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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数147件
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先が気になる面白さというのはこういう本ですね。
構造は犯人視点の倒叙ミステリ+被害者視点で展開するミステリ。 妻の浮気に憤慨するテッド。空港のバーにて酔った勢いで見知らぬ女性リリーに妻を殺してやりたいと気持ちを溢すと協力を受けてもらえる事に。 この出会いのシーンから面白く、空港での一時の出会いの相手にとって、何を話してもどうせ覚えていないし冗談と思われるだろうという気持ちや、殺してやりたいなんていう殺伐な気持ちを溢したい心境がよく伝わってきます。 本書の魅力は登場人物達の語り口や内面を細かく描く心理描写。後日テッドとリリーが再開し、ミランダを殺害する計画を立てて準備をしていく犯行までの倒叙ミステリの面白さはもちろんの事、テッドやリリー、殺害ターゲットのミランダはどういう人物なのか?各人のエピソードを章区切りで交えて絡ませる飽きさせない作りが楽しめました。 仕掛けやトリックがある話ではないので、そういうのを求める人には不向き。サスペンス寄りで要素要素を述べるとごく普通の殺人事件です。ただ、それを構成や心理描写で巧く調理している為、小説としての面白さがあります。 お約束というか安心感というか、結末もしっかり締めており、満足な1冊でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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アイディア勝ちな作品で面白かった。
現代と江戸の雰囲気、江戸の奉行や商人などキャラ立ちもよい。現代の科学捜査担当の友人もいい味出している。現世からタイムトラベルしているおゆうと江戸の伝三郎の男女物語あり。知名度があればドラマ化しそうな作品だと思いながらの読書でした。 "科学捜査"と書かれていますが専門的な話はなし。血液判定や指紋検査など今では一般的な内容の事です。ですが舞台を江戸時代にすれば非常に有効な手掛かりとなるわけです。答えはわかるが江戸の人に証拠として伝えられないので、それとなく真実へ誘導する面白さがある。 本書の巧いなと思うのは、おゆうの素性や証拠や行動に深入りしない雰囲気が作られている事。現代での科学捜査をする友人は分析マニアの研究者で、分析事以外は気にしないで頼み事を聞いてくれたり、江戸の面々も深くは突っ込まず信頼・納得しておゆうの話を聞いてくれる事。この雰囲気作りが非常に巧く、話がトントン拍子におゆうの希望通りに進んでいても違和感なく楽しめました。 本書がデビュー前の応募作という事もあってか、作者はネタを出し惜しみせず、もっと続巻で小出しにしておいた方がよい設定が明らかになっており、これは贅沢なような勿体ないような複雑な心境でした。 あっと驚く意外な展開はないですが、一歩一歩丁寧に物語が進む様が良かったです。2作目も楽しみです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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現役医者の著者ならではの医療の話を巧く取り入れた恋愛ミステリ。
本作はとても面白かったです。そして相変わらず著者作品は読みやすい。 気になるのは宣伝方法。 あらすじや帯が過剰広告過ぎ。"どんでん返し"とか"2度読み"とかそういう宣伝もういいからと個人的に思ってしまう。それに期待すると本書は誤解されて良くない。 程よく気持ちよい恋愛小説。そこにミステリ要素をプラス。ぐらいな感覚が期待値として良いです。ま、結果として釣られて手に取ったのでそういう意味では宣伝は成功なのかもしれませんが、なんかモヤモヤ。 あらすじは、富裕層向けのホスピスに研修医としてやってきた主人公が脳に爆弾を抱える女性と出会い、その女性と打ち解けていく中で、己の悩み、心の呪縛が解きほぐされ、やがて恋愛小説模様で惹かれるが、ある事件が起きて混迷していくと言った流れ。 主人公と女性の距離感や考え方やセリフが程よく、ちょっぴり大人な20代の男女模様がとても楽しめます。 そのうちドラマや映画になりそうな気がします。イベント的な要素・内容・仕掛けが良いのは然ることながら、小説としての文章やセリフの雰囲気、現場状況の把握のしやすさが良かったです。 久々に恋愛ミステリを読んだ刺激で点数甘いかも。でも好みで面白かったのでこの点数で。 |
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ライトノベルの作風で描くミステリのメタフィクション。
