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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年



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【この小説が収録されている参考書籍】
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年の評価: 3.41/5点 レビュー 1022件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.41pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全562件 401~420 21/29ページ
No.162:
(4pt)

相変わらずの村上氏の中編小説。風の歌を訊け、1973年のピンボール(これらも中編)か

今回の作品も相変わらずの村上春樹らしい小説で安心しました。それと同時に、この小説の文章には多くの共感すべき言葉たちがありました。
 村上春樹が描く物語の主人公はだいたいにおいて、その時代時代の若者たちを描いてきました。
 今回もそのご多分に漏れず、2010年代の若者らしい主人公であったように感じます。
 僕も23歳の若者として、自分が色彩を持たない空っぽの容器だと、何の中身のない人間なのではないかと生活の中で感じることが多いです。周りの人間が、煌びやかで目を奪われるような色彩を持った素晴らしい人ばかりだと感じることも。それなのに自分は、地味で、個性も無くて、彼らみたいに色鮮やかに自分を見せる事の出来ない人間だ。色彩を持たないうえに、中身もない空っぽな人間だ――現代の若者で同じようにそういう悩みを抱えてる人は多いのではないでしょうか。特に草食系と呼ばれるような人種に。周りの人間がいやにキラキラして見えて、自分は無色のダメ人間だと感じてしまう劣等感の強い人が。

 本書の322pにこのような文章があります。

『入れ物としてはある程度形を成しているかもしれないけど、その中には内容と呼べるようなものはろくすっぽない。自分が彼女にふさわしい人間だとはどうしても思えないんだ』 

 髪の色を鮮やかにしたり、服装に気を配ったり、メイクやファッションを駆使して自分をよく見せようとする。入れ物としての自分はきれいに保っていながら、しかし実際に自分の中身など空っぽなのではないか。大好きな人に対して、自分はふさわしい人間ではないのではないか。これは現代の若者が(無意識的に)抱えているテーマだと僕は思いました。
 身なりばかり整えて外見で勝負する人ばかり増えている。或いはそう言う人たちばかりがテレビや映画、漫画などに出て来て、称賛を浴びている。イケメン美女、至上主義。だけど中身という物が無い。
 それが現代の流行になってしまっている。
 かと言って、それを指摘する自分には色彩もないし、同じように空っぽな人間なのではないか?

 本書はそのような、自分を地味で無色な人間だと思い込んでいる人の物語です(村上氏の主人公らしくハンサムボーイですが)。目を奪われる色彩(勉学の才能だとか、可憐さだとか、ジョークの才能、社交性etc...)によってしっかり自分を持っている人たち。そのような人たちから切り捨てられ、孤独に打ちひしがれながら生きる男が主人公。色彩を持たない多崎つくる君。
 この物語で延べられる色彩と言うのは――先程も少し述べましたが――分かりやすい”才能”や”個性”であると僕は解釈しました。色彩を名に持つ登場人物には、それぞれわかりやすい才能なり個性なりがあります。しかしつくる君の個性や才能と言えば、駅を作る事。駅を眺めるのが好きな事。とても地味で分かりにくい才能です。自分が色彩を持たないと感じてしまうのも、なんとなく頷けてしまいます。もちろん駅の建設は、とても重要で素晴らしい職業であり、駅を眺めることも彼の職業的資質であることは間違いないのですが。
 この物語は、そんな地味な彼が色彩を持つ友達とのグループを追い出されて、孤独に打ちひしがれている場面から始まります。どうして自分は親友だった彼らに裏切られたのだろう。自分は色彩を持っていないからなのか? そんな悩みを巡り、色彩を持つかつての友達の元へ、16年ぶりに巡礼に向かうのが、この物語の大きなストーリーです。と言っても、よく分からないかもしれませんが;;(説明が下手糞すぎてすみません)

 この作品を読んで僕が感じたのは、簡単に言えば下記の事です。
 大切なのは色彩じゃない。生きる上で重要なのは目に見えるカラフルな能力ではない。着実と、しかし確実に駅を作り修復し続けていく能力である。
 自分を飾るのではなく、たくさんの人を迎え入れて送り出せる素敵な駅なような、そんな心を作って行けと。
 多くの人をありのままに受け入れ、見守っていく広く頑丈な心を持つことが現代に必要なのではないか。
 裏切りの犠牲者であっても、色彩を持たぬ人物でも、一人一人が自信を持ち生きていけばいい。そして自らの心に駅を作ったうえで、好きな人を迎えに行き、わが町へと戻ってくればいい。
 23歳である僕に向けて。この時代に生きる人に向けて。村上春樹からは、そんなメッセージを受け取ったような気がしました。相変わらず人にやさしさを与えるのが得意な作家さんです。

