君を描けば嘘になる
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私は2重カバーで手書きの感想が記載されているものは、それが全く初見の作家さんの作品でもとりあえず購入することにしている。理由は”ハズレがないから”。今回は迷った末に購入した。タイトルから若者の恋愛を描いた小説だろうと思ったから。でも「この本が、好きです。」の一行が気になり購入。 アート業界を舞台に「持つ者」と「持たざる者」の苦悩を描くのかなと思いつつ読み進めてゆくが、なんだか確信が掴めずずっと結末を気にしながらもどかしくも読み進めていった。最後の最後で壮大な愛情の物語だとわかり、それまでに見え隠れしていた伏線も回収でき、もどかしさは泪にかわりました。 わたしも「この本が、好きです。」出会えたことに感謝。 | ||||
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絵を描く私にはとても興味深かったです。 痛くて苦しくて切なくて… でもドキドキして一気読みしました。 装画もステキです。 | ||||
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ノーブルチルドレンの残酷 が好きでこの作品も読んでみました。 変わった世界観のお話でまたもや引き込まれてしまいました。本当に描写や散りばめられた言葉が丁寧で、素晴らしい小説で大好きです。 | ||||
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「ハチミツとクローバー」など、 才能と向き合う青春ものが好きなので読んでみました。 求めていたのはまさにこの感じです! 才能がある人にはある人の、ない人にはない人の悩みが描かれていて、胸が苦しくなります。 特に一般人の高垣恵介が語り手の第三部は、 同じアトリエに通う灯子と遥都の天才二人に対する嫉妬心がリアルで 情けないほどに共感してしまいました。 帯に「純愛」とあったわりに恋愛要素がないな、と思っていたらエピローグでやられました。 ストレートな恋愛小説ではなく、アートを通した大きな愛の物語なのだと思います。 | ||||
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最近ガッツリとハマっているライトノベル作品に白鳥士郎の「りゅうおうのおしごと!」がある。 この作品の持つ魅力を語らせれば人それぞれに異なるのだろうけど、個人的には「残酷さ」こそが一番の魅力だと思う。 限られた才能の持ち主しか到達できないプロ棋士の世界で、あるいはそこを目指す途上で 常人を遥かに超える才能の持ち主が神さまが気まぐれで作ってしまった様な異常な才能の持ち主の存在を知った事で、 自信を喪失し、アイデンティティを揺さぶられ、血を吐くような努力を積み重ねても差が開くばかりの状況に焦り、 やがて心を折られて歩み続ける筈だった道を自ら断つに至る……頑張っても報われない才能の差というのはかくも残酷なものだと 読者に見せ付ける様な「残酷さ」が一番の売りではないかと察する所存である。 この手の「残酷さ」を売りにした作品を愉しめるのは何より読者自身が凡人だからである。 この血を吐くほど努力しても報われない実力と才能が全ての世界に巻き込まれる筈もない「持たざる者」の安逸を 才能ある者たちが打ちのめされる姿を通じてたっぷりと堪能するというのがこの手の作品の正しい楽しみ方であろう。 人間の愉しみとしては下の下、およそ「黑い愉悦」とでも言うべき類の悦楽なのだろうけど……楽しいのだから仕方がない! いささか前置きが長くなってしまったが綾崎隼の久しぶりの単行本作品となる本作も こういった「黒い愉悦」を読者に与えてくれるタイプの作品なのである。 スタイルとしてはある種の群像劇、ある美術教室に集った五人の登場人物の人生を追った作品という事になる。 この五人の中心にいるのは瀧本灯子という「異常なほどの天才」である。 およそ人間としては欠陥品と呼ぶべき常識どころか自意識その物が欠落した様な、ある種の野生動物に近い 本能だけで生きている様な恐ろしく風変わりなヒロインであるのだが、美術の才能だけは本物である。 ただし、この才能が誰かを救うという形で描かれるわけでは無い。 むしろこの異常な才能は「どうやっても追いつく事ができない存在」として美術の道を歩もうとする人間を悉く打ちのめし 心をへし折っていく「天才」というよりも「天災」と呼ぶ方が相応しい描き方をなされている。 