かなりトンデモナイ内容なので人に薦め辛い。この本が面白いというと白い目で見られそうな扱い注意本なのですが、かなり個性的かつ他を寄せ付けない狂気の怪作である事が印象に残りこの点数としました。 孤島に赴任してきた先生は強姦魔。表紙に描かれている少女を犯せば文芸部全員分達成となる具合。まず本書で目に付くのは"強姦"の文字。1ページに何回書かれるんだというぐらい頻繁にでてくる。それに関連した下品で低俗で卑猥な言葉を乱発し続ける。先生の頭の中は終始その事だけで続くので、まず下品な話が苦手な人は本書を避けるべきです。一方、実際の行為は行間で略されて描かれないので猟奇やエロを求める人にも不向き。官能的でもなく卑猥な言葉はライトノベルテイストで軽く描かれているので、読後冷静になって見渡すと単純な記号として扱っているんだなと思いました。 対する表紙の少女の「比良坂れい」はミステリ脳の推理少女。すべての物事には理由があり伏線として活用されるんだと、ある種ミステリ好き読者を揶揄するような造形です。先生に好意を持っており先生の犯罪は勘違いの噂か何か理由があるべき行動なのだと名探偵ばりに都合のよい解釈で論じていきます。が、実際に犯行をしている先生は、んなわけないだろ!と推理を否定したりします。 まとめると、終始、性的思考の犯罪者と犯罪者だと思いたくない迷探偵の推理の掛け合いが展開される話です。 上記の下品な内容や読み辛く勢いだけとも感じる散文な文章が障壁となりますが、それを乗り越えられる人は現代的なミステリのメタフィクションを楽しめます。 物理トリック、心理トリックの可笑しさ、孤島のシチュエーション問題、叙述トリックの扱われ方というミステリの小道具の話。古典ミステリが嫌い、何故ミステリは古典を知らないと馬鹿にされるのか、過去に同じ仕掛けがあるとか言われても読んでませんし、新しい作品を純粋に楽しんでいいじゃないですかという読書側の話。罪が重いのは殺人の方なのに強姦ばかり嫌悪され、子供の虐殺はよく性表現は禁じられるという表現の問題。 などなどミステリに関する著者の面白い視点の指摘を楽しめました。なので強姦やラノベ的表現など敢えて強烈にやっている事もわかりますし、最後の話の閉じ方も読者が求めるミステリ的な結末にはしませんよ。するならこんな風ですかね。という事前告知で表現しているのがワザとだと感じました。 そしてそして、こんな風に前向きに考えてしまう事や文脈を拾って色々解釈してしまう行為は、迷探偵のミステリ脳と同等の扱いを受けている事に気づき慄いてしまいました。 本書の評価について、多くの人は投げ本になると思いますのでお薦めしませんが、ラノベ耐性と寛大さと冒険心で触れるのもまた経験な気もします。 個人的には2010年代の奇書扱いとなりました。こういう頭がおかしい作品(褒め言葉)は好みです。 |
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好みの内容でした。
ジャンルはSFミステリ+脱出ゲームもの。 NintentoDS用ゲームソフト『極限脱出 9時間9人9の扉』のシナリオを元に、黒田研二氏によって小説化された作品です。 ルールが面白いので少し説明します。 ---------- ・9人が閉ざされた空間に閉じ込められ、9時間以内に脱出しなければ死が待つ。 ・9人にはそれぞれ1~9の番号が割り振られている。 ・脱出する為の各所に番号が書かれた扉があり、扉を開ける為にはメンバーの数字の組み合わせによって生まれる「数字根」を合わせる事が必要。 この「数字根」を使ったルールが斬新でした。 ※数字根というのは、足し算後の各ケタの和を1桁になるまで求め、最終的に1ケタになった数の事。 例:1と5と7の数字根は、1+5+7=13⇒1+3=4 4の扉を開ける為には、1と5と7の番号の人が必要(2,4,7でもよい)。かつ、該当者以外は扉の中へ入れない。 という具合です。 ---------- どの組み合わせで扉に入るのか?扉の先に死体があれば犯行の可能性があるのは誰なのか? 途中途中、数字根を計算しながらこの人物が怪しいとか考えながら楽しみました。 コテコテの頭脳戦ものかと思えば、上記はルールの土台の1部なだけであり、中身はSF的な特殊状況を用いたシナリオになってます。 SF的な所は好みの分かれ所ですが、作品全体を通して意味があるシナリオ作りなので個人的には意表を突かれつつ楽しめました。 探偵役がスーパープレイ過ぎて、そんな手がかりあったっけ?と一気に解決する様が困惑でしたが、気にしなければデスゲームや脱出もの作品としてはクオリティ高い仕上がりで良かったです。結末も綺麗にまとまっていて、この手が好きな人へはオススメです。 難点は講談社BOXの値段が高い事。しかも上下巻。。。1冊の文庫で値段がお手頃ならもっと読まれると思いました。 ※余談ですが、ゲームもプレイしました。 ゲーム版で説明不足に感じる点は、後発の小説版の方が丁寧に説明されています。 謎解きの仕掛けはゲーム版の方がしっかりと作られていました。何故ここで、この問題なのか段階的に意味がある作りでした。 エンディングについては小説版がベスト。とても素敵な気持ちよさで終わるので小説版が真のエンディングでしょう。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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面白かった。
