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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数370件
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なんというか、お手本のような綺麗なミステリ。
アガサクリスティのような雰囲気・サスペンスの展開。コナンドイルのワトソン&シャーロックホームズのコンビ模様。ミステリの古典作品を現代の世界観で楽しめた感覚でした。残酷な描写、心理的不快感もありません。万人向けです。 物語は自分の葬儀の手配をした当日に殺された資産家の事件から始まります。非公式で警察から依頼を受けている元刑事のホーソンと、そのホーソンから事件の模様を小説にしてほしいと依頼を受けた作家アンソニーを主人公として進みます。 正直な所、事件に奇抜さや惹き込まれるような特徴的な要素はありません。殺人事件が発生して、何が起きたのか?誰が犯人か?を捜査していく流れを作家の視点から綴られていく展開です。事件模様は地味なのですが、この作家視点は面白かったです。ホーソン主体で進む捜査に関わる心境。困惑する作者の頭の中。世の中や仕事の話。色々な思考が楽しめます。そもそも著者自身がTVや映画脚本などそれなりに実績がある方なので、自身の史実を踏まえた経験がリアルで面白いのです。 徐々に手がかりが得られるサスペンス感と作家の思考で、後半までは惹き込まれた読書でした。が、残り100ページの20章ぐらいからは駆け足で事件が収束してしまった印象でした。手がかりや真相も一気に溢れて解決してしまい、真相もあまり驚きがないものでした。なので、それまでどうなるのだろう?と気持ちがワクワクして期待値が上がっていただけに、なんだかスッキリしない読後感でした。 視点を変えれば、映像脚本として質が高いです。 手がかりを小出しにして視聴者を繋ぎ止めたり、作家主人公に同調できたり、映像に不快感がでない事件など。奇抜さはないが敵を作らない万人向け。その方向性だと感じました。翻訳もよく文章も読みやすかったです。 |
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シリーズ6作目。シリーズ内屈指の出来栄えではないでしょうか。惹き込まれるストーリーでとても良かったです。
3,4,5作目...と刊行ペースが速いが質が薄くなっていると感じて手に取るのを躊躇っていました。が、本作はそんな気持ちを払拭する出来栄え。著者の力量と幅を感じた1冊でした。 このシリーズは1作目以降は何処から読んでも大丈夫です。 本書はシリーズ作品とは思えない程、雰囲気が違い、重い話で進行します。 主人公は41歳の母親。シングルマザーとして仕事と家庭の悩み、反抗期の娘との関係。行方不明だった前科のある毒母親の影が身の回りに現れ暗雲が垂れ込まれます。この流れはイヤミスのように陰鬱な気持ちにさせていきました。今までのシリーズ作品のようにライトでサクッとしたイメージと違い、重く感情に響いてくる内容。ただ読みやすい文章は今まで通りなので、重い話で長編とはいえ一気に読めました。 事件の背景も込み入っており面白い。この規模を短編のページ数でやってしまうと手がかりと回答だけの薄いストーリーになってしまいそうなので、長編の作りは功を奏していると感じます。 今回の沙羅は人間にサービスし過ぎなぐらいよく喋り、閻魔のルールとしてどうなのかなと疑問を感じる所はあります。が、ツンデレのように沙羅は基本的に人間に優しい一面があると感じられ微笑ましく思えました。不幸な話の中での希望も描かれており、惹き込まれた読書でした。 このシリーズ気に入っています。読みやすさと物語の面白さは〇。今回は感情に響く話も書けるときたので、次はミステリとして沙羅もが驚くような意外な結末話を読んでみたいと期待してしまいます。 次回も楽しみになりました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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魔法が存在する世界でのファンタジー×ミステリ。☆7+1(好み)
