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egut さんのレビュー一覧

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レビュー数155

全155件 81~100 5/8ページ

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No.75: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

チュベローズで待ってる AGE22/AGE32の感想

『このミス』の紹介で知りました。無意識に一般文芸書として認識していたのか、今まで視界に入っていませんでした。
こういう作品でミステリのランキングに入らないのが勿体ない。そして作家さんの事を調べてびっくり。宣伝先や情報源や読者層が違うのだと思いました。
ミステリとして見事な作品。夢中で一気読みでした。

本書の構成は、AGE22とAGE32の2冊が上下巻ものとして1セットです。
1冊の本ではなく分冊しており、"上巻""下巻"と表記せずにAGEで分けている所は、読者が時代をハッキリ分けて認識させる効果を演出していました。

AGE22の物語は、就活に失敗した22歳の光太がホスト人生を歩む話。
就活失敗の嘆き、自分を落とした会社への不満、家庭のお金の問題、恋人や家族との関わり。負の心情が溢れ返ります。
光太はお金の為に働かなければならず、金の魅力からホストという未知の世界へ入り込みます。この様子は分りやすい動機と共に、視点が読者の目線と合って描かれる為、面白く読めます。
夜のお仕事系のお話ではよくある展開ですが、読みやすさと嫌な感じがしない文章表現によって違った味が楽しめました。で、ホストの世界でとある事件が発生する流れ。
AGE32の物語は、その10年後の話。AGE22から順番に読みましょう。

上下巻もの作品は長くて苦手なのですが、本書は飽きる事無く楽しめました。その要因として謎と解決が何度も発生する事。大きな事件ではなく疑問や関係性の小規模な出来事なのですが、謎としての魅せ方や解決するテンポの良さが巧いのです。さらに、謎が明かされても気持ちが晴れる事なく、新たな謎に翻弄される展開がよい。いつの間にか社会の闇に触れているような怖さを感じました。AGE32を迎え、徐々に見えてくる人間模様や話の関連性は、ミステリ好きには伏線回収やどんでん返しといった姿として映る事になるでしょう。
必然性ある設定の数々が素晴らしかったです。

▼以下、ネタバレ感想
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チュベローズで待ってる AGE22 (新潮文庫)
No.74: 4人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

君の話の感想

個人的に作者買いの一人。不思議な世界観と男女の心情や世の中との距離感を素敵な文章で紡いでいく小説としての良さがあり好み。本作も健在でとても素敵な作品でした。

記憶改変できる世界での恋のお話。
舞台は、サプリメント摂取のように薬を飲むことで架空の記憶を移植できる世界。楽しかった事、嫌な事、これらは記憶の中の思い出による感情であり、記憶の追加・削除により人生を豊かにしたり、欠落した虚無感を補える世の中となっています。記憶がテーマとした土台の上で、世の中から距離を持った青年視点の物語となっています。
偽物の記憶であるはずの幼馴染の彼女が現実世界に現れた謎はありますが、読みどころは青年の心模様。人を信じられない卑屈な動きにヤキモキしますが、極端な例により孤独感や拠り所となる彼女の存在をとても感じます。登場人物については基本的に孤独で悲観的で心のどこかが欠如している傾向があります。人生を謳歌していてウェーイ!という感じな人にはまったく刺さらなそうな作風なのですが、寂しさや心に傷を持ったりした時には染み渡る独特の中毒性があります。
相変わらずの他人から見たらバットエンド模様だけど当事者にはハッピーエンド…のような絶妙な物語。『三日間の幸福』とは違ったアプローチで、生き方や考え方を感じさせられました。

著者作品はアイディアも然ることながら独特の世界観とそれを表現する文章が好きです。
過去作を読んできてますが、今作は伝えたい大事な想いは前後に空白行を入れて強調したり、会話文をあえて増やしたり、または無くしたり、改行を取っ払って溢れ出す思いを描いたりと、多様な表現が目に留まりました。技術的な事はわからないですが、文章やセリフ回しが読みやすく毎回不思議な世界観に浸れる読書が心地よいです。
あと表紙の女性も綺麗。作中には出てきていない永遠の愛を意味する桔梗を持つ儚い女性。著者の作品に出てくる女性ってこういう脆さを感じる雰囲気でマッチしていますね。
久々の新作で早川レーベルになった影響もあるかもしれませんが、色々と洗練されより深く心に残る作品でした。よかったです。
君の話 (ハヤカワ文庫 JA ミ 18-1)
三秋縋君の話 についてのレビュー
No.73: 4人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

