太陽黒点
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 | 2001年07月31日 太陽黒点 (中公文庫) ある日、浅見隆司の平凡な人生は唐突に終わりを告げた。妻の不倫が発覚し、しかも相手は、高校時代に彼を目の敵のように虐待し続けた、八幡朱印社員の江木啓介だったのだ。そして、この八幡朱印こそ、かつて詐欺同然に父の財産を略奪し、そして死に追いやった怨敵なのだ!忘れ去っていた怨念を目覚めさせ、巨悪に復讐すべく、全てを捨てさった浅見だったが、その背後には…。 (「BOOK」データベースより) |
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| 浅見隆司には、二つの怨敵がいた。一つは、江木啓介である。彼は、全寮制の高校時代の先輩で、軍隊のような残忍なシゴキを浅見に与えた。浅見は、その恐怖に耐え忍んだ。浅見は、大学を卒業して中所の玩具会社に勤めて、妻の美知子とささやかな生活を送っていた。ところが、美知子と江木は、中学時代の同級生だったのである。美智子は、派手好みで、二人は、同窓会で再会すると意気投合した。そして、浅見の留守中に美知子は、江木を自宅に招じ入れ関係をもってしまったのだ。これも、江木の浅見に対する虐めだった。浅見は、美知子と別れた。こうして、江木は生涯、許すことの出来ない人間となった。もう一つは、八幡朱印である。浅見の家は、従業員三十人ほどの雑貨店を経営していた。これに、八幡商事が目を付けた。浅見の父にスーパーへの転換を勧めた。スーパーが流通機構の中心になると、口車に乗せられ、父親は、すぐに転換を決めた。新聞、テレビ等々の媒体を使い宣伝し、連日、大盛況だったが、一向に利益が上がらなかった。二割も三割も安くした目玉商品ばかり売れ、売れた分だけ赤字になった。その商品も八幡商事からの押し売り商品だった。大量仕入れによる資金需要は旺盛で、支払手形は、増える一方だった。そして、資金が底をついた。その時、八幡商事は、資金の立て替えと引き換えに、時価十五億円の不動産に抵当権を設定した。この時に、完全に相手の作った陥穽に落ちたのだ。八幡商事は、全ての権利を親会社の八幡朱印に譲渡した。すると間もなく、八幡朱印は、一斉に、その決済を求めてきた。こうして、浅見家は、祖父伝来の財産を根こそぎむしり取られた。父は自殺し、浅見は大学を中退させられた。こうして二つの怨敵が出来たのだった。そして、美知子と別れる時に偶然にも江木が八幡朱印に勤務している事を聞き、浅見は、怨敵に対し瞋恚の炎を燃やすのである。それも法の網を潜り抜けるような危険な方法で行う。浅見は、空き巣の達人、目形三吉、通称“むささび小僧”に依頼して、八幡朱印の内偵を依頼した。すると、とんでもないスキャンダルを盗み出してきた。それは。八幡朱印は、アメリカの大手航空機メーカー、サザンクロス・インターナショナル社から、次期新次防戦闘機輸入を、三年間で二百機を輸入する契約を結んでいた。そして、その謝礼としてS・I社から五万ドルのリベートが、仲介した現職の総理大臣、師岡国尊に渡されていたというのだ。こうして、浅見の怨敵、八幡朱印に対する復讐は、現職総理大臣を後ろ盾にした相手との闘いになってしまうのだ。資金も権力も持つ相手に法網を潜り抜け素手で戦いを挑んでいくのである。その手法は、見事の一語に尽きる。溜飲が下がる思いだ。 （付）本書は1980年3月に講談社から初出版されたものです。その後、1988年11月に角川文庫から、2001年8月に中公文庫から再出版されています。2014年2月には、中公文庫がkindle化しました。 | ||||
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| 浅見隆司には、二つの怨敵がいた。一つは、江木啓介である。彼は、全寮制の高校時代の先輩で、軍隊のような残忍なシゴキを浅見に与えた。浅見は、その恐怖に耐え忍んだ。浅見は、大学を卒業して中所の玩具会社に勤めて、妻の美知子とささやかな生活を送っていた。ところが、美知子と江木は、中学時代の同級生だったのである。美智子は、派手好みで、二人は、同窓会で再会すると意気投合した。そして、浅見の留守中に美知子は、江木を自宅に招じ入れ関係をもってしまったのだ。これも、江木の浅見に対する虐めだった。浅見は、美知子と別れた。こうして、江木は生涯、許すことの出来ない人間となった。もう一つは、八幡朱印である。浅見の家は、従業員三十人ほどの雑貨店を経営していた。これに、八幡商事が目を付けた。浅見の父にスーパーへの転換を勧めた。スーパーが流通機構の中心になると、口車に乗せられ、父親は、すぐに転換を決めた。新聞、テレビ等々の媒体を使い宣伝し、連日、大盛況だったが、一向に利益が上がらなかった。二割も三割も安くした目玉商品ばかり売れ、売れた分だけ赤字になった。その商品も八幡商事からの押し売り商品だった。大量仕入れによる資金需要は旺盛で、支払手形は、増える一方だった。そして、資金が底をついた。その時、八幡商事は、資金の立て替えと引き換えに、時価十五億円の不動産に抵当権を設定した。この時に、完全に相手の作った陥穽に落ちたのだ。八幡商事は、全ての権利を親会社の八幡朱印に譲渡した。すると間もなく、八幡朱印は、一斉に、その決済を求めてきた。こうして、浅見家は、祖父伝来の財産を根こそぎむしり取られた。父は自殺し、浅見は大学を中退させられた。こうして二つの怨敵が出来たのだった。そして、美知子と別れる時に偶然にも江木が八幡朱印に勤務している事を聞き、浅見は、怨敵に対し瞋恚の炎を燃やすのである。それも法の網を潜り抜けるような危険な方法で行う。浅見は、空き巣の達人、目形三吉、通称“むささび小僧”に依頼して、八幡朱印の内偵を依頼した。すると、とんでもないスキャンダルを盗み出してきた。それは。八幡朱印は、アメリカの大手航空機メーカー、サザンクロス・インターナショナル社から、次期新次防戦闘機輸入を、三年間で二百機を輸入する契約を結んでいた。そして、その謝礼としてS・I社から五万ドルのリベートが、仲介した現職の総理大臣、師岡国尊に渡されていたというのだ。こうして、浅見の怨敵、八幡朱印に対する復讐は、現職総理大臣を後ろ盾にした相手との闘いになってしまうのだ。資金も権力も持つ相手に法網を潜り抜け素手で戦いを挑んでいくのである。その手法は、見事の一語に尽きる。溜飲が下がる思いだ。 （付）本書は1980年3月に講談社から初出版されたものです。その後、1988年11月に角川文庫から、2001年8月に中公文庫から再出版されています。2014年2月には、中公文庫がkindle化しました。 | ||||
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