永遠の若さを手に入れられるが、人類の世代交代を促す為に100年後に死ななければならない。 この設定だけで特異な小説なのですが、内容が非常にリアルに描かれている為、違和なく没頭できました。 こんな事が現実に起きたらどうなるんだろう?と考えた時の可能性が、非常に練られたシミュレーションとなっているのが見物。 不老な為、年齢の関係ない自由恋愛や別家族を新たに作り直すファミリーリセットや、100年目を迎える人々の受け入れ方や反発心などの感情面、100年生きられると認識している場合、活動が怠惰になり経済面が衰退するなど、作中に出てくる未来を暗示したMレポートが本書自体のような錯覚を得ました。(作者名の宗樹レポートなんちゃって) 余談として、不老世界な為、絵面を想像すると皆20代付近の容姿なのが面白い。会話の言葉遣いで立場や貫禄を読者にイメージさせているのが作家の技だなと思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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これは凄いわ。ただただ圧倒されて言葉を失った作品。
「日系ブラジル人」という過去にブラジルへ移民した日本人を耳にした事はあるものの、その内容がこういうものだったのかと詳細を知り、衝撃を受けました。 ページボリュームが多い為、食わず嫌いで手に取っていませんでしたが、評判の良さでやっと読書。 骨太の社会的なテーマが敷かれつつ、個性的な登場人物達のドラマも魅力で退屈しない読書。脇役にあたるような、報道チームや警察側の秋津など、外伝で1冊掛けそうなぐらい印象に残ります。気付いたら惹き込まれて一気読み。上下巻まったく気にならなかったです。 作品として完成されているので後は好みの問題。読んで損はないでしょう。素晴らしかった。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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濃い作品を読みました。とても惹き込まれて面白かったです。
警察小説は苦手で敬遠がちなのですが、推理作家協会賞受賞作品という事で手に取りました。著者作品を初読書。 これは警察小説というよりヤクザもの。そのヤクザと繋がっている警官が上司である新人の視点で描かれる物語。 状況が何も分からない新人視点というのは読者と気持ちがリンクしており、世界観に入りやすくて良いです。上司との対面、ヤクザとの対面、序盤は新人日岡とともに読者も非常識な世界へ足を運んでいくわけです。正義感溢れる日岡は、上司のヤクザとの繋がりや違法捜査を目の当たりにしながら、悩み葛藤するわけで、読書中は同じ心境でした。読み進めていくにつれ、徐々にヤクザや上司に魅了されていくのですが、これはそれぞれのキャラクターがとても良いからですね。正義と悪のキャラが分かりやすいので、ヤクザも上司もなんとかしてくれる頼れる安心感と期待が感じられて好んでいきます。 人情的にも面白いですが、本筋は殺人事件解決の捜査と、関わるヤクザ抗争の一発触発のハラハラ感。これも面白い。まぁ、個人的にはヤクザ抗争はトントン拍子で収束した感がありましたし、期待するミステリっぽくはなかったので最近の推理作家協会賞はエンタメ系かなと思いました。ただ、読後感の良い主人公の物語という事で、とても楽しめました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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本書購入後、本の厚みと登場人物一覧の名前が頭に入らずで、しばらく積読状態でした。