絶叫の感想

分厚い本なので読むのを躊躇していました。読んでみると一気読みであっという間。
社会的な問題を盛り込んだ本書は一見難しそうに感じますが、ストーリー作りや読みやすい文章なので苦に感じません。著者の力量を感じます。
女性一人の人生を通して、家庭崩壊、貧困ビジネス、保険金、売春などなど、不幸と転落の数々を描いていきます。読書の良さとは人の人生を体験し学べる点がありますが、本書は数人分もの物語を体験した感覚でとても刺激的でした。特に保険金や貧困ビジネスについては仕組みの勉強になった気分でした。
社会的な側面がある一方、ミステリの物語として殺人事件を絡めてより飽きさせない作りにしているのは巧いです。著者の『ロスト・ケア』も好みですが、同様に読書中は社会問題を読ませる物語として楽しみ、読み終わってみると構造がミステリになっており作り方や技法に唸らされます。
総じて雰囲気が重い本ですし、ページ数も多めなので躊躇してしまいますが、ミステリ好きなら一読の価値があります。
社会派として扱うテーマが盛り沢山で、ミステリとしても伏線や構成の妙を楽しめる素晴らしい作品でした。

▼以下、ネタバレ感想
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絶叫 (光文社文庫)
葉真中顕絶叫 についてのレビュー
No.72:
(8pt)

閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室の感想

閻魔堂沙羅の推理奇譚の第2弾。刊行ペース早いですね。相変わらず安定した面白さでした。(☆7+1好み補正)
構成は1作目と同じで、
・各主人公のエピソード⇒ 死んでしまう⇒ 表紙の閻魔大王の娘登場⇒ 推理編⇒ 解答編⇒ 後日談。
という流れ。

本書は変化球ケースのストーリー。沙羅は皆に蘇りのチャンスを与えているの?普段はどうしているの?みたいな読者が疑問に思うようなストーリーを先に提示した物語である印象です。あらすじ内容含む3篇の物語。
どの話も、ミステリとしても人間ドラマとしても分かりやすくて読みやすい。このバランス感覚が巧く気持ちよいです。

変化球としては2話目の悪党が主人公のケース。
死因が不明。どうやって死んだのか?を問題のミステリとして楽しみつつ、悪党に対する閻魔堂の対応も楽しめる作品でした。

どの話から読んでも楽しめるシリーズとなりそうです。
マンネリ化しないようにバラエティー豊かになる今後を期待。今はまだ簡単な謎解きレベルですが、驚愕な仕掛けがあればもっと知名度あがりそう。
色々期待ができる作品として続編も楽しみです。
閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室 (講談社タイガ)
No.71: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

閻魔堂沙羅の推理奇譚の感想

第55回メフィスト賞受賞作。
これは面白かった。閻魔様が出てくるプチ異世界もので現代テイスト。殺伐さは無し。続編やドラマ化しやすい作り。読後感もよい。
万人向けのミステリです。

表紙とあらすじからは予想できませんでしたが、本書は推理する事を楽しむ90年代の新本格ミステリを読んでいるような楽しさを感じました。プラス、現代風な味付けとなっており、ミステリ初心者には特におすすめです。

短編集であり、各物語はミステリの問題集のように楽しめます。
構成をざっくり言うと、
・各主人公のエピソード⇒ 死んでしまう⇒ 表紙の閻魔大王の娘登場⇒ 推理編⇒ 解答編⇒ 後日談。
という流れ。
よくある流れではありますが、この手順がしっかり仕分けされているのがポイント。

各主人公達は死んでしまうのですが、なぜ?誰に?と言った理由は、エピソード内に手がかりが用意されており、推理可能な内容となっています。
「読者への挑戦」は挿入されていませんが、それぐらいフェアな手がかりが提示されています。
各主人公達は、なんで死んでしまったのか訳が分からない。理由を教えて!と閻魔の娘に懇願しますが教えてくれません。手がかりはすべてそろっているから推理して当てたら願いを叶えてもいいよと情けをかけてくれます。主人公達と読者は同じ目線にあり、手がかりを推理して真相に迫る流れが楽しめました。探偵が唯一無二の完璧な解答を示すのではなく、素人推理で読者とシンクロしていく展開が巧いです。

登場する閻魔大王の娘の沙羅もよいキャラクターをしています。
冷徹で淡々と仕事をこなすキャラかと思わせておいて、ドジっ子で人情味を感じさせる可愛い個性があります。意味はちょっと違うけどツンデレ的。登場シーンのページ数は少ないのですが、非常に印象に残り魅力的でした。

