スクールボーイ閣下

【この小説が収録されている参考書籍】

【この小説が載っている参考書籍】

評判

スクールボーイ閣下の評価:

4.59/5点 レビュー 32件。 D ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点4.59pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全42件 21〜40 2/3ページ
No.22
(5pt)

切ない

今まで読んで来たル・カレの作品の中ではちょっと毛並みが違って、
舞台はカンボジアから香港と幅広く、
作品名のスクールボーイ閣下も良く喋るし良く動きます。
007ほど派手なドンパチはありませんが、
車に爆弾を仕掛けられたりと手に汗握ります。

スクールボーイ閣下はスパイではあるが好青年で、
閣下が何日も考えて、自分が間違っていないと考える行動に出るところに、
とても好きです。この作品の救いだと思います。

ギラムの役に立たなさが笑えます。
会議中落書きしたり、女の子と上手く行ったり、骨折られたりしか
していません。(香港での運転は役に立ったかな)
スクールボーイ閣下 (1979年) (Hayakawa novels) Amazon書評・レビュー: スクールボーイ閣下 (1979年) (Hayakawa novels)より
B000J8FL8Y
No.21
(5pt)

中核の作品

スマイリー3部作の中核を担う1冊。前作から 引き続いた形で、直ちにサーカスを建て直すべくスマイリーと仲間たちが動き出します。
この第2作は何と言っても実際の諜報活動に従事するスパイ、活動員たちが主役です。
表の顔を持ちながらスパイ活動を続ける種々雑多な彼らの中でも、現地に骨を埋めるような老スパイの確かな手管、直情型のスクールボーイが巻き起こす波紋。そして彼らを援護しリードするサーカス。
中でも一本の線で結ばれたかのようなスマイリーとスクールボーイは裏表の存在というべきでしょうか。
不貞の妻アンに対してスマイリーができなかった直情をスクールボーイはいとも簡単に軽薄なリジーにぶつけ、作戦を危機に落とします。
しかしそんな中でも心情的中に同調を感じるスマイリーの人としての複雑さ、奥深さ。

ストーリーとして一級であるとともに「情誼」という言葉が相応しい1冊です。
スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV) Amazon書評・レビュー: スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404321
No.20
(5pt)

中核の作品

スマイリー3部作の中核を担う1冊。前作から 引き続いた形で、直ちにサーカスを建て直すべくスマイリーと仲間たちが動き出します。
この第2作は何と言っても実際の諜報活動に従事するスパイ、活動員たちが主役です。
表の顔を持ちながらスパイ活動を続ける種々雑多な彼らの中でも、現地に骨を埋めるような老スパイの確かな手管、直情型のスクールボーイが巻き起こす波紋。そして彼らを援護しリードするサーカス。
中でも一本の線で結ばれたかのようなスマイリーとスクールボーイは裏表の存在というべきでしょうか。
不貞の妻アンに対してスマイリーができなかった直情をスクールボーイはいとも簡単に軽薄なリジーにぶつけ、作戦を危機に落とします。
しかしそんな中でも心情的中に同調を感じるスマイリーの人としての複雑さ、奥深さ。

ストーリーとして一級であるとともに「情誼」という言葉が相応しい1冊です。
スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV) Amazon書評・レビュー: スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404313
No.19
(5pt)

頑張ってでも読みましょう。

ベルリンの壁が壊された時、
「エスピオナージュ事情はどうなるんだ!?」と叫んだ私に父が
貸してくれた本著、初版刊行当時の私は20代の小娘でした。
 まあ、離陸が遅い遅い、知らない日本語だらけの描写に何度も挫けそうに
なりながらも頑張って読んだ。途中からはのめり込み、夢中で読み、
結末に唖然とした。甘ちゃんだったから、「そんなあ・・・」と。
女としてはタイトルもスマイリーシリーズの中ではキュンとなる主人公の
愛称だったこともあって、ベストワン作品だったと思う。

