贋作
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私は贋作にまつわる歴史や事件簿が好きで,そういうノンフィクション本や芸術新潮の特集号が本棚に多くあります.ですから「贋作」というタイトルの,この素晴らしい小説がamazonなどで検索され,私が読むのも時間の問題だったかも知れません. 読み終えて感動に浸りながら(実際には終わる100ページ前から読みながら既に泣いています),私は矛盾に気づきます.もしこの本のタイトルが原題通り「サラ・デ・フォスの最後の絵画」であったなら,私は読んでみようと思わなかったかもしれません.「贋作」という邦題こそがこの愛すべき作品との出会いのキーワードです. しかし,このタイトルは,出版社の販売戦略こそ成功したとはいえ、作品自体をぞんざいに扱っているように見えます.非常に複雑な偉業を遂げてきたアーチストや学者に単純で分かりやすい「レッテル」を貼る仕業に似ています. この物語は「サラ・デ・フォスの最後の絵画」を巡り,時代を超えて繰り広げられる,壮大と呼ぶにはあまりにも繊細な物語です.読むのが止まらなくなりましたが,それは推理小説のような謎解きのためではありません.絵画修復や贋作(複製)の製作に関する技術的な記述もありますが,それは必要最小限であり,知識の共有を読者に促しているものではないことは読み始めてすぐにわかります. タイトルにケチを付けてしまいましたが,本文の日本語訳は素晴らしいです.原文と比較したわけではもちろんないですが,控えめで淡々とした登場人物たちの描写と,全体を通して感じる人生の力強い流れのコントラストがとても魅力的な小説です. | ||||
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サラのパートは全体的には地味ながらも、借金を抱えたまま夫には逃げられ、子供を失いながらも転機になる、二つの良い出会いに恵まれる。 そして何とか人生を立て直すことに成功し、数枚の素晴らしい絵を残せ、新たな愛も見つけられてとエリーのパートよりは遥かに読ませて良かったが。 しかし、サラの性格もあるのか、彼女の人生の物語の方も全体的に地味な印象も拭えず。 もう少し、こちらにもドラマ性があっても良いように感じた。 それから個人的に不満が大きく、またサラのパートと比べるとバランスの悪さを感じてしまったのがエリーのパート。 何ともエリーとマーティとの恋が消化不良というか。薄い印象が強く。 もう少し、彼らの恋も含めた、二人の交流の部分も膨らませる必要があったのでは。 マーティは身体的に弱ったせいもあるのか、いかにも自信満々という若い頃に比べて、愛嬌のある老人になっていたが。面白くなかったという訳でもなかったものの、私としては上記の点が気になったということで。 ただ、贋作の製作過程は大変に興味深く、これはもう立派な一つの技術だなと感じた。 確かに贋作もなかなか奥の深い世界であることがわかった。 たぶん、私よりもオランダ絵画に興味がある人なら楽しめるのでは。 | ||||
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主人公の女性にあまり感情の起伏がないようで、淡々と話が進んで行きました。 主人公は贋作者。もう一人の登場人物は、贋作によって自分の真作が盗み取られてしまった被害者。 二人の数十年間に渡る交流(長い中断はありすが)の物語です。 個人的には、贋作者が古い絵画を再現する手法が描かれているのが面白かったです。 | ||||
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巻頭の「主な登場人物」がありがたい。この本の物語には、時代と空間が三つ絡み合っています。 1635年から49年 1957年から58年 2000年 それなのに、「目次」を見ると、第一部と第二部のシンプルな二部構成です。 しかし、各章の場所と時代が目まぐるしく入り乱れ、「三つの時空が飛び交う」(「訳者あとがき」より) そのことによって幻想的な夢の世界が出現する物語です。 最終章は「1649年冬/2000年夏」 350年もの隔たりがある章。しかも、季節が冬と夏とが一緒になっています。 うーん、これはややこしそう。と思いましたが、読み始めると引っかからずに、意外とすらすら流れるように読めました。 まず、「はしがき」(7頁)は、舞台劇の前口上のように朗々と語られています。 実在の女性画家「サラ・ファン・バールベルヘン」を出発点として、 十七世紀のオランダ黄金時代を生きた数名の女性画家の生涯を重ね合わせて著者が造形したのが、 この物語の女主人公「サラ・デ・フォス」 ここから先は、著者のフィクションですが、 「サラと彼女の夫バーレントを別にして」、ことごとく実在しているというから、歴史小説のようです。 サラ・デ・フォスは、1607年、オランダで生まれ、没年不詳。唯一残存する絵は、『森のはずれにて』(1636年)一枚のみ。 この本の「はしがき」の次の頁は、空白です。 そして、左頁には、『森のはずれにて』の絵の解説文らしき文章。 空白頁に印刷されなかった絵のイメージが目に浮かぶような解説文です。 原題は「The Last Painting of Sara de Vos」 訳題は『贋作』 すごい意訳です。 さらに、表紙見返しの文章も、あらすじのようで読者の興味をそそります。 第一行目は、「あの絵が盗まれたのは、犬を乗せたソ連の宇宙ロケットが打ち上げられた週でした」(13頁) 絵が盗まれた事件のようです。盗んだ犯人たちは? 「わが家の壁から絵を盗んだ犯人が誰かも、全然わかっていなかったんだからね」(378頁) えーっ、この417頁の本の残りは、あと少しなのに、犯人が誰かも、全然わかっていなかった! 美術サスペンスと呼んでもいいかと思いました。殺人事件こそ出て来ませんが、はらはらドキドキの連続です。 この物語の舞台は、十七世紀のオランダ、二十世紀のニューヨーク、そして2000年のシドニー。歴史的で立体的な舞台です。 結局、盗んだ犯人たちを突き止めた資産家は、贋作を描いた若い絵画修復家の女性(犯人たちの共犯者)に心を惹かれ、 「いつしか、絵を取り戻して犯人たちを罰するという本来の目的を忘れてしまいます」(「訳者あとがき」より) そして、結末は・・・。美術と文学好きの読者には、たまらない読書となること間違いなしの本です。 この本は、美術サスペンスとしてもおもしろかったですが、文学としても楽しく読めました。 例えば、こんな箇所が186頁にあります。 外科医のウィルが、難しい手術が予定されている日に、必ず実行する個人的な儀式として「まずわたしは、自分の部屋でヴェルディのオペラを聴き、両手の指の爪を短く切りそろえる。『ハックルベリー・フィンの冒険』を、ぱらぱらと読むこともある」(186頁) 「『ハックルベリー・フィンの冒険』を、ぱらぱらと読む」素晴らしい外科医も、この本には登場するんです。すてきです。 | ||||
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