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邪悪なグリーン プロゴルファー リーの事件スコア 3



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邪悪なグリーン プロゴルファー リーの事件スコア 3の評価: 7.00/10点 レビュー 1件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

アーロン風味が濃い1作

リー・オフステッドシリーズ3作目。
わずか10か月足らずでもう3作も訳出されたことに驚く。案外人気があるのだろうか?

それはさておき、今回は海難救助サービスの仲介業者の役員研修に参加したリーが誘拐未遂事件と殺人事件に巻き込まれるというもの。その背景にはその会社が大きく発展するに至った1971年のある海難事故があった、というお話。

今まで妻シャーロットのロマンスミステリ風味が強かったが、本作では過去の因縁話が現代の事件に翳を落とすというアーロンの特色が色濃く出ている。
ロマンスの相手グレアムは警備コンサルタントの仕事が忙しく、世界中を駆けずり回っている身であり、物語の中盤に出てくるのみで大きく事件には関与しない。したがってロマンス色は薄目であり、逆に被害者である会社社長スチュアート・チャペルが、過去に同僚であるアンディ・ゴットリーブを見放した事件が意外な形で現代に因果を残していることが物語が進むにつれて明らかになってくる(とはいえ、終盤グレアムは大いに物語に関与し、また二人の関係に大いなる前進があるのだが、まあ、それはアーロン・エルキンズのスケルトン探偵シリーズでも見られる程度のロマンスだと云えるだろう)。

ところでこのスチュアートが危うく遭難しそうになって仲間のライフラインを切断したという行為は何かを想起させないだろうか?
そう、少し前に巷で話題となったハーバード大学のマイケル・サンデル教授の正義についての講義の内容だ。
急変した気候のために船は岩礁にぶつかりそうになっている。そんな中、海に潜った同僚は合図を送るも一向に浮上してくる気配がない。このような窮状で果たしてどのように行動するのか?つまり二人の命を救うために一人の人間の命を犠牲にできるかという命題が示されている。
本書はなんとまだ前世紀の1997年の書。この手の話はミステリではよく取り上げられるといえばそれまでだが、22年も前の作品が現在話題になっている大学教授の講義とリンクすることに奇妙な縁を感じる。

そしてやはりエルキンズのキャラクター創作力とユーモアのセンスは素晴らしい。例えばこんな一節がある。

「角でばったり犬と顔をあわせた猫の反応を想像できる?」ペグはそう訊いた。「それがジニーよ」

この一瞬意味不明な比喩でなかなか頭にそんな猫が浮かばないのだが、エルキンズはまさに云いえて妙の人物を拵えてくる。どんな人物なのか?と知りたい方は本書にあたって確かめてほしい。

これほど面白く読みやすいコージーミステリなのだが、本格ミステリ要素が濃いのもエルキンズ作品の特徴。

以前からエルキンズの作品を私は素晴らしきマンネリと呼んでいるが本書もその例に漏れない。本書には時間が止まるような驚きや謎解きによって得られるカタルシスなんてものはないが、作品世界に浸ることで得られる読書の愉悦が確実にある。面白さ保証のエルキンズの次作を楽しみにして待つことにしよう。

ところで本書の邦題はあまり内容とは関係がないような…。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S

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