ただし誰でも魔法が使えるわけではない。魔法全書に記された11種の魔法だけが存在し、それぞれの魔法が扱えるのは各魔女のみ。何でもアリの世界観ではなく、ある程度制限を設けた中での特殊設定ミステリでした。 扱われる事件は、祭りの中で発生した衆人観衆での密室殺人+炎の火災。 剣と魔法の雰囲気も然ることながら、魔女狩りの世界観が組み込まれている雰囲気も面白い。 密室ものでよく議論される、何故密室にするのか?についても、本書では、論理的に解釈できなければ、それは魔女による魔法が扱われた可能性がある為。と、この世界ならではの捉え方で議論されるのが新鮮でした。 本書はミステリというより、バトルファンタジーが主です。ミステリを期待するものではありません。 ただ、扱われる真相と仕掛けはミステリでは前例が思いつかず、本書の世界だから可能にする特有なものな為、とても刺激になりました。唯一無二のネタってそれだけで価値が高まります。 個人的に思う所として、 1000年越しの謎と見立ての事件ですが、『1000年』の扱いにもっと深みが欲しかったです。500年でも200年でも良さそうです。1000という時間。情景や歴史的な変化。もっと深みがあればと思いました。文字だけで"1000年"が頻繁にでるので薄く感じてしまいました。 ルドヴィカとエルシリアの関係について。そんな殺し合うような殺伐とした関係にしないでも良さそうなと思います。ここだけなんかのめり込めませんでした。騎士ウェルナーの成長やルドヴィカとの関係など、王道ファンタジーとしてとても面白く楽しめました。 11種の魔法の存在やキャラクターなどは続編を考慮した作りとなっており、続きの冒険が気になる所ですが、続巻がないのが残念です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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日本昔話を題材としたミステリ。
日本昔話の内容について新解釈を述べるようなものではなく、設定・小道具を用いた作り。 例えば、最初の物語は『一寸法師』が扱われます。小さな侍や、人を大きくしたり小さくする『打出の小づち』がある世界で殺人があったら?という作りです。 SFやファンタジーの特殊設定ミステリは世の中に沢山ありますが、本書の巧い所は特殊な設定を読者に説明する事無く認識させられる事。『一寸法師』『花咲か爺』『鶴の恩返し』『浦島太郎』『桃太郎』、どんな物語か説明せずとも読者はある程度の予備知識がある為です。さらに内容を伝えやすいので商業的にも宣伝し易いですね。中々巧いです。 さて、予備知識もあり物語を認識している中で、ミステリとしてどうだったかと言うと正直な気持ちは大きな刺激が得られなかった印象。ベースの昔話は認識出来ているのですが、そこから変化させた本書の物語が分り辛く感じました。『花咲か爺』『鶴の恩返し』に至っては昔話要素が雰囲気だけ活用されていて必然性はなく感じます。短編集として作品を揃えたような印象。ミステリとして考えなければ『鶴の恩返し』の構造は面白かったです。 『浦島太郎』についてはこの世界を活用したミステリとして見事でした。必然性もあり、これが一番良かったと思いました。 『桃太郎』については、鬼ヶ島での連続殺人CCもので、誰が犯人かのドキドキ感と真相の面白さは中々でした。難点は鬼の名前が把握し辛くて誰が誰だか分り辛い。鬼太(赤鬼)、鬼菊(桃色鬼)とかイメージし辛い。いっそ、赤鬼、青鬼と言った色だけで良かったのでは。 表紙とタイトルがいいですね。売りやすそうです。 |
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忘却探偵シリーズ2作目。1作目を読まずとも本書から楽しめます。
本書は3つの連作短編集であり、各話で扱うテーマは美術です。もう少し正しくいうと、美術の専門的な話ではなく、西尾維新のキャラクター属性が美術スキルを持つ者のお話。というのが正しいです。 話の構築も然ることながら、やはり西尾維新作品はキャラクターと言い回しの文章が魅力的でした。著者のデビュー作の『クビキリサイクル』にてすでに『絵画の天才』というキャラが出てきてしまっているものの、その分野での天才感を感じさせるエピソードを面白く感じました。 謎や事件はあるものの、その推理や結末の驚きに趣があるのではなく、忘却探偵や、関わる事件に登場する人物達の魅力が楽しい作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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タイムトラベルを扱ったSF本格ミステリ。かなり好物でした。
