20光年ほど離れたノヴァの光(衝撃波前線)が届いた時、オーロラを遥かに超える壮麗な夜空と不思議な現象が観測される。過去に2度その光が届いたが、今夜、3度目、最後の光が届くと予測されており、銀河系の各地から十数人の観光客が到着する。全員が行政官事務所兼用のホステルに宿泊し、まさにみんなでその光景を楽しもうという時にひとつの事件が起こる。それがその夜の惨劇の始まりだった。本書はその事件前後の24時間の物語である。 上記の紹介のとおり、本作の舞台と登場人物は宇宙SFだが、物語のスタイルはTVや映画で見られる24時間を描いたサスペンス・ドラマそのものである。 評者はティプトリーの長篇なので難しくややこしい話だろうと考えて、また、登場人物を把握するために、メモを取りながら時間をかけてじっくり読み込むという方法を取った。実際に、前半は設定の説明が多く、ストーリー展開もゆったりしていたため、その方法が合っているかと思ったが、舞台が整ってきた中盤以降は展開が加速していくので、後から考えると、中盤以降は物語のスタイルに合わせて一気読みするのが正しい読み方だったのではないかと思う。400字詰め原稿用紙で約1000枚、550ページを越える大長編を一気読みする体力があれば・・・の話だけど。 なお、登場人物については巻末に人物、用語、場所等の一覧表が付いている。評者はネタバレが怖くて読み終わるまで手をつけなかったが、書かれている内容を見るとその心配はないので最初から利用すればよかった。 本作は、大部の長編というだけでなく、そのテーマも従来のティプトリーの作品とは少し異なる作品だが、その展開パターンは、『老いたる霊長類の星への賛歌』に収録されている「一瞬のいのちの味わい(1976)」に良く似ているように思う。前半部分では状況や経緯を細かく説明している。その後サスペンスの要素を追加し、中盤に入るあたりから読者をじらすような描写を重ねて緊張を高めておいて、その後一気に急展開させる。過去の作品で身につけた手法を採用したのだろう。 評者としては、この読者をじらすような描写はイライラが募るばかりで批判的だが、緊張を高める効果があることは否定できない。 一方、「一瞬のいのちの味わい」などの作品を評者は“(心理学的)ハードSF”と考えているが、本作にその要素はあまりない。しかし、別の意味で(哲学的?に)ハードな物語だった。 一人の若者が運命の巡り合わせによってある種族の運命を変えてしまう。それは若者一人が責任を負うべきものではなかったが、後にその責任を問われた時、若き日の自らの愚かな行為の代償として素直に受け入れる。罪と罰の物語。それは一個人としての運命と同時に、宇宙文明の一部としての自分の運命を受け入れることだったのだが、評者には、それが自らの運命を受容し始めた作者本人のように思えた。 また、本作は、生と死、若さと老い、親愛と憎悪、可憐な美しさと冷酷な残虐さ、運命と偶然など、対比されるものが緻密に散りばめられた物語でもある。 本作について、傑作?少なくとも作者渾身の力作であると思うが、同時に、気になることも多い。 本作のテーマはクライマックスに集約されているが、そこに至る物語があまりにも作為的過ぎる。舞台設定、登場人物、アイデア、スタイル、表現、すべてが主題のために奉仕していて自立していない。物語としてドラマ性を優先するのは当然のことだが、論理面の軽視はやはり気になる。かなりアンバランス。 例えば、過去の惨劇を強調した上でダミエム人保護といいながら、不十分な体制で観光客を受け入れるのは何故なのか? 観光客はなぜこの人々なのか? 連邦行政府の職員が3人だけなのは何故なのか? 観光客の世話が3人でできるのか? 3人の普段の家事はどうなっているのか? ロボットや自動機械が一切登場しないのは何故なのか? すべてがオートメーションで処理されるという設定でも良いと思うが、それすら描かれていない。描きたくないのか?(気がついてみると、ティプトリーの小説には自動機械がほとんど登場しない。ただし、本作には小道具として通信装置が登場する。) もう一点、『輝くもの天より墜ち』というタイトルについて、“FALLS FROM THE AIR”は〈ザ・スター〉からダミエムに降り注ぐノヴァの光と考えていたので、訳語としては『天より墜ち』より『天より降り』の方が適切なのではないかと思っていた。しかし、あえて『天より墜ち』と表記しているということは“堕天使ルシファー”を示しているのではないかということに気がつく。しかし、それは誰(何)を指しているのだろうか? もしかしたら羽を持った美しいダミエム人? それとも、観光客の中の誰か? 又は、3人の主人公の中の誰かなのか? 誰もが見かけとは違うということを示しているのだろうか? 惑星ダミエム全体ということもあるのか? 終盤の展開からするとどうとでも考えられるような気がしてきた。 | ||||
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私は他の作品を多く読み、作者を大変気に入っていますが、この作品は驚くほど退屈です。 少なくとも私にとっては。また『たった一つの冴えたやり方』も同様に、ティプトリー作品の中では、退屈な部類です。 是非、他の短編集から読み進めてください。 | ||||
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多くのSF小説を読んできたが、個人的にこの作品はベスト10に入る出来であった。(もちろんローカスやらヒューゴーの集計したランキングではいつも圏外だが) 大まかなストーリーラインとしては惑星ダミエムにてとても珍しい自然現象が起きるため、様々な人たちがこの星に降り立ち、この地にてバカンスを楽しむ。次第に旅行者たちのそれぞれの思惑が交差して、爆発的な超常現象と共に愛憎劇が頂点に達するというものである。 何はともあれ、ダミエム人にまつわる生々しい事柄など、ある種トラウマ的なものをこの小説から植え付けられる。 殺された星が爆発し、時空が歪み、それら血なまぐさいものが全て一緒くたに展開していく様はまさに二度と忘れられない小説体験となった。 凡庸な作品に飽々している方にこそ是非読んで欲しい作品である。 | ||||
