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egut さんのレビュー一覧

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レビュー数42

全42件 1~20 1/3ページ
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No.42: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

名探偵のままでいての感想

元校長先生だった認知症の祖父。レビー小体型認知症を患い、幻視の症状が現れています。介護の際には積極的に話しかけることが重要です。そんな祖父に孫娘が身の回りで起きた謎を語り聞かせると、祖父は生き生きとした表情で推理を始め、かつての知性を取り戻したかのように活躍します。本書は日常の謎を扱った安楽椅子探偵ものの作品です。

祖父にまつわるエピソードや介護のお話、祖父と孫娘の関係など、祖父を取り巻く状況がとても温かく描かれていて、謎を聞かせた時に知性が蘇る祖父の探偵としての姿が、なんとも心温まるものでした。
また、物語に登場する海外の古典ミステリ作品名やセリフなど、ミステリ好きが楽しめるポイントが散りばめられていて、思わず心がくすぐられました。

ただ個人的にそれらが巧くいっているかというと、ちょっと好みと外れるものでした。本書では祖父を取り巻く環境や孫娘との関係が家庭的な温かさを感じさせる一方で、扱われる物語の背景がやや重く、全体像が明らかになる最終章に至っては、謎解きの面白さよりも、つらい心境になりました。そのため後味がとても悪かったです。

最初の1章あたりでは、一般読者やライトなミステリファンにも薦められる作品かと思ったのですが、そういった読者には物語の居心地が少し悪い印象を受けました。一方で、重い雰囲気や謎の面白さを重視するミステリ読者にとっては、ミステリとしての魅力がやや弱く感じられました。謎解きが試験問題のように記号的で、一度で全体像を把握しづらい場面が多かったです。さらに物語の結末が何度も覆される展開は、多重解決ものというより、やや優柔不断にも見えてしまいます。個人的には、明確な結末で一気に決めてほしかったです。

日常系の物語を求める方には後味が重く、ミステリの謎解きを求める方には謎がやや軽い。そのため、個人的な好みだけでなく、他の人にも薦めづらい作品という印象でした。
名探偵のままでいて (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
小西マサテル名探偵のままでいて についてのレビュー
No.41:
(4pt)

死んだ石井の大群の感想

うーん。
前作の『死んだ山田と教室』は好みで感動しましたが、本書は合いませんでした。
333人の石井が強制参加のデスゲームから始まる物語。
正直な所、"333人"の意味がなく、数字設定はただの販売PRの演出の為だけに感じられました。ササっと人数も減っていきますし、ゲーム内容にも面白味が感じられませんでした。なので凄く薄い内容に感じてしまうのが難点です。
作品内にデスゲーム状況の例えで『バトル・ロワイアル』がでてきますが、あちらは登場人物の背景が丁寧に描かれているため、多くのキャラクターが印象深く残ります。それに対し、本作はわざと対比して軽くしているのでしょうか、、、非常に薄いです。その影響で、後半で『山田』の時の様に想いをぶちまけるシーンがありますが、突発的な薄い考えに感じられてしまい、心に響くものがありませんでした。
仕掛けについても、映画の有名作品が存在するため、それとは異なる魅力や新しい要素が欲しかったというのが正直な気持ちでした。
死んだ石井の大群
金子玲介死んだ石井の大群 についてのレビュー
No.40: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

でぃすぺるの感想

ちょっと個人的に読み方を間違えた感がある為、点数については恐縮な所ですが合わなかった作品でした。
真相についても好みが大分別れそうな気持です。

ミステリーとしてどうかというと本書はルールが不明確な苦手なタイプ。謎を楽しませる場合は前提条件がなんなのか読者に感じさせてほしい次第。この作品内のルールが巧く伝わらなかった為、何でもありに感じてしまい楽しめなかったのが正直な気持ち。

ミステリー抜きにした物語としてはどうかと言うと、少年探偵団模様で友達と協力して事件を調査する様子は面白かったです。ただ小学生にしては行動力や発言や思考回路が大人びている為、高校生ぐらいな印象を感じます。調べる事件の内容も小学生向けではないのでちょっとチグハグ感がありました。
七不思議を扱いレトロな雰囲気を描いているかと思いきや、現代的なSNSが突如活用したりとなんだか巧く噛み合っておらず、場の情景が浮かばない説明を読んでいるような読書した。例えば読後に七不思議はそれぞれどんな話だった?と振り返っても思い出せないぐらい設定が盛り込んであって一言で言い表せない。そういうのってリアルなオカルトとしても伝承し辛い為、七不思議として違和感があるのです。その為、私的には七不思議の各話は統一されたオカルトというより異なる短編を平行しながら読書をしなければならず混乱の読書だった次第です。低点数で失礼。