過去の事件を解決する為に時代を遡る設定のミステリは世の中に沢山あります。特殊設定のSFミステリについても他の著者を思い浮かべる事でしょう。そんな中でも本書が光る要素は、しっかりとした硬派な本格ミステリである事と、ストーリーの面白さだと思いました。 病気の妻の呪いに関係する過去の事件。謎の砂時計の声に従い過去へタイムトラベルした夫。事前に調べてある事件の予備知識を参考にしつつ、探偵として事件に関り真相解明を目指します。 SF設定はある種何でもアリになってしまう所、本書は丁寧にタイムトラベルの条件定義を行っています。何ができて、できないのか。時間や移動先、転移可能な空間の量など、その設定のお話自体が面白いので把握しやすかったです。特殊設定系のSFやファンタジー要素と本格ミステリを合わせる作品においては、この条件定義の把握のしやすさがとても大事。ここは問題なく楽しかったです。 ミステリとして見ても、クローズド・サークル内にある館での連続殺人事件。見立てやバラバラ殺人の謎など、盛り沢山な面白さでした。 難点というか欲を言うと、終盤の解答編については、種明かしの演出や説明のわかりやすさが欲しかった所。 沢山の謎がありましたが、解答を一気に並べたような感じで、1つ1つの真相を把握して驚きを味わう間がなかったです。 『実は○○だった!』という演出ではなく『実は〇〇なので、その為こちらがこうなって……』という感覚。合っているのか検証できないまま、一気に答えが流れて次の話に進んでしまう感じなので、せっかくの仕掛けが勿体なく感じました。 デビュー作なので今後も期待。そして今まで応募していて落選してしまっている作品も読んでみたい。展開が読めない先が気になるストーリーと爽やかに閉める読後感がよく、他の物語にも興味が湧く次第です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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普段読まない時代劇もの。
本格ミステリ大賞2019年度受賞や最近のランキングに取り上げられていたので手に取りました。 幕末~明治初頭を舞台とした連作短編小説。実在する江藤新平と本書架空の鹿野師光のコンビによる推理帖です。 最初の1編は『佐賀から来た男』。この2人の出会いの物語。 60ページほどの物語の中、半分までは慣れない時代・歴史もの小説に苦戦の読書。読んでいて失敗したかなと思ったのが正直な感想でした。人物や時代背景が頭に入らない。が、ミステリとして滅多切りの遺体についての謎や真相が明かされるやこの時代にマッチした物語で素直に驚き納得しました。あれ、この本面白いぞと認識を改めた一幕でした。 先に伝えると読後の結果としては歴史・時代小説に詳しくなくても楽しめる一冊でした。登場人物色々いますが、江藤新平と鹿野師光の物語。この2人だけ抑えて置けば問題ないです。時代背景を知っているならより情景が浮かび楽しめるのかも。知らない自分でも楽しめたので苦手意識なくても大丈夫かと思います。 物語は『弾正台切腹事件』、ミステリーズ!新人賞を受賞した『監獄舎の殺人』、『桜』『そして、佐賀の乱』と続きます。 どれもミステリとして仕掛け云々というより、動機が凄い。そういう心情のもとのこの事件か。。。と時代ものと合わせた背景が見事でした。 また、江藤新平と鹿野師光の二人の視点による事件の見え方が様変わりするのにも驚きます。文章として描かれていないのですが、読者はそう感じる事でしょう。このバランスが凄いです。後味・余韻が沁みる物語の数々でした。普段読まないジャンルなだけに新鮮でした。 |
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☆7+1(好み補正)
ファンタジー×SF×ミステリ。 特殊設定ミステリの部類。その設定が隠されている為、モヤモヤの違和感を感じながらの読書。帯にある通り、終盤で明かされる秘密(設定)を把握した上で再読すれば話が理解できて複雑な試みが楽しめるといった作品。構成が複雑なので悪い意味で2度読みが必要。この点は好みが分れそうです。 正直、初回の読書では話が理解できませんでした。ただ理解できず違和感があれど話は面白く読めます。 物語は大きく2つのパートで進行します。 1つ目は石国と帝国の協定に関する物語でファンタジー寄り。協定に違法がないか世界樹を調査する話。<引き金屋>の異名を持つラインハルトが曲者で、戦争へ勃発しそうな緊迫感が漂う展開に手に汗握ります。 2つ目は別チーム視点で世界樹を調査する話。ただしこちらは世界樹の中で殺人(?)事件が発生するミステリパート。 この2つを同時進行で読むのですが、なんだかおかしいのですよね。この違和感の正体を読者はあれこれ想像しながら読む感じです。 特殊設定の秘密が分かれば、ミステリの真相や世界の姿も明らかになるのが見事。 そしてそれが何とも言えない心境になる。正にファンタジー×SF×ミステリな作品でした。 ファンタジー作品も許容範囲なら楽しめると思います。こんな複雑な構成にしないでも良さそうなのですが、初読の違和感と2度目の楽しみが面白さのポイントなのかも。 世界観共に好きな作品でした。 備忘録として自分なりの解釈をネタバレ側でメモします。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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著者初読み。
