(短編集)
暗闇の殺意
- 横領 (72)
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死後に編まれた短篇集。 「Sの悲劇」「年賀状を破る女」「濁った殺意」「裸の密室」「手を振る女」「暗闇の殺意」「動く密室」の7篇が収められている。発表年は1971~1999年。 派手さはないが、粒揃いの物語ばかりである。しっかりしたトリックがあり、ロジックもちゃんとしていて、もっと評価されてもいいはずなのに、と思う。 | ||||
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中町信氏の70年代から90年代前半にかけて発表された短編推理を集めた文庫オリジナル企画。 ダイイイングメッセージネタと密室トリックネタを中心とした作品が集められている。 そりゃ、近年の凝ったミステリー作品を読みなれた若い読者からすれば、本作は何とも古臭くまた、シンプルに感じられるかもしれない。だが、しかしこのプロットもベタベタの作りものめいた作品世界は読みだすと癖になるのも事実。シンプルゆえの味わいというか良さがある。逆にこういう古き良きテイストのミステリーは現在では誰も書いていないだけに、新鮮ですらある。 いずれの作品もトリックを含めあくまで作りごとという割り切りに満ちた、シンプルながらどんでん返しが効果的に決まる中町氏らしい安定したいい意味でのB級風味が堪能できる。 | ||||
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復刊された『模倣の殺意』がヒットした中町信だが、技法も文章も洗練された近年のミステリを読みなれた読者からは、文章表現が稚拙で内容も古くささを感じたといった否定的な意見もレビューには多く見られた。確かに中町氏の文章は、流暢で文学的香気にあふれるとは言いがたく、プロットもトリックも触れればギシギシ音を立てそうなほどに作りごとめいている。だが開き直れば、そうした作りごとの面白さを味わうのが推理小説の楽しみだとも言えるだろう。 エラリー・クイーンならば、『フランス白粉の謎』のまるで事件の謎解きありきで設計施工されたようなデパートの造り、『チャイナ橙の謎』の部屋中のものが全て逆さまにされているというバカバカしい謎と、それに輪を掛けたバカバカしい解答、『シャム双子の謎』のカードに込められたダイイング・メッセージを、数百ページの長編でああでもないこうでもないとコネクリ回す好事家ぶり…等々。まさに、あり得ない作りごと感満載の作品揃いで、国名シリーズのこうした稚気満面の酔狂ぶりに、推理小説の原初的な楽しみがあるように筆者などは愚考する。 本書の収録作には、空前絶後の大傑作とまでゆく作品はないが、《密室》《ダイイング・メッセージ》《アリバイ崩し》と並ぶこのメニューは、やはり眺めてうれしい限りだ。まるで《綿あめ》《たこ焼き》《金魚すくい》、定番の祭の出店を眺めるような、懐かしさに稚気がふくらむワクワク感がある。この素朴さがたまらない。ミシュランなんぞには縁がないが、朴訥な親父がこだわりぬいて焼き続けた屋台の焼きそばの変わらない郷愁の味、といった作品が並んでいる。 クイーン作品なら『災厄の街』や『九尾の猫』のリアルさもいいが、やはり国名シリーズの好事家ぶり酔狂ぶりが楽しいと思える方。スタイリッシュで精巧なエヴァンゲリオンのフィギュアもカッコいいが、不格好に角ばったブリキのロボットにも味わいと愛着を感じずにはいられないという人。そんなミステリ読者には、たぶん中町信の作品も楽しめるんじゃないでしょうか。 | ||||
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最近になって、中町信が評価されているのだと聞くと、意外に思える。 中町信は、生前の評価が低かった作家ではなかった。 ある程度より年齢が上の推理小説ファンなら、1976年に鮎川哲也が編集し刊行された、徳間ノベルズ『鉄道推理ベスト集成』に収録された「急行しろやま」を読み、中町信の名を記憶したはずだ。 翌年の『復讐墓参 鉄道推理ベスト集成3』には「偽りの群像」が収録された。 鮎川哲也の解説によれば、徳間書店の編集部でも中町信の作品は高評価だったそうだ。 そして1980年の『自動車教習所殺人事件』(現行版は『追憶の殺意』と改題)から、ノベルズ版での書き下ろし長編の刊行が本格化した。 1985年の『奥只見温泉郷殺人事件』は、佐野洋の「推理日記」にも取り上げられ、「SRの会」の年間ベストテンにも入った。 …と、偉そうに書いているが、当時は私もアンソロジーで「急行しろやま」「偽りの群像」を読んでいたのみで、『自動車教習所殺人事件』とか『高校野球殺人事件』(現行版は『空白の殺意』と改題)といった、余りといえば余りに工夫の無いタイトルに興味を感じず、手を出していなかった。 ところが、『奥只見温泉郷殺人事件』に続いて『十和田湖殺人事件』(1986年)も「SRの会」の年間ベストテン入りしたせいか、次の『榛名湖殺人事件』(1987年)は、読売新聞に好意的な書評が掲載された。 