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鼻につく会話、退屈な人物設定、背景。 ちょっとがっかりな内容でした。 | ||||
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この物語のタイトルは意味ありげである。 綺麗なダミエム人が最後には合理的な生き物に堕ちたその意味と取ることもできるし、宇宙に散ったザスターのことともとれる。 作者の心の中が作品に表れていると感じられる。死を望むものと死なないもの、生に狂ったもの作者の見事なセンスで描かれている。 | ||||
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ノヴァのガス雲通過を見物するために異星に集った10数人の人々が巻き起こす、ミステリ風味の、ちょっとだけドンパチがあるけど基本的にはそんなに騒がしくない話。ストーリーだけ追えば、どうということはない。 ただ、読み始めてわりと早いうちに、ある「匂い」を感じた。そう、『たったひとつの冴えたやりかた』と同じあの匂い。この先には、アレと同じ、胸が締め付けられるような悲劇が待っているという確信。もちろんティプトリーのこと、単なる悲劇で終わらせない、至高の読書体験も待っているに違いない。 先に進むのにこれほど勇気を振り絞らなければならない本があるとは。それくらい、『たったひとつの……』にはトラウマに近い衝撃を受けたわけだが、まぁ、だからと言って読まずに我慢できるわけがない。マゾヒスティックな快感を感じつつ、読む。 案の定(?)、物語では次々に悲劇が巻き起こるわけだが、「これか?」「それともこれか?」と自問しつつも先へ先へと読み進む。最後はある意味、極めつけの悲劇が待っているわけなんだけど、「ガーン」というショックというよりは、むしろ「ずしーん」という果てしない重量感。本を持つ手が震えたよ。あぁ、これだからティプトリーはやめられん。 | ||||
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衝撃的な死で知られる作家だけに、まさか新刊が読めるとは思いませんでした。それだけで押し頂いて読みました。「星のしずく」に関わる背徳事件の星・ダミエムが舞台! 中盤まではぐいぐいひきこまれるほど面白い。ただ、飛行ヒューマノイド・ダミエム人のサイズが大きすぎて(人類と同じくらい)、それじゃ飛べないよ、という邪念に最後まで悩まされました。 登場人物が多すぎるのと、多くの要素が持ち込まれすぎて、終盤は焦点がずれかけた感じです。短編集「愛はさだめ、さだめは死」のような完成度を求めてはいけません。 ただ、一度起きたことが簡単に取り返せない結末は良かったです。 突然ですが、スーパーボーイのプリンス・パオ万歳! | ||||
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本作は、「たった一つの冴えたやり方」というタイトルが 数多くの作品で引用されていることで有名なSF作家、故人 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの2つの長編小説の 一つで、新規翻訳です。 本作は異星人の住む惑星を舞台にしたSFサスペンスですが、 もとは1985年の小説であり、グレッグ・イーガンのように 先鋭的ではなく、ロバート・J・ソウヤーのようにSFとサス ペンスの融合に凝っているわけでもありません。 虫から進化した異星人たちと人類の交流は今読むと牧歌的 ですらありますし、サスペンスとしてもSF的な部分は少なく、 きわめて古典的なものです。 しかし、ストーリーテリングが素晴らしいのです。 主要登場人物だけでも十五人におよぶサスペンスが、 みごとに異星で展開されます。残酷な場面があり、 痛々しい描写があっても、私のような読者を読み続け させる力があります。 そして、最後の落日。余韻に圧倒されます。 | ||||
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世界観や登場人物の設定は秀逸です。序盤はじっくり時間をかけて、小説の舞台である「ダミエム星」に読者を引きずりこんでくれます。ただし、情景描写が乏しい場面がいくつもあり、大事な場面で一体何がどうなったのか、なぜそんな事が起こってしまったのか、何度も読み直さないといけないところがあります。原作がそうなのか、それとも邦訳上の問題なのか・・・。 | ||||
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600ページ近い本を完徹で読み切ってしまいました。登場人物は少ないのですが、序盤は横文字の登場人物の名前が頭に入らず物語にいま一つ入れませんでしたが、次第に物語の展開に引き込まれ、中盤以降は止めようにも止められなくなってしまいました。新聞の書評で五つ星でしたので購入して見ましたが・・・当たりでした。 最終盤はやや冗長な感じもしましたが、訳者のあとがきにもあるように作家の人生が投影されているようで、別の意味での迫力を感じました。 SF好きの方だけではなく、ミステリー好きの方にもお薦めできます。ただし読むのは、休日の前の日にした方が無難かもしれません。 | ||||
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