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未来線上のアリア
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未来線上のアリアの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.17pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全1件 1~1 1/1ページ
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表紙がいつものワカマツカオリじゃなかったので危なく見逃しそうになった…表紙の雰囲気を変えて綾崎隼が挑んだのは意外にもSF 先日はミステリに挑んでいたけど果たしてどうなる事やらと拝読 物語は主人公の医務官リブラ・カウラザカが79年に渡るコールドスリープから目覚める場面から始まる。リブラたちの船団は惑星アルチアの テラフォーミング計画の為に恒星間飛行を続けていたのだが、アルチア到着を目前にして船団を率いる9人のメンバーが優先的に目覚める 事になっていた。しかし、目覚めたメンバーを待っていたのは真っ先に目覚めた筈の船長の死と、それ以上の衝撃的な宇宙船の損傷により 酸素の発生装置が稼働せず、故に目覚めたメンバーの中から生贄を選ばねばならないという冷酷な選択肢であった… トム・ゴドウィンの傑作SF「冷たい方程式」は後に「方程式もの」と呼ばれるwikipediaにもその項目が作られるほどの潮流を 産み出したが、本作もその本流にある「宇宙船とその乗組員を目的地に到達させる為に不要な人間をエアロックから真空中に放り出す」という 形式を取っている。酸素の残量から必要となる「生贄」の人数を割り出した上で「誰を生贄に選ぶか?」を軸に話が進行していく 主人公のリブラは医務官であるし、傲岸不遜に「生存に役に立たないスキルしか持たない人間が犠牲になるべきだ」と主張する科学官の ラヴェンダー・ベアトリクスの様な明らかに生き残らなければ惑星到達後も困難が生じる人間がいる一方で、リブラが崇拝にも近い想いを 寄せる文部官のアリア・ミルコゼットの様にサバイバル的状況では不要不急の人間も存在する。ラヴェンダーの明確かつ非情な主張を 前に「犠牲を出さずに全員が生き残れる方法が何か無いか?」と主人公のリブラを中心に足掻くグループが次々と絶望的な現実を 突き付けられる序盤の展開はグイグイと引き込まれる。この辺りは「方程式もの」独特の冷徹な宇宙の現実を読者に突き付けてきて非常に良い 更に本作はこのSFの古典的テーマに加えて中盤で「犠牲を出したのに酸素の減少量が減らない、誰かおかしな人間が潜んでいるのでは?」 というミステリ的要素が加わり、犯人探しの展開も加えられている点が新しい。更に唯一の有色人種である厚生官のリズベッドが、生い立ちの上で 受けてきた肌の色が元になった弾圧から絶対権力者になろうと画策する辺りもライトノベルでは中々書きにくい部分に挑戦していると感じられた ただ、意気込みの方は良いのだけど、終盤での意外な女性の登場から雲行きは怪しくなる。彼女に想いを寄せていた真犯人の動機があまりにも 独りよがり過ぎて読者の側に理解しづらいのである。「恋愛なんて個人の価値観が絡むから理解しづらいのは当たり前」という意見もあるかもしれないが 純文学ならともかくも、娯楽小説でそんな理解しづらい恋愛観を提示されても、と困惑する一方だった しかも終盤の50頁近くが真犯人の独白による大独演会になるので読んでいて正直「もう良いよ、くどい」と途中で明らかに飽きを感じた もう一人の真犯人に想いを寄せていた女性の登場もこのくどさを解消するには至らず、終盤がダレる原因となったのは間違いない。主人公には 崇高な愛があったのかもしれないが、この独演会と恋愛観の理解のし辛さでどうにもスッキリしないままエンディングを迎えた感がある やっぱりミステリもそうだけど、綾崎隼は現代劇で純粋な恋愛物を書いた方が一番合うんじゃないだろうか? 次はお待ちかねの現代劇を書くそうなので、花鳥風月シリーズやノーブルチルドレンシリーズの様な原点に立ち返ることを期待したい …さて、本作には本文以外で非常に気になると言うか明確に不自然な箇所がある。上にも挙げた様に作中で絶対君主を目指し始める有色人種の リズベッドだが、扉絵と各章の頭の登場人物のイラストを見る限りどこをどう見ても白人にしか見えない…。本文を読む前にこのイラストを見て 「おお、これは有色人種の顔だな」と思う人がいたら頭がどうかしている。綾崎隼が必死で難しい人種差別テーマに挑んでいるのに こんな絵を「有色人種の顔を書いた絵」としてOKを出して客に押し付ける担当の編集者は目か頭がおかしいか、客を舐めてるかのどっちかだな | ||||
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