(短編集)

怪奇探偵小説集1



※タグの編集はログイン後行えます

【この小説が収録されている参考書籍】
オスダメ平均点

7.00pt (10max) / 1件

7.00pt (10max) / 1件

Amazon平均点

4.50pt ( 5max) / 2件

みんなの オススメpt
  自由に投票してください!!
1pt
サイト内ランク []C
ミステリ成分 []
  この作品はミステリ?
  自由に投票してください!!

0.00pt

31.00pt

0.00pt

58.00pt

←非ミステリ

ミステリ→

↑現実的

↓幻想的

初公開日(参考)1983年12月
分類

短編集

閲覧回数769回
お気に入りにされた回数0
読書済みに登録された回数1

■このページのURL

■報告関係
※気になる点がありましたらお知らせください。

怪奇探偵小説集〈1〉 (ハルキ文庫)

1998年05月01日 怪奇探偵小説集〈1〉 (ハルキ文庫)

夭折の画家、村山槐多による、人肉嗜好を描いた「悪魔の舌」をはじめ、江戸川乱歩、大下宇陀児、小酒井不木らによる怪奇短篇十八篇を収録。本格推理小説の雄にして、名アンソロジストでもある鮎川哲也が贈る怪奇と幻想の世界。(「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

怪奇探偵小説集1の総合評価:8.33/10点レビュー 3件。Cランク


■スポンサードリンク


サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

昔の怪奇の定義とは?

戦前・戦後の探偵作家の怪奇短編を集めたもの。とはいえ、怪奇に対する考え方が現在と当時では明らかに違う。
現在では怪奇とは「何か説明のつかないもの・こと」であり、必ずしも怪異の正体や原因が明かされるわけではなく、むしろ怪奇現象の只中に放り出された形で終わるのに対し、この作品が収められている昭和初期では怪奇とは「恐ろしいもの・こと」や「途轍もなく気味悪いもの」であり、怪奇の正体をセンセーショナルに描く。粘着質の文体で以って執拗なまでにイメージを喚起させる手法が取られている。当時流行ったフリーク・ショーといった見世物小屋の舞台裏に光を当てて怪奇の正体を眼前に見せ付ける、これが現在の怪奇と決定的に異なるところだ。これはこの短編集の名前が怪奇「探偵」小説と銘打たれているからで、「探偵」と名のつく限りはその怪奇現象の謎は解かれなければならない。ほとんどが最後に論理的に怪奇が解決されていたのが特徴的だ。

18編の中には人食、死体愛好もしくは死体玩具主義、殺人願望、異常性欲など江戸川乱歩ばりの変態嗜好を扱った作品が並ぶ。秀逸だったのは「悪魔の舌」、「地図にない街」、「謎の女」の3編か。
「地図にない街」は都会に棲む乞食の世界をベースにある老人の企みを描くアイデアが良く、「謎の女」は平林初之輔の未完原稿を若き日の井上靖である冬木荒之輔が完成させたものだが、この冬木が創作した部分がこの作品の質を高めているのは誰もが認めることだろう。平林のパートでは単に逗留先で知り合った女と突然、東京で仮の夫婦生活をするという設定のみだったのを、冬木のパートではその設定を女の異常な性嗜好から起こる惨劇への序章へ結びつける力技に感服した。
しかしもっともよかったのは「悪魔の舌」。悪食及び人喰嗜好の描写の生々しさはもとより、それに加えてを最後の驚愕の真相を用意していたのが素晴らしい。伏線も活きており、この1編がこの短編集の牽引力を担っていたのは確か。

各編においては最後のオチが三流落語咄の域を脱していないものがあるのも事実で、「怪奇製造人」、「乳母車」、「幽霊妻」などがそれらに当たる。
また最後のオチが誰々の創作だったというのも目立った。
全作品を通じて思ったのは、これらは怪奇小説集というよりも残酷小説集の方が正鵠を射ている事。玉石混交の短編集だが、なぜか妙に惹きつけられた。②巻、③巻も愉しみだ。

Tetchy
WHOKS60S
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.2:
(5pt)