ただ、読み始めてみると人物の登場の仕方が区分けされていて把握しやすい。色々と杞憂でしたね。 犯人視点を含む倒叙ミステリで、序盤は何を計画しているのか読めない『犯行の準備』が見どころ。特殊な船を購入したり、マネキンを用意したりと、謎に満ちたワクワク感が楽しかったです。あらすじにあるハイジャックシーンだけを描くのではなく、その犯行の準備や苦労をしっかり描く本は中々珍しいかも。登場人物紹介や舞台背景のベトナム戦争や政治的内容を描いているにも関わらず、さらっと読めてしまうのも○。 ハイジャックや戦争という単語内容に対して殺伐とした雰囲気がないのが凄い。中身は爽やかです。終わり方も綺麗に閉じて巧い。 良書を読んだって気分になり満足でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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裏染天馬シリーズ長編第3弾。
いやー面白かったです。ロジカルな推理と犯人が明かされるシーンはお見事でやられました。 好みなのもありますが、シリーズ通して外れが無いのが嬉しい。 学園ミステリとして登場人物が増えてきました。なので人物を把握する上で、本作単体で楽しむのはちょっと難しく、1作目ぐらいは事前に読書してあると良いです。 ロジカルな推理を得意とした本格ミステリでありつつ、学園風のドタバタや笑いも交えているのは楽しいです。今回はクスっとする所が多かったです。序盤、学園内での裏染登場シーンで颯爽と推理を披露するも、女子生徒に「女の子の靴からそこまで考えるなんて変態みたい!」と突っ込まれるのは裏染のキャラクター性がはっきりしているからですね。よい探偵役です。金田一少年系といえばそうですが、アニメネタで現代風にアレンジされているのがいい感じ。 さて、事件は図書館での殺人。そんな所で事件起こさないでよ。とか、科学捜査をすれば直ぐに解決してしまうのでは。。。とか思う所がありますが、そういうのは気にしないで楽しむ作品です。現場の手がかりから論理的に事件の真相を導く様。探偵の奇怪な行動も、あとあと納得と驚きに変わる刺激。こういうのがいいんです。 一見、地味な殺人事件なのですが、推理パートで面白く読ませちゃう作品は凄いなと思います。 裏染の過去もでてきて日常パートも充実してきました。次回作も楽しみです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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『君が/僕が電話をかけていた場所』のタイトル違い2冊が上下巻です。
文章の空気感や不思議なストーリーが良いです。単純に好みの物語でした。 顔の醜い痣のせいで交友関係も築けず人生を悲観している主人公。小学校時代の思い出の中で痣を気にせず接してくれた女の子がいたけれど、痣のコンプレックスのせいで僕なんかと釣り合わないと避けてしまう。そんな主人公が高校生になった時、謎の公衆電話からの女の賭けによって痣を消してもらうが、再開した女の子は顔に痣をおって自殺しようとしていた。という始まり。 『オペラ座の怪人』や『美女と野獣』の男視点の主人公物語といえばイメージしやすいです。逆の立場になった時、さらには新たな困難を知っていく中で恋の結末はどうなるのか。という話かと思いきや、もっと複雑になって先が読めない展開でした。 著者4冊目ですが、今作も女の子が魅力的ですし、頭に浮かぶ情景がとても綺麗。固くなくすんなり入る文章が好みでした。ミステリとしては広義な位置付け。恋愛ゲーム系のストーリーが好きな人には刺さります。ネタバレなく細かい事は言いづらいですが、暗雲立ち込めるテーマの中でこの読後感は気持ち良い作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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著者本、初読書。
容疑者がエイリアンという変わった法廷ミステリですが、これが新鮮で面白い。 人類が初めて宇宙人と遭遇したファーストコンタクトから始まり、容姿や言語や価値観の違いなど、異星人への興味好奇心が登場人物達同様に夢中にさせます。人類は左右対称の2対に対して、現れた異星人は前後左右の4対からなる生物(表紙の異星人)。前後にも腕や目や内臓が存在するといった設定がしっかりしていて惹き込まれます。 価値観の違いを活用したミステリの経験はありますが、相手が異星人となると精神面と肉体的な物理面が異なるので、何が起きるか予想できません。中盤からは法廷ミステリとなり、1つずつ細かく事実を突き止めて行くのが見ものでした。 終盤のまとめ方も爽快で、SFとしてもミステリとしても二重に楽しめた傑作でした。 他の作品も面白そうなので追っかけてみようと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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凄い書物に触れてしまいました。内容の密度がとても濃く読み終わるまで1か月要しました。ただ、この期間は難しくて挫折の意味ではなく、数多く現れる内容から興味を持ったものを脱線して調べながらの読書だったためです。それでも正直わからない事だらけで、拾えるものが微々たるものでした。本書の凄まじさは読者が持っている知識に呼応して魅力が増す作品になっている所です。