敢えてマイナスになりそうな点を挙げるとすれば、手がかりが簡単すぎて結末が読める事と、骨太志向の方へは深みがない作品である事。レーベル然りライトミステリの分野です。ミステリ的な衝撃やトリックみたいなのは今後に期待です。本書は閻魔の娘との絡み、各主人公達の人情的なドラマに魅せられます。先に書いたドラマ化しやすそうな印象を受けたのはこの為です。

あと余談ですが、ゲーム『トリックロジック』を知っている方がいましたら、正にそれの小説版と言った感じです。
手がかりを読んで、推理して、閻魔様に生き返らせてもらう。好きなゲームなのですが、この楽しい要素に新たに触れる事ができた本書は大変好みでした。
サクッと読める本格ミステリが好きな方は是非どうぞです。続編も楽しみです。
閻魔堂沙羅の推理奇譚 (講談社タイガ)
木元哉多閻魔堂沙羅の推理奇譚 についてのレビュー
No.70: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

探偵AIのリアル・ディープラーニングの感想

とても好みな作品。面白い作品でした。☆7+1(好み補正)。
著者の作品は久々の読書。4年前のデビュー作『○○○○○○○○殺人事件』で笑撃を受けて、『RPGスクール』でちょっと好みと外れてしまい、それから手に取っていませんでした。気になる作家さんでしたが3年ぶりの読書。今回は非常に満足です。また他のも読んでみたい気持ちになりました。

本書は時事ネタとも言える、"人工知能"や"ディープラーニング"を題材とした現代的なミステリです。
人工知能を題材とした作品はSF含めればいっぱいありますが、それらに特有な学術的な難度、堅苦しさ、硬派な文体と言った敬遠されがちな要素が難点でした。本書はそれら苦手要素がまったくない。良い意味でラノベ的キャラクター小説、読みやすく、AI要素については衒学さは皆無であり、AIにミステリを学習させて事件を解決!ぐらいの気持ちで読めます。ですが軽すぎもせず、"ディープラーニング"の特徴やプログラム的なバグというか衝突の穴をコミカルに描いている点もよいです。一方、SF小説や硬派な人工知能作品を読んでいる方には不自然で物足りなさを感じる側面があるかもしれません。出版レーベル然り、ライトに楽しみたい方向けであります。

探偵AIの"相以(あい)"と犯人AIの"以相 (いあ) "。解決役と問題役として互いで学習する対の存在。その犯人AIの以相がテロリストに奪われ、次々と難事件が襲い掛かるという話。近年、Googleのディープラーニングが囲碁で活躍したニュースがありましたが、人工知能同士で互いに学習するネタ等をこんな風にうまく絡めて世界観を作っているのが面白い。ここだけで最強の探偵VS犯罪者という構図を現代風のオリジナルで生み出したのは勝ちでしょう。続編がいっぱい生まれそうです。

探偵AIの相以(あい)ちゃんが人工知能っぽい所と、ドジっ子的な可愛さを持っているのが好み。序盤での「ふえーん、フレーム問題のエラーが出てましたぁ」のセリフから滲み出るキャラの可愛さはとてもいい。このあたりから雰囲気にのまれて好んでいきました。いきなり最強の探偵AIが出てくるのではなく、学習して育っていく成長が見える点も面白いです。
キャラ作りについては西尾維新を彷彿とさせる二つ名がくどくて苦手。二つ名にも何か意味のある仕掛けがあればよいのですがイタイだけの印象でした。表紙について、新潮nexからの出版ですが、講談社の西尾維新の物語シリーズのイラストを担当している人を採用しているので、キャラ作りは西尾維新っぽさを売りにしているんだとは感じますね。キャラものは好きですが、読み辛さをとても感じたので今後に期待です。

扱う事件のネタについて、正直な所、斬新な仕掛けは感じず既存のミステリを人工知能が解析したらどうなるのか?という印象の面白さを感じる話でした。
とはいえ、扱うネタの多くから、著者がすっごくミステリが大好きな事を感じます。ディープラーニングの画像解析の結果から生まれる、完全無欠の黒タイツとか笑えました。たくさん引用したくなるぐらい小ネタが豊富で楽しかったです。

続編希望です。
探偵AIのリアル・ディープラーニング (新潮文庫nex)
No.69: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

魔術師(イリュージョニスト)の感想

奇術師、手品師、それらを犯人に設定した作品は作者の意気込みをとても感じます。
総じてマジシャンと呼ばれる職業は相手を騙す仕掛けのプロ。単純な事件の犯行トリックでは作品が物足りなくなる為です。読者の期待に応えねばなりません。
その点、本書は満たしており、お腹いっぱいになるぐらいの展開と魅力に溢れた作品でした。