最初の見開き2ページで惹き込まれました。文章はめっちゃ好み。舞城王太郎を感じさせる文章の圧力がとてもいい。 女子高生の主人公が喋り続ける文圧が魅力のライトミステリ……ん。これミステリ?いや、ミステリっぽい展開で駆け抜ける良い意味で不特定ジャンルになる作品という感じ。 主人公が大大大好きな沙紀ちゃんは冒頭で首無し逆さ吊りで発見される。しかも密室。ミステリ好きな展開。首無しと言えば入れ替わり含めて被害者が誰だかわからない。そんな事を思わせた所で、いやいや~首がないからって大好きな友達間違えないっしょ。とバッサリな主人公。 ボケとツッコミで例えると、ボケがミステリ的な要素。ツッコミが現実的な考え。設定だけ書くと東野圭吾の『名探偵の掟』を思い出します。ただ、学園もので女子高生の百合っぽく明るい雰囲気かつ文圧感じる喋りで展開されるととっても新鮮で面白い。ひとまず、彼女を救う為に推理開始!ん。死んでるのに救う? ぶっ飛んだ展開と設定云々も然ることながら、ミステリを用いた女子高生の駆け抜ける喋りの文章が魅力的。 小説として楽しめた一冊でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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深水黎一郎作品は1作ごとに個性的なテーマを感じます。本作は『読者が犯人を決める』というもの。
事前にネット上で問題編を公開し、誰を犯人にしたいか投票を行った企画作品です。 誰が犯人かを読者が考えるのではなく、投票された人物を犯人にする為に作者はどのような物語を作るのか?という趣旨。 誰でも犯人にできるという事から本書は7つの解決編が収録されています。 一昔前なら多重解決ものと呼ばれる作品ですね。そこを読者参加型にする事で新しさを生み出しています。SNSが一般的になった今の世だからできた作品であり、その着眼が見事です。 講談社は昔から読者を巻き込む企画が多く、金田一少年の犯人当てや最近のメフィスト賞なら木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚』でもWEB投票をしています。読者に犯人を決めてもらうという応募企画と作品の実現は版元と著者が見事にマッチした結果だと感じました。 一方この企画に参加していない人。本書単体で楽しむ人にとっては、誰でも犯人になる事からミステリにおける推理や驚きを楽しみ辛い作品となります。一番のネックは、各解決編はご都合主義が多く、ルールに沿った上で何でもアリだと感じてしまう所。指定の人物を犯人する物語を書けばよいので追加設定が多いのが敬遠されそうです。またバカミスのように笑って誤魔化せるような軽い雰囲気で描かれるので好みが分れる事でしょう。 プラス面でみれば、各解決方法は人物の性格が様変わりしミステリの趣旨も変化するのが凄まじい。よく考えられており、かつ作り上げる技巧の凄さが味わえます。先程、追加設定が多いのが気になると書きましたが個人的にはアリです。 過去作の多重解決もの『ミステリー・アリーナ』の作者側の視点に読者を立たせた作品であるとも感じます。著者は過去作でもクラシックのオペラにおける解釈の多様性を述べていることから、1つの物語の中にいろんな可能性を生み出す事に一貫していると思います。これはとても好みです。 という感じで、本書はミステリを読み慣れた人向き。さらに著者の過去作品に触れている程楽しめる作品です。 初めて触れる方でも、どの結末が自分の好みであるかで好きな作品傾向が分る性格判断テストになっているのが面白いと思います。自分は開陽界の意外な流れや玉衡界の〇〇ものになる流れが好きでした。今回選択肢がなかったですが個人的には建物が犯人みたいなトンデモ話が好きなので、自分が想像していない所から答えがくる刺激がやはりミステリの面白さだと思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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館もの+数学のミステリ。堂シリーズ3作目。