いきなり本書に触れると返り討ちに合いそうなので、先人に習って以下の手順で自分は触れました。 ■個人的なオススメの作品の触れ方 ▽映画を見る(ショーン・コネリー主演、ジャン=ジャック・アノー監督) ↓ ▽下巻の解説を読む ↓ ▽本書を読む。 まず映画の出来がとてもよいです。本書のミステリ部分が強調された作品となっており、難しい知識が必要なく楽しめます。 1327年の修道院で発生した連続怪死事件をバスカヴィルのウィリアムとメルクのアドソの探偵&助手(書記)の2人が体験します。ピンと来ると思いますが、シャーロックホームズの設定を活用しています。ウィリアムの圧倒的な知識と洞察力で、修道士達の発言や行動、黙示録に見立てられたような事件現場や占星術や神学等、見習いアドソ&読者に教える先生のように推理と解説をしていきます。ミステリの面白さを十分に楽しみながら全体像を映像として把握できるので映画はオススメです。 次に下巻の解説を読みました。ストーリーは映画で把握済みなので、ネタバレ気にせず翻訳者の解説にて本書の背景がどういうもので、歴史や書物、著者専門の記号論がどのように扱われているかが感じ取れます。 この手順であれば、登場人物のカタカナ名に悩まされる事も場面混乱も回避でき、最大の魅力であるミステリを模した書物の迷宮を集中して体験できるでしょう。 個人的な感覚ですが、昔に体験した三大奇書の黒死館の衒学やドグラマグラの作中作の面白い意味でのパニック感を、数年経った今、学術的な要素で再体験した気持ちです。難しくて好みが分かれるかもしれないですが、そういう圧倒的なものに触れるのが好きな方にはささる作品です。 拙い知識でどう書いたらよいか悩むのですが、設定の数々である、時代や現場や言語体系やミステリ要素や書物に関する事、どれもこれもが外せずに絡んでいて、こうじゃなきゃ成立しない凄まじいバランスの妙の作品ですね。何かに気付いてもそれが必然になっている事に気づかされる。。。。うーむ、、、すごい。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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舞台は東京駅。保険の契約ノルマで奮闘する人、俳句仲間のオフ会、男女のもつれ、オーディンションを受ける子役、爆弾犯、etc...
総勢28キャラが交差する物語。 サウンドノベルゲームの『街』『428』が好きなのですが、これに似た小説が読みたいと探した所、見つけたのが本書の『ドミノ』でした。ゲームを知っているなら同じ雰囲気を楽しめます。 本書の凄い所は、28もの登場キャラがいるのに混乱がない事です。 ゲームのように音や写真・イラストはなく、文章だけで書き分けて混乱させないのは凄いです。そして、それぞれのキャラ達は自身の物語が存在し、それぞれの主人公なのです。個々のストーリーを楽しみ、東京の舞台でそれぞれが交差し、あれがここで影響して、あの人の行動がこっちで影響して。。。という楽しさが最高でした。 サウンドノベルゲームの場合、プレイヤーが物語に介入して失敗すればバッドエンドが起きますので、誰かが死んじゃったり、悲惨な結末が起きる刺激がありますが、小説による偶像劇の場合はエンディングに向けて1本道を進むので、刺激的なアクセントが付け辛い難しさがあると思っていました。が、本書は爆弾事件や保険契約処理のノルマなど、タイムリミット系のハラハラ内容を複数設置することで、飽きさせない作りにしている点で成功しています。 悲惨な事件や複雑な仕掛けはなくて、サラッとしていますが、気軽に楽しみ充実できる良い作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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書物が駆逐され、水没しつつある世界が舞台の『少年検閲官シリーズ』第2弾。