日本怪奇探偵小説黎明期を俯瞰できる一冊

本書の元本は、かつて双葉社から出ていた3分冊の短篇アンソロジーである。その後、双葉文庫となり、さらに1998年にハルキ文庫から再刊されたようだ。どうやらまだこの第1冊目は手に入るようだが、第2、3冊目は絶版の模様。たまたまこの第1冊目を手に取る機会に恵まれた。他にもすぐれたアンソロジーはたくさん出ていると思うが、本書も極めて優れたアンソロジーである。収録作品を見てもわかるとおり、非常にマニアックな作家の作品も含まれており、よりいっそう昭和初期の馥郁たる怪奇探偵小説の香りが漂ってくる。編者の鮎川哲也の解説も短いが非常に詳しくためになる。一読して、残りの2冊も手に入れたいと思った。

18篇収められている作品のうち、印象に残ったものについて箇条書きで記しておく。

<村山槐多「悪魔の舌」>
なかなかグロテスクな作品だが、その完成度はけっこう高い。絶版中の『村山槐多 耽美怪奇全集―伝奇ノ匣〈4〉』(学研M文庫)も手に入れたいところだ。

<倉田啓明「死刑執行人の死」>
倉田啓明は謎の作家とされており、この作家を文庫で読めるというのは相当に貴重である。たぶん、そのことだけでも本書の存在価値は倍増するのだろうと思われる。実は、そもそも本書を読もうと思ったのは、この倉田啓明の名があり、ただならぬ雰囲気を感じたからにほかならない。

<「謎の女」&「謎の女(続)」>
タイトルを見ればわかるとおり連作だが、実は作者が異なる。前者は、平林初之輔の作で、作者の死により未完である。後者は、冬木荒之介という新人作家による続編である。この続編が誕生した経緯が興味深い。昭和7年、探偵雑誌『新青年』で平林の「謎の女」が掲載された後、雑誌編集部が同時に読者に対して続編の投稿を募集した。つまり、「謎の女(続)」は、その応募の中から選ばれた作品なのである。そして、この冬木荒之介という新人こそは、若き日の某有名作家だった。

<大下宇陀児「恐ろしき臨終」>
本書の中で一番長い作品(約40頁)。劇中劇のような「富本達人並びに菅沼時子殺害事件」における川釣りの場面は非常に臨場感があり、作品全体を重厚にしている。なかなかの力作である。

<西尾正「骸骨」>
西尾正も、大下宇陀児同様になかなかの筆達者である。外国語の表現をそのまま使ったり、ルビが多用されていたりと、久生十蘭を思い出したりもした。また、独特のユーモアがあり、実に楽しかった。この諧謔精神は個人的にはツボであり、本書中で一番好きな作品となった。論創社からはこの作家の2巻本の作品集も出ているようなので、いずれ読んでみたい。

本書は一冊のアンソロジーにすぎないが、この一冊から広がる世界は深淵である。
怪奇探偵小説集〈1〉 (ハルキ文庫)Amazon書評・レビュー:怪奇探偵小説集〈1〉 (ハルキ文庫)より
4894564009
No.1:
(4pt)

独特の雰囲気漂うアンソロジー

本書は文庫本にしては収録作が多くてとても嬉しかった。しかしそれ以上に『探偵小説』はこんなにも豊穣な混沌に包まれていたのか、と驚いた。探偵小説が「推理小説」となって今日の様になるまでにどれだけの有名無名の書き手がいたのだろうか、と思ってしまった。
謎解きが主眼とする「推理小説」ならば、そこに怪奇的要素を絡める事を許せない読者もいるかもしれない。しかしその出発点において黒岩涙香など海外探偵小説の翻訳者たちの独特の怪奇的な語りを(例えば江戸川乱歩など)は魅せられて育ったのだ。彼らによって形成された戦前(或いは戦後の)「探偵小説」の読者達は怪奇への興味が強くても当然ではないだろうか。
本書はアンソロジーである。本棚の片隅に場所があるなら置いておいても損はない。そしてこんな作家がいたのかと時々思い出すのも良い。一巻のみの評価は星4つだが全三巻を通してならば星5つ「★★★★★」でも良いと思う。
怪奇探偵小説集〈1〉 (ハルキ文庫)Amazon書評・レビュー:怪奇探偵小説集〈1〉 (ハルキ文庫)より
4894564009



その他、Amazon書評・レビューが 2件あります。
Amazon書評・レビューを見る     


スポンサードリンク