風間健介は急逝した父の遺志を継ぎ、広告カメラマンから山岳写真家へと転身した。

度重なる刺客との戦いに、織江は疲れを感じていた。彦馬を好きでなくなれば、一人で逃げ切れるかもしれない。

あのルートを、たった一人で、しかも名もない日本人が登れるわけがない―アラスカからヒマラヤへ、数々の難壁に初登攀の足跡を残してきた新進気鋭のアルパインクライマー奈良原和志が、そんな周囲の雑音をよそに、初めて目指した8000メートル峰が世界第四位のローツェ、し

星が降るような夜空の下、織江と初めて出逢ったのは、もう2年近くも前のことだった。

最強のクライマーとの呼び声も高い山野井泰史。

松浦静山の下屋敷に飯炊き女として潜入した織江は、ついに静山の密貿易と野心の証拠をつかんだ。

夫の彦馬に逢いたい。その想いを抑えられず、お庭番を抜けて逃亡中の織江は、変装して彦馬の家にほど近い妻恋坂を歩いていた。

元は凄腕の岡っ引、今は版木彫り職人の伊之助。

深夜、東京の閑静な住宅街に一台のトラックが突っ込んだ。やがて起きる二つの殺人事件。

ついに織江の正体を知った雙星彦馬。しかし彦馬は、それでも妻を信じて再び逢える日を待つ。

「戦いまする」三成軍使者・長束正家の度重なる愚弄に対し、予定していた和睦の姿勢を翻した「のぼう様」こと成田長親は、正木丹波、柴崎和泉、酒巻靱負ら癖のある家臣らの強い支持を得て、忍城軍総大将としてついに立ちあがる。

神田明神近く、大通りの外れにいつのまにかできたごく庶民的な飲み屋「浜路」。

「日本史最大の英雄・織田信長の人生は三国志の英雄・曹操のパクリに過ぎない」大学教授の浅井が歴史雑誌で発表した新説は日本全国で賛否両論の大反響を呼ぶ。

資産家の古代史研究家が自著の出版記念パーティ当日に殺害された。

渋谷の南、白金あたりで立て続けに、裕福な家の若い娘四人が行方知れずとなった。およそ半月ほど前の話だという。

不条理な世を渡る武器は、気骨と果断。利に生きるか、義に死すか。

銀行を襲い、仲間と山わけにした金で商売をはじめた内堀彦介は、事業に成功した今、真相露顕の恐怖から5年前に別れた共犯者の監視を開始するが……。

「わしがこの国を開いてやる」江戸藩邸で「甲子夜話」の執筆にいそしむ元平戸藩主、松浦静山はこともなく言い放った。

「奴に城を取らせる。そして俺は国を取る。

鉄砲にかけては百発百中の名手稲富治介は風采のあがらない無骨者のため細川忠興・ガラシア夫妻にうとまれ出陣の機会も与えられず不愚の一生を終えた。

“幻の名峰”として人気の新羅山。その日も登山客で賑わうなか突如、群発地震が襲う。

織江が実の娘であることを知った松浦静山。だが静山は、織江にそれを知らせぬまま、ひそかに守りつづけることを決意する。

人を欺けば謀(たばか)られ、人を信じれば殺される。木曾谷(きそだに)の治世をめぐり反目する木曾家当主の義昌と弟の義豊。

世界のクライマーから「ホワイト・タワー」と呼ばれ、恐れられた山がある。

登山者の闇を松本清張、新田次郎、加藤薫、森村誠一が描き出す。

室町時代末期の関東。若き主君の横暴により、すべてを失った男・長尾景春。

朝鮮出兵最前線の肥前名護屋の陣で、落魄の身となった宿命の2人の男が出会った。彼らの使命は血脈を伝えること。

昭和初期、ヒマラヤ征服の夢を秘め、限られた裕福な人々だけのものであった登山界に、社会人登山家としての道を開拓しながら日本アルプスの山々を、ひとり疾風のように踏破していった“単独行の加藤文太郎”。

元平戸藩主、松浦静山に気に入られ、たびたび下屋敷に呼び出されるようになった雙星彦馬。