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でぃすぺる
今村昌弘でぃすぺる についてのレビュー
No.39:
(4pt)

偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理の感想

交番のおまわりさんが探偵役となる、犯人視点の倒叙ミステリの連作短編集。
泥棒やら詐欺やらの犯罪をどのような言動から見抜くのかという物語。
日本推理作家協会賞受賞作の短編『偽りの春』を含む作品集である事から手に取りました。

正直な感想としては好みの相性が違った作品でした。
読み易い作品でしたが雰囲気が暗くて馴染めませんでした。個人的な読書の心構えの問題だったと思いますが、交番のおまわりさんが探偵役での街中の犯罪ものにしては登場人物達が総じて陰気な雰囲気を醸し出しており、物語やセリフなど読んでいて気が重い読書でした。また犯人の言動から推理するというより、犯人側が取り調べに狼狽えて余計な事を喋ってしまったようなミスが手がかりに感じられた為、推理ものとしても好みと違うものでした。
偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理 (角川文庫)
No.38:
(4pt)

はるかの感想

前作の『ルビンの壺が割れた』が面白く、帯にはそれに続く『大どんでん返し』というPRに釣られて手に取りました。

過度な期待が出てしまったのもありますが、本書の後半で感じた印象は「どんでん返し」ではなく「打ち切り」の表現が正しい部類です。著者が飽きてしまったのか版元とトラブルがあったのかわかりませんが、膨らませていた内容を突然切り上げて話を終わらせてしまったと感じる結末でした。

内容はあらすじにある通り、恋愛小説+人工知能を用いた作品です。
ディープラーニングや学習モデルなど、近年の人工知能の事がよく描かれており、人工知能HAL-CAがどのように生まれるのか物語中のスタッフと同様に期待を膨らませた読書でした。
海岸のエピソード、AI開発にかける想い、序盤の少女の出会いから人工知能の開発までの物語は本当に面白かったです。
それだけに、こんな締め方で終わらせてしまうのかと残念な気持ちでいっぱいでした。

▼以下、ネタバレ感想
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はるか (新潮文庫)
宿野かほるはるか についてのレビュー
No.37:
(4pt)

昭和少女探偵團の感想

昭和初期を舞台とした女学校の学園ミステリ。
連作短編集のようなスタイルで各話の物語ごとに謎解きがある構成です。
レトロなお嬢様学校の雰囲気が良く殺伐さがないのが好感。挨拶も「おはよう」ではなく「ごきげんよう」というやりとりが時代を良い意味で感じさせてくれます。

設定や雰囲気はとても好感だったのですが、点数が良くないのは内容の把握のし辛さ。文章の相性が悪かった為か、事件や謎解きや学園風景や友達とのやり取りなどなど、よくわからない読書でした。物語が頭に入ってこなかった為、雰囲気は良さそうなんだけどどんな話だったのか把握できなかったのが正直な気持ち。
最終話の『満月を撃ち落とした男』については「だからこの時代でこの設定にしたんだろうな」と感じられたのは良かったです。この物語がアイディアの始まりなんだろうなと思いました。雰囲気やキャラクターは良いのでシリーズ化すると楽しそうです。ただ自分にはもう少し把握しやすい文章になるか漫画化して画が見えないと楽しめないなという感想を得た次第でした。
昭和少女探偵團 (新潮文庫)
彩藤アザミ昭和少女探偵團 についてのレビュー
No.36: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

静かな炎天の感想

女探偵葉村晶シリーズの短編集。
謎解きミステリというより、主人公のキャラクターの魅力と、全体を通してのハードボイルドな文芸を楽しむ作品。葉村晶の境遇は今でいうイヤミスのようで読んでいて辛い心境になりました。ここは好みの別れどころでした。見様によってはブラックコメディ。
6編ある短編はどれも曲者ぞろいであり、ストレートな進行ではなく新たな事実により二転三転する。飽きさせない面白さはあるのですが、短編では場面転換が速すぎて好みに合わなかったのが正直な気持ちでした。全ての結末が描かれていない物語もあり、スッキリしない事が多かったです。そういうのが好きな時もあるのですが、今回は読むタイミングが悪かったかもしれません。
静かな炎天 (文春文庫 わ)
若竹七海静かな炎天 についてのレビュー
No.35:
(4pt)