前作は読んでおいた方が良いです。 デビュー作からファンタジー×ミステリの作風でしたが、その作風を着実に進化させた本シリーズはとても面白いです。城シリーズ序盤あたりの、ラノベファンタジー模様は、あまり好みではなかったのですが、ここまで来ると世界観に浸れて楽しめます。 また、思い返せば『瑠璃城殺人事件』でも図書館を舞台とした密室がありましたが、当時から作者の本とミステリに対する思いがずっと続いているのだと感じました。 ネタバレ以外での話として、このファンタジーの世界観を十分に活用した事件を行なっている点が凄く評価です。本作は前作以上の出来でしょう。 序盤のオルゴール職人が少女をオルゴールにするエピソードについても、残酷性はなく、ゆったりと静かな情景の中でひっそりと聞こえるオルゴールの音色のように悲しく神秘的な雰囲気に惹き込まれました。 オルゴール職人の集う孤島での連続殺人。 物理トリックや多重解釈といった本格ミステリ要素をファンタジーの世界観で包み、独自の個性を生み出しています。本作は十分に堪能できました。 その他余談として、 スピンオフ作品『ダンガンロンパシリーズ』における、事前に本書の仕掛けを匂わせる『黒の挑戦』の設定と、『少年検閲官シリーズ』の『ガジェット』の扱いが似ています。事件模様も解決模様も似ているので、この2つのシリーズ間は互いに刺激を与えあっていると感じました。 発売時期としては少年検閲官のガジェットが先で、その後、知名度が高いダンガンロンパを描いていく中で、ミステリ×キャラ×ファンタジーの描き方が培われて、オリジナル作品の少年検閲官シリーズである本書『オルゴーリェンヌ』へ昇華したと感じました。 シリーズ作品として次作を楽しみにしています。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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好みの本でした。
こういうのが読みたかったと思えた作品。ミステリを読み始めた頃の懐かしさと新しさのバランスがうまく取れていて好みでした。 期待させると落胆させてしまいそうなのですが、ミステリの驚きや濃さとか人間味とか、そういうのを求めると浅いと感じられてしまうかもしれません。ただ、楽しいミステリってこういうのだよ。と改めて認識できた作品でした。 星読館という天体を観測する館。そこに住まう博士。孤島に集められた7名の男女。 好みのシチュエーションの中で起きる事件。何故事件が起きたのか。理由や動機は?これらミステリ模様は読んでいて楽しいです。ライトノベルの作者なのでキャラクターは軽めなのですが、おっさんやヒロインなど定番だけど分かりやすくてよい感じ。 読書前と後で印象が変わりました。ミステリ・フロンティアのレーベルだったこともあり、読書前は重いコテコテのミステリを想像していたらライトで違う。でも、これはこれで面白くて、最後は納得で綺麗にまとまるのが見事。 個々の要素は見知った定番ネタなのに、使い方と整え方が凄く綺麗です。天体観測や流れ星や願い事などの雰囲気もロマンチックで楽しめました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ミステリの手法を使ったSFの名作という事で読書。
SFだからと言って難しい言葉はないですし、登場人物も少ない為、把握しやすいのが良い。 50年以上前の古典作品に分類されていますが、今読んでも分かりやすく楽しめました。 人々はドーム型のシティの中で生活しており、外気や日光は直接浴びず、食糧危機の影響により子供の出生数や食事の内容と量まで制限を受けている窮屈な世界。知能・技術に優れた宇宙人との交流や、ロボットの発達により人間の仕事が奪われてロボットが憎まれているなど、現代でも少し感じる所があり、SF作品として興味深かったです。 人々は皆、懐古主義者で、地球が唯一の世界であった時代を思い出すさまに哀愁を感じました。 これらの世界観を土台に宇宙人が何者かに殺された事件が起きます。 ロボット工学三原則により、ロボットは人に危害を与えられない。地球人も心理的理由から殺人を犯せない。本書のSF世界観ならではの謎で、作品を読んだ時に感じるテーマに沿ったミステリ要素が見事でした。 ミステリとして期待してしまうと斬新な驚きはないのですが、世界を味わう感じで読むと楽しめます。 希望に満ちた未来を感じる読後感も良かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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書物が駆逐された特殊な世界でのミステリ。