大新聞にも中町信が紹介されるようになったか、と改めて『榛名湖殺人事件』を読んで感心した。 (そして、刊行された全長編を読んだほど、入れ込むことになった) 『下北の殺人者』(1989年)は「このミステリーがすごい!」でもベスト20に入り、推理小説ファンは中町信の実力を再認識した。 ところが、一般にはまったく、売れなかったのである。 折原一の『倒錯の死角』(1988年)は、「鮎川哲也と十三の謎」を手にするような読者なら、当然、前年に文庫化された『新人文学賞殺人事件』(現行版は『模倣の殺意』と改題)を読んでいるという前提で、記述トリックに気付いた読者を、かえって混乱させるための仕掛けが成されていた。 それほど、一部では評価が高かったのだが、一般にはまったく人気が無かった。 何しろ当時はバブル景気の絶頂期。 記述トリックなんて、見向きもされなかった時代である。 作家専業となり、力作を書いても書いても、一般受けしないのだから、おそらく本人としては不本意であったろう。 次第に、「考えすぎて作者本人がおかしくなっているのか?」「探偵役の推理が“あさっての方向”へ暴走するところが、おもしろいと言えばおもしろいが…」としか言いようの無い作品が増えていった。 中町信の作品を先に読んでいる読者にとっては、貫井徳郎の『慟哭』(1993年)や乾くるみ『イニシエーション・ラブ』(2004年)の仕掛けなど、簡単にわかってしまう。 それでもなお、中町信は“先駆者”として、再評価されなかった。 それが、2012年になって、文教堂書店が仕掛けた企画により、突如『模倣の殺意』が30万部を超える大ヒットになろうとは。 本書は、1987年、中町信への評価の高まりを受けて刊行された短編集『Sの悲劇』に収録されていた「Sの悲劇」「裸の密室」「動く密室」に加えて、力作長編が次々に刊行されていた時期である、1988年から1992年にかけて発表された4篇を収録した、実に中町信の短編集としては、初めての文庫版である。 (短編集じたい、『Sの悲劇』以来の刊行なのだ) つまり、中町信の作家歴としては、初期と中期の代表的な短編を、あわせて読む事が出来る、良心的な編集になっている。 願わくば、本書もよく売れて欲しい。 アンソロジーに個別で収録されたのみで、著書としてまとまったことの無い「急行しろやま」「偽りの群像」「切手収集事件」「傾いた風景」に、単行本未収録作を加えた次なる短編集の企画が通る程度には、売れて欲しいと切に願う。 また、代表的な長編と言うべき『田沢湖殺人事件』『奥只見温泉郷殺人事件』『十和田湖殺人事件』『佐渡金山殺人事件』『湯煙りの密室』等々が、復刊され多くの読者の目に触れられるようになって欲しいとも願っている。 | ||||
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中町信さん(1935年1/6〜2009年6/17)は、早大卒業後、出版社に勤務しながら創作活動を続けます。 著書は結構たくさんありますが、意外と地味で「模倣の殺意」でブレークするまでは、その名前はあまり知られているとは言えませんでした。 本書は、そんな中町さんの短編集です。収録作品は以下の通りです。 1:Sの悲劇(幻影城 1976年2月号) 2:年賀状を破る女(小説NON 1988年3月号) 3:濁った殺意(小説NON 1992年5月号) 4:裸の密室(推理 1971年7月号) 5:手を振る女(小説NON 1990年11月号) 6:暗闇の殺意(小説NON 1992年11月号) 7:動く密室(小説推理 1981年3月号) 1:商事会社の管理人の女性の妹が殺害されます。当初は姉と間違えられて殺害されとみなされ、捜査は進みますが・・・ダイイング・メッセージものです。 2:一見関係のない2組の男女4人が次々と殺害されます。どうやら4人はひき逃げ事件に関係があるようで、その関係者の復讐による殺害と思われていましたが・・・ これもダイイング・メッセージものです。 3:脳梗塞で入院中の地方旅館の経営者が殺害されました。容疑者は次々と出てきますが・・・・これもダイイング・メッセージものです。、 4:栄一郎の妻が内側から鍵をかけた部屋で後頭部を打って死亡していました。最初は、事故死と思われていましたが、前頭部にも傷があり、他殺と断定され・・・ 密室物の佳作です。 5:グリーン車内で白幡の婚約者が殺害されます。容疑者にはすべて確実なアリバイがあり・・・アリバイ崩し物の佳作です。 6:表題作、中々良くできた短編です。 7:自動車学校で起こった殺人事件、殺害された人間は教習生に最も嫌われていた人物で、しかも、壁と隣の自動車のためにドアが開けられない車の中で殺害されていました・・・・ 自動車という密室を使った、極めて珍しい密室ものです。 2、5、6 が単行本(文庫本)初収録作品です。少しつまらない作品もありますが、いずれも手堅くまとめられていて、充分読みごたえがあります。 中町ファンのみならず、広く推理小説ファンにお勧めします!!! | ||||
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