枯草の根

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種別
長編
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あらすじ

1975年06月01日 枯草の根 (講談社文庫 ち 1-6)

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評判

枯草の根の評価:

7.00/10点 レビュー 1件。 B ランク

書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点7.00pt

枯草の根の総合評価:

7.80/10点 レビュー 15件。

感想一覧

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Amazonレビュー

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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No.14
(5pt)

「枯草の根」の町を歩く

陳舜臣(1924~2015年)のデビュー時代に多く書かれた「陶展文シリーズ」は、長編4作と短編6作がある。神戸、海岸通の「東南ビル」の地階にある、中華料理食堂の主人兼漢方医にして、拳法の達人「陶展文」が探偵役の推理小説である。推理小説として愉しめるのは勿論だが、昭和の町や港の風景がノスタルジーを感じさせる…。その第1作目である「枯草の根」の町を歩いてみた。
元町駅東口を出て、南に道路を渡る。「かもめ荘」の設定場所「穴門筋」だ。途中の「元町北通」を少し右(西)に行くと、裏側が狭い路地となっている区画がある。かもめ荘が収まるにはやや小さいが、「穴門筋に近い路地」「あまり広くない道路に面している」というイメージに合うとすればこの辺りだろうか。すぐそばには、昭和27年創業の喫茶店「エビアン珈琲ショップ」や広東料理「別館牡丹園」などがある。穴門筋の東側も見るため、鯉川筋を横断し「三宮町3丁目」の路地をトアロードまで往復する。所要時間は往復7分程度。そちらは衣料品関係の店が多く、飲食店はほとんど無い所だった。
次に線路の北側へ行く。作中、徐銘義がトアロードで李社長と立ち話する中で、かもめ荘の場所を「その路地を入ったところ」と説明しているが、穴門筋の西側では離れすぎている気がする。それを考慮し、もう少しトアロード寄りで、かつ「近辺には飲食店が多い」というイメージの「かもめ荘」の設定場所として、「北長狭通3丁目の鯉川筋近く」を訪ねる。この辺りは1990年代後半から、ファッションや雑貨のセレクトショップ、カフェ等が増え「トアウエスト」と呼ばれるようになったが、昔は華僑の住居が多かった所であり、その関係から「順徳」や「青葉」「紅宝石」など古くからの中華料理店が多い所である。歩いてみると、飲食店全般の数は穴門筋ほど多くはないが、いくつか裏路地もあって、かもめ荘のようなアパートが、いかにもありそうな雰囲気であった。そこから東のトアロードへ出る。かもめ荘に対して「そこから遠くない」という朱漢生の「安記公司」はトアロードにある設定だが、かもめ荘から安記公司に象棋の場を移す陶展文と朱漢生が、一旦トアロードに出ているので、「トアロード沿い」あるいは「トアロード東側の路地」というイメージになる。下山手通から北長狭通、三宮町のどこになるだろうか?安記公司のすぐ近所には備前屋というやきとり屋があり、北長狭通2丁目にはやきとり屋がたくさんある…。
トアロードから南へ、大丸の東側の「明石町筋」を海岸通へ向かうと、風格のある近代建築が見えてくる。「商船三井ビルディング」である。7階建てだが、間近に見上げると6階建ての様に見える。これが「東南ビル」のモデルであると思う。作品が書かれた頃は築40年くらいで、古ビルのイメージだったろうが、現在では大正時代の名建築として海岸通の顔となっている。そこから前町通を東へ200mほど行くと、京町筋沿いに「神戸市立博物館」(旧東京銀行)があり、その左斜め向かいには「日本銀行神戸支店」(昭和36年7月落成)がある。作中では、どうやらこの辺りが生田警察署らしい。
京町筋を南へ歩き、海岸通で右に折れ、「メリケンパーク」へ向かう。波止場の先にある「神戸港震災メモリアルパーク」の中から、向かいの新港突堤や、旧居留地を眺める。ここが作中、陶展文が立つ波止場の先端辺りだろう。また、メリケンパークの入口近くにある、フィッシュダンスホール周辺の地面と、その先へ少し進んだ所には高低差があるが、その低い方が、当時の波止場の範囲を示しているのではないだろうか。当時の写真などによると、昭和30年代のメリケン波止場の西側は、無数の艀が繋留される艀溜り(はしけだまり)となっており、波止場にはバスやタクシーが乗り入れ、港めぐりの遊覧船はここから出ていたようだ。

