追憶の殺意
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自動車教習所の複数の関係者が相次いで殺害される。 読者は捜査員とともにフーダニット(犯人当て)とその動機、それぞれの事件とのつながりを追っていく。 ・・・・・・と、途中からある人物が犯人として消去法的に絞られるが、その人物には鉄壁のアリバイがあった。 ストーリー後半で、筆者はこの人物を捜査員と読者の前に「倒叙としての犯人」として提供し、その他の登場人物との関係も含めて畳み込む筆致で真実を展開し、読者をして読後の余韻に浸らしめることに成功している。 中町信の他の作品にも共通しているが、関東近郊の鄙びた風土に根づいた人物・施設のイメージとしての「排他的な野鄙さ」が活写されている。 中町信の出身地であり居住地でもあった東京北部から北関東地域は、彼の作品に通底する〝原風景〟の趣を作品世界に添えている。 読者をして武蔵野や北関東、甲信越へのデジャビュを抱かしめる、良い意味での「泥臭さ」もまた心地よい。 本作にも埼玉県、群馬県などの実在の地名がギリギリまで記されているが、薄皮一枚のところでフィクションの世界(中町信ワールド)だと我に帰ることしばしばで、架空と実在の虚実の錯覚も楽しめる。 ただ本作品は『模倣の殺意』『天啓の殺意』に比べると、文体にやや回りくどい修飾や古風な言い回し、文章だけでは想起しにくい視覚情報の記述も多く、冗長と感じる部分もあったが、読み返したときに、実はその部分にこそ叙述トリックの伏線が〝擬態〟して語られていることに気づかされる。 再読、三読して、その芳醇なストーリーと武蔵野の旅情を味わう楽しみ方もある。 余談だが、中町信の作品のなかで私が楽しみにしているもののひとつが「食べ物」の描写である。 登場人物が意外なものを注文したり食べている描写は、ある意味で他の作者が飲食の描写を割愛したり、ステレオタイプな〝メニュー〟でお茶を濁すなかで、中町作品はよりリアリティに富んでいる。 これも薄皮一枚の虚実の好例だろう。 「サザエさん」の作者である長谷川町子はストーリーに直接関係のない調度品や日用品をこまごま描写したことで有名だが、中町信作品の事物や心理の描写も細部にわたっている。 本筋に関係ないこれらの描写は、ある意味中町信のサービス精神の発露か、張り詰めた文章が続くなかでの筆者自身の遊び場だと、微笑ましく感じた。 さて本作のなかで、中畔警部補が教習所近くの岩槻の喫茶店で注文したものは・・・・・・久しぶりに食べたくなること請け合い! | ||||
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デビュー作の模倣の殺意が21世紀になって突然売れまくりという珍しいブレイクの仕方をした中堅ミステリー作家の中町信氏だが、模倣の殺意と天啓の殺意と1.2冊を除いては全て廃盤状態という悲惨なことになっていたが、本作は氏の1980年発表の旧徳間文庫版が非常に入手しにくかった自動車教習所殺人事件の改題再発版である。 創元での再発はよく分からないタイトルに変更されているが、本作も何が追憶の殺意なのかよく分からない。やはりオリジナルの自動車教習所殺人事件のタイトルの方が内容を簡潔に表している。 模倣の殺意等の奇抜な叙述トリックを使ったものではなく、密室状況の殺人と国道を使ったアリバイトリックをメインにさらに細かいアリバイトリックが散りばめられた意欲作である。こういうオーソドックスなアリバイ崩しものは最近ではとんと見かけなくなったが、地味で古臭いのは否めないが、今読んでもかなり面白い。 江戸川乱歩賞に応募された作品だが、やはりこういったオーソドックスなミステリーはトリック+何かが求められる江戸川乱歩賞向きではないと感じる。純粋にトリックに驚き読後はああ面白かった・・で後には何も残らない・・・・それでいい。珍しいくらいの純粋な推理小説である。 | ||||
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中町信さんは、良質なミステリを書かれていますが、そんなに目立つ存在ではありませんでした。 しかし、2004年、模倣の殺意(新人賞殺人事件)が創元推理文庫に入り、大手書店チェーンの文教堂がプッシュし、ブレイクし、一躍人気作家に躍り出ました。 以後、東京創元社では旧作を改題し、続々と創元推理文庫に編入しています。 本作、追憶の殺意はそういった流れの最新作で、旧題は自動車教習所殺人事件でした。 物語の舞台は武蔵野教習所、その教習所の配車係の石川の死亡から始まります。石川は問題の多い男でしたが、当初、その死は事故死として処理されていました。 しかし、技能主任の金野が密室で殺害され、つづいて、大渕指導員が自宅のマンションの駐車場の車の中で殺害されているのが発見されます。 同教習所には、蹴とばしや、触り魔 と称される不良指導員もいますし、職員同士の不仲、職員と生徒の複雑な人間関係もあって、犯人探しは難航します。 やがて、容疑の濃厚な1人の人物が浮かび上がります。しかし、同容疑者には、確かなアリバイが存在し・・・・・ 謎解き自体は、画期的なトリックが使われているわけでもなく、心理的な錯覚が使用されている程度です。事実、犯人は物語の中盤で明らかにされます。 後は、アリバイ崩しに興味は移って行きます。 しっかりと書き込まれていて、それなりの作品だとは思いますが、模倣の殺意のような意外性はありません。マニア向けの良作かな? | ||||
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