禁忌

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禁忌の評価:

3.91/5点 レビュー 23件。 D ランク

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平均点3.91pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全28件 21〜28 2/2ページ
No.8
(5pt)

ミステリーというより、純文学の香りがする神秘的な小説

「緑」「赤」「青」「白」の四章からなるシーラッハの新作。

主人公のゼバスティアン・フォン・エッシュブルクは、その名の「フォン」が示すように
かつては豊かさと権威を誇った名家の末裔。
色彩を知覚する能力に恵まれた彼は写真家として大成功を収め、有名人の仲間入りをしますが
ほどなく女性誘拐の罪で逮捕され、殺人容疑で起訴されます。

物語の後半からはエッシュブルクの弁護のために有能な弁護士のビーグラーが奔走しますが
読者の予想を裏切るような驚くべき展開が続き、物語の最後にたどりついても
何か突き放されたような漠然とした不安感を覚えながら本を閉じることになります。

特異な能力の持ち主であるエッシュブルクの世界観は通常の人びとと
異なっています。その「世界とのずれ」こそが彼を裁判の被告席に
坐らせることになったのかもしれません。シーラッハは巻末の
「日本の読者の皆さんへ」という題の文章のなかで
「肝心なのはつねに人間そのもので、人間に関する理論ではない」と書いていますが、
その彼の言葉を熟考し、噛みしめるのは私たちに任されているのだと思います。

ゴヤの絵への言及や「チェスをするトルコ人」の逸話などが
この物語に神秘的な色彩をつけ加えています。
法廷の描写や犯罪の推理はこの物語の一つの要素に過ぎず、
人間性の深淵を覗き込むような純文学に近い作品だと感じました。
なお、酒寄進一氏の簡潔にして格調ある翻訳の素晴らしさが
今回も強く印象に残りました。
禁忌 Amazon書評・レビュー: 禁忌より
4488010407
No.7
(1pt)

フォン・シーラッハ信奉者の私は愕然とした

『犯罪』『罪悪』『コリーニ事件』――。
 フェルディナント・フォン・シーラッハは、人が罪を犯す背景の捉えどころのなさや、その罪を現代の司法制度で裁くことの限界と苦味について、乾いた文体を用いて冷然と描いてきたドイツ人作家です。巧みな物語構成にすっかり捕らわれて、私は新刊が出るたびに欠かさず手にしてきました。

 フォン・シーラッハの作品は、翻訳出版元の東京創元社がカバーの内側に付している<あらすじ>には目を通さずに読み始めることが鉄則です。今回も私が自らに課したそのルールに則って頁を繰り始めました。

 ところが今回はこれまでの著作とはかなり勝手が違いました。
 物語は冒頭から主人公ゼバスティアン・フォン・エッシュブルクの生い立ちが延々と綴られます。ドイツのBildungsroman(教養小説)のような趣といえば聞こえが良いでしょうが、フォン・シーラッハの湿り気のない文体――そして酒寄進一氏によるいつもながら見事な日本語へと移し替えられた和文――を100頁近く読んでも事件が起こる気配がいささかもないことに、やきもきし、大いに戸惑うばかりだったのです。

 後半、ゼバスティアンが逮捕されたあたりから、何か不穏な事件が起こったことがようやく見えてくるのですが、それでも彼をめぐる裁判劇の進展具合は、上質のミステリーと形容するにはほど遠く、これまで熱烈なフォン・シーラッハ信奉者だった私の落胆はそれだけ大きなものとなったのです。

 これまで多くの読者を魅了してきた作家だけに、この物語の混迷ぶり、混沌具合を指摘することが憚れ、何かがそこにあるのではないか、それが理解できないのは読者である私の力量が足らないからではないかと恐れおののいてしまいそうです。そしていたずらに深く考え、深読みをしたくなるかもしれません。
 しかし訳者あとがきによれば、作者の本国ドイツでも「二度読んでも理解できなかった」というDie Zeit紙の書評もあったとか。「王様は裸だ」と直截(ちょくせつ)に発言する書評子もいたということです。それも無理からぬことと言わざるをえません。

 日本でのフォン・シーラッハ人気を彼自身も知っているからか、作者はわざわざ日本語版読者向けに特別な随想まで寄せてくれています。その文章で彼は、良寛の句を引いて日本人読者の心に寄り添おうとする努力を見せていますが、果たしてその句の彼の解釈が、多くの日本人読者の賛意を得られるかというと、私は大いに疑問です。日本文化に対して付け焼刃的知識で急ごしらえした文章という印象が残りました。

