冬の光
評判
冬の光の評価:
4.19/5点 レビュー 32件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全51件 41〜51 3/3ページ
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冬の光の評価:
4.19/5点 レビュー 32件。 B ランク
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小説の詳細ページを閲覧すると、ここに履歴が表示されます。最近閲覧した小説詳細ページへ簡単に戻る事が出来ます。
康弘と三人の女たち、妻美枝子、恋人紘子、行きずりの遍路梨緒、それぞれとの関わりを通して人の淋しさがにじみ出ている。
美枝子は家庭の主婦として申し分ない。が、一方では、康弘に、紘子に別れを告げる電話を自分と娘の目の前でかけるよう強要する。その場面には美枝子の持つ毒々しさが溢れている。自分の決めた範囲の中で夫を「所有」しようとする美枝子は、範囲外の夫を許せない。所有物でなくなった夫は価値のない者なのだろう。
紘子は結婚を否定して、誰も所有しないし、誰からも所有されないという信念を持っている。その信念と康弘への思いの間の隔たりに傷ついていく。紘子の信念は自分自身を覆う殻になり、その殻を破り自分を解き放つことが、結局はできなかった。
最後の女、梨緒はどうか?育った家庭環境から精神を病んでしまったと思われる梨緒。康弘にしがみついていく姿は無垢な子供のようにも思える。梨緒の中で我を忘れようとした康弘は哀れで弱々しい姿をさらす。梨緒の悲しみを少しも癒すことができないまま、梨緒を手放す。梨緒にも応えられなかった痛みが伝わってくる。
康弘は東日本大震災の被災地に入り、その後四国の巡礼の旅に出る。ここで作者のテーマの一つである宗教が、康弘と関わってくる場面は興味深い。特に何を信仰するわけでもない康弘が巡礼の旅に出たのは、そこに帰着点を見つけたいという淡い願望があったからなのだと思う。だが世俗の社会に順応し成功している宗教は、康弘の心を素通りしていく。ここでの宗教の描かれ方と、「弥勒」や「仮想儀礼」で示されている宗教を対比させてみると、作者の宗教に対する思いが伝わってくるのではないか。後者では、世俗的な成功を収めた宗教が崩壊し、何もかも失ってから他者のために生きることを選んだ者を宗教的な光をあてて描いている。康弘のはこの光は届くことはなく、梨緒との関係も何も生むことはない。
帰りのフェリーから見た冬の光に康弘は何を見たのだろう?
もう二度とかつての家族の幸せはもどることはないと、冬の光は告げていたのだろう。
登場人物四人のそれぞれが抱える淋しさが冬の光にかすんで見える、心に残る結末だった。