■スポンサードリンク


誰かが見ている



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
誰かが見ている
誰かが見ている (講談社文庫)

誰かが見ているの評価: 8.00/10点 レビュー 1件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

■スポンサードリンク


サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(8pt)

誰かが見ているの感想

この作品は第52回メフィスト賞を受賞した作品だそうですが、メフィスト賞というイメージとはちょっと違った非常に正統派の、なおかつ社会派でもあるサスペンスミステリーだと思います。現在の日本は少子化社会ということで妊活や出産そして子育てに注目の集まっている時代とも言えるでしょう。そのような現代社会が抱える問題を正面から誠実に扱ったのがこのミステリー「誰かが見ている」です。

登場人物は20代から30代の女性たち。みんなそれぞれ結婚或いは出産というものに対して大きな苦悩を抱えています。ですから同年代の女性がこのレビューを見ていらっしゃったとしたら是非お勧めしたい、そんな作品だと思います。主な登場人物は4人います。

まず千夏子。彼女は夫と子供がいます。そして毎日パートに働きに出ています。一見恵まれたそのような家庭ですが、彼女には一つだけ大きな悩みがあります。それは自分の子供を愛せないということなのです。彼女は母親になることが長年の夢でした。しかし今子供が産まれてみるとどうしてもその子供を愛せないのです。そのことが精神的な悩みになっていきます。妊活の頃始めたブログも一時は人気が出たものの、子育ての嫌悪感の中からほぼ休止状態となってしまいます。そのような満たされない日々の中、夫との関係もあまり良くなくなっていくわけです。

もう一人の登場人物こちらは仕事を持つ女性で結子という名前です。彼女は年齢は30代、そして5歳年下の夫がいます 。夫の家族からのプレッシャーもあり彼女はどうしても子供が欲しいと願っています。しかしなかなか望ように子供はできません。そこで彼女は今妊活に励んでいます。ところが夫が最近夜の生活を拒否するだけではなくなかなか言葉も交わしてくれない、何らかの異変が起き始めているのです。彼女もこの作品の中では重要な役割を占めています。

次に紹介するのが春花と言う保育園の保育士をしている20代の女性です。彼女は職場での人間関係もうまくいかず早く保育士を辞めて結婚したいと望んでいます。漸く結婚相手も見つかり結婚することになりましたが、夫や夫の家族は彼女に対して子供を強く望んでいる、それなのに彼女自身は子供が欲しくないのです。 彼女はこの結婚に対してすごく悩み始めます果たしてこのまま結婚していいのだろうか。

もう一人の女性は柚季と言う主婦の女性です。彼女には杏と言う保育園に通う娘がいます。引っ越してきたばかりの彼女は千夏子と親しくなります。そのきっかけは娘の杏が千夏子の子供である夏紀と同じ保育園に通っているということでした。彼女は夫と娘の杏と3人でタワーマンションで暮らしています。一見すると非常にお金持ちで何の悩みもないようにも見えます。千夏子と柚季の人間関係も最初の頃は友好的だったのですが様々な事柄が起こりトラブルを抱えて行きます。

基本的に今あげた4人の女性を中心にストーリーを展開していきます。激しいストーリーの展開はあまりありません。わりと淡々と進んでいきます。どんでん返しもあることにはあるのですがそこは売り物ではありません。むしろこの小説の最も重要な部分は女性の生き様、妊活、出産子育てそしてさらに夫婦の問題、このことに対して真正面から誠実に書かれたのがこの作品なんだと私は思っています。したがって派手なストーリー展開やドキドキする展開を望んでいる方には非常に地味な作品かもしれません。しかし読み終わった後非常に感動できますし、読んで良かったなと思える作品になっていると思います。是非この作品を読んでいただきたいなとそういう風に思っています。


いわし雲
78XRDN1A

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!