 この社会の中では全ての人が犠牲者である。何らかの形で友達に裏切られ、理不尽に追放され、大切な繋がりを失ってしまう。現代社会の組織内ではそういう事が往々にしてある。友情においても恋愛においても。けれどその中で培った、青春時代や若い時代の繋がりは決して色あせることない痛みであり喜びである。人はそれを抱えながら精神的に参ることもありながらも、繋がりを維持するために生きていかなければならない。たくさんの駅や路線を繋ぐ電車を、迎え入れる場所として。そんな文学的メッセージがあるようにも感じました(この見解、及びこのレビューでの僕の見解全てがまったくの的外れかもしれませんが……)。

 ちなみに星を一つ減点したのは、出来事の何もかもがうまく運びすぎていて、それが物語を動かすための都合のいい展開になっているような気がしたからです。
 少なくとも、その展開に説得力が感じられなかった。出来事のあらゆることが運命的すぎて、少々話が地から浮きすぎていると感じてしまいます。そこにもっと読者を納得させるような説得力があればよかったのですが……。村上氏の作品がそういうものだと言われればそうなのですが、昔はもっと運命的な出来事に対して細かい事象や理由を書かれていた気がしたので、今回はちょっと物語を急ぎ過ぎている気がしました。ただ、物語の内容や、比喩などは相変わらずだったので個人的にはよかったのですが。そこが少し気になりました。ユズの妊娠についても、何故それが話の中に登場したのかよく分かりませんでしたし……。

 まあ、ともかく。スプートニクやアフターダーク等、氏の中編は実験的なものとしての作品が多いので(この作品も同じ色合いに感じます)、次の作品にも大いに期待です。恐らく長編を書かれるのではないでしょうか。これは僕の勘です。


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4163821104
No.161:
(5pt)

面白いとは思えないけど

純粋に読ませる能力がすごい。キャラクターに感情移入できないけど
ここまで、読ませるのは、村上さんのすごい才能のなせる業か?
後は、疎外と不条理、孤独を描かせたら、右にでるものは今の日本にはいないと思う。
なんというか引き込まれるわ。
暗い気分になるのは、自分の中にそういう要素があるからだと
思い知らされたなあ。

決して、好きな作家でもないし面白いと感じる作品でもないし
二度と読みたいと思わないけど、でも認めざるを得ない。
すごい作家だと
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No.160:
(5pt)

文章がうまい、起承転結もうまい

他におもしろい小説はいっぱいあると思うから、話題の作品だと期待して読もうと思うなら、けっこうがっかりするかもしれません。
ですが、文章は難しくなく、わかりやすい流れと、最後まで読み終えることができるボリュームの作品であることは確かです。
シロの身に起こったエピソードがもう少し意外性の高いものだともっと楽しめたとは思うけれど、
人間の強さの度合いが、自分の若かったころとはきっと違うのだろうと思うと、理解できないなりに、
“今ってこんな感じなのかもね。”と納得できるというか、教わる感じがありました。
自分の内面を説明するための比喩的な表現や、夢の使い方など、さすがに評価の高い小説家さんだなと思います。
ムキにならずに、ひとつのお話として読むには、十分楽しめる作品と感じました。
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No.159:
(4pt)

ポール・オースターとの比較論対象としてお勧めの書

1Q84以前の本来の村上氏のスタイルがストーリに描かれていたことに好感を持ちました。言葉遊び、名前遊び、サスペンス的要素を持ったプロット展開などは、ある意味ポール・オースターのNew York Trilogyと比較検討してみるには面白い書だと思いました。
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No.158:
(4pt)

2013年、自分への巡礼。

孤独、友達、悪、そして愛。これは、一冊を通しての自分への巡礼の旅であり、この貴重な旅する時間を与えてくれることこそが、この本の醍醐味ではないのでしょうか。 出だしは、老練の音楽家が奏でる即興演奏のよう。沢山の意味深いフレーズが宙に投げ出されたあと、中盤はそのフレーズをパズルのピースとして結合していきながら、グイグイ引き込まれます。 そして、最後はまた、抽象的なテーマに戻りつつ、読み手の想像力を掻き立てていく。 今一度じっくりと、多崎つくるを通して自分の人生を反芻し、明日からの次のステップへとヒントを与えてくれる、そんな自分を見つめ直す一冊でした。
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No.157:
(4pt)

