匿名原稿
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国内での評価や知名度は低いが、この作家のジョン・タナーシリーズは読んでおいて損はない。 この匿名原稿は、そのシリーズの中でも高評価を得ているが、実際に読むとその面白さはかなりのモノ。 ぜひ手に取って欲しい作品です。 タイトルの匿名原稿という意味が、何を暗示しているかがよくわかります。 このシリーズ、全てKindleで出て欲しいのですがねえ、、、、日本語版はないし、そもそもシリーズのほとんどが絶版です。早川さん、残念です。 | ||||
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少年だったはるか古代にちょっとクリスティ、クイーン、ヴァン・ダインといった古典中の古典だけ、一通り通過して、その後30年、まったくミステリを読まず、なので色々とお約束というかジャンルとしての文法というか、お作法も分かっていないニワカです。 この小説はハードボイルドですが、斯界の古典、ハメットもチャンドラーも未読…すいません。 なのでたぶんトンチキな感想になりますがあらかじめご了承を。 「うおお都市の中で一匹狼。それにしては内面は饒舌だなあ。孤独なくせに言語能力は異様に発達してて説明も描写も申し分ないわ。それにしてもこの人の問題は孤独であることではないかしら」などと頼まれてもいない主人公のカウンセリングをしながら読み進めました。 パトロン(で社長夫人)に支えられて気息奄々の弱小出版社に、未完の傑作サスペンス小説の原稿が持ち込まれたのでさっそく出版したい、がしかし作者不明で、内容は実話を小説仕立てにしたらしく…というもので、その原稿の展開を見ると、結末では懲役刑に落とし込まれた主人公が復讐を示唆するもので、これが現実になったら?あるいはこれはただの小説なのか?またこの未知の大型新人は誰なのか? のんびり「なんだ作者探しか。なら余りハラハラせずに済みそうだ」と思いつつ謎解きを楽しんでいたらラスト⅓で物語は急激に深刻になり、おやおやこれはという展開へ。 刊行後30年が経過。 歴代レビュアー様の感想を見ると、①傑作②駄作と両極端な評価になっていて、読了した筆者としてはどちらともつきかねた。 結論・刊行された1991年の時代背景を映した現代小説として読んだ方が良いのではないかしら。 これだと②駄作説に一票のようですが、筆者はまじめにこのミステリの謎解き部分は理解できなかったので、小説としては普通小説として読んでしまったからですが。 ①この未知の原稿の作者は誰か②この実話小説のモデルとなった人物が体験した事件の真相とはどういう物だったのか③モデルになった人物とはどんな人間だったのかといった謎々部分は、ミステリには関心がない(すいません)筆者にはスッキリ納得とはいかない部分もありました。 筒井康隆「乱調文学大辞典」で「詭弁=ミステリの最後10ページ」と痛快な定義がありましたが、正直展開の中では伏せられ、見えにくくヒントだけ出ていた事実を読み取る力に乏しい筆者はラストでも全部納得し、理解したとは思ってません(しかしそれは筆者の知能の問題として片づけてよろしい) A モデルとなった事実と小説のズレ B 現実に起きた事件とその展開の唐突さ …は「きちんと公開された小説の展開のなかで説明しつくされているとは言えないのではないの?」という疑問は正直あります。 しかし、その不審さはともかく、この作品の肝にあるのは ア 白豪主義的な保守派の私立進学校による、大学受験と名門校合格率(ネタバレ回避のためここまで) イ 1990年時点での白人至上主義の性格 ウ 1990年、白人の進学校でもかなわないほど分厚い層を形成しはじめたアジア系の学生の増加(→ハーバードやプリンストンにアジア系学生が大量に入学し、成績はほとんど満点でないと入学できないという状態が現れる) …といった時代の風がこの作品にある陰謀だの犯罪だのを起こさせている時代変化を示しており、ソ連の崩壊した1991年に原著は刊行されているが、サンフランシスコを舞台とするこの小説はそうした国際政治よりもアメリカの国内事情に集中し、第二次大戦以来45年の宿敵ソ連など、そもそも存在しているのかどうか不明なぐらいで、これ一作からこの時代を見ると、この小説の「世間」はじつは狭い。 …と、ミステリを読み解く知能が低い筆者、ミステリとかサスペンスとかハードボイルドというよりも、1990年前後のアメリカの社会事情を投影する現代アメリカ小説として読み、そしてそう見ると、なかなか(ミステリとしての完全性には今一つ疑問は残るものの)味わい深い小説でした。 主人公の文学趣味は好い面で世界の見方に味つけをしてましたし、結末1ページの「関係者のその後」はその文学趣味での描写で爆笑しながら読み終えました。 この私立探偵ジョン・タナ―シリーズ、14作あり全て訳されているのですが、刊行はその名も高き早川・ポケット・ミステリで、そこからハヤカワミステリ文庫になっているのは2作のみ。