鉄筋の畜舎
- 復讐劇 (78)
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ストーリーは自分的に好きな経済を絡めた展開であるが、最後の結末が悪すぎる。全体的にはエゴとエゴの絡まりの末。と言う感じではあるが、読者は最初に登場した人物に焦点を当てられた人物にどうしても感情移入するので、これはないだろうと言う感じ。 | ||||
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最後の最後、大どんでん返しに唖然となった。 凄まじいまでの復讐劇、結局残るものは何なのか。 結局、最後の二人は幸せなのか。 きっと心底の幸せは訪れる筈もなく、心は皆んな鉄筋の畜舎から出られない。復讐劇の後に残るものは冷たい檻だけ。一気読みしたい本です。 | ||||
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1973年3月に出版されました。森村誠一氏は、「分水嶺」「東京空港殺人事件」の様に、序章で伏線を張り、見事に結末で終結させる作品を書いてきました。それらの作品を読むと、原稿用紙に一枚目を書き出した時には、結末へ向けての大きなながれが頭の中で構築されているかの如く思えました。 本作に於いて森村氏は、途中で物語の流れを変換させたと思える節が有ります。珍しい作品です。それが、とても奇妙に興味的に思えます。 「鉄筋の畜舎」と言うタイトルは、森村氏が十年にわたり勤め上げたホテルマンの経験から、ホテルに集う豊かな人々とは対照的に家畜の様な扱いを受ける従業員たちのことを揶揄した言葉です。 幸せそうに生活にゆとりのある男女たちが贅を尽くす姿と比較して、森村氏は「客が山海の珍味を食傷している傍らで、従業員は従食と呼ぶ従業員食堂で同じ餌を啄んでいる白色レグホンの様だ」と述懐しています。 1969年に「高層の死角」で江戸川乱歩賞を受賞した後森村氏は、そのタイトルにあやかってか「“熟語”の“熟語”」という五字のタイトルを多用しています。「虚構の空路」「腐食の構造」「真昼の誘拐」また次作の「恐怖の骨格」と、このパターンが続いています。どれもタイトルが物語の内容を暗示しています。 しかし本作では、必ずしも先に述べたような家畜の様な扱いを受けたホテルマン時代の鬱屈した心を書いたものでは無いことに興味を感じます。 東京、新宿にある老舗百貨店「赤看板」の社長保科の、お抱え運転手だった竹場が、保科の出来の悪い息子たちが起こした轢き逃げ殺人の肩代わりにされて獄中で死んでしまう。死人に口無しで、そのまま、闇に葬り去ろうと企んだ保科一族の悪事に気付いた竹場の息子栄一が一族に復讐を誓います。 その復讐の対象は、社長保科の出来の悪い息子たちを、一人ずつ順に、この上もない恐怖を与え事故死に見せかけ殺害してしまうという手法です。息子たちがその殺意を感じて狼狽える姿には溜飲が下がります。しかし、これは荒っぽい。「むごく静かに殺せ」と共通するところが有ります。 このまま順を追って復讐劇が続くのかと思うと森村氏はここで方向転換をしています。次の復讐のターゲットにしたのは、なんと「赤看板」そのものを乗っ取り、保科一族を“家畜”として貶めようとするものなのです。 そのために「赤看板」株の、買い占め工作の詳細は圧巻です。安定株主の取り崩し工作などは、秀逸な経済犯罪小説のようでした。 たとえどんなに地位や名誉もある立派な人間も、甘い陥穽に見事に落ち込み、たちまち持っていた全ての権威を失っていく姿には哀れみを感じるとともに、栄一を応援しながら読んでいました。 ここ個人への復讐方法から一転して会社乗っ取りに方向転換したのは、もしかしたら、森村氏はこの株式乗っ取り工作の修羅場を書きたくなってしまったのではないかと思われてしまいます。鉄筋を支配する権力者たちに鬱憤を晴らし、彼らの虚構に満ちた儚さを書くために方向を転換したのではないかと思ってしまいます。秀作です! | ||||
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1973年3月に出版されました。森村誠一氏は、「分水嶺」「東京空港殺人事件」の様に、序章で伏線を張り、見事に結末で終結させる作品を書いてきました。それらの作品を読むと、原稿用紙に一枚目を書き出した時には、結末へ向けての大きなながれが頭の中で構築されているかの如く思えました。 本作に於いて森村氏は、途中で物語の流れを変換させたと思える節が有ります。珍しい作品です。それが、とても奇妙に興味的に思えます。 「鉄筋の畜舎」と言うタイトルは、森村氏が十年にわたり勤め上げたホテルマンの経験から、ホテルに集う豊かな人々とは対照的に家畜の様な扱いを受ける従業員たちのことを揶揄した言葉です。 幸せそうに生活にゆとりのある男女たちが贅を尽くす姿と比較して、森村氏は「客が山海の珍味を食傷している傍らで、従業員は従食と呼ぶ従業員食堂で同じ餌を啄んでいる白色レグホンの様だ」と述懐しています。 1969年に「高層の死角」で江戸川乱歩賞を受賞した後森村氏は、そのタイトルにあやかってか「“熟語”の“熟語”」という五字のタイトルを多用しています。