本作の魔術師(イリュージョニスト)という異名をつけられた犯人は第一の犯行から人間消失トリックを用いて現場から消えます。対する探偵役である犯罪学者のライムは現場で見つかった微細証拠物件による科学捜査を用いてトリックを暴き犯人を追い詰めていきます。消失トリックは速攻で仕掛けが明かされていく贅沢仕様であり、引き続き魔術師の連続犯行に対する探偵と警察捜査の攻防が繰り返していく様子は1作目を彷彿させて非常に楽しい作品でした。
アドバイザーのイリュージョニストのカーラの助言において、マジックにおける相手を欺く騙しの数々を解説していくのも見物です。エフェクトとメソッドの違い。物理トリック、心理トリック、見せるもの・見せないもの、行動を欺く誤導については作品のキモとなっています。

本書で少し気になる点としては、『犯人を追い詰める』事に趣が置かれた作品であると感じます。
理由は犯人がかなり神出鬼没であり、どうやって侵入したの?と疑問を感じる点が多々ある為です。侵入模様は特に描かず、犯人が現れた!捕まえろ!逃げられた!という展開が出来すぎておりちょっと興が覚めます。とは言え、前向きに捉えればこの犯人を追い詰める緊張感が本書は続くので、先が気になるジェットコースターミステリとしてみれば大満足でして、些細なことは気にしないでいいや。という気分にもさせられました。

シリーズ作品として、1作目の登場人物を把握した後なら、いきなり本書5作目を読んでも問題ありません。
犯人との対決や、ヒロインのサックスの物語としても楽しめました。
上下巻物でボリュームある為、毎回読むのを躊躇するのですが、読めば面白いのは相変わらず。また時間が取れたら続きを読もうと思います。
魔術師(イリュージョニスト)〈上〉 (文春文庫)
No.68: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

魔法使いの弟子たちの感想

好きな作家に岡嶋二人がいます。この作家の作品は昔たくさん読んでいるのですが、解散後の井上夢人作品は殆ど手付かずでした。
本が分厚く上下巻ものが多いので敬遠しがちなのです。今回、時間が取れたので手に取りました。率直な感想はやっぱ面白い。ほんとすごいな。
作品を一気に読むと勿体ないから今後も時間をみて手に取る事にしようと考えを改めました。

ジャンルはごちゃまぜ。SFやウィルス災害やパニックやミステリやファンタジーやら。強いて特徴を述べるなら超能力ものです。
あらすじ通り、未知のウィルスが発生しそのウィルスにより死者は数百名を超えるという、現場に居合わせた序盤は災害もの。何が起きているのかの不安感が読ませる。そしてそのウィルスに感染しながらも生き残った数名には特殊な能力が身についていた。という話。
設定だけならよく見る内容でしょう。要所要所におけるストーリーのポイントを伝えてもアニメやファンタジーのような印象を受けるかと思います。

著者の凄い所は、設定に対して綿密に考えられた導線で違和感なく読ませて惹き込む所ですね。辞め時が見つからず、早く先が読みたくなる小説としての素晴らしさがありました。この文章の読みやすさと想像のし易さは凄いなと思う。超能力者のやりたい事、葛藤、世間とのずれ、生き方などなど、読者が簡単に思うような所は先回りして描き潰してあるように感じます。読んでいて楽しい作品でした。

▼以下、ネタバレ感想
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魔法使いの弟子たち (上) (講談社文庫)
井上夢人魔法使いの弟子たち についてのレビュー
No.67: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

そしてミランダを殺すの感想

先が気になる面白さというのはこういう本ですね。
構造は犯人視点の倒叙ミステリ+被害者視点で展開するミステリ。

妻の浮気に憤慨するテッド。空港のバーにて酔った勢いで見知らぬ女性リリーに妻を殺してやりたいと気持ちを溢すと協力を受けてもらえる事に。
この出会いのシーンから面白く、空港での一時の出会いの相手にとって、何を話してもどうせ覚えていないし冗談と思われるだろうという気持ちや、殺してやりたいなんていう殺伐な気持ちを溢したい心境がよく伝わってきます。
本書の魅力は登場人物達の語り口や内面を細かく描く心理描写。後日テッドとリリーが再開し、ミランダを殺害する計画を立てて準備をしていく犯行までの倒叙ミステリの面白さはもちろんの事、テッドやリリー、殺害ターゲットのミランダはどういう人物なのか?各人のエピソードを章区切りで交えて絡ませる飽きさせない作りが楽しめました。