ということは文庫化されないポケミスって多いんですね(という知識レベルの通りすがりです)しかし、この作品は文庫化されているので、シリーズではやはり出色の出来ではないかと思います。刊行当時1993年に「マルタの鷹協会」の選定するファルコン賞を受賞しているので、ミステリ界ではそれなりに評価されたと思います。 30年と言えば同じ早川書房から出ている栗本薫「グイン・サーガ」が刊行され続けた時間でもあり、つまりはある程度、時間による評価も確定し、その目で見ると、「けっこう真相は悲惨なところもあるけど、ユーモラスに人生を見る目もある(そういう描写がハードボイルドなのか?)現代小説、というか当時小説という感じのまあまあ面白い小説」…。 以上、30年後の感想でした。 | ||||
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私立探偵の元に謎の原稿を調べてほしいという依頼がきて・・・というお話。 謎の原稿が現れてしかも傑作で・・・というネタ自体はあまり目新しくありませんが、調査を進める内に複雑な人間関係や事件が明るみになり、最終的に始めに思いもよらない結末に至る・・・というプロットはよく出来ていて感心させられました。60年代から90年代まで続いたネオ・ハードボイルドの到達点と言っても過言ではない複雑に練られたお話に唸ります。興を削ぐとまずいのであまり詳しく書きませんが、ネタも社会派系の物が多く、現代性も申し分なく、傑作と言っても嘘にならない完成度だと思います。 この後の私立探偵小説やハードボイルド、クライム・ノヴェルが技巧的に進化するよりも小説として深化する事を考えると、このジャンルでのこの作品は異色作とも思えますが、単純によく出来ていて面白いので今現在でも評価すべきだと思います。 出版ネタの小説という事でアメリカ出版界の内実等がトリヴィアっぽく色々出てくるのも楽しく読めました。いつもはフリクションで気になった所にチェックしておりますが、本書の場合は多すぎるのでしませんでした。それぐらい色々な情報が散りばめられていて楽しめる作品になっております。 こういう作中作のある作品が好きなかたにはマクドナルド・ハリス「ヘミングウェイのスーツケース」をお勧めしておきます。行方不明になっていたヘミングウェイの原稿が出てくるという真贋ネタの話ですが、中で出てくる作中作の完成度が凄く、故瀬戸川猛資氏によると文体がヘミングウェイに瓜二つでよくここまで真似できるなと感心してしまう、というフェイク小説の傑作であります。 ネオ・ハードボイルドのある種到達点と言えるミステリ。是非ご一読を。 | ||||
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『このミステリーがすごい!』で3位など、日本では非常に高評価を受けていた作品なので期待して読んだのですが……。 まず主人公タナーの設定に不満を覚えました。聞き込みの相手に軽口を叩いてすぐに怒らせるのは、ハードボイルドの探偵にはありがちなので、まあ見逃してもいいですけど、それについて後悔してる姿ってのは、どうも頂けません。しかも何度も同じ事を繰り返しているのですから、タナーってば学習能力なさすぎ! とてもあらすじ紹介に謳われているような「知性派探偵」とは思えません。 匿名原稿を書いたのは誰か、という謎はとても魅力的なのですが、その割にその捜査行はあまりわくわくさせられません(退屈はしませんでしたが)。ページを費やした割には、たどり着いた真相も小粒な感じがしますし、伏線も十分に張られているとは思えません。 加えて訳文がひどい。全然日本語の文脈になっておらず、まるで中学生が訳した文章のようです。J・カーリイの『百番目の男』の訳者もそうですが、英語を勉強するより前に、まず日本語を勉強し直していただきたい。上田公子さんや芹澤恵さん、高見浩さんなど、名人の素晴らしい翻訳技術も見習ってほしいものです。 | ||||
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私立探偵ジョン・タナー・シリーズはすでに20年以上書き続けられている長寿シリーズで、各作品とも地味ながらなかなか読ませます。特に、この7作目の「匿名原稿」は、シリーズ中、傑作の呼び声の高い作品。タナーは友人の出版社社長から、ある日突然届けられた謎の小説の作者探しを依頼されます。いつもにまして細部に至るまでじっくりと書き込まれていて、読み応え十分。先の読めないストーリー展開も◎です。特に謎が次々と明らかになっていく終盤あたりは「おおっ!」とおもわず声がでてしまう面白さ。ロス・マク風のじっくり描写とクイーン風のひねりの利いたストーリーの両方が楽しめるお薦めの小説です。 | ||||
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