ノーブルチルドレンの初恋
- 演劇部 (39)
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ノーブルチルドレンの面々が勢ぞろい。 時間軸としては、彼らが高校2年生の頃なので、 本編のサイドストーリーと言えます。 ただし、彼らは脇役で、主人公は映画研究部を部員と揉めて退部した少年というのが残念でした。 物語も特に意外性はなく、ある意味、綺麗に畳んだのかなと思います。 今年は花鳥風月シリーズの新作が出るみたいですので、 そちらに期待したいと思います。 | ||||
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「ノーブルチルドレン」シリーズを夢中に読んでいたのは2012年頃だったから、もう7年近く前の事になってしまうのだけど「花鳥風月」シリーズに続いて舞原一族に連なる少年たちを主役に据えた物語として大いに夢中になった記憶が。その楽しい記憶を蘇らせてくれる様なシリーズ新作が出ると聞くに及びイソイソと読んでみる事に。 物語は新潟にある美波高校の映画研究部で高校生映画コンクールに出品する作品選定の席で主人公の笹森瑛斗が投票結果に不満をぶちまける場面から始まる。投票結果、瑛斗たち2年生が作る作品は前年度に優秀脚本賞を受賞した藍沢有架里が脚本を書いた作品に。「藍沢が作る作品は面白くない」と自分の言い分を並べる瑛斗だったが、副部長を中心に我儘を言っているだけと受け止められ遂にブチ切れてしまい映研を退部する事に。 一緒に退部してくれた親友の長井涼介と「映画同好会」を立ち上げて、映像で観客を楽しませる自分の映画を撮ろうと決意した瑛斗だったが役者を中心に企画を立てたい、その為には校内一の美人を主役に据えて映画を撮ると宣言。主演女優が輝くよう逆算でシナリオも作ると考えた瑛斗が候補に挙げたのは音楽家の舞原七虹。七虹をどう説得して出演してもらうかという問題にぶち当たった瑛斗だったが、涼介が共演者に同じ舞原一族で眉目秀麗な男子・吐季を挙げる。問題人物として有名な吐季の説得は七虹以上に難しいだろうと不審がる瑛斗に対し、涼介はその吐季が琴弾という男子とこの春に演劇部を立ち上げた事を伝える。演劇が出来るなら映画出演も不可能じゃないし、親族である七虹の説得にも繋がるだろうという涼介の助言に従って、演劇部の部室を訪ねる事にした瑛斗。 だが、演劇部の部室の入り口には「保健部」という別の看板が掲げられ、不審がりながらノックしたドアから出てきたのはメディカルコースの奇人・千桜緑葉だった。あまりの奇人ぶりに同じメディカルコースに所属しながら関わるまいとしてきた緑葉にビクつきながら演劇部に取り次いで貰った瑛斗だったが、吐季が見せたのは「ここは演劇部でもない、俺が寝る場所を確保しただけだ」という取り付く島も無い反応。早速暗礁に乗り上げた役者の選定だったが、同じ部屋で話を聞いていた緑葉が「その案件、保健部に任せなさい!」としゃしゃり出てきてしまう事に…… 良くも悪くも千桜緑葉が無敵のヒロインである事を改めて見せ付けた様な外伝だなあw ノーブルチルドレンの主役である吐季や緑葉が通う美波高校の元映研部員を主役に据えて描かれる作品なんだけど、読んだ印象は千桜緑葉を出すと物語は勝手に進んでくれるが、どんな話も緑葉が中心になってしまうというもの。兎に角存在感が別格過ぎる! 一応、物語の方は映画大好き高校生の瑛斗が主人公で退部した映研に、なかんずく自分の気に入らない作品を作る女子・藍沢に認めて貰えなかった自分の映画作りの才能を見せ付けてやろうと親友の涼介や保健部・演劇部の面々の協力を得て映画作りに乗り出しコンクールに出品する一部始終を描いている。 上に緑葉が全てを持って行ってしまったと書いたが、この作品の主人公・瑛斗もそれなりには存在感を見せている。特に冒頭の映研で不満をぶちまけるシーンは素晴らしい。 「そりゃ、藍沢の話は一見よく出来ていますよ?暗くて、地味で、意味深に見せる事だけは得意な三流邦画監督が、好んで撮りそうな題材だ。でも、そんなの映画でやる意味ないじゃないですか。不器用で誰にも理解されない彼女の気持ちとか、理不尽な社会の軋轢に傷付く繊細な彼の気持ちとか、興味が湧かないっつーの。内省を描きたいなら、一人で小説でも書いてろよ。映画は総合芸術なんだ」 ……もう、この台詞を瑛斗が吐いた瞬間に大喝采。これだけの「痛々しさ」を見せてくれるキャラは久しぶり。どれだけ周りを敵に回すのと読者の方が頭を抱える自意識と思い込みの強さに「ビバ!高二病!」となる。というかこれぐらいアクの強いキャラにしないと本当に緑葉が全て持って行ってしまうからこれはこれで「外伝」」としてのバランスを取るのに必要な人物造形であったかと。 こういう主人公と基本「あほの子」として描かれる緑葉中心なので全体的な雰囲気は完全にコメディ調。「ノーブルチルドレン」本編は途中から暗い雰囲気に転調する人間の悪意とそれが引き起こす悲劇の物語だったけど、本作はシリーズ序盤の呑気な時期に舞台を設定しているので、そういった「暗さ」とはほぼ無縁。緑葉のトンチキぶりを中心に随所に腹を抱えて笑わせるネタが仕込まれている……というか綾崎隼、こんなにコメディ作品を書くのが上手かったのかと非常に意外な印象を受けた。あちらこちらに仕込まれた映画ネタの豊富さも作者の映画愛が感じられ、完全に趣味に走って作った作品だなあと思わされた次第。 ストーリーの方も後半に順調に進んだ映画作りがコンクールに出品されて審査を待つ段になって突如理不尽な目に遭いそうになるなど、起伏を付けてあり単なるドタバタコメディで終わらせない辺りは作者のストーリーテラーぶりを見せ付けている。同時に痛々しい自意識の塊だった瑛斗が自分を日陰者に追いやった藍沢という存在とどう向き合うかを追った青春物語としても描かれている。 ただ、欲を言えば瑛斗と対立する存在、というか瑛斗が一方的にライバル視する藍沢というヒロインをもう少し掘り下げて欲しかったな、とは思わされた。「ノーブルチルドレン」の外伝だけあって緑葉や吐季の出番を確保したいという思惑は分からないでも無いのだけど、彼らの強烈な存在感が軸となるべき藍沢や瑛斗のただ一人の味方である涼介の存在感を食っていたのは否定できない部分があったかと。特に緑葉は「登場するとその場を仕切ってしまう」という強烈さがあるので取り扱い注意なキャラだなと思わされる(主役を食ってしまう存在感という意味で「動物のお医者さん」に出てくる漆原教授に近い) 久しぶりの「ノーブルチルドレン」シリーズだったけど、全体的なコメディ仕立てと軽快なストーリー進行もあって、なんというか「楽しい同窓会」といった味わいに仕上がっていた。「外伝」として楽しむには十分であるし、恐らく読まれる方はほぼ「ノーブルチルドレン」本編のファンなのだろうけど、単品として見るならば主要な登場人物が本編のキャラに食われていた部分がある感もある、そんな作品。後書きによれば今年はメディアワークス文庫から「花鳥風月」シリーズの新作を、講談社タイガで新シリーズを発表する様で綾崎隼健在なりをファンにアピールした一冊。 | ||||
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