知覚の扉

高校時代にボランティア活動で知り合った友人4人と、
何人も立ち入ることの出来ない完璧なサークルを形成していた
主人公の田崎つくるが、ある日突然、理由も告げられず、
彼らから絶交を言い渡される。
死への淵を彷徨うまでに思いつめ、心に傷を残したままの田崎つくるは、
16年後、上司の紹介で知り合った木元沙羅という2歳年上の女性から、
「記憶をどこかにうまく隠せたとしても、深いところにしっかり沈めたとしても、
それがもたらした歴史を消すことはできない」「自分が見たいものを見るのではなく、
見なくてはならないものをみるのよ」と、過去と正面から向き合う事を促され、
友人たちひとりひとりを訪ねる巡礼の旅に出る。

「ノルウェイの森」から4半世紀が経ち、新たに村上春樹が書き下ろした
喪失と再生の物語は、ビートルズからフランツ・リストのピアノ独奏曲「巡礼の年」に
音色を変えて、64歳と老齢の域に達し、東日本大震災の惨状を目の当たりにした後の
死生観が色濃く反映されていて、文中に言及されているように、オルダリ・ハスクレーが
考える「知覚の扉」を木元沙羅によって開けられた田崎つくるが、言語や哲学と言った
脳の機能によって制限されていた、物事のありのままの本質を垣間見て、
抑圧から解放され、「すべてが時の流れに消えてしまったわけじゃない」事を知るのです。

4人の友人たちには、赤松慶(あかまつ けい)青海悦夫(おうみ よしお)
白根柚木(しらね ゆずき)黒埜恵理(くろの えり)と名前に色が含まれており、
色彩のない無個性な田崎つくるに疎外感を与える原因になっていますが、
本作ではこの色彩が重要なファクターになっていて、大学で知り合った
灰田文紹(はいだ ふみあき)は、白根の白と黒埜の黒を混ぜれば灰田の灰色になるように、
彼女たちからの、特に白根からの伝えなくてはならないメッセージの担い手としての役割を
与えられていることは、田崎つくるが見る、白根と黒埜との3人で交わる性夢で、
射精を受け止めたのは白根のヴァギナではなく、灰田の口だったという箇所で
表現されています。
また、名前に色はありませんが、「知覚の扉」を開いた木本沙羅の沙羅とは、
釈迦が涅槃(人間の本能から起こる精神の迷いがなくなった状態)の境地に入った
臥床の四方に植えられていた木の事で、時じくの花を咲かせ、たちまちに枯れ、白色に変じ、
さながら鶴の群れのごとくであった(出典:「鶴林」)とあるように、
枯れて白色に変じた状態は、沙羅が、殺害された白根の化身であることを意味しています。

今回も、拒絶された友人との関わり(デタッチメント)から逃げていた主人公が、
恋人に背中を押されて、真相を知る(コミットメント)ための旅に出る設定になっていますが、
煮え切らない主人公の目に映る光景が平板なので、カフカ的な世界観を期待したファンには
味気なく、もう少しスパイスが欲しいところでしょうか。
ただ、ノーベル賞候補にもなる作家ですから、行間に張り巡らされた伏線は奥深く、
読むたびに新たな発見がある作品です。

知覚の扉澄みたれば、人の眼に
ものみなすべて永遠の実相を顕(あら)わさん。
(ウィリアム・ブレイク)
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No.156:
(4pt)

36歳の現実感を感じます

読み終わって、幸せだなと思える。

状況設定やふ伏線、ストーリーで読ませようとする本はたくさんありますが、登場人物や情景のちょっとした動き、風合いの変化が、読み手である自分の心の中のいくつかの引き出しを開けてくれる、こういう体験はやっぱり素晴らしい。

人は人とのつながりの中で生きていくけど、結局はすごく孤独な存在であって、理不尽に隔絶されることだってある。自分は特別な何かでもなんでもないからこそ、不安にもなるし、寂しくもなる。その積み重ねが人生。今、色が無かったとしても、見えなかったとしても、いつか味わい深い色を、他の誰かが見ることになる。

