■スポンサードリンク
(短編集)
怪奇探偵小説集1
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
怪奇探偵小説集1の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.50pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
本書の元本は、かつて双葉社から出ていた3分冊の短篇アンソロジーである。その後、双葉文庫となり、さらに1998年にハルキ文庫から再刊されたようだ。どうやらまだこの第1冊目は手に入るようだが、第2、3冊目は絶版の模様。たまたまこの第1冊目を手に取る機会に恵まれた。他にもすぐれたアンソロジーはたくさん出ていると思うが、本書も極めて優れたアンソロジーである。収録作品を見てもわかるとおり、非常にマニアックな作家の作品も含まれており、よりいっそう昭和初期の馥郁たる怪奇探偵小説の香りが漂ってくる。編者の鮎川哲也の解説も短いが非常に詳しくためになる。一読して、残りの2冊も手に入れたいと思った。 18篇収められている作品のうち、印象に残ったものについて箇条書きで記しておく。 <村山槐多「悪魔の舌」> なかなかグロテスクな作品だが、その完成度はけっこう高い。絶版中の『村山槐多 耽美怪奇全集―伝奇ノ匣〈4〉』(学研M文庫)も手に入れたいところだ。 <倉田啓明「死刑執行人の死」> 倉田啓明は謎の作家とされており、この作家を文庫で読めるというのは相当に貴重である。たぶん、そのことだけでも本書の存在価値は倍増するのだろうと思われる。実は、そもそも本書を読もうと思ったのは、この倉田啓明の名があり、ただならぬ雰囲気を感じたからにほかならない。 <「謎の女」&「謎の女(続)」> タイトルを見ればわかるとおり連作だが、実は作者が異なる。前者は、平林初之輔の作で、作者の死により未完である。後者は、冬木荒之介という新人作家による続編である。この続編が誕生した経緯が興味深い。昭和7年、探偵雑誌『新青年』で平林の「謎の女」が掲載された後、雑誌編集部が同時に読者に対して続編の投稿を募集した。つまり、「謎の女(続)」は、その応募の中から選ばれた作品なのである。そして、この冬木荒之介という新人こそは、若き日の某有名作家だった。 <大下宇陀児「恐ろしき臨終」> 本書の中で一番長い作品(約40頁)。劇中劇のような「富本達人並びに菅沼時子殺害事件」における川釣りの場面は非常に臨場感があり、作品全体を重厚にしている。なかなかの力作である。 <西尾正「骸骨」> 西尾正も、大下宇陀児同様になかなかの筆達者である。外国語の表現をそのまま使ったり、ルビが多用されていたりと、久生十蘭を思い出したりもした。また、独特のユーモアがあり、実に楽しかった。この諧謔精神は個人的にはツボであり、本書中で一番好きな作品となった。論創社からはこの作家の2巻本の作品集も出ているようなので、いずれ読んでみたい。 本書は一冊のアンソロジーにすぎないが、この一冊から広がる世界は深淵である。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
本書は文庫本にしては収録作が多くてとても嬉しかった。しかしそれ以上に『探偵小説』はこんなにも豊穣な混沌に包まれていたのか、と驚いた。探偵小説が「推理小説」となって今日の様になるまでにどれだけの有名無名の書き手がいたのだろうか、と思ってしまった。 謎解きが主眼とする「推理小説」ならば、そこに怪奇的要素を絡める事を許せない読者もいるかもしれない。しかしその出発点において黒岩涙香など海外探偵小説の翻訳者たちの独特の怪奇的な語りを(例えば江戸川乱歩など)は魅せられて育ったのだ。彼らによって形成された戦前(或いは戦後の)「探偵小説」の読者達は怪奇への興味が強くても当然ではないだろうか。 本書はアンソロジーである。本棚の片隅に場所があるなら置いておいても損はない。そしてこんな作家がいたのかと時々思い出すのも良い。一巻のみの評価は星4つだが全三巻を通してならば星5つ「★★★★★」でも良いと思う。 | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!