フラテイの暗号
- 北欧ミステリ (199)
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アイスランドのミステリです。北欧ミステリを読んでいるといつも思いますが、この小説でも同じく、ほんの一昔前なのに貧しい生活をしていたのだなと感じました。現代の進んだ様子から北欧諸国はずっと前から先進国だったような印象を受けがちですが、昔はドイツやロシアなどの強国に虐げられていたヨーロッパの辺境、後進国でした。この小説の時代設定は1960年で、ましてや首都ではなく地方の離島ということもありますが、貧困といってもいいような生活が描かれています。電気は一部しかきていない、電話は電話局に行かないとかけられない、産業は零細な牧畜と漁業くらいしかなく稼ぎといってもしれていて、汚れた小屋のような家で質素な暮らしをしている人々がほとんど。教育レベルも低い。料理の献立がよく出てきますが、肉とパンばかりで野菜もあまり食べてないな、と。たぶん栄養の知識もなかったのでしょう。 余談ですが、あちらにはパフィンという変わった形のくちばしをしたカラフルな鳥がいて、なかなか愛嬌があり、バードウォッチングで鑑賞するような鳥なんですが、その鳥やそれにカモメも煮込みにして食べるようでびっくりしました。また、北国らしく、アラスカのイヌイットのようにアザラシの生肉も食べるそうです。 真ん中あたりで、一応、主人公らしいキャルタンが何か怪しいかも?とは思い始めたのですが・・・ネタばれになるのであまり書けませんが。今回の2つの事件には、過去の出来事が大きく関係しているということがだんだんわかってきます。ミステリの体裁を取っていますが、人間模様が主なテーマで、純粋なミステリとは言えないかもしれません。荒れた海と風雨、雲ひとつない晴天が交互にやってくる北欧の夏。けれど夏なのに寒々とした風景が目に見えてくるようで、交通の便の悪さも相まって他のヨーロッパ諸国にはない独特の風土感があります。謎解きも興味深いですが、小説全体に漂う雰囲気が魅力的です。 それは合間にはさまれる北欧神話サーガとエッダから取られた「フラティの書」にも言えて、この小説に独特の雰囲気を与えています。とにかく戦いと殺し合いの血みどろの話ばかりです。ヴァイキングは船で近隣諸国を荒らしまわって残虐の限りを尽くしたといいますが、まさにそれが現れているようなえげつなさです。体を半分に引き裂いたとか、腸が飛び出してそれをぐるぐる巻きつけたとか、首をはねたとかそんな話ばかりなのです。サーガとエッダは昔、子供向けの本で読んだことがあるのですが、氷や雲や雨の風景をバックに雷神トールが活躍するほの暗い神秘的なイメージが鮮烈でした。そのような精神性がこの小説にも表れているような気がします。これらの神話もまた読み直してみたくなりました。 | ||||
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アイスランドを舞台にしたミステリーと言うことで、文化だったり歴史だったり、そこに描かれる人々の暮らしなどは興味深く読むことができた。 しかしながら、肝心のミステリーの部分に関しては、正直さほど面白いものではないと感じた。 ただ、世界各国のミステリーを読んでみたいという興味関心があれば、それなりにお勧めは出来る。 | ||||
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北欧ミステリの大海の中で数少ないのはアイスランド作家の作品である。 大ブレークしたのは、アーナルデュル・インドリダソン描くレイキャビク警察エーレンデュル捜査官シリーズの「湿地」「緑衣の女」(東京創元社)が、ガラスの鍵賞を2年連続で受賞しベストセラーになってからである。 その理由を「緑衣の女」の訳者あとがきで柳沢由実子が書いている。北欧5ヶ国の中で人口30万人の小さな島国でありすぐ隣はイギリスであることから、アイスランド人はほとんど英語のミステリしか読まなかったし、ミステリは娯楽であって文学ではないと軽んじられたという。冬の極夜の中で人々の読書量は多いというが根底には本書に出てくる「フラテイの書」のような民族の生い立ちを綴った一大叙事詩「サーガ」「エーダ」のような壮大なものがアイスランド人の文学観といえるのではないか。 そして現実のアイスランドでは殺人事件は年2〜3件しかおこらないという。 (それにしては「フラテイの書」の記述は残虐きわまりないと思うのだが。) 物語の舞台は小国アイスランドの縮図のような小島フラテイ島で1960年のある日、ノンニ少年が<大きな動物の死骸を発見する。>動物の死骸は見慣れているがそれは緑色のアノラックの中に突っ込まれていた。 週に一度の郵便船でこの地区を管轄する地区長代理キャルタンが島に到着すると事件の調査に関わることになってしまう。 この島には小さいながらもアイスランド最古の図書館があり、そこには「フラテイの書」といわれる北欧史上、最も有名な本があるという。 男の死体のポケットからは謎の文字の羅列が記された紙片がみつかり、死体の周囲に小石を並べた、ある「ことば」が見つかった。 「フラテイの書」には「フラテイの暗号」とよばれる秘密があるとされる。40問の謎があるが39問の謎から得た文字が暗号で、第40問の謎は最終の謎を解く鍵になっているという。そしてバラバラな文字を40問目のヒントをたよりに変換すると最後の2行が判るというのだ。 死体の男は「フラテイの書」と関係があるのではないか。教会の会衆代表グリームル、島で一人の女医ヨウハナ、小学校教諭ホクニ、教会の寺男コルマウクル・コルク、そしてレイキャビク警察の刑事たち、その他大勢がキャルタンとともに静かな島におこった出来事の真相に迫っていく。 本書は時代設定を1960年にすることにより、現在ではホテルも建ち大勢の観光客がつめかける「フラテイ島」ではなく60年当時の住民60人、電気、水道なしの孤島で「ある種の密室殺人的な状況、神秘的な古文書、考えぬかれた暗号的要素、偶然と必然」(訳者あとがき)で練り上げられた物語である。 ケレン味がないと決めつけてはいけない。暗号は最終的には解ける。しかしダ・ヴィンチやダンテの暗号のような社会も宗教も常識もひっくり返すような結末ではなく、「民族の歴史を持ち、また伝説や運命の絆を信じて大自然の中で暮らしている」「アイスランド人の根底に流れる精神世界に触れることができる。」(訳者あとがき)のだ。 シンプルな思いが切々と伝わる「こううんのしょ」である。 | ||||
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このような犯罪のないミステリーが好きです。フラティー島が、醜い犯罪によって汚されなくてよかった。 | ||||
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