 以来、カレの作品はほとんど読んでいるが、スマイリーシリーズを越える
興奮はもらっていない。
 昨年『ティンカー・テイラー・・・』が映画化され、
また、私が最近はまっているスピッツの『夜を駆ける』という曲を
初めて聴いた時に浮かんだ情景が『スクールボーイ閣下』の結末に
味わった切なさとだぶり、そんなことがきっかけで、また読んでみた。

 息詰まる情報分析のやりとり、CIAとの駆け引き、それぞれ一癖も
ふた癖もある人間たちのエピソードの描写が、冗漫をギリギリで
かすめくぐり、
緊迫感と人間臭さをギュウギュウと私の胸に揉みこんでくるカンジに
やっぱり圧倒された。

 そして、頭が良いはずのスマイリーが不貞妻へいつまでも女々しく
執着する姿は、あの時の私には理解不能だったけれど、
今回は‘スクールボーイ閣下’とスマイリーの、‘できる’オトコの
人間としてのひび割れの相似形を透かして見ることができた。 
 でもスクールボーイ閣下が惚れた女はなあ・・・ やっぱり了解できない。
たぶんそういうことじゃないのね。女のため、じゃなかったんだ。
 今の私の理解はそこへ着地している。
 
 小娘だった私に、オクスフォード大学の食堂でMI6に
スカウトされることを夢想させ、
若かった時とは違う切なさと、読破した後の脱力感を与えてくれる
カレの作品をもうこれからそれほど多くは手にすることはできないことを
思うと、やっぱりとても残念だ。

 


スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV) Amazon書評・レビュー: スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404321
No.18
(5pt)

頑張ってでも読みましょう。

ベルリンの壁が壊された時、
「エスピオナージュ事情はどうなるんだ!?」と叫んだ私に父が
貸してくれた本著、初版刊行当時の私は20代の小娘でした。
 まあ、離陸が遅い遅い、知らない日本語だらけの描写に何度も挫けそうに
なりながらも頑張って読んだ。途中からはのめり込み、夢中で読み、
結末に唖然とした。甘ちゃんだったから、「そんなあ・・・」と。
女としてはタイトルもスマイリーシリーズの中ではキュンとなる主人公の
愛称だったこともあって、ベストワン作品だったと思う。

 以来、カレの作品はほとんど読んでいるが、スマイリーシリーズを越える
興奮はもらっていない。
 昨年『ティンカー・テイラー・・・』が映画化され、
また、私が最近はまっているスピッツの『夜を駆ける』という曲を
初めて聴いた時に浮かんだ情景が『スクールボーイ閣下』の結末に
味わった切なさとだぶり、そんなことがきっかけで、また読んでみた。

 息詰まる情報分析のやりとり、CIAとの駆け引き、それぞれ一癖も
ふた癖もある人間たちのエピソードの描写が、冗漫をギリギリで
かすめくぐり、
緊迫感と人間臭さをギュウギュウと私の胸に揉みこんでくるカンジに
やっぱり圧倒された。

 そして、頭が良いはずのスマイリーが不貞妻へいつまでも女々しく
執着する姿は、あの時の私には理解不能だったけれど、
今回は‘スクールボーイ閣下’とスマイリーの、‘できる’オトコの
人間としてのひび割れの相似形を透かして見ることができた。 
 でもスクールボーイ閣下が惚れた女はなあ・・・ やっぱり了解できない。
たぶんそういうことじゃないのね。女のため、じゃなかったんだ。
 今の私の理解はそこへ着地している。
 
 小娘だった私に、オクスフォード大学の食堂でMI6に
スカウトされることを夢想させ、
若かった時とは違う切なさと、読破した後の脱力感を与えてくれる
カレの作品をもうこれからそれほど多くは手にすることはできないことを
思うと、やっぱりとても残念だ。

 


スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV) Amazon書評・レビュー: スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404313
No.17
(5pt)

赤いもぐらの正体は?