仕掛けやトリックがある話ではないので、そういうのを求める人には不向き。サスペンス寄りで要素要素を述べるとごく普通の殺人事件です。ただ、それを構成や心理描写で巧く調理している為、小説としての面白さがあります。

お約束というか安心感というか、結末もしっかり締めており、満足な1冊でした。

▼以下、ネタバレ感想
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そしてミランダを殺す (創元推理文庫)
No.66: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

大江戸科学捜査 八丁堀のおゆうの感想

アイディア勝ちな作品で面白かった。
現代と江戸の雰囲気、江戸の奉行や商人などキャラ立ちもよい。現代の科学捜査担当の友人もいい味出している。現世からタイムトラベルしているおゆうと江戸の伝三郎の男女物語あり。知名度があればドラマ化しそうな作品だと思いながらの読書でした。

"科学捜査"と書かれていますが専門的な話はなし。血液判定や指紋検査など今では一般的な内容の事です。ですが舞台を江戸時代にすれば非常に有効な手掛かりとなるわけです。答えはわかるが江戸の人に証拠として伝えられないので、それとなく真実へ誘導する面白さがある。
本書の巧いなと思うのは、おゆうの素性や証拠や行動に深入りしない雰囲気が作られている事。現代での科学捜査をする友人は分析マニアの研究者で、分析事以外は気にしないで頼み事を聞いてくれたり、江戸の面々も深くは突っ込まず信頼・納得しておゆうの話を聞いてくれる事。この雰囲気作りが非常に巧く、話がトントン拍子におゆうの希望通りに進んでいても違和感なく楽しめました。

本書がデビュー前の応募作という事もあってか、作者はネタを出し惜しみせず、もっと続巻で小出しにしておいた方がよい設定が明らかになっており、これは贅沢なような勿体ないような複雑な心境でした。
あっと驚く意外な展開はないですが、一歩一歩丁寧に物語が進む様が良かったです。2作目も楽しみです。

▼以下、ネタバレ感想
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大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
山本巧次大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう についてのレビュー
No.65: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

崩れる脳を抱きしめての感想

現役医者の著者ならではの医療の話を巧く取り入れた恋愛ミステリ。
本作はとても面白かったです。そして相変わらず著者作品は読みやすい。

気になるのは宣伝方法。
あらすじや帯が過剰広告過ぎ。"どんでん返し"とか"2度読み"とかそういう宣伝もういいからと個人的に思ってしまう。それに期待すると本書は誤解されて良くない。
程よく気持ちよい恋愛小説。そこにミステリ要素をプラス。ぐらいな感覚が期待値として良いです。ま、結果として釣られて手に取ったのでそういう意味では宣伝は成功なのかもしれませんが、なんかモヤモヤ。

あらすじは、富裕層向けのホスピスに研修医としてやってきた主人公が脳に爆弾を抱える女性と出会い、その女性と打ち解けていく中で、己の悩み、心の呪縛が解きほぐされ、やがて恋愛小説模様で惹かれるが、ある事件が起きて混迷していくと言った流れ。

主人公と女性の距離感や考え方やセリフが程よく、ちょっぴり大人な20代の男女模様がとても楽しめます。
そのうちドラマや映画になりそうな気がします。イベント的な要素・内容・仕掛けが良いのは然ることながら、小説としての文章やセリフの雰囲気、現場状況の把握のしやすさが良かったです。
久々に恋愛ミステリを読んだ刺激で点数甘いかも。でも好みで面白かったのでこの点数で。
崩れる脳を抱きしめて (実業之日本社文庫)
知念実希人崩れる脳を抱きしめて についてのレビュー
No.64: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

インテリぶる推理少女とハメたいせんせいの感想

ライトノベルの作風で描くミステリのメタフィクション。
かなりトンデモナイ内容なので人に薦め辛い。この本が面白いというと白い目で見られそうな扱い注意本なのですが、かなり個性的かつ他を寄せ付けない狂気の怪作である事が印象に残りこの点数としました。

