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いわし雲さんのページ


自己紹介
ミステリが好きになったきっかけ
乱歩。
クイーン、クリスティなど。
好きな作品の傾向
どんでん返しのあるもの。
本格物。
クローズドサークルもの。
シリアルキラーもの。
サスペンスもの。
オススメしたい作家や小説
many

レビュー数
25
最近のレビュー
9pt
7pt

読後感がいい 家族とは血とは何かを考えさせる良作

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基本的にミステリというものは、欲や憎悪などある意味人間の嫌な部分を扱ったものなので、やはり読むのにはエネルギーを使いますね。イヤミスなんか特にそうですが。この作品も最初はそういう憎しみから来る復讐話かと思ってたんですけど、予想外に読後感がさわやかでしたね。主人公の西尾木敏也は大企業の経営者西尾木雄太郎の次男、といっても実は法的には息子ではない、血のつながりはありません。雄太郎の愛人の連れ子なんですね。長男の雄一は抑圧的な父に逆らい家を出て数年、千秋という貧しいが心の美しい女性と暮らしていました。二人の間には、結希という幼い女の子がいます。ところが雄一は事故で不幸な死を遂げます。敏也自身も嫌いな義父の元を離れ、一人暮らしをしているわけです。仕事はその義父のコネで入った系列会社。さらに不幸なことに千秋は癌のために亡くなってしまいます。そこで敏也は血のつながらない兄雄一の子供である結希を自らの養子にして育てるのです。どうしてわざわざ慣れない子育てを苦労してするのか。果たして敏也の目的とは? 詳しくはネタバレになるので、書けませんが、ある程度読者は想像がつくでしょう。要はある目的というか、計画のために数年費やして結希を育てるわけですね。結希が10歳になったとき、敏也はある行動に出ます。ここまで書くと怖い復讐話に思えますが、あまり怖さはありません。敏也という青年がいい奴なのと、同居する亜沙子とおねえの汐野のキャラによるものだと思いますが、血のつながらない4人の同居生活が楽しそうだからです。最後にはどんでん返しもありますが私はこの結末を受け入れますね。いずれにしても読後感が良く、たまにはこういう作品もいいのではと思いましたね。

8pt

文句無しの傑作 予想できない結末の切なさ 感動です

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白河三兎という作家の作品についてはほとんど読んではいますが、非常にテクニックのある作家という印象を持っています。逆に言うとテクニックがありすぎる故に分かりづらいそういう感じのする作家でもあるわけです。今回の作品はまだ一度しか読んでいませんが非常に素晴らしいものでした。.ある高校のクラスでの話なのですがこの高校のあるクラスに一人の女子校生が転校してきます。舞台は東京東京の高校なのですがこの女の子は大阪出身の子で様々な事情があり、東京のこのクラスに転校してきたというわけです。この女子校生は非常にキャラクター的にものすごく立っているという感じがします。そしてこの高校生を取り巻く何人かの生徒たち、彼らはみんなぼっちと呼ばれる孤独な生徒たちです。彼らは修学旅行に出かけていきます。この時にぼっちたちのグループのリーダーを務めるのがこの女子校生なわけです。そこから先を言うとこれからこの小説を読む人の興味をそぐことになってしまうのでこれ以上は言えませんが、結論的に言うとこの作品は私が読んだ中でも非常に素晴らしい最上位のものでした。この作品から学んだことは、今伝えるべきことは今伝えておかないと、後になって伝えようとしても手遅れになってしまうということです。今を生きることの大事さを一番言いたかったのが作品ではないかと私は思っています。非常に巧妙な叙述テクニックその結果最後の章で明かされる非常に意外などんでん返し。そしてショッキングな結末。これを予想できた人が誰がいるでしょうか。私も予想できなかったしこれを予想した人がいるとすればそれは天才としか言いようがありません。それぐらいこの作家の技巧はすごいものです。是非皆さんも読んでいただきたいと思います。そしてこの最後の結果を知った時に胸に起こるこの切なさ寂しさ悲しさ。これを皆さんに共有していただきたい、そういうふうに私は思っています.。

