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黙示
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黙示の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.93pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全43件 41~43 3/3ページ
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元戦場カメラマンの養蜂家、農薬製造会社の研究員、そして若手の農水省女性キャリア官僚。本書の三人の主人公が、帰属する社会集団の掟、背負うべき責任、築いてきた価値観、そして自らの信念を貫きつつ、巨大な流れに対峙して奮闘する。 養蜂家の代田、それに農水キャリアの秋田は、「プライド」に収録された短編作中の主人公だ。その後日談が拡大・融合し、ひとつの結末へと収斂してゆく物語は見事であり、米田や露木ら名脇役の再登板を含めて、実に嬉しい限りだ。 静岡県の茶畑で穏やかな時間を過ごす子ども自然教室に、コントールを喪失したラジコンヘリが農薬を撒き散らしながら飛来してくる。高濃度の農薬に暴露して痙攣し、意識を失う子供たちの惨状から物語は始まる。 ・無人攻撃機の攻撃に突如さらされるアフガニスタン、パキスタンの人々の恐怖の情景が重なる。 ・被害者の息子の父であり、被害をもたらした農薬の開発責任者でもある平井、農薬の危険性を訴えてきた養蜂家の代田。立場は違えど、二人の責任ある行動は良識ある人物の鑑でもある。 TV番組に出演した代田の不注意から「農薬は第二の放射能」との言葉が一人歩きし、マスコミが騒ぎ立てることとなる。 農薬とミツバチを巡る対立が対話となり、日本の農業の危うさ、ひいては地球規模の食糧危機へと物語は展開する。 ・米国企業の尖兵となり、遺伝子組み換え食品をごり押しする国会議員 ・減反農地の融通を求める中国のしたたかさ ・力と金を有する国が食糧を強奪する世界。もはや貿易赤字国となった日本はどう立ち振る舞うのか。 ・飼料用とうもろこしや小麦粉どころか、遺伝子組み換え"動物"を食用とする時代が迫っていることを知らされると、人の能力を超えた存在=テクノロジーの扱いが問題となる。 ヒトは"文明の進化"にどう向き合えば良いのか。 秋田の行動力、特にエピローグ前のそれに、力を与えてもらった気がする。 なるほど、未来を変えることができるのは行動だけだ。 愛読している著名なメルマガで、農業の輸出産業化に異を唱える見解を読んだ。 国内でほとんど報じられない農業・食糧事情の深刻さと数年先の「日本の飢餓」の可能性を思うと、議論すべき事柄に違いない。 そして、まだ救われる可能性があると信じたい。 TPP交渉参加に動きの出たこの時期、著者の投じてくれた問題は実に重い。 一市民、そして会社組織に身を置く者として、何ができるのかを考えたい。 [補記] 地元ネタで恐縮だが、かつて明石海峡を航行した、たこフェリーの登場が嬉しかった(p260,266)。 作中に「大きなタコが足を広げているイラスト」とあるから、「あさしお丸」がモデルなんだろうな。 (実物は、2010年にタイのフェリー会社に売却されてしまったが。) | ||||
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真山仁は,企業買収をテーマにしたNHKの土曜ドラマ「ハゲタカ」で有名になり,以後現代社会に警鐘を鳴らすテーマを取り上げた経済小説の雄として活躍しています。 「ハゲタカ」の後編「バイアウト」,その主人公鷲津政彦が中国の国家ファンドに立ち向かう「レッドゾーン」, テレビ局の裏側にあるものを赤裸々に描いた「虚像の砦」,地熱発電をテーマとした「マグマ」, 中国での原子力発電所の建設とその崩壊を描いた「ペイジン」, 震災後に偉大なる指導者として現れた男を描いた「コラプティオ」, どの作品も期待を裏切らず,近未来のまさにそこにある危機を描いており,一気に読ませる力があります。 特に原子力発電所のクライシスを描いた「ペイジン」は東日本大震災のちょうど1年前に発表されていて,この人はなんてタイムリーなんだと感じたことを覚えています。 この「黙示」は短編小説集の「プライド」の中の「一俵の重み」から発展したようで農業問題がテーマとなっています。 農薬会社の研究員の平井宣顕,かつて紛争地で活躍していたカメラマンで現在は養蜂家の代田悠介, そして農林水産省のキャリア官僚である秋田一恵,この3人が日本の農業のあり方を巡って絡み合いながら話が進んでいく。 平井が開発した農薬を積んだラジコンヘリが暴走し,代田の主催する養蜂教室に集まっていた子供たちに突っ込むところから話は始まる。 その子供たちの中には皮肉なことに平井の息子がいた。 代田は事故のインタビューで「農薬の恐怖は放射能以上」と口走ってしまったことで,渦中の人となってしまった。 農薬の開発者と養蜂家といった相反する立場と主義を持つ男二人, アメリカでの干ばつ被害と農業をめぐる各国の思惑に戸惑い上司に支えられながら食料安全保障の道を探ろうとする秋田。 この3人の主人公を取り囲む多数のわき役陣となかなか贅沢なキャストです。 しかし,中盤に真山氏の小説には珍しく濡れ場が出てきますが,あの女性はストーリーの展開上必要だったのだろうかと感じました。 農薬問題から始まって,昨年の夏のアメリカでの猛暑と干ばつ,小麦やトウモロコシの壊滅的被害,世界の食料を買い漁る中国, そしてGMO(遺伝子組み換え作物)をめぐる駆け引きなど,様々な要素が満載となっています。 今世間はTPP参加が微妙な問題となっていますが,関税が撤廃されたにもかかわらず,誰も日本に食料を売ってくれない, そんな時代が来るかもしれない近未来の恐怖を暗示してくれます。 | ||||
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「小説新潮」で連載していた「沈黙の代償」の改題です。 いつものごとく、書籍化に伴い大幅な加筆している模様です。 農水省の女性官僚、農薬メーカーの開発者で農薬を浴びて意識不明の重体になった小学生の父親、 養蜂家でカメラマンの男性が話の軸です。 ミツバチの集団失踪現象は、日本のメディアでも取り上げられ原因の一旦であるとされた 「ネオニコチノイド」がこの小説の主人公です。 食の安全とは?農薬の危険性は?日米における農業戦略は?など問題定義を考えさせられる作品です。 真山仁さんは、現実にあった事件・事故・疑惑をフィクションとノンフィクションを巧く織り交ぜ 問題提起してくださる作家さんだと思います。 ハゲタカシリーズでは企業買収について、マグマでは地熱の必要性、ベイジン、コラプティオでは原発問題など。 全作品読んでいますが、相変わらずノンストップで読めるそして、悩まされる作品でした。 | ||||
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