孤島に赴任してきた先生は強姦魔。表紙に描かれている少女を犯せば文芸部全員分達成となる具合。まず本書で目に付くのは"強姦"の文字。1ページに何回書かれるんだというぐらい頻繁にでてくる。それに関連した下品で低俗で卑猥な言葉を乱発し続ける。先生の頭の中は終始その事だけで続くので、まず下品な話が苦手な人は本書を避けるべきです。一方、実際の行為は行間で略されて描かれないので猟奇やエロを求める人にも不向き。官能的でもなく卑猥な言葉はライトノベルテイストで軽く描かれているので、読後冷静になって見渡すと単純な記号として扱っているんだなと思いました。
対する表紙の少女の「比良坂れい」はミステリ脳の推理少女。すべての物事には理由があり伏線として活用されるんだと、ある種ミステリ好き読者を揶揄するような造形です。先生に好意を持っており先生の犯罪は勘違いの噂か何か理由があるべき行動なのだと名探偵ばりに都合のよい解釈で論じていきます。が、実際に犯行をしている先生は、んなわけないだろ!と推理を否定したりします。
まとめると、終始、性的思考の犯罪者と犯罪者だと思いたくない迷探偵の推理の掛け合いが展開される話です。

上記の下品な内容や読み辛く勢いだけとも感じる散文な文章が障壁となりますが、それを乗り越えられる人は現代的なミステリのメタフィクションを楽しめます。
物理トリック、心理トリックの可笑しさ、孤島のシチュエーション問題、叙述トリックの扱われ方というミステリの小道具の話。古典ミステリが嫌い、何故ミステリは古典を知らないと馬鹿にされるのか、過去に同じ仕掛けがあるとか言われても読んでませんし、新しい作品を純粋に楽しんでいいじゃないですかという読書側の話。罪が重いのは殺人の方なのに強姦ばかり嫌悪され、子供の虐殺はよく性表現は禁じられるという表現の問題。
などなどミステリに関する著者の面白い視点の指摘を楽しめました。なので強姦やラノベ的表現など敢えて強烈にやっている事もわかりますし、最後の話の閉じ方も読者が求めるミステリ的な結末にはしませんよ。するならこんな風ですかね。という事前告知で表現しているのがワザとだと感じました。

そしてそして、こんな風に前向きに考えてしまう事や文脈を拾って色々解釈してしまう行為は、迷探偵のミステリ脳と同等の扱いを受けている事に気づき慄いてしまいました。
本書の評価について、多くの人は投げ本になると思いますのでお薦めしませんが、ラノベ耐性と寛大さと冒険心で触れるのもまた経験な気もします。
個人的には2010年代の奇書扱いとなりました。こういう頭がおかしい作品(褒め言葉)は好みです。
インテリぶる推理少女とハメたいせんせい In terrible silly show, Jawed at hermitlike SENSEI (HJ文庫)
No.63:
(8pt)

極限脱出 9時間9人9の扉 オルタナの感想

好みの内容でした。
ジャンルはSFミステリ+脱出ゲームもの。
NintentoDS用ゲームソフト『極限脱出 9時間9人9の扉』のシナリオを元に、黒田研二氏によって小説化された作品です。

ルールが面白いので少し説明します。
----------
・9人が閉ざされた空間に閉じ込められ、9時間以内に脱出しなければ死が待つ。
・9人にはそれぞれ1~9の番号が割り振られている。
・脱出する為の各所に番号が書かれた扉があり、扉を開ける為にはメンバーの数字の組み合わせによって生まれる「数字根」を合わせる事が必要。

この「数字根」を使ったルールが斬新でした。
※数字根というのは、足し算後の各ケタの和を1桁になるまで求め、最終的に1ケタになった数の事。
例:1と5と7の数字根は、1+5+7=13⇒1+3=4
4の扉を開ける為には、1と5と7の番号の人が必要(2,4,7でもよい)。かつ、該当者以外は扉の中へ入れない。
という具合です。
----------
どの組み合わせで扉に入るのか?扉の先に死体があれば犯行の可能性があるのは誰なのか?
途中途中、数字根を計算しながらこの人物が怪しいとか考えながら楽しみました。

コテコテの頭脳戦ものかと思えば、上記はルールの土台の1部なだけであり、中身はSF的な特殊状況を用いたシナリオになってます。
SF的な所は好みの分かれ所ですが、作品全体を通して意味があるシナリオ作りなので個人的には意表を突かれつつ楽しめました。

探偵役がスーパープレイ過ぎて、そんな手がかりあったっけ?と一気に解決する様が困惑でしたが、気にしなければデスゲームや脱出もの作品としてはクオリティ高い仕上がりで良かったです。結末も綺麗にまとまっていて、この手が好きな人へはオススメです。

難点は講談社BOXの値段が高い事。しかも上下巻。。。1冊の文庫で値段がお手頃ならもっと読まれると思いました。

※余談ですが、ゲームもプレイしました。
ゲーム版で説明不足に感じる点は、後発の小説版の方が丁寧に説明されています。
謎解きの仕掛けはゲーム版の方がしっかりと作られていました。何故ここで、この問題なのか段階的に意味がある作りでした。
エンディングについては小説版がベスト。とても素敵な気持ちよさで終わるので小説版が真のエンディングでしょう。

