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クロコダイル路地
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クロコダイル路地の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.50pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全8件 1~8 1/1ページ
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1000p越えの重厚なレンガ本。読了し、虚脱感に襲われている。 ここ20年の皆川作品はとにかく文章が独特で理解不能な変態小説ばかり。絶対に一般受けしないだろうし、皆川先生も一般受けするつもりで、あるいはベストセラーを狙って書いていない。だから私は人に勧めないし勧められない。読書は自己満足でいいと皆川作品を読むたびに思う。 さてこの作品、18世紀後半のフランス革命を描いた歴史小説である。前半はフランス編、後半はイギリス編と2部構成になっており、フランス編はアクションシーンが多くサスペンス小説に、イギリス編は一転落ち着いたミステリ小説になっている。特に主人公ロレンスの心理描写は特筆もの。平凡な主人公であるがゆえに、ラストは唖然となる。 「なんか面白い小説ないかな?」的なことを考えている方には絶対にお勧めできない。 皆川作品のコアなファンの方、普通の読書に満足できない方、本棚に飾っておきたい方にだけおススメです。 | ||||
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『聖餐城』、『死の泉』、『薔薇密室』、『開かせていただき光栄です』など、皆川先生の過去の歴史長編作品がお好きな方はまず間違いなく楽しめる作品だと思います。 革命期のフランスが舞台である前編は、まるで新書の歴史本を読んでいるかのような情報量で圧倒されますが、フランス史に明るくない自分にも分かりやすく読める書き方でさほど混乱する事もなく読めました。 後編はロンドンに舞台が移り、戦争描写の多い前編に比べるとスケール感がやや縮小気味になり、その分より登場人物たちの心情やミステリー要素にスポットが当たるようになったと感じます。 前編と後編で趣が変わりながらも飽きることなく最後まで楽しめる作品でした。 特に後編は『開かせていただき光栄です』ファンにはうれしい(悲しい?)サプライズもあり、気になる方は必読です。 | ||||
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本棚に並んでるこの本を見たときに一目惚れしました。 分厚い・・・1000ページ超え・・・・。 手のひらにずしりと来るこの重みを感じた瞬間、もはやこの本を見過ごして行くことなど出来なかった。 ちょっとパラパラとめくると、怪奇な挿絵が到るところに収まっている。 どういう小説か、そんなことを考えるよりも「この小説を自分のモノにしたい」という衝動のままレジへ。 まだ読んでません。机においてちょっとパラパラめくったり、立体的なこの本を眺めながらウットリしております。 (物理的外装も本の価値の一つであり、それを評価するのも商品レビューだと思っている) こんな小説はちょっとやそっとではお目にかかれません。 分冊されて上・中・下とか3冊にバラバラになってたら100%買わなかったですね。 一冊にまとめるという決断をした編集者は良い仕事をしました。 読む前からパーフェクト! | ||||
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いつもながら、洗練された文章は読んでこころよい。 冒頭の一文は、ゴッホの手紙から着想を得たと、皆川先生はインタビューで話しておられた。 脇役に、驚異的な厚みがある。 筋を通そうとするピエール、頼りがいのあるブランシュさん、せこいけど根は善人のドブソンさん。 しかし、一点理解できないのは、主人公であるローランのコレットへの感情だ。 ローラン自身によって多く語られてはいるが、他者として可能性を挙げれば、 1)運命の女(マンイーター)に魅了された 2)親族への愛は薄かった 3)全共闘のようなイデオロギー となるけれど、自分としては違和感が残る。 こういう不快さを紛れ込ませるのも、皆川作品らしいともいえる。 フランス革命期の話だけど、皆川先生の1970年代体験が重なるような気もした。 | ||||
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(ネタバレ?) 主人公ロレンスがこの上なく病んでいるので感情移入して読むのが大変でした。 思春期の彼の心に植え付けられた精神の闇はは鰐―クロコダイル―をの姿を象徴して描かれます。 本書では思春期の男女の複雑な心や登場人物の複雑な思考が描かれています。 ロレンスとコレットはブルジョワそして貧民と、身分は異なりましたが フランス革命が起きた混乱の時代の中 子供らしく過ごすこともできず あの中で生き抜くとしたら何が悪くて何が良いのか 判断の難しい境遇でした。 ロレンスは亡くなった母を侮辱し淫売に成り下がったコレットを憎みます。 コレットもまた、ロレンスとプーヴェに置き去りにされ餓死寸前にされたことからひどくロレンスを憎みます。 ですがナント脱出前の商会のくだりで、 相容れない二人が身体の関係(か、それに近い物)があったことが示唆されてます。 ほぼ家族と家庭教師だけとの交流しかなかったロレンスにとって 年齢の近い女性との交流は今までなく、 はじめての情欲の相手がコレットでした。 