偽りの来歴 20世紀最大の絵画詐欺事件
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偽りの来歴 20世紀最大の絵画詐欺事件の総合評価:
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数年前に『最後のダ・ヴィンチの真実』という本を読んだのだけれど、そのタイトルを思い出せずネットで「贋作事件」というキーワードで検索していたら見つけたのがこの本。2010年にNHK BSプレミアムでも取り上げられたというので興味を持ち購入。たいへん面白かった。この本は、絵の贋作者のジョン・マイアットと来歴を偽造したジョン・ドリューの2人が組んだ詐欺事件を扱ったものだが、事件発覚して逮捕、懲役を終えて出所したのち、ジョン・マイアットは「真の偽造画家」として人気者となり、一度は諦めた画家として幸せに暮らしているという。「人間万事塞翁が馬」の故事を地で行くような話で、考えさせられた。 | ||||
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出だしは、?でしたが、途中から引き込まれました。面白いです。 プロバナンス、いわゆる美術品来歴の改竄によって偽作を真作にする手口が展開されます。しかも、テートギャラリーの資料でやってのけると言うから信じられません。 個人的には、贋作に対峙するジャコメッティ協会理事・メアリー・ライザ・パーマー氏の活動に感動しました。 巻末、著者ノートに、この事件の協力者の1人が、『ジョン・ドリューによる9年にわたるパフォーマンス作品』と本件を呼んだと書いてあります。千利休、マルセル・デュジャン、バンクシー、もちろん彼らは、贋作者や詐欺師ではないのですが、アートとフェイクで考えると、どこかベン図の重なる部分的に入るのかな〜とも感じてしまうのは、アートの不思議なところです。そう考えると、アートと藝術って違うのではとも…。美術品の値段って何を表しているのでしょう。贋作本に惹かれる訳です。 | ||||
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本書は、二人のジョンの物語(べつに兄弟ではない)。 一人は、原子物理学者で実業家で軍事関係者に強いコネを持ち、情報部から仕事を委託されるほどの完璧超人、ジョン・ドゥリュー。 勿論、すべて自称で、しかも実際に本書で描かれている自称経歴は、上記の100倍は凄い。なんで誰も怪しまなかったんだよ。 もう一人は、挫折した画家のジョン・マイアット。本書には主要な人物だけで32人もいますが、基本的にはこの二人が起こした 「20世紀最大の絵画詐欺事件」の、「物語」と言っても差し支えのないほどに破天荒なノンフィクションです。 個人的に注目した点は四つ。 一つ目は、詐欺師のほうのジョン・ドゥリューの手口。どうやってドゥリューは世間を騙していったのか。 「詐欺行為の中毒」とまで言われたドゥリューの手口は、あらゆる意味で凄まじく、巧妙な手口と『えっ、それマジっスか』としか思えない 幼稚園児レベルの稚拙な手口がごちゃ混ぜになっていて、読んでいるほうは『えっ、マジ騙されたんスか。あんなのに』と 何度も何度も思ってしまうのですが、344ページもの本になるくらいですから、皆んな皆んな騙されてゆきます。 二つ目は、そのドゥリューの相棒、と言うか半分以上は巻き込まれてしまったとしか思えない、画家のジョン・マイアットの話。 彼が事件に加わるまでの過程と、相棒になってからの話。 「少年時代のマイアットは音楽と美術に才能を示し、両親から勧められて入学した美術学校の教師たちも、彼の画才を認めてくれた。 教師たちがとりわけ感嘆したのは、彼が巨匠たちの作品模写に長けており、それが『他人の視点に立つこと』のできる彼の天賦の才能と 思われたことだった。図書館から借りた美術書に囲まれた彼は、絵筆を手にし、まるで巨匠の魂が乗り移ったかのような一種のトランス状態に陥り、 カンヴァスに突進しては筆を走らせる。そして一歩下がると、その巨匠だったら、この絵をどのように描いたのだろうかと思いをはせるのだった」 と、そこそこ順風満帆だったマイアットがいかにして「自分の作品はあまりにも伝統的かつ時代遅れで、商業主義にはとうてい乗り得ないことを 認めないわけにはいかな」くなったのか。やがてドゥリューと知り合ってしまい、詐欺の道に足を踏み入れてゆくマイアット。 三つ目は、ドゥリューが世に出してゆく「作品」に狂喜乱舞する批評家や画商たち、いわゆる美術の「専門家」たちの胡散臭さを暴く話。 この手の「贋作モノ」の本では、程度の差こそあれ必ずと言っていいほど、専門家たちの悪辣ぶりと愚かさがぶった斬られていますが、 本書に登場する専門家たちも例によってクズ揃いで、 「『この連中は、みんな気が狂っているんだ』。ネイハムの画廊を出たベルマンはつぶやいた。