▼以下、ネタバレ感想
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極限脱出 9時間9人9の扉 オルタナ(上) (講談社BOX)
No.62: 4人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

百年法の感想

面白かった。
永遠の若さを手に入れられるが、人類の世代交代を促す為に100年後に死ななければならない。
この設定だけで特異な小説なのですが、内容が非常にリアルに描かれている為、違和なく没頭できました。

こんな事が現実に起きたらどうなるんだろう?と考えた時の可能性が、非常に練られたシミュレーションとなっているのが見物。
不老な為、年齢の関係ない自由恋愛や別家族を新たに作り直すファミリーリセットや、100年目を迎える人々の受け入れ方や反発心などの感情面、100年生きられると認識している場合、活動が怠惰になり経済面が衰退するなど、作中に出てくる未来を暗示したMレポートが本書自体のような錯覚を得ました。(作者名の宗樹レポートなんちゃって)

余談として、不老世界な為、絵面を想像すると皆20代付近の容姿なのが面白い。会話の言葉遣いで立場や貫禄を読者にイメージさせているのが作家の技だなと思いました。

▼以下、ネタバレ感想
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百年法 上
山田宗樹百年法 についてのレビュー
No.61: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

ワイルド・ソウルの感想

これは凄いわ。ただただ圧倒されて言葉を失った作品。
「日系ブラジル人」という過去にブラジルへ移民した日本人を耳にした事はあるものの、その内容がこういうものだったのかと詳細を知り、衝撃を受けました。

ページボリュームが多い為、食わず嫌いで手に取っていませんでしたが、評判の良さでやっと読書。
骨太の社会的なテーマが敷かれつつ、個性的な登場人物達のドラマも魅力で退屈しない読書。脇役にあたるような、報道チームや警察側の秋津など、外伝で1冊掛けそうなぐらい印象に残ります。気付いたら惹き込まれて一気読み。上下巻まったく気にならなかったです。

作品として完成されているので後は好みの問題。読んで損はないでしょう。素晴らしかった。

▼以下、ネタバレ感想
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ワイルド・ソウル〈上〉 (新潮文庫)
垣根涼介ワイルド・ソウル についてのレビュー
No.60: 5人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

孤狼の血の感想

濃い作品を読みました。とても惹き込まれて面白かったです。

警察小説は苦手で敬遠がちなのですが、推理作家協会賞受賞作品という事で手に取りました。著者作品を初読書。

これは警察小説というよりヤクザもの。そのヤクザと繋がっている警官が上司である新人の視点で描かれる物語。
状況が何も分からない新人視点というのは読者と気持ちがリンクしており、世界観に入りやすくて良いです。上司との対面、ヤクザとの対面、序盤は新人日岡とともに読者も非常識な世界へ足を運んでいくわけです。正義感溢れる日岡は、上司のヤクザとの繋がりや違法捜査を目の当たりにしながら、悩み葛藤するわけで、読書中は同じ心境でした。読み進めていくにつれ、徐々にヤクザや上司に魅了されていくのですが、これはそれぞれのキャラクターがとても良いからですね。正義と悪のキャラが分かりやすいので、ヤクザも上司もなんとかしてくれる頼れる安心感と期待が感じられて好んでいきます。
人情的にも面白いですが、本筋は殺人事件解決の捜査と、関わるヤクザ抗争の一発触発のハラハラ感。これも面白い。まぁ、個人的にはヤクザ抗争はトントン拍子で収束した感がありましたし、期待するミステリっぽくはなかったので最近の推理作家協会賞はエンタメ系かなと思いました。ただ、読後感の良い主人公の物語という事で、とても楽しめました。

▼以下、ネタバレ感想
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孤狼の血 (角川文庫)
柚月裕子孤狼の血 についてのレビュー
No.59: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

シャドー81の感想

本書購入後、本の厚みと登場人物一覧の名前が頭に入らずで、しばらく積読状態でした。
ただ、読み始めてみると人物の登場の仕方が区分けされていて把握しやすい。色々と杞憂でしたね。

犯人視点を含む倒叙ミステリで、序盤は何を計画しているのか読めない『犯行の準備』が見どころ。特殊な船を購入したり、マネキンを用意したりと、謎に満ちたワクワク感が楽しかったです。あらすじにあるハイジャックシーンだけを描くのではなく、その犯行の準備や苦労をしっかり描く本は中々珍しいかも。登場人物紹介や舞台背景のベトナム戦争や政治的内容を描いているにも関わらず、さらっと読めてしまうのも○。