 フォン・シーラッハの作品の翻訳は今後もいくつか予定されていると巻末に書かれています。今しばらく、その作品がまた酒寄氏の日本語で読める日を待ちたいと思います。

*76頁に「熱いオリーブ油で素揚げしたシシトウ、<ピメントス・デ・パドロン>」という文章がありました。スペイン料理pimientos de padronはカタカナ表記するならば<ピミエントス・デ・パドロン>とするべきです。
禁忌 Amazon書評・レビュー: 禁忌より
4488010407
No.6
(5pt)

刑法と刑事訴訟法の真髄がここにある。罪とは何かを正面から問い、あらためて考えさせてくれる。

見事な小説である。刑法と刑事訴訟法の真髄を見事に描き出している。法律に関する小説は、THE TENTH JUDGE くらいがいいと思っていましたが、この小説は、それを遥かに越えている。日常生活を、うまく織り込んでいる点も評価できる。できれば、小坂井敏晶著「責任という虚構」ないし「人が人を裁くということ」をあわせて読むと、この著者が表現したいことが良く理解できると思います。
それにしても、ドイツで、日本の尊属殺人罪違憲判決と同じような事件があったことを知って驚きました。
禁忌 Amazon書評・レビュー: 禁忌より
4488010407
No.5
(5pt)

相変わらずの冴え

著者の邦訳はすべて読んでいるが相変わらずの面白さ。犯罪にまつわる事象を淡々と事実を述べるシンプルな語り口で語りつつ、読み手に深い情動を引き起こす手腕は冴えている。

ただ今回、前半は少し退屈に感じた。冒頭は不穏な雰囲気が出ているのだが、写真家になるあたりからの展開が、なんだかありきたりの純文学っぽい展開に思えて眠くなった。いっぽう警察と弁護士が出てきてからの後半の展開は文句なし。それでいて一読しただけではよくわからない箇所がそれなりにあるので(フィンクスのくだりがどういう意味を持つのかなど)、読み込んだりするような深さもあり、素晴らしい。
禁忌 Amazon書評・レビュー: 禁忌より
4488010407
No.4
(4pt)

不思議な本

ミステリというより、観念小説のような読後感でした。
嫌いではないですが、ミステリファンは面食らうと思います。
禁忌 Amazon書評・レビュー: 禁忌より
4488010407
No.3
(5pt)

舞台版も楽しみ!

今回舞台化にあたり、主演の真田佑馬さんのファンなので購入しました。
恥ずかしながら普段はミステリー小説などはほとんど嗜まないので、著者のことも何も知らずに購入し、一気に読みました。
長編と聞いていたので少し身構えていましたが、淡々とした文体で語られるのでとても読みやすく、逆にそのとっつきやすさ故にページをめくる指が止まりませんでした。
舞台化されるのはおそらく主に後半のミステリーと法廷劇の部分かなと予想しますが、時代錯誤で湿っぽく薄暗い少年時代とそこから脱却して理想の恋人を得てカメラマンとして成功するまでを描いた前半はまた違う魅力がありますし、そのバックボーンを知った上で舞台を見るのも一興かと思います。
もちろん、舞台を見終わった後で改めて読んでも楽しめるはずです。
私の頭の中ではすっかり弁護士=橋爪功さんの声と身振り手振りで再生されるようになってしまいました。

ただ、私と同じように真田佑馬さんのファンの方でこの小説を読まれる方は、結構過激なシーンもあるので、ご注意いただいた方がいいかもしれません。おそらく舞台にはないシーンだと勝手に予想しておりますが。
真田さんが演じられるエッシュブルクはとても魅力的でミステリアスなキャラクターなので、舞台がますます楽しみになりました。
禁忌 Amazon書評・レビュー: 禁忌より
4488010407
No.2
(5pt)

ミステリーの姿を借りていますが、人間の本質、性、芸術の深奥を描いているように思います。私個人としては、小説の面白さを堪能しました!