主人公の36歳という年齢にリアリティがあります。
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No.155:
(5pt)

村上春樹らしい

最近、村上春樹の本を、いくつか読ませて頂きましたが展開や、切り口が ”らしい” なあ、(個人的感想)なお話でした。2つの時間軸の違う話を進めて、最終的に両方の話が同じ時間軸に乗っかる展開や、こちらは(展開がお話により違いますが)学生の頃の、思い出話ほかを、織り交ぜながら、作者の感情(学生さん)だった頃の思いや、社会、友達などについて、考察しながら、物語に乗っけるお話です。
 ミステリー要素もあり最終的な回答や、なぜそうなのか、がとても微妙なふり幅の中でささやかに進みます。この感じが好きな方(日常の、少しの事(個人の持つナイーブな思い)などで一喜一憂出来る、ナイーブな感性がある方なら楽しめると思います。多少ネタバレですが、今回も、クラシックの音楽の題材が入り、とても聞きたくなりましたよ。最終的には、私は楽しめましたが、1Q84 のほうが、個人的には一気に読めたように思います。ゆらゆらした時間を、また自分を見つめなおす為に、生きてみたい そう思わせる青春文学な、内容でした。稚拙な文面で申し訳ございませんが、感想、レビューでした。
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No.154:
(5pt)

ダビデの歌

昨夜、

返却期限を3日すぎたレンタルCD(はっぴいえんど3枚・ベニーグッドマン・ローリングストーンズ)を返しにTSUTAYAなかもず店にいったら、

書店コーナーにこの本が大量に入荷していて、ようやく買えた。

発売日から2週間がたっている。

家に帰るとテレビでは明石家さんまさんが「行列のできる法律相談所」にスペシャル出演している。

一回目の時ほどの爆発力はないようだ。

僕はテレビのボリュームをしぼり、「巡礼」を読み始めた。

4時間後、読み終えた。

本って、一気に読破すると、汗とか力の加減によって 独特の方向にひん曲がるんだなってことが再確認できた。

村上春樹さんによると、「あらすじだけ最後まで紹介してポイっていう書評は、あれはなんとかならないのかな、まったく・・・・・・・・」(サリンジャー戦記)

ということなので、今回はいくつか気が付いた点だけ抽出してみよう。

・挫折した(成功しなかった)ピアニストの物語(スプートニクの恋人と共通)

・かわいい女の子ふたりとの3Pへの執念(ねじまき鳥と共通)(なお、古事記にもこのテーマがあるらしい)

・6本指の人の話〜12進法の衰退について(奇形ネタは初めてか。ちなみに、ユンチアン「ワイルドスワン」によると、毛沢東の妻・江青は足の指が6本あり、そのことの負い目のせいで毛沢東が浮気しまくっても何も言えず、文化大革命のドサクサにまぎれて悪逆非道のかぎりを尽くしたらしい。ほんまかうそか知らんけど。で、毛沢東死去直後に処刑された。)

・ホモセクシャルの問題(登場人物のひとりが、破局に終わった結婚のあとに自分がホモであることに気づき、しかも超保守的な社会に生きていることについての苦しみを告白するシーンがある。)(海辺のカフカにもセクシャリティーの問題があつかわれていたような気がする。)

・通勤電車地獄への恐怖(満員列車、通勤地獄への恐怖は「アンダーグランド」などで何度も語られてきたと思う。恐怖というよりも、なぜそれに耐えられるのかについて、理解にくるしんでいて、困惑してはるみたいだ。年配の方々が若者の行動を見て途方に暮れるように。)

…………………………………

ということで、これまでの作品からのリフレイン、

これまでの作品と響きあうものがいくつもあって、

村上ファンとしては より多く楽しむことができた(倍音効果@内田樹)。

そういう意味ではこれまでの集大成といってよいかもしれない。

繰り返しってありがたい。

時間がたってみないとこの本の本当の真価は

測り知れないわけやけど、

個人的にいちばん共感できたのは、いまは、

主人公がもらす「夜の予定はいつも白紙だ」ってとこ。

あと、村上さんにとって、新宿駅っていうのは大切な場所なんだなあとも思う。

あと、アンチ村上春樹だったかつての同僚は、いまでもこれを読んで「キザだからだいっきらい!!!!!!!!!!!!!!!!」ていうのかなあ
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No.153:
(5pt)