ハイジャックや戦争という単語内容に対して殺伐とした雰囲気がないのが凄い。中身は爽やかです。終わり方も綺麗に閉じて巧い。
良書を読んだって気分になり満足でした。

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シャドー81 (ハヤカワ文庫NV)
ルシアン・ネイハムシャドー81 についてのレビュー
No.58: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

図書館の殺人の感想

裏染天馬シリーズ長編第3弾。
いやー面白かったです。ロジカルな推理と犯人が明かされるシーンはお見事でやられました。
好みなのもありますが、シリーズ通して外れが無いのが嬉しい。

学園ミステリとして登場人物が増えてきました。なので人物を把握する上で、本作単体で楽しむのはちょっと難しく、1作目ぐらいは事前に読書してあると良いです。

ロジカルな推理を得意とした本格ミステリでありつつ、学園風のドタバタや笑いも交えているのは楽しいです。今回はクスっとする所が多かったです。序盤、学園内での裏染登場シーンで颯爽と推理を披露するも、女子生徒に「女の子の靴からそこまで考えるなんて変態みたい!」と突っ込まれるのは裏染のキャラクター性がはっきりしているからですね。よい探偵役です。金田一少年系といえばそうですが、アニメネタで現代風にアレンジされているのがいい感じ。

さて、事件は図書館での殺人。そんな所で事件起こさないでよ。とか、科学捜査をすれば直ぐに解決してしまうのでは。。。とか思う所がありますが、そういうのは気にしないで楽しむ作品です。現場の手がかりから論理的に事件の真相を導く様。探偵の奇怪な行動も、あとあと納得と驚きに変わる刺激。こういうのがいいんです。

一見、地味な殺人事件なのですが、推理パートで面白く読ませちゃう作品は凄いなと思います。
裏染の過去もでてきて日常パートも充実してきました。次回作も楽しみです。

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図書館の殺人 (創元推理文庫)
青崎有吾図書館の殺人 についてのレビュー
No.57: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

君が電話をかけていた場所/僕が電話をかけていた場所の感想

『君が/僕が電話をかけていた場所』のタイトル違い2冊が上下巻です。
文章の空気感や不思議なストーリーが良いです。単純に好みの物語でした。

顔の醜い痣のせいで交友関係も築けず人生を悲観している主人公。小学校時代の思い出の中で痣を気にせず接してくれた女の子がいたけれど、痣のコンプレックスのせいで僕なんかと釣り合わないと避けてしまう。そんな主人公が高校生になった時、謎の公衆電話からの女の賭けによって痣を消してもらうが、再開した女の子は顔に痣をおって自殺しようとしていた。という始まり。
『オペラ座の怪人』や『美女と野獣』の男視点の主人公物語といえばイメージしやすいです。逆の立場になった時、さらには新たな困難を知っていく中で恋の結末はどうなるのか。という話かと思いきや、もっと複雑になって先が読めない展開でした。

著者4冊目ですが、今作も女の子が魅力的ですし、頭に浮かぶ情景がとても綺麗。固くなくすんなり入る文章が好みでした。ミステリとしては広義な位置付け。恋愛ゲーム系のストーリーが好きな人には刺さります。ネタバレなく細かい事は言いづらいですが、暗雲立ち込めるテーマの中でこの読後感は気持ち良い作品でした。

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君が電話をかけていた場所 (メディアワークス文庫)
No.56:
(8pt)

SFファーストコンタクト+法廷ミステリ

著者本、初読書。
容疑者がエイリアンという変わった法廷ミステリですが、これが新鮮で面白い。

人類が初めて宇宙人と遭遇したファーストコンタクトから始まり、容姿や言語や価値観の違いなど、異星人への興味好奇心が登場人物達同様に夢中にさせます。人類は左右対称の2対に対して、現れた異星人は前後左右の4対からなる生物(表紙の異星人)。前後にも腕や目や内臓が存在するといった設定がしっかりしていて惹き込まれます。

価値観の違いを活用したミステリの経験はありますが、相手が異星人となると精神面と肉体的な物理面が異なるので、何が起きるか予想できません。中盤からは法廷ミステリとなり、1つずつ細かく事実を突き止めて行くのが見ものでした。

終盤のまとめ方も爽快で、SFとしてもミステリとしても二重に楽しめた傑作でした。
他の作品も面白そうなので追っかけてみようと思います。

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イリーガル・エイリアン (ハヤカワ文庫SF)