それまでの明日
評判
それまでの明日の評価:
3.69/5点 レビュー 91件。 C ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全118件 101〜118 6/6ページ
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「ミステリマガジン」3月号の特集でその待望の新作が3月に刊行される事を知り、まるで部屋の大掃除で古い書棚を整理していたら本と本の間に挟みながらいつしかその存在を忘れていた封筒に入ったへそくりを十数年ぶりに見つけたような(って、まるで、ハードボイルドらしくないが~笑)、そんな驚きと喜びを覚えながら静かに発売日を待っていた。
で、実際に読み始めると、「ミステリマガジン」にも掲載されていた第1章からぐんぐん引き込まれた。
ハードボイルドならではの自嘲的思索的な考察に極めてシニカルなでも洒落っ気のある会話の妙、そして洞察力あるディテール描写に文学性薫る硬質感。1章の最後の2行で見事に読者の心を鷲掴みしノワールな世界に誘う巧さ。
本来ならオモシロ本って一気読みしてしまうものなのだが、今回は逸る気持ちを落ち着かせ、時間を掛けてじっくり読んだ。
我らが沢崎の帰還に14年間の渇きを癒そうと思いつつも、果たして次はいつ逢う事が出来るのかとの想いが去来し、一気に読み切る事に躊躇したからだ。
結果として、それは本書の読み方としては良かったと思える。醸成された原寮ワールドにどっぷりと浸る事が出来たから。
錦織や橋爪らとのへらず口なやり取りも相変わらず魅せる、読ませる。
でも、正直、ミステリやサスペンスとしての劇的な展開を期待した方には物足らない部分もあるかも知れない。
確かに、死体や銀行強盗、危ないスジモノたちは登場するものの、それらは飽くまで探偵の仕事の中で不可欠な味付け程度の役割しか与えられていない。
その代り、強く意識させるのは、沢崎と彼を取り巻く人物たちの人間ドラマ。原寮の言葉を借りるなら、沢崎の探偵人生の中に踏み込んできている人間たちとのドラマである。
「ミステリマガジン」誌上で原寮は語っている。
“ハードボイルドに専念して良いものを書きたい、人間同士のぶつかり合いや良い台詞を書きたい。その思いを胸に意識して取り組んでいたら14年の年月が過ぎてしまった”と。
思えば、これまでも、原寮は作品の中で人間と人間、社会と人間の関わり合いを描いてきた。今回は親と子である。
終盤、なんかロバート・B・パーカーの「初秋」みたいだなと感じながらも、新たな沢崎ワールドの誕生を好意的に受け止めたい。
そして、現代を描く作家として避けては通れない未曾有のあの大惨事。
今作は東日本大震災を挟んでそれが起こるまでの物語であり、次作は震災後の物語になると言う。
正しくそれが起こる瞬間で物語が結ばれたあと、次なる沢崎の帰還はいつになるのか分からないが、その時が来るまで静かに待ちたい。