私は、今回初めてフェルディナント・フォン・シーラッハの小説を読みました。その理由は、帯のキャッチ・コピーに魅かれたからです。
 全体は、光の三原色、緑、赤、青、そして、それらが合わさった白の4章に分かれています。
 物語の主人公は、ゼバスチャン・フォン・エッシュブルク、フォンが入っていますから、当然、貴族の出です。
 彼は、常人以上に鋭敏な色彩感覚を有する、いわゆる共感覚の持ち主で、幼少期に父親を亡くしますが、
 長じて、その感覚を生かし、芸術写真家として大成します。
 物語の前半は、ドイツ小説によく見られる教養小説のような展開です。
 後半は、そのエッシュブルクが、若い女性を誘拐、殺害した疑いで逮捕されます。
 そして、エッシュブルクの依頼で、ビーグラーが彼の弁護を引き受け、
 リーガル・サスペンス的展開になります・・・・・・・・・
 いや、重い小説です。あまり長い小説ではありませんが、そう簡単に読み進める小説ではありません。私も何回も読みかえしました。
 あまり書くとネタバレになりますが、帯にもあるように「罪とはなんですか?」、彼は一体どんな罪を犯したのか?
 裁く側と裁かれる側、人間にとって芸術とは何か?・・・・・・等、深く考えさせられます。
 聞くところによると、著者のシーラッハは刑事事件の弁護士として、ドイツでもかなりやり手な存在らしいです。
 本書の弁護士、、ビーグラーはある意味、著者の人格の投影とも考えられます。
 かなり内容の深い小説ですが、最後にすべての謎が見事に収斂し、ミステリーとしても読めますが、
 本書は、ミステリーの姿を借りていますが、もっと深い人間の本質、性、、そして、芸術の深奥を描いているように思います。
 私個人としては、小説の面白さを堪能しました!!!
禁忌 Amazon書評・レビュー: 禁忌より
4488010407
No.1
(4pt)

読み手に対して、色々な考えを想起させる。難解なような、単純なような、非常に深い作品だと思います。

主人公エッシュブルグは、没落気味とはいえ名家の御曹司で、さらには、「共感覚」の持ち主という人物です。
「共感覚」物事や事象を色や音で知覚、認識する特殊な感覚のことで、この感覚の持ち主は大変稀有、とのことです。
物語の中盤というか、ほぼ後半に差し掛かるまでは、この主人公の幼年期から青年期までの生き様が主軸です。
父の自殺、生家の売却、母の再婚といった苦難を乗り越えつつも、有名写真家となり、恋人を得るまでの成長振りが描かれています。
主人公にとって苦難はあるものの、ストーリの展開や文調も、やや淡々とした読み易い展開ですが、主人公の持つ「共感覚」、また、表紙裏の作品あらすじでは主人公が逮捕されることが記されていることがと相まって、行間には何か深いことが隠されていそうな、不穏な気持ち、恐怖心さえ抱きながらで読み進めました。
何も考えずに読めば、ある若者の単なる成功記なわけですが、本作を読みながら苛まれる「不穏さ」、また、具体的な「結」を用意せず(おそらく、あえて、このように仕立てたと思いますが)読み手ごとに様々な解釈と賛否を生じさせるであろう展開に、かなり引き込まれました。
読み終わっての感想を言うと、いや本当に「怖い」です。
本編とあわせ、作者のメッセージ「日本の読者のみなさまへ」を読むと、さらに恐怖が増幅するように思います。ただ、これは私自身の感覚で、作者の意図するところを正確に汲み取れているかどうか、これには自信がありません。
翻訳作の国内出版が東京創元社さん、また、作品紹介には、あたかも法廷ミステリを思わせる記述もありますが、本作は、いわゆる法廷ミステリには、あたらないようにも思います。
ただ、本作は読み手に対して、色々な考えを想起させると思います。私としては、本作の本編と、著者あとがきの「日本の読者のみなさまへ」を読んで、重大犯罪と、稀有な感覚をもって生まれた人物に対する刑事訴訟法の限界など等を感じ、深く、重たい恐怖に苛まれたわけですが、作者の狙いはどこにあるのか。。。
いやはや、なんとも、評価に困る作品ですが、この頁数とクライマックスとで、ここまで強烈な「後味」を刻まれたか、という点で☆×4です。
繰り返しですが、いわゆる謎解き、法廷サスペンスとは趣きがかなり異なりますので、本書を手にするときは、このことを充分に踏まえておくと良いように思います。
禁忌 Amazon書評・レビュー: 禁忌より
4488010407