[収録作品]「枯草の根」(昭和36年10月) 「王直の財宝」(昭和59年5月) 「くたびれた縄」(昭和37年6月) 「ひきずった縄」(昭和37年7月) 「縄の繃帯」(昭和37年8月)
[参考:本書収録以外の陶展文作品]長編「三色の家」「割れる」「虹の舞台」、短編「崩れた直線」「軌跡は消えず(神獣の爪)」
枯草の根―陳舜臣推理小説ベストセレクション (集英社文庫) Amazon書評・レビュー: 枯草の根―陳舜臣推理小説ベストセレクション (集英社文庫)より
4087463974
No.13
(5pt)

表題作「枯草の根」の町を歩く

昭和36年(1961年)に、当時37才の陳舜臣(1924~2015)が初めて書いた長編小説。推理小説であるのは勿論だが、自分にとってはそれ以上に、昭和ノスタルジックなミステリーロマン小説である。執筆当時の昭和36年には当たり前であった町の風景や風俗が、時を経た今だからこそ独特の香りを放つ。そして時間、空間、ともにスケールが大きく、それ故、そこに深い叙情と余韻をともなう。それが陳舜臣の小説の味だろう。味というのは、人それぞれに好みが有るので、決して万人受けはしない。それで良いと思う。
作品世界の昭和36年の神戸も、現在では大きく変わってはいるが、道路や町名など、変わらない物も有るので、それらを自分の足で訪れる事が出来るのも、陶展文シリーズの楽しみのひとつだろう。「かもめ荘」の近い穴門筋は、今も「穴門商店街」といって、JR元町駅東口の南側、鯉川筋の一本西に有る。また、桃源亭の有る「東南ビル」は架空のビルだが、そのモデルらしきビルが「商船三井ビル」といって、旧居留地の明石町筋の南端に存在する。「南京町」は、話題に出るだけで直接登場はしないが、昭和36年当時は中国風の門や建物はまだ建てられておらず、民生広東料理店や老祥記(当時、店前はトタン屋根付きの狭い路地だった)の他は中国系商店は少なく、戦後からのバラックが残り、外国人バーが建ち並ぶ裏通りの歓楽街と化しており、昭和50年代の区画整理と南京町復興事業前は、かなり治安が悪かったらしい。また、陶展文の歩く「メリケン波止場」に、メリケンパークは当時まだ存在せず、細長い突堤だけで、通船や遊覧船が停泊していた。
枯草の根―陳舜臣推理小説ベストセレクション (集英社文庫) Amazon書評・レビュー: 枯草の根―陳舜臣推理小説ベストセレクション (集英社文庫)より
4087463974
No.12
(5pt)

陳ミステリの二大傑作

小味だが堅牢なプロットの展開とスマートなアリバイトリックの妙味、さらに探偵役の陶展文を筆頭に描かれる滋味豊かな人間模様。戦争に翻弄された犯人像の陰影が永く心に刻まれる初期乱歩賞屈指の名作である『枯草の根』の詩情。
後半の展開に腰を抜かす、陳ミステリの最高傑作である『炎に絵を』の騙しの技術。
後年の歴史小説の大作の影に隠れ、不当に語られざる著者のミステリを代表する二大長編。
枯草の根・炎に絵を (文庫コレクション―大衆文学館) Amazon書評・レビュー: 枯草の根・炎に絵を (文庫コレクション―大衆文学館)より
4062620871
No.11
(5pt)

初期乱歩賞受賞作品の中でも屈指の傑作

著者のデビュー作であり、初期乱歩賞受賞作品の中でも屈指の傑作。
冒頭部におかれた一見無関係な人物群像が解決に至り、巧妙な伏線として収斂する手際は既に見事。昭和三十年代の神戸の風景や華僑社会が克明に描かれているのも興味深く、大陸的無常観を感じさせる結末も忘れ難い。
併録された短編はうち三編が単行本初収録と貴重だが、凡庸な出来栄え。しかし悠然たる陶展文の愛すべきキャラクターは充分に堪能出来る。
枯草の根―陳舜臣推理小説ベストセレクション (集英社文庫) Amazon書評・レビュー: 枯草の根―陳舜臣推理小説ベストセレクション (集英社文庫)より
4087463974
No.10
(3pt)

最後の告白書が長すぎる

著者は昨年90歳の長寿を全うした。歴史小説家として有名だったが、デビューは推理小説で、それもいきなり江戸川乱歩賞を受賞しているので、これは読んでおかねばなるまいと思い読んだ。当時としてはかなりのレベルの作品だったのだろうが、今では正直読み継がれていくほどの出来とはいえない。人を殺す動機が甘いし、最後の告白書が長すぎる。いきなり大きな賞をとってしまったので、その後もしばらく推理小説を書くが、歴史小説に転向したのもわかる気がする。
枯草の根 (1963年) (ロマン・ブックス) Amazon書評・レビュー: 枯草の根 (1963年) (ロマン・ブックス)より
B000JAI6K2

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