五感を表現したという五角形の五覚堂。そこで起きた密室殺人。 冒頭で示される館の機構は、「館は動き」そして「回転する」という事。講談社から出版される館もの作品の傾向として、3作目は動く事が多いのでそれに沿ったテーマだと感じます。この奇妙な館と壮大な仕掛けが本作の面白さです。そしてそこに数学を絡めたミステリとしてとてもワクワクします。前作までの評判で苦手とされていた数学話も今作ではエッシャーやフラクタルと言った専門科目ではなく高校・大学辺りで触れるものなので大変読みやすくなっています。個人的にはどちらも好きな話だったので本作は苦なく楽しめました。 惜しい点としては、トリックや犯人特定の消去法について、とても凝った仕掛けを行っているのですが、伏線がないというか唐突に明かされる為に衝撃度が弱く、読者の記憶に残る名作になりそうでなり辛い勿体なさを感じます。仕掛けだけみたら島田荘司の御手洗潔シリーズみたいな大仕掛けで同じ傾向なのに名作にならない。本書の十和田も御手洗潔も変人なのに魅力度が違う。この感覚は何だろうと思う次第。キャラの心の問題だろうか。十和田は数学でドライな感じで近づきがたいからかな。そんな事を思いました。 とはいえ、減点的な考えでは色々気になる事が多い本シリーズですが、加点的に考えればミステリの面白さや魅力が豊富に盛り込まれていて大変好物。続きも読んでいきます。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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全人類が記憶障害になり、長期記憶が出来ない世界になった話。
非常に面白かったです。あまり経験のない新しい読書体験でした。 序盤は斬新な災害もの小説としての混乱が描かれます。 突然記憶が保てなくなる世界。何かおかしいと感じても、その感覚すら忘れてしまう。また、全人類が同時に記憶障害になると、そのおかしさを指摘できる者もいなくなる。災害小説としての斬新な発想と、そうなった世界では何が起きるかのシミュレーションとしてのリアルさを感じました。 中盤からは記憶が保てなくなった世界。長期記憶を補う為に、脳と外部記憶メモリを繋げた未来が描かれます。人間の記憶が外部メモリ化された世界では、どのような問題が発生するのか。また違法な犯罪が行われるのか。短編集のようにいくつかのパターンの物語が描かれます。これらも総じて面白い。個人的には、SFやミステリというより人間の心は何処にあるのか?という哲学を感じました。肉体と記憶が分離できる場合、人の死とは何なのか、肉体が滅んだ時?記憶メモリが破壊された時?と言った具合に考えさせられます。 著者の本は少し読み辛く苦手なイメージがあったのですが、本書は扱うテーマが難解ではあるものの設定や世界観が分りやすいので読みやすかったです。 |
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元々は東日本大震災を対象としたチャリティアンソロジーの為のショートショート。その話を元に長編化された作品。
その為、震災の被害の辛さ、大事な人を亡くした悲しみ、家族の絆と言ったテーマを根底に感じました。その点は非常に惹き込まれます。 本書パラレルワールドの面白い特徴は、異なる世界を同時に観測し行動できる人物がいる点です。世界にずれがあれば、ずれを同時に見聞きできてしまう。一人の人物が二人重なって見える状態です。 震災により父を亡くした世界。母を亡くした世界。その両方の世界に存在する息子。息子を介して父は別の世界の母と会話できる状態です。この設定は震災で突然亡くした大事な人へ伝えられなかった後悔や、亡くした人は別のどこかで幸せになって欲しいという希望や救済を感じられる内容だと感じました。 本書は二部構成。 第一部が上記震災と家族の話。第二部からは様変わりします。 長編化にあたり、小説として起承転結を構成する為に作られたと思われる第二部の事件については、著者の持ち味の時間SFを活かした内容でした。異なる世界と言わず、亡くした人との会話なら幽霊小説でも良いわけです。そうではなくパラレルワールドが意味のある内容となっているのは面白かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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敬老の日を切っ掛けに老人が主人公の話を読書。
