遠い山なみの光
評判
遠い山なみの光の評価:
3.92/5点 レビュー 119件。 D ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全86件 21〜40 2/5ページ
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3.92/5点 レビュー 119件。 D ランク
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小説の詳細ページを閲覧すると、ここに履歴が表示されます。最近閲覧した小説詳細ページへ簡単に戻る事が出来ます。
イギリスの田舎町で暮らす主人公、悦子の下へロンドンに住む娘のニキが訪ねてきます。そのニキの五日間の滞在期間に、悦子は故郷、長崎で生きた時代を回想します。おそらく1950年代。あの戦争が終わり、悦子は二郎と結婚していました。彼女は妊娠していましたが、そこで会った佐和子とその娘・万里子との日々が淡々と語られていきます。
悦子と義父にあたる「緒方さん」との会話、「緒方さん」と息子の二郎との会話、悦子と知り合いの(アメリカ人を恋人に持つ)佐和子との会話。そのそれぞれの会話が緊張感に満ち満ちており、まるで上質のサスペンス小説のようでした。もしかすると突き抜けてしまうのではないかという不安が突き抜けない。それは、やはり<小津>の映画のようでした。
最初に読んだ時に緩いと感じたあの<戦争>と長崎を襲った原爆についてのささやかな描写は、今読むと適切だったのだと思えたりもしました。何故なら、カズオ・イシグロの視点は<世界>の遥か上にあって、それほどのことであったとしても、世界の歴史の道筋の中では一つのインシデントであったに過ぎないと思えるからでしょう。
それでも「国宝」を書いた吉田修一と「限りなく透明の近いブルー」を書いた村上龍とカズオ・イシグロという三人の文学者が同じ長崎県の出身であることに深い痛みを覚えたりもしました。何故なのでしょうね?それを深掘りしながら考え続けることについてはひとまず批評家たちにお任せしたいと思います。
私は、ロンドンに住むことになった悦子が実はアメリカからイギリスに移住した佐和子であり、亡くなったのは悦子の娘ではなく万里子ではなかったのかと考え続けています。それでは勿論、辻褄が合わないことは理解しています。でも、それでも尚、悦子には長崎で娘を産んで、佐和子と万里子と共に見た長崎の港の遠い山なみの光を見て生きていて欲しかったと思うからかもしれません。
生きるということは、"A Pale View of Hills"が限りなく透明に近いブルーに染まっていくことなのでしょう。
なんて事だ。
◻︎「遠い山なみの光 "A Pale View of Hills"」(カズオ・イシグロ 早川書房) 2025/6/13。