素直に面白かった

やけくそみたいに無分別に売れてしまった代償か、低評価レビューも多いようですが、個人的には相変わらずすんなりとブレなく面白かったです。

「読者を選ぶ」という意見が多いですが確かにそうなのでしょうね。100人が100人オモロイって言ったらかえって気持ちが悪い(笑)。内なる孤独感をいつも感じている自分には本作はとても共感できてどっぷりと世界にハマり込んでしまいました。

そんで皮肉なことに「こういうのキライ!」って言う人のほうが私には友だちとして魅力的だったりするんですよね。困ったものだ。

もちろん諸々のストレスは読後に残るけど、大げさに言えばそれこそ「必要な痛み」なのかなあ、自分にとっては。
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No.152:
(5pt)

素晴らしい作品です

個人的にはすでに村上さんの作品であればなんでも読むタイプになりますが、感情的にはこの作品はよく生活の孤独や世間の夢幻を感じられる作品だと思います。愚痴かもしれませんが、文学作品にたいする熱度もそれほどではない、共鳴感を求めるではない、ただ、自分は部屋の中で静かに本を楽しみたいだけです。
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No.151:
(4pt)

忘れられないもやもや感

こちらのレビューでも書かれているように、村上春樹の最高傑作ではないかもしれませんが、個人的には、かなりイイ線いってる作品だと思います。

村上小説の好きな所は、物語なのに抽象的すぎるところで、つじつまが合わなくても、結論が見えなくても(見えないだろうと予想できても)最後まで読ませてしまう文章力はすごいと思います。この本も他の作品と同様、確固としたストーリーラインはあるのに、最後まですっきりしません。

1回目の読後感「なにこれ、なんでこんな中途半端に終わってるの」

読んだ時間が無駄に思えて、本を放り出してから2、3日。ここらへんから本が効いてきます。ふとした瞬間や、ボーっとしてるときに、本の内容が断片的に頭に浮かびます。1小節、1シーン、登場人物、台詞、そういったものについて漠然と考えているうちに、「もう1回読んでみようかな」と思って再読→すっきりしない。

既にこれを数回繰り返しました。これが私にとっての村上春樹の魅力です。
私の部屋の、一番目につきやすい本棚には、羊の冒険シリーズと世界の終りとハードボイルドワンダーランドがあります。すりきれてぼろぼろになっていますが、いまだに時々取り出して読むので片づけることができません。色彩を持たない多崎つくると巡礼の年とも、時々取り出して読む関係を続けていくと思います。
(ねじまき、1Q84あたりは描写がグロすぎで怖かったので読み返していませんが)
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No.150:
(4pt)

読む人を選ぶ作品

私は熱狂的なハルキストではありませんが、これまで氏の作品を多く読んできました。
ここでの評価があまりにも低いので今回は覚悟して読みましたが、何の何の、悪くないです。

テレビや新聞であまりにも騒がれすぎて、レビューを書かれている方の中には普段こういった小説をあまり読まれない方も多いのではないでしょうか?
村上氏の作品は、胸がすくようなわかりやすいエンターテインメント小説とは違います。
扱われているテーマも、一定の年齢と経験を経なければ理解が難しい部分があるかと思います。

ある程度、読む人を選ぶ作品なのではないかと思うのです。

これから購入しようとされている方は、ぜひフラットな気持ちで手に取っていただきたい。
読んで合えば良し、合わなければそれも良し、です。

合う合わないはお薬と同じ。飲んで(読んで)みなければわかりません。
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No.149:
(5pt)

健在、村上ワールド!

やっぱり村上春樹は素晴らしい。言葉でいろいろ紡ぐより、
まずは一読してみてほしいと思う。
現実と非現実の境でさまよう主人公の心理、旅、不思議なことが
すっと胸に落ちてくる。
やはり今回も、音楽が重要なモチーフとなって出てくる。
読後、どうしてもその音楽を聴きたくなった。そんな小説はあまりない。
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たつるは、金縛りの中で叫ぶ、少年よ硬く勃起せよ。大事なものが失われる前に