「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」に続くスマイリー三部作の二作目です。約20年前に単行本で読み、何度も読み返しています。多くの方にお薦めしたいので、こちらでレビューさせて頂きます。

本作を読む場合には東西冷戦時代に中ソ対立が一触即発の状態にまで高まり、互いに情報合戦にしのぎを削っていたことを念頭に置く必要があります。また、シリーズの他の作品と異なるのは、話の主な展開がヨーロッパではなくアジアであることです。

前作で、英国情報部(サーカス)は部内に潜むソビエト側スパイ(もぐら)により大打撃を受けました。内閣からの秘密の依頼により、引退したジョージ・スマイリーが部外から綿密な調査を行い、最終的にもぐらの正体を暴くことに成功しました。しかし、サーカスの信用はがた落ちになりました。今回、この廃墟と化したサーカスを立て直すべくスマイリーが運営責任者(コントロール)として乗り込んできます。彼は冷酷とも言える断固たる姿勢で体制を一新し、側近となる高級スタッフを新しく選任します。その中には、中国専門家のドク・ディサーリスや前作でも登場した超人的頭脳を有する女性コニー・サックスが含まれ、活躍します。

スマイリー達の部内資料の精査や聴き取りにより、香港在住の謎の中国人富豪ドレイク・コーへの不審な金の流れが明らかになります。すなわち、ソビエト情報部(モスクワセンター)の運営責任者でスマイリーの仇敵であるカーラから、複雑な経路を経て定期的に大金がコーの口座に振り込まれ、使われずに積立られていることが付きとめられます。

スマイリーの指令により現地でコーの正体に迫るのは、諜報員のジェリー・ウィスタビーです。彼は英国貴族の子弟で、そのために「honourable schoolboy(スクールボーイ閣下)」と冷やかされる直情径行の青年です。コーの愛人の英国女性リジー、リジーが激しい愛を抱く元恋人のパイロット(リカルド)、それにウィスタビーのリジーに対する複雑な思いなどがからまり、話が展開して行きます。

最終的に、中国共産党の中枢部にカーラの操るもぐらが存在することが明らかになります。さて、宿敵カーラに打撃を与えるために、スマイリーはこのもぐらを一体どのようにするつもりなのでしょうか?また、もぐらとコーの関係は?なお、最終場面で悲劇が待っています。

長すぎるという批判の多い作品で、私もそのように感じます。しかし、ウィスタビーの取りつかれた想いや肉親に対するコーの偏愛(彼の悲しい生い立ちが背景にある)など、冷徹な諜報の世界と狂おしい情念の世界が並行して描かれ、最後まで読ませます。そして、前作と本作はシリーズ第三作の「スマイリーと仲間たち」の最終章の伏線となっています。

非常に緻密で複雑なプロットで登場人物も多いので、リストを作りメモをしながら読まれることをお勧めします。
スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV) Amazon書評・レビュー: スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404321
No.16
(5pt)

赤いもぐらの正体は?

「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」に続くスマイリー三部作の二作目です。約20年前に単行本で読み、何度も読み返しています。多くの方にお薦めしたいので、こちらでレビューさせて頂きます。

本作を読む場合には東西冷戦時代に中ソ対立が一触即発の状態にまで高まり、互いに情報合戦にしのぎを削っていたことを念頭に置く必要があります。また、シリーズの他の作品と異なるのは、話の主な展開がヨーロッパではなくアジアであることです。

前作で、英国情報部(サーカス)は部内に潜むソビエト側スパイ(もぐら)により大打撃を受けました。内閣からの秘密の依頼により、引退したジョージ・スマイリーが部外から綿密な調査を行い、最終的にもぐらの正体を暴くことに成功しました。しかし、サーカスの信用はがた落ちになりました。今回、この廃墟と化したサーカスを立て直すべくスマイリーが運営責任者(コントロール)として乗り込んできます。彼は冷酷とも言える断固たる姿勢で体制を一新し、側近となる高級スタッフを新しく選任します。その中には、中国専門家のドク・ディサーリスや前作でも登場した超人的頭脳を有する女性コニー・サックスが含まれ、活躍します。