6pt

発想は面白いが後半肩透かし

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この本を読んだ感想をまず言うとすれば、一度読んですぐに理解できるような代物ではないということです。非常に難しいと思います。こんがらがっていてなかなか頭の整理ができません。しかし2度3度読むとそれほど難しい構造の本でないということが分かってきます。この作品はいわゆる論理学の面白さをミステリーに導入したということです。 ただ私は論理学をほとんど知らないので、それがどのように生かされているかどうかは正確には判断できません。ただ私なりに考えるとある命題があったとしてそれに反する証明を次々と完全に粉砕することによって、ある命題が証明されるそういうことではないかと思います。ここで言うところの命題とは何か、それは「奇蹟」です 十数年前にある狂信的なカルト教集団がありました。そのカルト教集団の住む村で信者のほとんどが殺されるという事件がありました。その殺され方はほとんどが首を切り落とされるという残酷なものでした。ただその事件で唯一生き残っていた少女がいました。その少女の名前がリゼ。彼女はひそかに心を寄せていた仲間の信者の少年ドウニの首を切って殺したかもしれないこのことで精神を非常に病んでいるわけです。その真相を見つけてくださいという依頼にリゼは探偵事務所に尋ねてきたわけです。この探偵事務所の探偵はウエオロと言いますそして助手これがフーリンという中国人女性です。この二人が中心となって話は進められるわけなんですけども、 このリゼという女性の悩みを解決する唯一の方法は何かと言うと、この事件は神の「奇蹟」によって起こされたものであって、犯人はいないのだということなのです。世の中には人知の及ばない「奇蹟」がある、この事件の真相が「奇蹟」だと証明されれば、少女の心は救われます。そのためには「奇蹟」以外の理由を全否定しなければならない。ウエオロは数日間考えてこの事件の真相は「奇蹟」だと証明したと報告書を持って事務所に現れました。ところがこのウエオロに対して挑戦者が次々と現れてくるわけで。すこの3人の挑戦者はそれぞれが独自の推理をしてウエオロに挑んできます。ただこの勝負は明らかに挑戦者が優位なのですね。 なぜなら挑戦者はこの事件の真相は「奇蹟」ではないという可能性だけを示せばいいからなんです。実際に犯人がいる可能性だけを証明すればいい。可能性ですから100%正しいという証明をする必要はないわけです。探偵ウエオロとしては非常に不利な勝負を挑まれた訳なのですが、彼はこの3人の挑戦者の推理をことごとく粉砕し退けます。ところがこれでめでたしめでたウエオロの勝利という風には簡単にはいかなかったのです。ウエオロの反論にも矛盾が・・・・・。ここから先はネタバレになるので詳しくはもう書けませんがどんでん返しとまではいきませんがちょっとした展開があります。私がこの作品を読んで思った疑問は「その可能性はすでに考えた」そういうふうに言いますけども、全部の可能性ではないわけですね。挑戦者もたった三人です。実際に可能性の話で言えば無限にあるはずです。その無限なものを全て否定することは事実上不可能ではないのでしょうか。したがって「奇蹟」の証明はそもそも最初から不可能なのではないか、と私はこう思うわけです。最後にウエオロが示す本当の意味での真相というものも非常に古典的なありがちなトリックに基づいた推理であり、斬新さが全くないのです。つまりこの小説は非常に肩透かしに終わったという感じがします。登場人物もラノベ的で非常に違和感のある感じがしますし、もっと別の書き方があるのではないかと思います。そうすれば面白くなった可能性もありますが 実際はあまり面白くはありません。もっとすっきりと誰にもわかるような書き方をしてほしいというふうに私は思いました。