たつるが、この本をようやく手にした時、テレビからは100万部売れたとのニュースが流れていた。そして1週間が過ぎた。人はどうしてとり憑かれたようにハルキの本に群がるのだろう。まるで牛が水を飲み、馬がものを食べるように、あるいはゾンビランドの住人のように、いやこの気色悪い連想は止めておこう。自らがその一人であるから。いづれにしても3年ぶりのご馳走はゆっくり楽しむに限る。
たつるは、つくるに思想性は求めない。思想とは社会事象の何かを提示し、その是非を判断し、因果関係と相関関係を整理し、そして何よりもその解決策とビジョン、そこに至る方策が示されなければならないからだ。ここにはそれはないし、エンターティンメント小説として、どれほどのものかが問われるだけだ。それはハルキの社会的場面での言動に譲るべきだ。

さて、読み進む。友人たちは、青春、朱夏、白秋、玄冬、五行思想からの借用か色付の名前を持つ。つくるは色彩を持たない。Colorlessだと自他とも称している。しかし、Invisibleとは言っていない。さすれば、何かの実体があれば、光の反射を受けて目に見えるものがあるはずである。色彩に遠いものとすれば、クロとシロそしてハイとなる。これはキーワードパーソンに違いあるまい、つくるの分身であろう。やはり地下深いところで繋がっていた。そしてEmptyからの脱出を図っている。あるいは素敵な価値あるEmptyを目指して。

ハルキの小説には、日活ロマンポルノ映画と同じく、決まりごとのようにPeriodicalに性的場面が出てくる。相手は少女と年上の女性。「ノルウェイの森」も「海辺のカフカ」も「1Q84」もそうだ。そしていつも勃起と大量の射精、まるで馬のように。今回も同一だ。つくるの新しい相手は、年回りからいって本人に失礼だが丁度、米倉涼子みたいな魅力的な人だ。なぜ、いつもエロ小説もどきの展開があるのだろうか。そこには深い訳があるはずだ。生と死と性、それは人間にとって大事な事柄だ。喪失の恐れがあるのだろう。或いは過去のあの頃の懐旧か。
つくるは、嫉妬と喪失についても語っている。そうサリエリがモーツァルトに嫉妬し(映画アマデウスで)毒殺を試みたように嫉妬は他者に危害を与えかねない忌まわしきものだ、大事なものを喪失した場合は深い悲しみとなり自害を考える。子供のない寂しさよりも子供を失った時の悲しさは計り知れない。

推理小説でもない、謎は未解決である。あるいは解は本人もわからないのかも知れない。年上の女性との仲はいったいどうなったのだろう。勃起不全は直ったのか。ハルキがどこまでも骨太いテーマとして、エロ小説に堕しない小説を書き続けるなら分岐点はそこにある。性的場面のない小説で万人を楽しませるか。でなければなぜ、品格を失う危険まで冒してまでそこに拘るのか必然性を明らかにする。それがつくるに代わっての巡礼の年になるであろう。それを見届けるまでは、愛読者として、たつるはこのサークルから逃避することはない。

追記) たつるは長い二日間の眠りから覚めて、あらためて思う。つくるの巡礼で現実の社会の何事かがいささかでも変わり得る力を与えるのか。小市民の内省への囁きはあっても、社会的メッセージはない。ハルキの読み方に間違いのないことを再度確認し、期待と空しさを感じる。もっと自由を語れ、そこには無限の希望があるはずだ。
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No.147:
(5pt)

よかった。

みなさんのような詳細な示唆に富むレビューはかけませんしコアな村上氏のファンでもない私が書けることは、一気に読んで蔵書印を押して丁寧に机に置いたことです。
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No.146:
(4pt)

Le mal du paysをBGMに

19歳の時に親友達を失うという喪失体験を経て、死を希求。自己の変革を図ることで危機を乗り越え、夢だった職業を得る。何もかもこれからはうまくいくはずだった。
 しかし、思春期に受けたPTSDから、36歳になっても迎えるべき成人期に凍てついた芯が残されている。
 恋人の問いかけにより、時の流れに吸い込まれてしまったうつくしい可能性をみつめる。―リストのピアノ曲とラザールベルマンの演奏で色彩をたどる巡礼。
 記憶をどこかにうまく消せたとしても、深いところにしっかり沈めたとしても、それがもたらした歴史を消すことはできない。
 そして、僕らはあのころ何かを強く信じていた。何かを強く信じることのできる自分を持っていた。そんな思いがどこかへ虚しく消えてしまうことはない。
 この作品にもこびとが出てきて無垢な君を捕えようとしている。
 Le mal du paysをBGMにノスタスジアをたどって欲しい。
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4163821104
No.145:
(5pt)