スマイリー達の部内資料の精査や聴き取りにより、香港在住の謎の中国人富豪ドレイク・コーへの不審な金の流れが明らかになります。すなわち、ソビエト情報部(モスクワセンター)の運営責任者でスマイリーの仇敵であるカーラから、複雑な経路を経て定期的に大金がコーの口座に振り込まれ、使われずに積立られていることが付きとめられます。

スマイリーの指令により現地でコーの正体に迫るのは、諜報員のジェリー・ウィスタビーです。彼は英国貴族の子弟で、そのために「honourable schoolboy(スクールボーイ閣下)」と冷やかされる直情径行の青年です。コーの愛人の英国女性リジー、リジーが激しい愛を抱く元恋人のパイロット(リカルド)、それにウィスタビーのリジーに対する複雑な思いなどがからまり、話が展開して行きます。

最終的に、中国共産党の中枢部にカーラの操るもぐらが存在することが明らかになります。さて、宿敵カーラに打撃を与えるために、スマイリーはこのもぐらを一体どのようにするつもりなのでしょうか?また、もぐらとコーの関係は?なお、最終場面で悲劇が待っています。

長すぎるという批判の多い作品で、私もそのように感じます。しかし、ウィスタビーの取りつかれた想いや肉親に対するコーの偏愛(彼の悲しい生い立ちが背景にある)など、冷徹な諜報の世界と狂おしい情念の世界が並行して描かれ、最後まで読ませます。そして、前作と本作はシリーズ第三作の「スマイリーと仲間たち」の最終章の伏線となっています。

非常に緻密で複雑なプロットで登場人物も多いので、リストを作りメモをしながら読まれることをお勧めします。
スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV) Amazon書評・レビュー: スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404313
No.15
(4pt)

下巻のために、上巻はじくっくり読みこむべし

1977年 CWA ゴールドタガー賞。
週刊文春1979年 総合9位

”サーカス”=英国諜報部 ジョージ・スマイリー 三部作の第二作目。

”もぐら”のために壊滅的なダメージを受けサーカスは、ライバル ソ連諜報部 指揮官 カーラの”金脈”の端緒を見出す。スマイリーは、(イギリス殖民地時の)香港、カンボジア、ベトナム、中国へ舞台をかえて、サーカス起死回生の闘いを遂行していく。

上巻は、なかなか話が展開していかない。途中で、挫折しかけるのだが、ここで、じっくりと読み込んでおけば、下巻の面白さは十分堪能できるはず。タイトルにある”スクール・ボーイ”こと、ジェリー・ウェスタビー臨時工作員が活躍するのは下巻から。ウェスタビーを主として話が展開してからが見所が多い。特に、戦時下のカンボジアでの諜報活動は、緊張感が高く、社会情勢という点でも興味深い。

組織としての権力闘争が背景に、末端のものの悲哀を描いていたりして、ラストは第三作目への余韻を残している。

第一作『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ 』より、暴力描写は多いが、臨場感は、本作品の方が楽しめるし、続きが読みたくなるという点でも、優れている。ただ、第一作を読んでいないと、本作品の冒頭から、隠語がわからなかったりするので、順に読むことをお奨めする。
スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV) Amazon書評・レビュー: スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404321
No.14
(4pt)

下巻のために、上巻はじくっくり読みこむべし

1977年 CWA ゴールドタガー賞。週間文春1979年 総合9位
”サーカス”=英国諜報部 ジョージ・スマイリー 三部作の第二作目。
”もぐら”のために壊滅的なダメージを受けサーカスは、ライバル ソ連諜報部 指揮官 カーラの”金脈”の端緒を見出す。スマイリーは、(イギリス殖民地時の)香港、カンボジア、ベトナム、中国へ舞台をかえて、サーカス起死回生の闘いを遂行していく。
上巻は、なかなか話が展開していかない。途中で、挫折しかけるのだが、ここで、じっくりと読み込んでおけば、下巻の面白さは十分堪能できるはず。タイトルにある”スクール・ボーイ”こと、ジェリー・ウェスタビー臨時工作員が活躍するのは下巻から。ウェスタビーを主として話が展開してからが見所が多い。特に、戦時下のカンボジアでの諜報活動は、緊張感が高く、社会情勢という点でも興味深い。
組織としての権力闘争が背景に、末端のものの悲哀を描いていたりして、ラストは第三作目への余韻を残している。
第一作『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ 』より、暴力描写は多いが、臨場感は、本作品の方が楽しめるし、続きが読みたくなるという点でも、優れている。ただ、第一作を読んでいないと、本作品の冒頭から、隠語がわからなかったりするので、順に読むことをお奨めする。
スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV) Amazon書評・レビュー: スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404313
No.13
(4pt)

