古書の来歴
評判
古書の来歴の評価:
4.44/5点 レビュー 25件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全22件 1〜20 1/2ページ
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古書の来歴の評価:
4.44/5点 レビュー 25件。 B ランク
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本書『古書の来歴』に興味を持ったのは、先の『哲学散歩』のなかで「古代ギリシャで書かれたものが、時間的だけでなく、空間的にだって、ギリシャ、アラビア、中央アジア、北アフリカ北岸をぐるっとまわり、ジブラルタル海峡を渡ってスペインへ、そしてピレネー山脈を越えたり、シチリア島を経由したりして西欧世界へ運ばれてきたのである。」(同書P81)と、書いていたことに拠る。
イベリア半島は、八世紀初頭以来イスラム教徒の支配下にあったが、イスラム教徒、ユダヤ教徒、キリスト教徒が穏やかに共生することができる寛容の文化圏が形成されていた。
十世紀ごろからキリスト教徒の騎士たちによりレコンキスタが遂行されたが、十二世紀になるとイスラム教徒もキリスト教徒もユダヤ教徒もお互い寛容であり古書の研究や翻訳、写本などで協力しあっていていたのである。
本書のテーマである「サラエボ・ハガダー」とは、出エジプト記を記念する過越の日のための物語と祈りの言葉が記されている中世の細密画が描かれたヘブライ語の本である。
この本が出来たのは、最後のレコンキスタ(1492年)頃のイベリア半島のグラナダ辺りと本書では設定されている。
その後この本が500年ほど辿り、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争中行方不明としてあったこの本を、博物館から学芸員が危険を顧みず持ち出して銀行の金庫に隠した。
研究者仲間のイスラエル人から電話で連絡があり、主人公ハンナがこの「サラエボ・ハガダー」の鑑定と修復を政治的人選で依頼され、戦火収束間もないサラエボへ行き銀行金庫の部屋で一週間で修復することになる。
本のページの中で見つけた「蝶の羽」「ワインの染み」「海水」「白い毛」の微細な欠片をグラシン紙の小袋に収めて後に知人の専門家に調べてもらう。
「蝶の羽」「ワインの染み」「海水」「白い毛」が何故この「サラエボ・ハガダー」に付着していたのかなどを次の章で時を遡って物語を紡いでいく。
ユダヤ教で禁じられている豪華な細密画を描くなどを想像豊に物語を紡いでゆく。
ハンナの時と「サラエボ・ハガダー」の時を、何世紀も行ったり来たりしながら、だれがこの細密画を描いたのか、だれが文字を書いたのか、ハンナと母親との確執などを、読者の予想もできないストーリー展開する著者のフィクションながら創作の冴えに脱帽しながら「サラエボ・ハガダー」の悠久の旅を楽しく読み終えました。