私は傑作だと思いますが

私は今までの小説で一番いいと思いますが。 読みやすくて内容が深い。彼がずっと目指してきたことが、ここまで実現されたか!と感動しました。 そしてこの作品の品格の高さが評価され、今度こそノーベル賞…という流れを期待しますけどo(^-^)o 村上春樹の小説は大好きですが、今まで「それでも嫌なこと」がいくつかあったのですが、それがクリアされたので大満足です。 例えば、今までのは、読後感が半端で物足りず、ずしんとこない/知的な人物が無駄に愚かな行為をしすぎて納得いかない/作者のうんちくのひけらかしを控えてほしい(こんな人物がこの音楽についてこんなこと言うわけないとか)/謎を残して終わることがずるい/結構偏見バリバリで公平さに欠けるところがあると思う/等が不満だったのですけど。 今度はいい感じです。 「海外では評価が高かった作品」みたいなところに落ち着くんでしょうかねー。どこまで売れるのか楽しみ♪
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No.144:
(5pt)

ノーベル文学賞に推す

とりあえず文学を「言葉で表現された認識の提示」とすると、この作品に見られるそれは新規かつ有効であって、更に今を生きる人々に必要だと思える。それはどこかの国で政治的な救済を書くよりずっと困難で創造的な文学的に良い仕事だ。ノーベル文学賞にふさわしい仕事だ。

 この物語もまた多くの村上作品と同様に恋愛小説だ。我々にとって恋愛は人生の大きなテーマだ。生物の二大本能の「個体保存の本能」を「生きたい」と表現するなら、「種族保存の本能」は「子供が欲しい」となる。「子供が欲しい」は「恋愛したい」「異性にもてたい」「性的魅力をアピールしたい」と解体できる。なんと多くの人がこの本能に突き動かされて生きている事に無自覚な事か。主人公もまたこの二つの本能に無意識に従って生きている。無論、彼の理性は絶えず周囲の環境を把握し対処しているが決して十分ではなく正確ですらない。

 例えば、タイトルからしてそうだ。「色彩を持たない多崎つくる」とあるが、シロとクロ(灰色もそうだ)は色かもしれないが「色彩」とは言わない。高校の仲間五人のうち「色彩」の名にふさわしいのは実はアカとアオだけなのだ。五人は正五角形のようだったと文中語られるが、「巡礼」の結果、彼は錘のような存在だった事が明らかになる。ならば、五人の関係は逆四角錘と表現されるべきだ。確かに正五角形よりその方が安定している。また、夢の中で「色事」をなす三人が単なる色で色彩でない事も作者が意図していないはずがない。さらに言えば、物を作る行為は色彩や白や黒の陰影を支配する光と無関係ではいられない。例えそれが自然の光から遠い地下鉄の駅でも。ならば、実は”つくる”は四つの色をコントロールする存在だったのか?関係は正四角錘型だったのか?或いはそれが無意識に感知され破壊、更に復讐を試みられたのがあの事件だったのか?それとも、事件現場が正しければ灰田の仕業?謎は深まるが、可能だと思われるシロの姉に対する訪問は行われない。結果、読者は解決を拒否された謎として受け止める事を余儀なくされる。作者の意図に強制されて。

 もし、この作品が推理小説として書かれたならあまりにも多くの謎が未解決でデタラメな作品だと評する事も出来る。だがこれは、「文学」だ。世界の全てを理性で把握できると考える「近代的認識」を越え、決して全部は充分に把握できないんだよと新しくて有効で絶望的な現実認識を我々に突き付ける。

 前作のように大部でなく、相変わらず面白く、美しく知的で興奮する。物語としても文学としても成功しているこの作品こそノーベル文学賞にふさわしい。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年Amazon書評・レビュー:色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.143:
(5pt)

読みやすい作品です。

村上作品はほとんど読んでいます。
文体はとてもやさしくきれいで、あまり難解なところはなく、すらすら読めます。
登場人物も村上作品の中では庶民的、というか、親しみやすい人物ばかり。

ただコアな村上ファンにとっては物足りないところもあるかもしれません。
確かにテーマや構成は以前にも似たような作品があり、繰り返しのように思えるかもしれません。

それでも、わたしは読んでよかったなぁと思います。
終盤はどうしても311の震災を連想せずにいられませんでした。
生き残った者達はそれぞれの持ち場で生きていくしかない・・・

「駅」という「メタファー」がとてもすてきでした。
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