6pt

一気読みは必至だが、驚きに欠ける第7回アガサ・クリスティ大賞作

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この作品は構成が凝っています。主な登場人物は4人。この4人を主人公とするストーリーが並列的に進行していきます。相沢ふたば、藤倉和博、連城美和子、御通川進の順番でそれぞれ約10ページ前後を費やされた賞が、1人7章、トータルで28章で完結されるわけです。4つのストーリーは一見何の接点もありません。心に悩みを抱え心療内科に通う若い女性、相沢ふたば。幻の名画を探す中小企業社長藤倉和博。喫茶店を開業したいという客のために奔走する不動産会社員連城美和子。なりすまし事件の被害者になってしまう会社員御通川進。当然ながら興味はこの4つの物語の接点は一体何なのかということに尽きるわけです。そこで読者としては一刻も早く先が読みたくなるというわけです。そういう意味では一気読みは必至ですし、面白いと思いましたね。ただこれはお読みいただければすぐ分かる事なのでネタバレにはならないと思いますが、この4つの物語には温度差があるんですね。ある人物の章だけがより深く書き込まれていて、ああこれがこの小説の中心なんだと分かってしまうんですね。それが誰かは言いませんけど。結局それ以外の人物の章は、これに付随しているおまけみたいなものであって、そのつながりも大きな意外性もなく、無理に4つに分けた意味もあまり感じられませんでした。あくまでも構成のための構成という感じですね。他の候補作を読んでないので判断は難しいですが、荒削りなものより完成度の高い無難な作品が選ばれたのだと思いますね。4つの異なる事件が最後に鮮やかに集束という小説は飛鳥高の『細い赤い糸』という名作がありますので是非それを読んでいただきたいですね。

6pt

船長のクズぶりばかりが目に付いて、腹立たしさだけが残りました。

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巨大な客船の沈没事故を描いたパニック小説です。そういう意味では手に汗握る面白さなんですが、とにかく沈没の最大の戦犯である船長がクソ過ぎてその怒りばかりが胸に沸いてきて素直に楽しめませんでした。小説の中では、鹿児島の種子島にカジノが作られるという設定になってます。実際はご存知のようにお台場なんですが種子島にカジノの客を運ぶには船が必要なんですね。それを一手に引き受けたいという利権欲しさにこの船長はいろいろ無理をするんですね。もちろん悪いのは船長ではなくこの船会社なんですがこの船長には全く同情できません。種子島選出の議員を、早く鹿児島に連れて行きたいがために台風が来るということがわかっていながら無理に出港し船底に亀裂は入って水が入っているのに、認めないところはメルトダウンはないと言い張る東電みたいで、怒りを覚えずにいられません。結局暴風雨のなか船は火災炎上しパニック状態になるのですがこの船長は自分と政治家が助かることしか考えていません。主人公ともいえるたまたま客として乗り合わせた女性消防士ふたり組の活躍、そしてかつて別の会社の船で同様の事故を起こし、今は客室係としてこの船で働いている男などの奮闘が感動を呼ぶのですがどうもこの船長のクズぶりばかりが目立って楽しめませんでした。難しいでしょうが映画化すれば面白いかもしれませんね。

5pt

発想はいいが中身が薄い

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発想自体は非常に面白いと思いました。かつて子供時代、同じ絵画教室で絵を学んでいた二人の男女、優希と淳之介が大学時代に再会するんですね。この二人が過去の子供時代の共通のある知り合いの人物について会話を交わすわけです。それはその絵画教室の講師だったある女性の息子で 健と呼ばれる人物なんです。二人で話しているうちにどうにも奇妙な気分になってくるわけです。なぜかと言うと同じ人物について話しているはずなのにどうも記憶に違いが見られるわけです。優希の方はこのタケシのことを絵本の中の架空の人物だと思い込んでいました。ところが淳之介は全国的に有名なバレーボール選手だと思い込んでいるわけです。不思議ですよね、二人の記憶がなぜこれだけ食い違ってくるのか。もしかすると二人の記憶は書き換えられたのではないかそう思って彼らは色々調査を始めるわけです。ここまでは非常に話の流れとしては面白いんです。非常に怖く思えます。薄ら寒い感じすらしますよね。ところがここから先がイマイチなんですね。この記憶の書き換えという行為自体がそもそも実際にできるものなのかどうか可能なのかどうか。これがよく分かりません。いかにも簡単にできるように言っていますが、実際には実現不可能だと思います。それぐらい稚拙な方法なんですね。こんなことで人の記憶は簡単には書き換えられない、そういう風に私は感じました。 それともう一つの記憶を書き換えたその理由です。これもなんだかよくわからないんですね。果たしてこんなことで人の記憶を書き換えるようなことをするものかどうか、すごく幼稚なわけなんですよ。読んでいただければ分かると思いますけども。そんなことは絶対に普通やらないでしょう。つまり動機と方法、この二つが非常に幼稚というかありえないんですね。記憶の書き換えという発想としては非常に面白いんですよ。ただ内容がそれについて行ってないんですね。そこが最大の問題なんですよこの小説の。その部分が作者の力量がまだ足りないと言えば言えるわけで、そこが非常に残念だと思うんです。探偵役として出てくる女性心理カウンセラーこの人物なんかも非常に魅力的な存在ではあるんですけれどもこのような内容の薄い事件だと彼女の凄さも生きてこないと思うんですよ。その部分が非常に残念だ、そう思うわけです。話はちょっと違うかもしれませんが人間の記憶というものは非常に不思議なものですよね。私なんかもよく夢を見ますが、長い間全く頭の片隅にも思い浮かばなかった何十年前の小学生時代の同級生が、夢に出てくるわけです。 しかも夢の中においてストーリーに組み込まれて出てくるわけです。なぜ 突然出てきたのでしょうか。不思議ですね。このように人の記憶とは非常に不思議で面白いものです。ですから その面白さがうまく伝わるように小説を書いていただきたいというのが私からのお願いです。