この頃までにはそれなりの時間、 アート・ビジネスの世界に身を置いていた彼は、ここが競争と下品なゴシップと、あらゆるタイプの奇矯な言動とがはびこる世界であり、 総体としてはほぼ無秩序状態にあることを思い知らされていた。彼が取引をしてきた画商たちの多くは、ほかのビジネスの世界では 五分だってやってはいけないだろう。ブラックリストに載せられるか、罰金を科されるか、あるいは刑務所行きが関の山だ」 と、本書は一切容赦しませんし、「ドゥリューなどは完璧にそのタイプだ」と騙すほうも騙されるほうも同じ穴の狢と断じます。 なにせ本書では、ドゥリューの詐欺を見抜こうとしている勢力にいるはずのメアリー・ライザ・パーマーという女性ですら、 絶対的に正しいわけではないと批判されているくらいですから、全員、根は似たようなもんなのだと呆れてしまいます。 四つ目は、ドゥリューを追うロンドン警視庁美術特捜班の話。美術特捜班・班長のチャーリー・ヒルとドゥリューの最初の接触からして 「ドゥリューは身を乗り出し、声を落として言った。『僕は<サヤン>なのだ』と。そして『サヤン』とは、世界中の都市で目立たぬように 暮らしているイスラエルの潜行スパイのことだと説明した。(大中略。以下、ドゥリューによる「サヤン」の任務の解説が続く) なかなかおもしろい作り話だ、とヒルは思った」 とぶっ飛びすぎで、「おとり捜査の幕が開いた」という文章以降の展開は、まさに疾風怒濤の勢いで、物語の展開だけでなく ドゥリュー自身の「ウソ」も怒濤の展開を見せます。それまでは、なんだかんだで『こいつすげえな』と思っていたのが、 『あれ、こいつひょっとして頭のネジが1本か10本足りないんじゃ・・・』と思うようになります。 まぁ、レビュータイトルに挙げたように、やっぱり狂っていたんですけど。本書の245ページ目からラストまでの80ページは、 本当に物凄い展開になります。もうムチャクチャです。必見です。 ・・・以上。ところで、本書は「エピローグ」が秀逸。化けの皮が剥がされて裁判に引きずり出されたドゥリューの狂いっぷりと、 裁判になってもなお振り回され続ける関係者たち。そして、本書の中で唯一の救いというか、一服の清涼剤となったのは、 ジョン・マイアットが「救われた」こと。災い転じて福となすというか、本書はこんなにもドロドロとした内容なのに、 最後にはちょっとだけほっこりしてしまいます。←「ほっこり」なんて言葉使いたくなかったが、他に言葉が思いつかなかった。 ただし、ドゥリューもまだまだ・・・。 本書は、美術史に詳しくなくとも十分に楽しめる本。難しいことは何も書かれていないので、大いに楽しめます。 ジョン・ドゥリューの狂いっぷりが見たい人には、それだけでも☆5個級の価値があるので、絶対にオススメの本です。 このレビューが参考になれば幸いです。 (*^ω^*) | ||||
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佐村河内事件の報道を見て、この本を思い出しました。彼が作ったのは正確には贋作とは言わないかもしれませんが、「聴覚障害の天才」という偽の人物像を作り上げたとすると、こちらの主人公のジョン・ドゥリューと重なる部分が多い。ジョン・マイアットと新垣氏の人物像も重なる。(ジョン・マイアットは贋作を作っているという自覚はあったが、新垣氏は単に作曲を委託されたつもりでオリジナル作品を作ったつもりだったと思うので同じではないですが)両者に共通するのは、単に人を楽しませるというだけではすまなくなった20世紀以後の芸術に対して、何を評価するのか、という問題かと思います。佐村河内氏は19世紀風の調性音楽と感動の物語で、ジョン・ドゥリューは芸術の物的証拠であるはずの来歴を作り上げることで、価値を持たせようとした。なお、本作は、捜査側の動きを書き込むことで、推理小説のような魅力も増しています。 | ||||
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犯行に加わった側、被害にあった側、そして犯人を追い詰めた側の関係者それぞれに、非常に丹念なインタビューをしてまとめられた本です。 映画のようなスリリングさはないのですが、淡々とした筆致で、かえってこの詐欺事件の恐ろしさが際立つように感じます。 この事件が他と違う点は、絵画を本物らしく魅せることよりも、その来歴(過去の売買歴や展示歴)をでっち上げることに注力している点です。 贋作をつかまされた人は直接の被害者ですが、この犯罪によって、イギリスの美術館の持つ絵画史に関する資料が汚染されてしまったという点では、芸術に携わる全員が間接的な被害者と言っても過言ではありません。 けっきょく、作品自体が真作でないところから始まってアーカイブが作り変えられているのではないか、という疑問を持った女性鑑定人のところから事件は解決に向かいます。 本物を見ぬく眼力がないと、権威に流されてしまうと、時に痛い目を見るということですね。 | ||||
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