コレットもまた“女”を武器に権力者に媚びていたコレットも 兄と近い年齢のロレンスには 愛玩具として使われていることをわかりながら 他の男達との打算的な関係とはまた違う特別な感情をもっていたと思います。 Ⅱ巻で彼女がプーヴェの思惑により殺されかけた 事をしったロレンスが、後に心の内側で飼い慣らした鰐―クロコダイル―を解放させ、 後々、ロレンスが彼女の犯行に加担したのも 以前の『開かせていただき光栄です』より人間的な理由かなと思います。 あちらの方がエンターテイメントや娯楽に適した本ですが、 同じミステリーの部類でもこの『クロコダイル路地』は仕掛けの質よりも 読者がどっぷり様々な感情と思考の渦に浸らされる重厚な内容でした。 最後の結末で、ある意味二人はやっと自由を得たのかもしれません | ||||
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「1」から9年後の続編で、舞台はほぼロンドン。あのダニエル・バートン先生のかつての弟子達(今では初老)や<バートン博物館>も登場するという、「1」と比べ、読者にはお馴染みの設定となっている。「1」で私が表象として拘った「鰐」とは、<バートン博物館>に陳列されている「鰐」の剥製でもある。同様に、私の理解を越えていた作者が意図する「鰐」の形而上学的意味とは、「現実と生(死)とが<形>作る"人の道"を踏み外した畸形(あるいは<無>)」であるらしい。それにしても、「2」では、作者の猟奇趣味からして、生首の蝋人形を作る医者(トゥララン)とコレットが活躍(?)するとの予感があったが、二人が夫婦になっている(しかも、コレットの腕前の方が上)とは驚いた。コレットはロンドンに「蝋人形」館を一時的に開設するが、これは作中でも言及される<マダム・タッソー>から作者が発想したものだろう。「鰐」(畸形(あるいは<無>))と「蝋人形」館との組合せとは、如何にも作者らしい猟奇趣味である。 物語の主な内容は「1」に端を発する"恨み"の籠った幾重もの復讐譚及びそれに伴う登場人物達の人間模様である。登場人物中に、何名の「鰐」が存在するのか、驚く程凄まじい。これが人間の性であるとの作者の主張であろうか。一番獰猛な「鰐」が最後に仕掛ける演出はこの「鰐」が狂人の証しなのか、聖人の証しなのか......。「1」(「フランス革命」の"実態"の写実的描写とも取れる)とは別の意味で、物語に惹き付けられた。また、全編を通して、<時>が人間を変化(成長あるいは堕落)させると主張している様でもある。 「2」ではある種のミステリ的技巧も使われているが、これは作者にしてはさほどトリッキーではない。これまた全編を通して繰り返される「聖書」中の文言、 「運命が運び、連れ戻すところに、われわれは従おう」 が本作の主旋律という事であろうか。作者の力量を改めて感じさせる力作である。 | ||||
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「1」を読んだ時点での感想。「フランス革命」の"実態"を描いた歴史絵巻であるが、「共和軍(革命軍)vs王党軍」という現実の戦闘(戦争)に携わった人々の生々しい姿を非常に子細に描いている点に特徴がある。そこから浮かび上がって来るのは人間の弱さ・脆さ、醜さ、愚かさである。当然、そこには、<自由と平等と友愛>という"嘘くさい"革命理念(実際、共和軍の政策はその"理想"とは程遠い)への作者らしい辛辣な批判・揶揄が込められている。華麗にして冷酷、誌的にして残虐という作者の筆致が本作に誠に相応しい。非常に求心力のある物語で、読んでいて思わず惹き付けられた。これらの人々の姿を多角的に描こうとの趣旨か、ブルジョア階級のロレンス、日雇い労働者のジャン及び貴族フランシス(ロレンスの憧れの人)の従者ピエールという立場(身分)の異なった三名の視点人物を登場させている。登場人物間の関係の複雑さも半端ではないが、それをキチンと書き分けている作者の筆力には、いつもながらとは言え、感心した。 表題中の「クロコダイル」は勿論「鰐」であるが、「鰐=ギロチン」というメタファーと共に、様々な含意がある。ある視点人物にとっては、「鰐」が口を開いた時の空洞が、自身の心の空洞を意味し、ある視点人物にとっては、幻想として浮かぶ「戦争」の表象そのものである。作者はこの「鰐」に形而上学的意味も込めている様だが、残念ながら私の理解を越えていた。未読の方には申し訳ないが、海路を渡って逃亡する際の「逃げ道」の表象ともなっている。 今の所、作者が得意とするトリッキーなミステリ的仕掛けや猟奇趣味は出て来ないが(「ギロチン」そのものが猟奇趣味とも言えるが)、終盤近くになって、ギロチンで断頭された生首の蝋人形を作製する医者が登場する。同じく、最終盤で、生き別れになったジャンの妹コレットが第四の視点人物として登場する(それまでは他の登場人物と同じ扱い)。「2」では、この医者とコレットが前面に出て活躍(?)する予感がする。早速、「2」に取り掛かりたい。 | ||||
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ドキュメントとしてなら力作。 小説としてなら失格。こういう文章は小説に値しない。 一流の小説の定義の一つはまず面白い事。魅力ある引きつける文章と筋書き。 全く面白くない。 ただしドキュメントとしてなら第一級の作品。 このお年でこのような精細なドキュメントを書き上げた脳に賛辞を。 傑作でしょうね。 | ||||
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