6pt

あくまでも岬洋介ファン向け

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この中山七里という作家は ご存知のようにいくつかのタイプのミステリー小説を使い分けることで有名です。彼が最も一番得意としているのはやはり音楽ミステリーだと思います。もちろん一番有名なのはあの「さよならドビュッシー」であることは疑いの余地はありません。ところであの作品に出てきた主人公の岬洋介、音楽の天才特にピアノの天才である彼は非常にミステリアスな人物でした。その彼の高校時代の話を描いたのがこの「どこかでベートーヴェン」なんですね。つまり後日談ならぬ前日談とでも申しましょうか、岬洋介がいかなる人物であったかということがここで描かれているというわけなんです。従って岬洋介ファンにとっては面白いかもしれませんが、もしかすると知らない方にとっては面白くないかもしれません。というのはミステリーとしてはこの作品はあくまでも平均点の出来であってそれほど素晴らしくはありません。また事件が起こるのは最初から約100ページぐらいのところなんですね。。それまではずっと岬洋介がいかに天才であるがすごいか、そのことだけに費やされていると言ってもいいでしょう。だからある意味知らない人にとってはじれったいという感じがするかもしれませんね。この岬洋介という人物はとにかく変わっていると言うか天才であるがゆえに、ピアノ以外の事に関しては全く無頓着である意味非常に浮世離れした感じの人物です。とにかく人の心が一切わからないと言っていいんですね。このことは要するにクラスのみんなからの反感を買ったりするわけですそれが事件と直接繋がってるというわけではないにしても彼が容疑者として疑われるわけにはなっているわけですね。この岬洋介が地方のある高校の音楽科に入ってくるわけです。音楽科と言ってもプロを目指すような優れた生徒が入ってくるそんな学校ではありません。あくまでも落ちこぼれが入ってくる学校なんです。そこに岬洋介のような天才が入ってくると様々な軋轢を生むわけですね。その軋轢の話が色々出てくるわけなんですけども、この岬洋介をいじめていた同級生の少年が集中豪雨のあったその日屋外で殺されてしまうわけです。この岬洋介は集中豪雨からクラスのみんなを救うために色々外に出て行動していたんですね。だから彼はそのことも疑われる理由になったわけです。彼が疑いを解くには自分から真犯人を見つけるしかない、そして探偵役となって捜査を始めるわけです。彼は音楽の天才でもあると同時に、ある意味天才的な探偵でもあるわけなんですね。このことはあまり触れられていませんが、音楽の才能と同時に探偵の才能もあるわけです。とにかく頭が超人的にいいんですよ。しかも他人のために徹底的に尽くすことのできる人間ではあるわけで、逆にそのことが、 みんなから嫌われる理由でもあるわけなんですよ。つまり人の心が読めないというある意味計算が一切できないそれほど純粋な男、それが岬洋介です。岬洋介の魅力に取り憑かれた人にとっては、この小説は非常に読む価値のあるものでしょう。ただそれ以外の人にとってはあまりお薦めすることはできません。トリックの面でもそれほど優れたものではありませんし、犯人の意外性もあまりありません。ただ岬洋介ファンにとっては必ず読んでおくべき作品だと思います。またもう一つ面白いのがこの中山七里という作家の一番得意な、音楽を文章で書くということです。音を文章で表現するといいのは非常に難しいことだと思いますが、この中山という作家はそれが非常にうまいんですね。 本人もおそらく大の音楽ファンであるのでしょう。私のようなクラシックに疎い人間にもその魅力がかなり伝わってくるそんな感じがしますね。まあ以上のことから結論付けるならば岬洋介ファンには必ず読んでおいてほしい本ではありますがミステリーとしてはあくまでも普通のものであり、それほど高い評価を与えられるものではないということです。そのことを事前にご認識の上で読んでいただければというふうに私は思っています。