その災厄としての性質をより強めているのは灯子に向き合う人間の多くが 「美術・創作の世界で身を立てたい」「自分には美術の世界以外に生きる場所が無い」と思い込んでいる事である。 第一章では灯子の師となる関根美嘉という北海道の田舎で生まれ育った美術家の半生が描かれる。 叔父を除けば美術の世界とは無縁の、旧弊に凝り固まった様な「女が芸の道を志して何になる」という男尊女卑の家で 孤独に育った美嘉が大学時代に目指し続けた著名な芸術賞を逃し、諦めて結婚という選択を取ろうとした姿を描いた上で 婚約者が発した「今後は『趣味』で描けば良いよ」という何気ない言葉によって自分にとって美術が 「息を吸うのに等しい、それ無しには生きていけない存在」である事を思い出すまでが描かれている。 この創作し続けなければ生きていけない、美術の世界にしか居場所が無いという、 ある意味不器用極まりない生き方しかできない美術家たちであるからこそ、 灯子の異常な才能から逃れられないという残酷さが際立つ。 灯子の父親・秋二は美術に全てを捧げてきながら幼い娘が示した才能の異常性に気付いた瞬間に筆を折る決意を固め、 灯子の師となった美嘉はその才能を嫉妬しながらもを人間としては欠陥品の灯子をどう守り、育てるかに全てを捧げる羽目に陥り、 灯子と同じアトリエで学ぶことになった一つ年下で漫画家志望の梢は描けなくなった自分を理解してもらえない事に苦しみ、 灯子の足元にすら及ばない程度の才能しか持ち合わせていなかった恵介は「自分より下」の存在を探す生き方に陥り、 およそ灯子に近付いてしまった美術家たちは彼我の才能の差に打ちのめされ続けるのである。 そしてより悪質な事に灯子自身に彼らを打ちのめそうという意思があればまだ救われるのだが、 自意識その物が欠落した欠陥人間である灯子には彼らの存在がほとんど目に映っていないのだから始末が悪い。 自然発生した超大型台風が進む先にある街や人を吹き飛ばしても何一つ意に介さない様に 灯子という異常な才能が創作活動を続けるだけで次から次へと不幸な美術家が生まれていくのだから本当に救いが無い。 彼らが才能に恵まれなかったり、努力を怠ったというのであればまだ納得もいくのだが、 努力という点では常人には不可能なぐらいに自らを追い込み、才能という点でも恵介を除けば人並み以上の物を持つ 本来であれば賞賛と祝福に彩られた道を歩む筈の彼らがたまたま灯子という「異常」に関わってしまったが故に 傍から見れば残酷極まりない境遇に陥るのだから、凡人としては「おお苦しんでいるなあ」と嫌でも愉悦の感情が湧く。 そしてこの「存在だけで同じ道を歩もうとする人間を傷つける」異常な才能の持ち主である灯子自身が 最終章ではその才能を失いかけた事でボロボロになる姿が描かれる。 この最終章で初めて迎えた「創作できない状況」の中、ただ死に場所を求め彷徨う過程で 灯子と並ぶもう一人の天才であり、自意識が欠けた灯子が関心を向け続けたただ一人の人間である遥人が 灯子にとってどういう存在であったかが語られる。 描けなくなった自分の代わりに恩師の為に受賞してくれと「当然の様に」頼る灯子に対し、 きっぱりと代役を拒絶し、遥人と自我が溶け合った様な灯子の歪な認識を清算する事を迫った事で 幼い頃から自らの創作だけにしか意識が向いていなかった灯子が ようやくそれまで持ち得なかった「自意識」を獲得する様は 何というか……卵が孵化するのを眺める様な不思議な感動を胸中に溢れ返った。 「シグルイ」のキャッチコピーとして有名な「失うことから全ては始まる」に通じる、 自らの才能に、そしてその才能が周りにどの様な影響を与え続けたのかに無自覚だっ過去のた灯子が死に、 初めて誰かの為に創作をする新しい灯子が生まれるという結末は この物語全体が巨大なプロローグであったかの様な印象を残した。 無自覚なまま自らを含めた美術の世界にしか居場所が無い人間を不幸にし続けた 「天災」の様な「天才」が自意識に目覚めるまでを描いたという摩訶不思議な作品ではあるけれども、 読み終えてみれば意外なほどにスッキリとした読後感が残った。 いつものミステリ仕立ての作品とは作風をガラッと変えてきた作品ではあったが、 綾崎隼はこういう方向性でも話を組み立てられるのだなあ、と芸風の広さに改めて感心させられた一冊であった。 | ||||
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