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神の手廻しオルガン



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【この小説が収録されている参考書籍】
神の手廻しオルガン

神の手廻しオルガンの評価: 4.67/5点 レビュー 6件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.67pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全5件 1~5 1/1ページ
No.5:
(5pt)

タイトルに込められた重厚なテーマ

腹にズンと響いた骨太の作品。

欧州旅行の際にポーランド人の若い女性・アンカと知り合った主人公夫妻。アンカは後に日本に留学し、親しく交流するようになる。

日本とポーランドで起きた二つの殺人。一見、無関係に思える二つの事件だが、日本での殺人事件の陰には、ポーランド人の姿が見え隠れする。アンカの祖父が強制収用所で記したという日記に、この二つの事件を結ぶ鍵が隠されているのか。そして、アンカの謎めいた言動の理由は…。

ナチスによる強制収用といえばユダヤ人のそれが有名であり、ポーランド人強制収用所の存在については、日本ではあまり知られていない。目を背けたくなるようなその陰惨な実態を、本書は深く剔り出している。

さらには、そこに止まらず、戦後はナチスを「追う」側となった被占領国民の心理や、敗戦の気配が濃厚となる中でのナチス党員の心うちなど、第二次大戦を多面的に捉えているところに、本書の凄みがある。

「神の手廻しオルガン」の意味が明らかになったときに、著者が本書で訴えたかった重厚な主題が理解できた。

ミステリーとしての展開には、やや強引なところも見られたものの、読者を捕らえて離さない、力のある作品である。
神の手廻しオルガンAmazon書評・レビュー:神の手廻しオルガンより
4334911692
No.4:
(5pt)
※削除申請(1件)

最後まで読者を引っ張ってくれました。お薦めします。

本の題名からは想像できない展開でしたが最後まで読者を引っ張ってくれました。人間世界は時空(場所と歴史と言っていかも)四次元ですすが、今回のミステリーはポーランドと犬山市(空間)と第二次大戦のヨーロッパ、戦後の舞鶴への引き上げ者(平桟橋への引き上げ船は昭和の三十年代まであったのでは)の話から戦後の日本、それに現代の日本の犬山市とポーランド(時間)。この時空四点を結ぶ点と線がどのようにして最後のジグソーパズルを完成させるのか最後まで引っ張ってくれます。最初の読み始め 生命保険販売が出てきたときは苦笑してしまいましたが、続く二人の主婦が山へ行く場面が出てきたときは、あの残虐な京都・長岡の"ワラビ取り殺人事件"をモチーフにしているのかと思いましたが勘ぐり過ぎでした。(高村薫のレディジョカーはグリコ・森永事件をモチーフにしています)
刑事コロンボの様にほぼ犯人が特定されていて、最後にあの独特の風貌と言い回しで事件を解決への導く、スタイルもありますが、こちらは最後の解決のピースを出来る限り読者から隠し、最後まで読者を引っ張って行くタイプです。他の書物を読んでもいても、途中でおおよその筋書きが解ってしまうものも多くあります。歴史的な書物としてナチスやアウシュビッツ収容所等の話は読んでいたので、現実にはもっと酷い内容も在りますが、あの日記の部分は一般には少し長く感じられるのでは。(まあ、主人公=作者の出自(ソフトウェア技術者)を考えると、物語展開の上での論理的な破綻をきたす事を避けたのでしょうか)
なかなか、キーとなるピースが見つからない中で、この捕虜収容所での日記のタイプライターを担当のした女性の関係者・・・が出て、ああ、これはどうも解決のパズルのキーに成るなと思えども、どう展開するのかは解りませんでした。通常最後の解決に繋がる伏線が途中途中にちりばめてあるのですが、今回はそれを最後まで隠しているために、ジグソーパズルの最後のピースは一気に主人公(=著者)が一人で嵌め込まなければ成らなく、どうしても最後、説明一辺倒にみえます。ここはもう一人の主人公の妻との会話のスタイルで展開するか、せっかくコンピューター関連ですから推理に強い職場の先輩(北京都大学の数学科とか!)との対話形式とかの形式でも取ってみたらとおもいますが(当事者でない単なる読者の無責任な考え。)
著者はSEとして本店が作ったソフトウェアのマニアルに従い、本社のすばらしい技術力を自分の技術者としての力と思い、周りの顧客も個人してのSEと当事無敵を誇った本社(支店出なく)の代紋を重ねて同一視していた環境で仕事をしていたと思われます。最近よく想定外と言う言葉が出てきますが、優秀な技術者ほど、この問題が起こる前に先に論理的な破綻の無いよう想定外を想定しなければなりません。問題が起きてから、"此れは想定外でした"、ってのはソフトウェア技術者としては失点です。出版という物理的制約(ページ数とか売ると言うマーケット上の)も在ったでしょうが、主人公(=著者)の優秀なSE(最近はこの言葉も聞かなくなって、何でもIT(not it)になってしまったけど)としての矜持が、最後の物語としての論理的な整合性を追及するあまり、多くの説明を最後に一人ですると言う展開になったのではないでしょうか。最後に直接関係なかったのですが、日本に多くの都市があるのに、なぜ犬山市なのかは余りストーリーには関係無かったようですね。これが伊賀や奈良の限界集落あたりで、エジプトの古代遺跡とかを時空四次元空間に配置すると、八墓村やインディー・ジョーンズの世界になってしまい風呂敷の拡げすぎになって収集がつかなくなりそですね。長くなりましたが面白かったです。今後を期待します。
神の手廻しオルガンAmazon書評・レビュー:神の手廻しオルガンより
4334911692
No.3:
(5pt)

AYAME

物語がシステムを組むように展開して一気に読めました。次回作が楽しみです。
神の手廻しオルガンAmazon書評・レビュー:神の手廻しオルガンより
4334911692
No.2:
(5pt)

超お勧めです

細かな筋のところで少し無理かなと思えるところもありますが、ミステリーとしてでなく、通常の文芸小説としても高いレベルに仕上がっていると思います。超お勧め作品です。
神の手廻しオルガンAmazon書評・レビュー:神の手廻しオルガンより
4334911692
No.1:
(5pt)

現代ミステリーらしい謎が気品高く配置された高品質ミステリー

主人公 吉村学はIT企業のエンジニアを定年退職したシニアライフのやるせない浮遊感を趣味である推理小生の翻訳に費やしている男だ。その吉村がポーランド旅行から巻き込まれた事件を描く謎解きは、翻訳文や手紙といった形で語られる。吉村の語る端正で論理的な文章はまさ科学に立脚する技術者のものであり、吉村が日本を代表するエンジニアであったことを彷彿とさせる。さらに物語をぐいぐいと引っ張っていく筆致は吉村の卓越したリーダーシップの証であるだろう。物語は残虐な殺人と凄惨なアウシュビッツ捕虜収容所そして陰鬱なポーランドの風景のなかで展開するが、吉村とその妻の善良さと飄々とした立ち居振る舞いが全体の雰囲気を救っている。
テンポよく進んでいく物語は、第二次世界大戦当時と現代の二つの地点で起こる事件を紡ぎ、織り重なりながら一つの謎解きへと修練していく。中盤の新たな事件、解き明かされないまま置かれた謎が適度に配置されているのは現代的なミステリーの定石だが、伏線を適度に回収しつつ進んでいく物語のうまさに気持ちよく流されて読み進むことができる。福山ミステリー文学新人賞の選評で島田荘司が感嘆した、文学の衣を纏ったミステリーという手技を堪能した。
神の手廻しオルガンAmazon書評・レビュー:神の手廻しオルガンより
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