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春の夢
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春の夢の評価:
| 書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.44pt | ||||||||
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全32件 21~32 2/2ページ
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| 辻原登氏は、「黒髪」の中で(、だったと思う)、カフカの言葉(、これも記憶があいまい)、〈私は、悔いる〉という言葉を引用している。心の中に名残を、悔いを残したまま、この世を去るのは、口惜しいことだろう。 本作「春の夢」において、沢村千代乃の生前の顔、そして、死に顔は次のように描写されてある。 生前の顔。 「(略)ひとりの人が、何枚ものお面をかぶって、取っ換え引っ換えしてる感じ。顔は変わっても目だけは一緒(略)」 と、陽子。 死に顔。 「きのう、お棺の扉を開いたら、沢村さんはお面を全部外してた」 と、哲之。 これは、 死に顔こそが、その人間の、隠しても隠しきれない究極の本性なのではあるまいか。 という哲之による仮説と直結した言葉だった。「死に顔」は、その人の生き様を映す鏡らしい。自分は、悔いなく生きられるだろうか。悔いなく生きたかどうか、それは、私が死んだときでなければ、わからない。 この小説の書き出しは、こうだ。 夕暮の道に桜の花びらが降ってきた。桜の木などどこにも見あたらない商店街のはずれだったので、井領哲之は、それが誰かのいたずらで、自分の体めがけて撒き散らされた小さな汚物みたいな気がして、頭上のあちこちをかすかな怯えのまじった目であおいだ。 「桜の木などどこにも見あたらない」にもかかわらず、「桜の花びらが降る」。不思議だ。不気味だ。怪談じみている。何かが起こりそうだ。そんなとき、主人公の哲之は、「誰かのいたずら」として、いわば合理的・現実的な判断を下している。この時点で、哲之は、読者は、どこか別の世界へ連れ込まれてしまっている。 書き出しの描写は、ラストで次のように変奏される。 ときおり、操り人形のように首をもたげ、春の光に満ちた空を見つめた。(略) 哲之の身に何が起こったのか、それは、本書を読んでのお楽しみ。 最後に、本書における名言を一つ紹介して、このレヴューを閉じたい。 「人生が五十センチの長さのもんやとしたら、男と女のことなんて、たったの一センチくらいのもんやで。そやけど、その一センチがないと五十センチにはなりよれへん」 | ||||
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| ある日真っ暗な部屋で哲之は、柱にクギを打とうとして いっぴきの蜥蜴まで打ち付けてしまう。 しかし、それでもなお蜥蜴は生きていた。 哲之はこの蜥蜴を「キンちゃん」と名付け、 2人は奇妙な共同生活を送る。 哲之には死んだ父が残した借金があり、 取り立て屋のヤクザから逃げてこの部屋にやって来た。 柱にクギ付けにされたキンちゃんと どこにも行き場の無い哲之との奇妙な日々。 ホテルのボーイのバイトの日々を送り ホテル内の権力闘争に巻き込まれ、さらにヤクザに 見つかり殴られ、死にかかる哲之。 唯一の救いであった陽子の愛。 しかし、その陽子にも別に心を惹かれる男が現れる。 心に虚無を抱えて生きる哲之。 これは現代版『山椒魚』だ。 青春物として仕立てられていて、滅法面白い。 やっぱり青年は、虚無やデカダンを身に抱えて生きねば。 当時の青年に比べて、昨今の青年達の何と薄っぺらな事か。 そんな事を考えながら読みました。 | ||||
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| 15年前、まだ学生だった頃に出会った。 みずみずしい生命の躍動と静謐な清潔感を同時に感じる作品。 タイトルは「春の夢」に改題してよかったと思います。 あなたがまだ学生なのであれば、 数時間と数百円をこの小説にささげてほしい。 自分の中では宮本作品中「錦繍」と並ぶベスト作品です。 ああ、学生に戻りてえなぁ。 | ||||
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| 壁に釘で止められてしまったトカゲと、親の借金で身動きが取れなくなってしまった主人公。彼らは自由を手に入れられるのだろうか?というテーマで、主人公の姿をトカゲに投影したのを面白いアイデアだと思う。しかしながら終盤の展開が強引すぎて、少し興ざめしてしまった。 | ||||
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| 「空を飛ぶものは、みなふたつの翼を持っている。そして、一つの鏡を持っている」。湧き出る生命力を信じ、明るい方へ向かいたくなったときに読む本。私はこの本が大好き。何度も読んでいます。 | ||||
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| 大学生の時に初めて読んだ。そのときは「蜥蜴の話」という印象しか残らなかった。でも「また読みたい」とずっと思っていて、ついに見つけて再読。28歳になった今、感じることはやはり少し違っているようで、心を掴まれた。読んでいてハラハラドキドキもしないし、ひどくショッキングだったりすることもあまりない、静かな物語。しかし、心の奥深くに浸透してくる感がある。数年したら、またストーリーもタイトルも忘れてしまうかもしれない。しかし「なんかいい感じだったあの本、もう一回読みたいな」って思わせる本ではないかと思う。そして、数年後にはまた涙してしまうのではないかと思う。生きることの重さや辛さ、そして楽しさを知っている人間にはたまらなく心にぐっと来るものがあるのではないだろうか。 | ||||
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| 主人公の井領が奮闘する毎日や、恋人への不器用思い、そして不慮の事故で壁に釘付けにされてしまったトカゲを通して考えさせる生と死。 淡々とした文章の中で綴られていく彼の気持ちには共感を覚えました。 どちらかといえば読みやすいほうに入ると思うけど、好き嫌いがわかれるかも。 | ||||
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| 「青が散る」を読んで感銘を受けてからすぐに購入した本。著者が同じだからというのはもちろんあるのかもしれないが、いろんな共通点を見つけることができる。ただそれは「マンネリ」とか「飽き」というものではない(多少、思うところはあったとしても)。今回、キンという主人公の意外なパートナーが、途中から私(特に姉)の関心を惹きつけて放さなかった。 | ||||
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| 30歳以上の方にお勧めです。 大学を卒業して10年が経ちました。 社会人になって忘れてしまったもの、例えば一人の女性に対する不器用でひたむきな思いや、成長するための苦悩、がむしゃらさ、はじらい・・・誰もが持っていたあの甘く切ない青春時代を追体験させてくれます。 作品に感動すると言うより、自分の青春時代と重ね合わせて、そして、今の自分に足りないものを思い出させてくれます。 登場する女性達も魅力的で、昔を思い出します(笑) 読んだ後、10年若返った気がしました。 母に宮本輝にはまっているというと、あなたも年を取ったねぇと言われました。 | ||||
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| 圧倒的な生命力を感じた。 私たちは生かされている、それとともに自らの意志で生きているのだ。 | ||||
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| 宮本輝作品は大体読みましたが、その中でも大好きな1作です。学生である主人公の奮闘する毎日は、その年頃が抱える問題がたくさんあって大変だけれどその中で一生懸命奮闘する主人公に共感を覚えました。読後感が大変すがすがしく、元気が出てきました。年をとっても、青春時代を懐かしみながら楽しんで読むことができる1冊だと思います。 | ||||
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| 一昔前の時代の若者の青春の日々の出来事が、一見関係なさそうな蜥蜴の自由を拘束された生活と対比されて描かれている。今も昔も基本的に人間の考えることは同じであって、周りを構成する環境が行動を左右するのだと思った。それは、この物語の若者と私のものの考え方がすごい似ていたからだ。若い躍動感があふれ、それでいて寂しい物語である。 | ||||
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