下巻(文庫版)のレビュー

この下巻は本作の第二の主人公とも言うべきジェリーの独壇場と言ってもよく、通俗的なスパイ小説的な楽しみ方もできる。この筆者の小説にしては珍しく、酒と女とアクションに溢れたものになっている。ただし、本作が一線を画しているのは、プロットが極めて緻密に仕込まれているとともに、非情なスパイの世界を描くことに成功しているからにほかならない。特に、米国の情報機関との関係や、英国国内での権力闘争が英国の情報活動に影響を及ぼしていることまでスパイ小説に書き込めるのはこの筆者だけなのではないかと思われる。上質な、大人のためのエンターテイメントだ。
スクールボーイ閣下 (1979年) (Hayakawa novels) Amazon書評・レビュー: スクールボーイ閣下 (1979年) (Hayakawa novels)より
B000J8FL8Y
No.12
(4pt)

下巻(文庫版)のレビュー

この下巻は本作の第二の主人公とも言うべきジェリーの独壇場と言ってもよく、通俗的なスパイ小説的な楽しみ方もできる。この筆者の小説にしては珍しく、酒と女とアクションに溢れたものになっている。ただし、本作が一線を画しているのは、プロットが極めて緻密に仕込まれているとともに、非情なスパイの世界を描くことに成功しているからにほかならない。特に、米国の情報機関との関係や、英国国内での権力闘争が英国の情報活動に影響を及ぼしていることまでスパイ小説に書き込めるのはこの筆者だけなのではないかと思われる。上質な、大人のためのエンターテイメントだ。
スクールボーイ閣下 (1979年) (Hayakawa novels) Amazon書評・レビュー: スクールボーイ閣下 (1979年) (Hayakawa novels)より
B000J8FL8Y
No.11
(4pt)

大人のためのエンターテイメント

 この種の作品でここまで貪るように読んだのはこれが初めてであるように思う。イギリス統治下の香港というエキゾチックな世界で繰り広げられる複雑な人間ドラマは実に読み応えがある。英国政府部内の情報関係部署の間の会議や、米国の情報機関との会議など、やけに地味かつ実務的な場面が多く、いわゆるスパイ小説とは一線を画している内容になっているのだが、これがこの作品にリアリティと臨場感を与えている。
 本作は三部作の第二作である。第一作目(『ティンカー・・・』)は必ず読んでおいた方がいい。読んでおかないと本作のプロットは理解できない。また、本作の訳が優れているというのも目立たないが重要なポイントである。
スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV) Amazon書評・レビュー: スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404321
No.10
(4pt)

大人のためのエンターテイメント

 この種の作品でここまで貪るように読んだのはこれが初めてであるように思う。イギリス統治下の香港というエキゾチックな世界で繰り広げられる複雑な人間ドラマは実に読み応えがある。英国政府部内の情報関係部署の間の会議や、米国の情報機関との会議など、やけに地味かつ実務的な場面が多く、いわゆるスパイ小説とは一線を画している内容になっているのだが、これがこの作品にリアリティと臨場感を与えている。
 本作は三部作の第二作である。第一作目(『ティンカー・・・』)は必ず読んでおいた方がいい。読んでおかないと本作のプロットは理解できない。また、本作の訳が優れているというのも目立たないが重要なポイントである。
スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV) Amazon書評・レビュー: スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404313
No.9
(5pt)