書籍がなく情報規制がされており、メディアは耳で聞くラジオが主。『殺人』や『探偵』とはどういう事なのか?そもそも言葉の意味もわからないような空間での物語です。箱庭の世界の中で首なし死体が発見されても『殺人』と言う意味が存在しないため、『自然死』として処理されてしまうような常識が異なる村の中で、どういうミステリになるのか全く予想できずでした。 文庫版解説にもありましたが、序盤で感じたのはシャマラン映画の『ヴィレッジ』の雰囲気そのものでした。 ファンタジーだから何でもありなのかなと思いきや、ある1つの事が明らかになった瞬間、不可解な謎が一斉に解決する終盤は本格ミステリ模様で見事でした。 童話的な物語は、デビュー時の城シリーズから比較すると、意味があり面白くなっているのがとても感じます。 また、特殊設定の中で、ガジェットと呼ばれる結晶の設定が面白いです。 昔の人が、ミステリをこっそり世に残そうと、細分化された要素(『密室』『首切り』など)をガジェットという結晶に詰め込み装飾品として世に散らばっているエピソードなのですが、どの結晶が今回の事件に影響しているのか?と考える楽しさもありました。 その他、深読みですが、メディアの情報規制や電子書籍に代わる出版業界の今後も感じ取れました。 得られる情報を規制して与えた内容が正しいと刷り込まれた人々の姿は、自分から調べないTVやラジオの話に見えますし、書籍がない空間は電子書籍への暗示にも感じます。 結局の所、どこまでの情報が得られた世界なのかが分かり辛い為、整合性や現実的な事を気にする場合は好みに合わなくなると思います。細かい事は気にせず不思議な童話を読んでいたら実はミステリだった、ぐらいの感覚がとても楽しめる読書だと思います。 著者の作品で、ミステリ要素以上に世界観が楽しめたのって初かもしれません。次作も楽しみです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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漫画『DEATH NOTE』のノベライズ。物語の時代設定は漫画より過去で、南空ナオミがLと知り合うきっかけになった事件です。
漫画を途中まででも読んでおり、ミステリ小説が好きな方には、お薦めの小説です。原作の設定や読者イメージを効果的に使ったミステリに仕上がっていました。スピンオフ作品としては十分なクオリティで楽しかったです。 多少原作を知っている前提なので、キャラ紹介や死神の能力などはあっさりとした説明になっており、余分なページを削っています。全ページ数は180Pぐらいで無駄がないと感じます。 私自身、連載中の漫画を読んでいたぶりの読書なので、南空ナオミって誰だっけ?程度の記憶だったのですが、そのぐらいが寧ろキャラの性格に影響を受けず、丁度よい読書だと思います。 物語は既に起きた3つの猟奇事件について、FBI南空ナオミがLから連絡を受け捜査に乗り出します。 密室状態の事件現場、藁人形の見立て、異なる殺害方法、被害者のミッシングリンク。事件は既に起きている為、小説の中身は推理と謎解きが大半を占めています。異常思考での事件な為、読者はついていけない展開なのですが、Lの超思考だから追いつけるのかも。と変に納得できる推理の展開が見事です。 見立てまで行い、明らかに他殺なのに何故密室にするのか?この扱いも個人的には逸品だと思います。 全貌がわかった時、この原作だからできる特有の内容を感じられ凄いと思いました。 賛否両論な世の中の評価も、 △:原作好き+小説読まない層 △:原作知らない+小説読む層 ○:原作知っている+小説読む層 という風に感じます。 合う場合は埋もれた作品だと思います。たまたま見つけて読んだ次第ですが、予想以上に満足でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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これは完成度が高い作品。あれこれ言う言葉がなく、読後の余韻が凄かった。
まず作品への没入感が凄かった。これは丁寧な描写と翻訳が巧く、映画を見ているかのように場面をイメージする事ができる要因が大きい。登場人物達も個性的に設定され、混乱する事もない。残酷な要素は読書の刺激を演出している。翻訳物を読んでいるとは思えない感じでスラスラ読めました。 3部構成で作られている本書。構成が実に巧い。部が変わる事に舞台模様がガラリと変わり先が読めない。物語の魅せ方が大変うまくて惹き込まれました。 好みに合わないと言うか個人的なつぶやきとして、 近年の海外ミステリは、女性被害を作品のキャッチによく使われているように感じます。日本と海外の違いだと思いますが、女性を監禁したり暴行したりの描写が海外作品には多く既読感があり、内容自体も然ることながら好みではない。警察についても職権乱用が激しく、特にアルマンは盗人じゃないのかと思える始末です。 さて、本作は先入観なしで読むのが良いです。 あまりにもランキングで紹介された為、販売戦略的なものかと避けていましたが、読んでみたら面白かったので、疑り深いのは良くないと個人的に反省。 海外作品なのに、とても読みやすいのが一番印象に残りました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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