7pt

戦中ミステリの佳作

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作者の岡田秀文は時代物を得意とする作家ですが、その一方で明治や昭和初期を舞台とするミステリーをたくさん書いております。個人的には私はそれらのほとんどを読んでおりますが非常に気に入っています。時代背景あるいはその時代の雰囲気というものが非常によく伝わってきて面白いのです。今回の作品は「白霧学舎探偵小説倶楽部」というものです この作品は太平洋戦争さなかのある地方の街を舞台とした作品ですこの作品の主人公である宗八郎は、ある事情から東京から地方のこの街の高校に編入してきます。 この高校でできた何人かの親しい友人たちと一緒に難解な殺人事件を開始していこうというそういう話です 。この街では何年か前から不審な連続殺人が起こっていました。この事件を彼らが結成した探偵倶楽部が色々調査して解決しようとします。ところがある日彼らの仲間の一人が殺されてしまいます。果たしてこれまで起きてきた連続殺人と何らかの関係があるのかどうか、彼らは仲間を殺した犯人を探すためにまた捜査を再開するわけです。この小説はミステリーでもあると同時にあの時代を描いた青春小説という一面をもっています。そしてこの事件はこれ以上話すとネタバレになるので言えませんが、実は戦争という暗い影が起こした犯罪でもあるのです。それは読んでいただくしかありません今回のミステリーはトリック的にはイマイチだと思います。これまでの中ではあまりレベルの高くないそんな作品かもしれません。しかし今このような戦前戦中を描くそんな作家が少なくなった現在において、この作家の貴重性というものは非常に大事なのではないでしょうか。これからも注目していきたい作家だなという風に私は思っています。

8pt

これは素晴らしい

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芦沢央と言えば、どろどろとした人間関係を描いたいわゆる「イヤミス」の代表作家ではありますがこの本の表紙を見るとこれまでの作品とは傾向が違うのではと思われます。実際読んでみると、イヤミス的な印象はほとんど無く、むしろ人間の素晴らしさを肯定する感動的な作品になっています。この本は既に発表された4編に、「序幕」と「終幕」を書き下ろして付けた短編集となっています。それぞれの作品はほとんどが何らかの意味でつながっており、事実上は長編といっていいかも知れません。例えば登場人物が重なっているなど、この種の「つながりのある短編集」はこれまでも多々ありましたが中でもこの本は最も秀逸な作品のひとつかも知れません。それほどよくできています。「序章」若手サラリーマンの松尾が、康子先輩がいやな上司の背任を告発するための証拠集めに協力させられ、奔走する話。これを読むとまるでくだらないドタバタ喜劇さながらの内容で、もしかすると面白くないのでは?と懸念させられますが、ある意味重要な出だしであるわけなんですね。実は。「第一幕 息子の親友」シングルマザーと小学生の息子の話。自分の子供の素晴らしさを知らないのは実は母親だったりする、というちょっと感動的な話です。「第二幕 始まるまで、あと五分」個人的には一番好きな作品です。恋愛ものなんですがホッコリする話すね。「第三幕 舞台裏の事情」舞台に出演する男性人気アイドルが女性関係をネタに降板しろという脅迫状を受け取る。果たしてその意外な犯人とは?「第四幕 千賀稚子にはかなわない」認知症の影が忍び寄るベテラン女優の、覚悟と決意。プロとは何なのかを考えさせられます。「終幕」この小説のまさに終幕というか最初の「序章」の意外な結末がここに書かれています。この小説のシメですかね。松尾と康子の関係も気になるところです。


読書数
25
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