表紙の第一印象から、重く華がなさそうな硬派な話かと思いましたが、読んでみたらユーモアあふれるテンポの良い話でした。 まず話のストーリーがわかりやすいのが良かったです。 87歳の爺さんが戦友の見舞いに行った所、臨終の言葉として宿敵の相手が生きている事。そして財宝を持っている事が伝えられます。目的がハッキリしていて宿敵と宝探しです。この目的の話の中に不可解な殺人事件が発生する流れ。 本書の面白い所は主人公のバック・シャッツの爺様。皮肉や老人ネタをふんだんに盛り込んだセリフ回しが痛快。老人設定うんぬんではなく、文章が面白いので小説として意味のある所が魅力でした。キャラクターや主人公の人生物語を十分に堪能できましたね。 ミステリ的な点。特に殺人事件については心残り。理詰めでこちらから解決を見出すというより、事件に巻き込まれて、うまく乗り越えて解決してしまう。犯人は誰なんだろう?という分らなさは良かったのですが、犯人は何でそんなに目立つ事しているの?という行動が現実的にしっくりこなかったです。もうちょっと犯行の説明や犯人を割り出す面白さが欲しかった所です。 とはいえ、総じて面白かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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タイトルに名推理とありますがミステリ成分はほんのわずか。少女漫画のような青春恋愛小説です。
世界一のパティシエを目指すイケメン王子。学校では女性に冷たい態度。そんな彼にたまたまケーキ屋で出会った女子高生の未羽。彼女はケーキ大好きっ子。ケーキの事なら良い所も悪い所も熱く語れる。そんな二人の出会いとストーリー。 ちょっとした謎や疑問でも、王子が解いて語ればキラキラと鮮やかで頭良く見えます。乙女からは名探偵に見えるわけですね。タイトルの印象はその感覚でした。特段ロジカルな推理というわけでもないのでミステリを求める方には物足りないです。 一方、青春ものとしてはとても面白い。あらすじや設定はベタに感じますが、読書中の雰囲気がとても気持ちよい。デザート話で甘い。王子と未羽の青春模様も甘い。甘々な話ですけど悪くなく楽しい。話の起伏でピンチな状況もある。例えば学校一のイケメン王子と仲良くすればファンの女子からは嫉妬を買い陰湿なイジメになりかねない。そんな状況を読者の嫌になりすぎない絶妙な分量と感覚で描かれ解決する。これは悪い状況の描き方が巧い。読者は甘いだけでなくピンチや解決も体験してより良い気分になるというわけ。読後感も良かったです。 王子と未羽、二人ともキャラクターが良くて読んでいて楽しい。そのうちドラマ化しそうだと思いました。 |
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1作目読書後、文庫化待ちしたまま手に取る機会を失っていました。今年シリーズが完結したとの事で読書。
改めて本格の雰囲気はいいですね。奇人変人、探偵、奇妙な館が舞台、そしてその中で起きる事件。好物です。 本書の難点としては衒学的に数学の話が多く語られている事です。 個人的には数学好きなのでそこも楽しめて美味しい限りですがやはり分量が多い。これは文庫あとがきの著者コメントで自身も気にしている事が書かれています。文庫化にあたって削ろうか迷ったが、本書は数学者の物語である為に残したそうです。確かにまったく無くなってしまっては読みやすそうだけど個性がなくなりそうです。さらにコメントでは多少数学の話は読み飛ばしても物語の大勢に影響はないと書いてあるので、数学の長話の点で敬遠していたら気にせずミステリ部分を楽しみましょう。 ミステリとしては新しい大仕掛け……みたいなのはなく、どこかで見たような話なので物足りなく感じるのが前作と同じ心境。ミステリの雰囲気や舞台の感覚は好きなので今後のシリーズの展開でどうなるのか期待。 |
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専門的な医療知識を活用した謎でありながら、雰囲気はライトかつキャラクターものとしてサクッと楽しめる医療ミステリ。医療モノの重い雰囲気はありません。シリーズ化しやすいですし、著者の読みやすい文章も後押して、これは人気出るだろうなと感じました。
個人的に思う所として、1話目の天久鷹央の印象から超人的で完璧な名探偵像を得て神格化していましたが、3話目『不可視の胎児』にて、完璧ではない一面が見えてしまったのはちょっと残念でした。ある意味人間的ですが医者かつ名探偵の立ち位置なら完璧な人にしておいて欲しかったです。4話目の『オーダーメイドの毒薬』は本書全体を通して綺麗に決まった作品でした。大きな驚きや刺激が得づらいのが物足りないですが、読みやすさとライトに楽しめる医療ものとして今後も期待な作品です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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作者のおちゃめな毒が緩和されており従来ファンは少し寂しい気もしますが、良い意味では大衆向けな優しいテイストで読後感も良い作品。
