人間豹
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あらすじ
大学を出たばかりの青年会社員・神谷芳雄がめぐりあったあそるべき怪事件。愛人の弘子がつとめる京橋のカフェ・アフロディテで、芳雄は怪物人間豹を知った。その顔はドス黒く、大きな口、そして敏捷に動く舌は肉食獣猫属の舌であった。怪屋にとじこめられた弘子と芳雄!おそるべき危機は刻々とふたりの上に迫る!。神谷芳雄の第二の恋人、それはかつての恋人弘子とうり二つのレビュー団の女王、歌姫の江川蘭子であった。その美しい姿が突如として舞台の中央から消えた。またしても人間豹のしわざであった。危ういかな蘭子。芳雄は懸命に怪物を追う!はたして人間豹とは?明智小五郎名探偵の推理は?--このテキストは、文庫版に関連付けられています。(「BOOK」データベースより)
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評判
人間豹の評価:
0.00/10点 レビュー 0件。 D ランク
人間豹の総合評価:
7.80/10点 レビュー 10件。
感想一覧
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恋人弘子を失った神谷は傷心の一年の後、彼女に似た面立ちで、十九の春のふっくらと成熟した肉体の舞台女優wと恋仲になる。彼女もまた人間豹、恩田のターゲットになるのだが、その名は江川蘭子。
そう。四年前に乱歩からスタートしたリレー小説のタイトルネームである。
リレー小説『江川蘭子』を以前読んだことあるかないかはビミョーなのだが、いずれにせよ、本書の江川蘭子は関係ないだろう。
もちろん乱歩が自分のペンネームをもじってつけた名前で、後に二階堂黎人が自分のシリーズ探偵に下の名前を拝借したりもしたが、実は乱歩もお気に入りの名前だったのだろうか。【注1】
本作品の江川蘭子もあっさりとぶち殺されるところをみると、単にネーミングが面倒臭かっただけだろう……
ちなみに、神谷と蘭子は、別れるときには、いつものとおり、恋人どうしの長い握手をさえかわしたそうだwww
そうして、漸く明智小五郎の登場。【注2】
『黄金仮面』以降、三年ほど放置されていた明智は、昭和9年に『黒蜥蜴』そして本作品と、なぜか立て続けに登場する。特に『講談倶楽部』に連載された本作品には、文代さんと小林少年がちょい役以上に登場して活躍する。
ちなみに、本作の翌年には『怪人二十面相』の連載が始まり、小林少年はそちらで主役級の活躍をみせるようになるが、文代の影は薄くなり表には出てこなくなる……
現時点では、『暗黒星』や『地獄の道化師』はまだ読んでいないが、近々に続く少年探偵団シリーズや『悪魔の紋章』では、大して登場しなかった。豹に殺されそうになって懲りたのかもしれない。【注3】
恥ずかしいことにポプラ社版の表紙が怖かった所為で本作品は初読だったが、明智小五郎冒険譚としては一等かもしれない。日頃からハハハハ、ニコニコ、ニヤニヤと、余裕をもって相手を嘲笑うことの多い明智は、本作品では恩田親子にその裏をかかれて、かなりの窮地に立たされる。明智や文代が拉致される事は他作品でもあるが、ここまでの危地に陥るのは他ではないのではないか。
まるで神谷が目撃することでこの世に生じて悪さを始めたような恩田親子だが、その生い立ち、それまでどう暮らしていたのか、豊富な財源はどこから出ていたのかとか、ツッコミ処は多々あれど。
ところで、乱歩の昭和一桁代の通俗作品には、生物の名前が頻出する。
蜘蛛、蜥蜴、蠍(妖虫)、イメージとして、蝙蝠(吸血鬼)を加えても許してもらえるだろう。
それらのモチーフはすべて、『仮面ライダー』で藤岡弘が退場するまでの1クールにショッカー怪人として登場する。いや、これらの生物は人間に生理的に嫌悪感を催させる種だから【注4】、ショッカーの初期怪人に採用されたのは偶然、というか必然だろう。本作品の豹が登場しないのも、そのイメージが他のモチーフとは異なり、嫌悪感とはやや異なるから当然と言えば当然である。
ところが、助っ人佐々木剛の2号ライダーを経て、新1号の登場と藤岡弘の本格的な主演復帰第1話に登場するショッカー怪人は、なんとジャガーマンである。【注5】
これは、単なる偶然だろうか。
誰だか知らないが、企画の担当の中に乱歩ファンがいて、仕切り直しの第1話にあえて豹を選んだと考えるのは、あながち無理くりな想像ではないと思う。
【注1】二階堂蘭子はくるくるの巻き毛ということで、村上もとかの名作『六三四の剣』の蘭子のイメージも拝借している……かもしれない。
【注2】人間豹VS神谷・蘭子の構図が人間豹VS明智・文代にシフトしてからは、神谷はめっきりとフェードアウトしてしまう。わざわざ冒頭で彼がこの物語の主人公だと明記しているのにwww
【注3】乱歩のネーミングがテキトーなのは、神谷と小林少年が同じ芳雄な事でもわかる。本作品で小林の下の名前は紹介されないけれど…… 話は変わるが、明智もそして文代までもが小林と呼び捨てなのが興味深い。
【注4】乱歩作品に"蛇"がないのがむしろ不思議。
【注5】しかも猫、ライオン、トラ等を抑えて、ネコ科の獣では初の怪人化であった。