怖いほど計算された構成の妙

比較的アクションの要素が他の作品よりも強めの小説ですが、それでも恐ろしく地味です。
ただその地味さ加減が恐ろしいほど計算されているようで、筋立てそのものよりの怖いくらいです。
例えば第1章は、それだけで短編小説としても成立しそうですが、香港の記者クラブの喧騒(物語時点の描写)とサーカスの思い出話として語られる本事件の断片(物語の未来の時点)が、口語に入り混じり、徐々に香港を都落ちしたイギリス情報部の惨めな現在と、そこから如何にスマイリーが反撃を成功させたのかが語られるのだと、語られぬ悲劇を暗示しつつ読者に知らせていきます。
また、第2章は全編の序曲ともいうべきエピソードで、一見、無くても成立する章ですが、このときのウェスタビーのしたこと、出来なかったことが、変奏曲として全編を通して語りなおされています。
精密に構成された本作は、物語自体の魅力もさることながら、小説としての構成や語りの妙を如何にエンターテイメントとして昇華させるかという理想的な姿をわれわれに提示してくれているようです。
スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV) Amazon書評・レビュー: スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404313
No.8
(5pt)

怖いほど計算された構成の妙

比較的アクションの要素が他の作品よりも強めの小説ですが、それでも恐ろしく地味です。
ただその地味さ加減が恐ろしいほど計算されているようで、筋立てそのものよりの怖いくらいです。
例えば第1章は、それだけで短編小説としても成立しそうですが、香港の記者クラブの喧騒(物語時点の描写)とサーカスの思い出話として語られる本事件の断片(物語の未来の時点)が、口語に入り混じり、徐々に香港を都落ちしたイギリス情報部の惨めな現在と、そこから如何にスマイリーが反撃を成功させたのかが語られるのだと、語られぬ悲劇を暗示しつつ読者に知らせていきます。
また、第2章は全編の序曲ともいうべきエピソードで、一見、無くても成立する章ですが、このときのウェスタビーのしたこと、出来なかったことが、変奏曲として全編を通して語りなおされています。
精密に構成された本作は、物語自体の魅力もさることながら、小説としての構成や語りの妙を如何にエンターテイメントとして昇華させるかという理想的な姿をわれわれに提示してくれているようです。
スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV) Amazon書評・レビュー: スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404321
No.7
(5pt)

ルカレはいつも最高です!

スマイリー対ソ連諜報部との戦いを描く三部作の第二弾。前作「ティンカー、テイラー、ソウルジャー」および次回作品の「スマイリーと仲間たち」と3部作を形成するスマイリー対カーラの死闘の一作だ。今度は香港、カンボジアと言ったアジアが舞台であり、またソ連の中国への二重スパイをめぐって、一匹狼的スパイであるジェリーの活躍の場が多い。しかし、やはり、スマイリーを支えるのはコニーやドクといったプロ中のプロ、まさに職人的な人間である。報われない地道な仕事からカーラが中国に送り込んだスパイの形跡をたどっていく。こういった描写はまず他の作者には出来ない。前作でカーラにがたがたにされた英国諜報部を立て直すべくスマイリーはほんのささいな手がかりも逃がさず、中国人実業家を洗い、彼の
弟を見つけ出す。これにジェリーのリーサへの純愛が絡んでくる。ルカレの作品には結構純愛を描くものが多い。スマイリーのアンに対する気持ちや、「ナイトマネジャー」や「ナイロビの蜂」に出てくる主人公も純愛といったテーマで描かれていく。ここまでくれば次回作の「スマイリーと仲間たち」も読んで、カーラへの彼の復讐劇の結末を見ざるを得ないと誰もが思うだろう。
スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV) Amazon書評・レビュー: スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404321
No.6
(5pt)

ルカレはいつも最高です!