著者ファンなので過去作が頭によぎりながらの読書。 中盤まで読んで感じたのは、これって作者同じ?という気がかり。なんというか味が薄い。野﨑まど作品ってもっと尖がっているというか惹き付けて虜にさせる中毒があった気がしましたが、本作はなんかよくあるラノベ。いや、よくあると言ってしまいましたが、面白くないわけではない。でも"野﨑まど"の作品として期待すると違う気がする。そんな作品。 映画になる作品ですが、"野﨑まど"の原作を映画化するのではなく、映画化した話を"野﨑まど"が小説化した手順でしょうか。きっと後者で一般向けの為に成分が薄まった気がします。 さて、タイトルの『HELLO WORLD』。プログラム業界では新しい言語を習得する時に、最初に実行して動作確認するワードです。新しい世界へようこそ。本作は過去作の『know』に近しいSF世界を舞台とした青春恋愛小説です。映画原作という視点でみると、近年の『君の名は。』に近しい年代の青春恋愛物語にもう少し濃いSF要素を入れて別系統にした作品作りを感じました。また、野﨑まど作品と言えば終盤にひっくり返るどんでん返しのサプライズ。作品によっては裏目にでる程、雰囲気を変えて賛否両論を巻き起こす為どんな結末か不安を感じましたが、本作はいい具合のプラスなサプライズでした。要素としては恋愛要素に比重があります。映像映えしそうなシーンも多く改めて映画原作かつティーンエイジャーに好まれると思いました。 ヒロインは著者らしい女性キャラだなとか、狐面とか神の手とか、過去作を感じる所もあり、なんだかんだで楽しく読みました。本作から著者作品に入り気に入った方は、SF寄りなら『know』、青春寄りなら『[映]アムリタ』へと繋げていくと著者作品をより楽しめます。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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内容は観覧車に閉じ込められた人達の群像劇。
観覧車をジャックして人質を取った犯人。ママの誕生日旅行で来ていた家族。伝説のスリ師の爺。etc... 籠に閉じ込められた面々の状況が切り替わりながら話が進みます。 タイトルや表紙から、誘拐ものの緊張する堅苦しい雰囲気、またはホラーを連想していましたが中身はコミカルでライトな傾向でした。知名度がある作品で例えると、恩田陸『ドミノ』やゲームの『428』の雰囲気に近いです。重くなく気軽に楽しめます。 群像劇作品の舞台は街の中やホテル等の大型施設にて交わる事が多いのですが、本作品は個々が観覧車の籠に閉じ込められており、交わり辛い状況です。どう話が交差するのか予測がつかない珍しいシチュエーションでした。 どういう話に転ぶかは読んでからのお楽しみ。 総じて面白く、最初と読後の印象の違い、ストーリー展開や繋げ方、分かりやすいキャラクター達、そして読みやすさ。と、ストレスなく楽しめて面白かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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孤島のクローズド・サークル。児童養護施設内で起こる連続殺人事件。
犯人視点の倒叙ミステリでもある。いざターゲットを狙い部屋に忍び込むと既に何者かによって殺されていたというシチュエーション。自分以外にも殺人を犯すものがいる。 登場人物は胡散臭い面々。暴力団の子供、2重人格の子、探偵気取りの子供、などなど。館の見取り図まであって本格ミステリの雰囲気はバッチリでした。 80年代後半の新本格ミステリネタが豊富に盛り込まれています。初見なら大層びっくりするネタもある事でしょう。著者の本格好き健在です。ここでこのネタが来るとは思いませんでした。ただ新本格好きの既読者はこれが既視感と感じるかも知れない為、そこは好みの別れどころかと思います。うまく隠蔽していた為、巧さに感動です。 好みについて。児童養護施設内が舞台な為、登場人物達は小中高生です。殺人犯・殺人鬼と呼ばれる為の恐ろしさ、場の恐怖が感じられなかったのが残念でした。2重人格のキャラ含め、少しコミカルというか非現実的です。孤島のクローズド・サークルもので猟奇連続殺人ならもっと恐怖や緊迫感を感じたかった次第。著者の作品をいくつか読んできましたが恐怖や緊張・焦りなどの感情に響くようなものってまだないかも。版元違いで"殺人鬼"というタイトルなので、そういう雰囲気を期待してしまったのかもしれません。面白かったのですが、少し軽かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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