「虚構の空路」「腐食の構造」「真昼の誘拐」また次作の「恐怖の骨格」と、このパターンが続いています。どれもタイトルが物語の内容を暗示しています。 しかし本作では、必ずしも先に述べたような家畜の様な扱いを受けたホテルマン時代の鬱屈した心を書いたものでは無いことに興味を感じます。 東京、新宿にある老舗百貨店「赤看板」の社長保科の、お抱え運転手だった竹場が、保科の出来の悪い息子たちが起こした轢き逃げ殺人の肩代わりにされて獄中で死んでしまう。死人に口無しで、そのまま、闇に葬り去ろうと企んだ保科一族の悪事に気付いた竹場の息子栄一が一族に復讐を誓います。 その復讐の対象は、社長保科の出来の悪い息子たちを、一人ずつ順に、この上もない恐怖を与え事故死に見せかけ殺害してしまうという手法です。息子たちがその殺意を感じて狼狽える姿には溜飲が下がります。しかし、これは荒っぽい。「むごく静かに殺せ」と共通するところが有ります。 このまま順を追って復讐劇が続くのかと思うと森村氏はここで方向転換をしています。次の復讐のターゲットにしたのは、なんと「赤看板」そのものを乗っ取り、保科一族を“家畜”として貶めようとするものなのです。 そのために「赤看板」株の、買い占め工作の詳細は圧巻です。安定株主の取り崩し工作などは、秀逸な経済犯罪小説のようでした。 たとえどんなに地位や名誉もある立派な人間も、甘い陥穽に見事に落ち込み、たちまち持っていた全ての権威を失っていく姿には哀れみを感じるとともに、栄一を応援しながら読んでいました。 ここ個人への復讐方法から一転して会社乗っ取りに方向転換したのは、もしかしたら、森村氏はこの株式乗っ取り工作の修羅場を書きたくなってしまったのではないかと思われてしまいます。鉄筋を支配する権力者たちに鬱憤を晴らし、彼らの虚構に満ちた儚さを書くために方向を転換したのではないかと思ってしまいます。秀作です! | ||||
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1973年3月に出版されました。森村誠一氏は、「分水嶺」「東京空港殺人事件」の様に、序章で伏線を張り、見事に結末で終結させる作品を書いてきました。それらの作品を読むと、原稿用紙に一枚目を書き出した時には、結末へ向けての大きなながれが頭の中で構築されているかの如く思えました。 本作に於いて森村氏は、途中で物語の流れを変換させたと思える節が有ります。珍しい作品です。それが、とても奇妙に興味的に思えます。 「鉄筋の畜舎」と言うタイトルは、森村氏が十年にわたり勤め上げたホテルマンの経験から、ホテルに集う豊かな人々とは対照的に家畜の様な扱いを受ける従業員たちのことを揶揄した言葉です。 幸せそうに生活にゆとりのある男女たちが贅を尽くす姿と比較して、森村氏は「客が山海の珍味を食傷している傍らで、従業員は従食と呼ぶ従業員食堂で同じ餌を啄んでいる白色レグホンの様だ」と述懐しています。 1969年に「高層の死角」で江戸川乱歩賞を受賞した後森村氏は、そのタイトルにあやかってか「“熟語”の“熟語”」という五字のタイトルを多用しています。「虚構の空路」「腐食の構造」「真昼の誘拐」また次作の「恐怖の骨格」と、このパターンが続いています。どれもタイトルが物語の内容を暗示しています。 しかし本作では、必ずしも先に述べたような家畜の様な扱いを受けたホテルマン時代の鬱屈した心を書いたものでは無いことに興味を感じます。 東京、新宿にある老舗百貨店「赤看板」の社長保科の、お抱え運転手だった竹場が、保科の出来の悪い息子たちが起こした轢き逃げ殺人の肩代わりにされて獄中で死んでしまう。死人に口無しで、そのまま、闇に葬り去ろうと企んだ保科一族の悪事に気付いた竹場の息子栄一が一族に復讐を誓います。 その復讐の対象は、社長保科の出来の悪い息子たちを、一人ずつ順に、この上もない恐怖を与え事故死に見せかけ殺害してしまうという手法です。息子たちがその殺意を感じて狼狽える姿には溜飲が下がります。しかし、これは荒っぽい。「むごく静かに殺せ」と共通するところが有ります。 このまま順を追って復讐劇が続くのかと思うと森村氏はここで方向転換をしています。次の復讐のターゲットにしたのは、なんと「赤看板」そのものを乗っ取り、保科一族を“家畜”として貶めようとするものなのです。 そのために「赤看板」株の、買い占め工作の詳細は圧巻です。安定株主の取り崩し工作などは、秀逸な経済犯罪小説のようでした。 たとえどんなに地位や名誉もある立派な人間も、甘い陥穽に見事に落ち込み、たちまち持っていた全ての権威を失っていく姿には哀れみを感じるとともに、栄一を応援しながら読んでいました。 ここ個人への復讐方法から一転して会社乗っ取りに方向転換したのは、もしかしたら、森村氏はこの株式乗っ取り工作の修羅場を書きたくなってしまったのではないかと思われてしまいます。鉄筋を支配する権力者たちに鬱憤を晴らし、彼らの虚構に満ちた儚さを書くために方向を転換したのではないかと思ってしまいます。秀作です! | ||||
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