スマイリー対ソ連諜報部との戦いを描く三部作の第二弾。前作「ティンカー、テイラー、ソウルジャー」および次回作品の「スマイリーと仲間たち」と3部作を形成するスマイリー対カーラの死闘の一作だ。今度は香港、カンボジアと言ったアジアが舞台であり、またソ連の中国への二重スパイをめぐって、一匹狼的スパイであるジェリーの活躍の場が多い。しかし、やはり、スマイリーを支えるのはコニーやドクといったプロ中のプロ、まさに職人的な人間である。報われない地道な仕事からカーラが中国に送り込んだスパイの形跡をたどっていく。こういった描写はまず他の作者には出来ない。前作でカーラにがたがたにされた英国諜報部を立て直すべくスマイリーはほんのささいな手がかりも逃がさず、中国人実業家を洗い、彼の
弟を見つけ出す。これにジェリーのリーサへの純愛が絡んでくる。ルカレの作品には結構純愛を描くものが多い。スマイリーのアンに対する気持ちや、「ナイトマネジャー」や「ナイロビの蜂」に出てくる主人公も純愛といったテーマで描かれていく。ここまでくれば次回作の「スマイリーと仲間たち」も読んで、カーラへの彼の復讐劇の結末を見ざるを得ないと誰もが思うだろう。
スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV) Amazon書評・レビュー: スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404313
No.5
(5pt)

偏愛する小説

経営していた会社が倒産の危機に瀕したとき、持ち歩いて読み続けたのがこの本だった。
読んでも、ちっとも明るい気持ちにはなれない。何か新しいアイデアが生まれてくるわけでもない。もちろんハッピー・エンドなわけがない。そんなお話のどこに魅かれたのか。
それは「時間と共に何かが内部で熟成することへの信頼」である。主人公のジョージ・スマイリーは、本作では確か60代のはずである。自動車を運転するのでさえ、億劫になる年齢である。彼の行動、彼が底力を振り絞って繰り出す手立てには、通過してきた時間と経験がそのままに反映されている。言葉をかえるならば、衝動ともっとも遠いところで成り立つ人間の行動を、これほどリアルに描いた言語表現は、そうめったにあるものではない。この本を読んでいたとき、評者は人生で一番「キレてはならない」時期にあたっていた。無意識のうちに、「絶対にキレることのない、それでいて血の通った人物像」を、ロール・モデルとして求めていたのだろう。そういうお話を読みたい人々は、そう多くはないけれども、なくなることはないだろう。
スクールボーイ閣下 (1979年) (Hayakawa novels) Amazon書評・レビュー: スクールボーイ閣下 (1979年) (Hayakawa novels)より
B000J8FL8Y
No.4
(4pt)

苦い結末そして第3部へ

私はジョン・ル・カレを「寒い国から帰ってきたスパイ」が日本に紹介されたころから読んでいます.苦い結末というのは,彼の十八番ですね.
この「スクールボーイ閣下」でも,いくつかのエピソードが次第に紡ぎあわされて,なんともやるせないエンディングに向かいます.
そうして,宿敵カーラとの対決となる最終解決は3部作の最後「スマイリーの仲間たち」へ.
3部作の真ん中というのは,展開が難しいせいかあまり面白いのがないというのが,私の偏見でしたが,この「スクールボーイ閣下」に限っては,それは当てはまりません.
なお,3部作とはいうものの,各編ともほぼ独立して楽しめるような構成になっています.
スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV) Amazon書評・レビュー: スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404321
No.3
(4pt)

これは名作ですね

おなじみジョージ・スマイリーの宿敵カーラとの対決3部作.その真ん中にあたる巻です.第1部「ティンカー,テイラー,ソルジャー,スパイ」や第3部「スマイリーと仲間たち」よりもボリュームがあり,2分冊の文庫本になっています.私はこの3部作の中では,これが一番好きです.イタリア・トスカーナの村にひっそりと身を潜めるスパイ,ジェラルド・ウェスタビーのもとへロンドンから電報が届く.イギリス情報部からの「お召し」である.こうして小学生(スクールボーイ)というあだ名のスパイが,香港から東南アジアを舞台とした陰謀に挑んでいく...舞台や人物像の書き込み方が尋常ではない凝りようです.渋すぎると思う人もいるかもしれませんが.いかにもイギリス流の正統的なエスピオナー!ジ(スパイ)小説.派手なアクションはないが,おすすめ.
スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV) Amazon書評・レビュー: スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404321