Ghost ぼくの初恋が消えるまでの感想

表紙のイラストとタイトルに惹かれて購入。

連続殺人事件の被害者となった幼馴染のお姉ちゃん。10歳の主人公の元に幽霊となって現れ、被害者がこれ以上増えないように殺人犯逮捕に向けて行動するという始まり。著者の作品に触れるのは久々です。

幽霊を用いた青春物語。事件やミステリ要素はありますが謎解きを楽しむものではなく、主人公の少年の成長と当時の姿のままのお姉ちゃんの幽霊との淡い物語がメイン。設定からしてどう展開しても万全のハッピーエンドになり辛い状況なので、読んでいて心苦しい。登場人物の雰囲気や物語の起伏についても明るさはなく、良い意味では落ち着いてますが、主人公の理人もまわりの友達も負の感情の雰囲気が立ち込めていて重苦しい読書な為、個人的に苦手でした。

詳しくはネタバレで書きますが、学園青春ミステリとしての負のテーマである"いじめ"を取り入れていますが、その解法の扱いが自己成長というより環境によるものなので、何か得たり感動する点がなかったのが残念でした。
最終章の最後の一文も中途半端。はっきりすればいいのにと思いました。ネタバレで後述。という事で☆6-2(好みに合わない点が多い)気持ちの点数でした。

▼以下、ネタバレ感想
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Ghost ぼくの初恋が消えるまで (星海社FICTIONS)
天祢涼Ghost ぼくの初恋が消えるまで についてのレビュー
No.34: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

呪殺島の殺人の感想

設定は面白いのですが、雰囲気作りや言動がそぐわなかったのが残念に感じました。

内容は呪われた孤島を舞台にしたクローズドサークル・館もの。屋敷を舞台に密室殺人から始まる連続殺人が発生。タイトルからしてミステリ読者がターゲットなので、ミステリ好きが好む要素を盛り込んだ作りは好感でした。冒頭にて主人公が目を覚ますと遺体と一緒の密室内にいるシチュエーション。さらに記憶喪失で状況不明。主人公と読者の情報量を合わせ、何が起きているのかという所から始まる物語です。

さて、これらの設定や要素はとても興味が沸きました。ただ残念なのが雰囲気作りと各人の言動です。悪い意味でライトな扱いになっていました。タイトル『呪殺島』にある通り一族が不幸な死を遂げる呪いを扱いますが、おどろおどろしさがなく、そもそも"呪い"を何で扱ってしまったのかと疑問に感じるほど意味がない。ただ単に人が多く死ぬ理由付けでしょうか。
登場する人物達の会話も緊張感がなくライトというよりボケや冗談を聞かされているように感じます。笑い話な感覚での会話であり、真面目さが感じられない。それでいて大事な所は急に固い口調で説明される。
例えるなら映画やドラマで役者のセリフが棒読み過ぎるとシラケますがその感覚に近いです。無理して悲鳴を上げたり推理しているのですかと感じる。特に主人公が大根役者で、言動が軽すぎて作品にまったく没入できませんでした。

所々に好みはあるのですが、残念に感じた読書でした。
呪殺島の殺人 (新潮文庫nex)
萩原麻里呪殺島の殺人 についてのレビュー
No.33: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

探偵はもう、死んでいる。の感想

タイトルから感じるミステリ系の探偵ものではなく、個人的にイメージするザ・ラノベを感じる作品でした。
既に死んでしまっている探偵、能力者たち、モンスターのような化け物とのバトル、といった具合に、ラノベ・アニメ系のテイストを混ぜ込んだ作品であり、根底となる本筋は、探偵の女の子と過去に関わりがあると思われる主人公の男の子の青春もの。多ジャンルを混ぜ込んだ作品です。

作品自体は良く出来ており、読み辛さもなかったのですが、個人的な好みの問題でこの点数で。

序盤は惹き込まれましたが、その後はあまり好みではありませんでした。主人公とヒロインとの関係についても、死んでしまっているシエスタに思い続ける主人公の様子に共感が得られずです。ヒロインと感じる夏凪渚がサブに追いやられて可哀そうな感想でした。ちゃんと夏凪渚とシエスタとの意思を描いているので、夏凪渚本人は可哀そうではないのは分かっているのですが、ただのイタコのようにも感じてしまい、ここの所が好みに合わないきっかけになったかもしれません。

多ジャンルを混ぜた作品として整っていますが、他にはないこの作品ならではの尖った要素が1つあればもっと良かったと思いました。
探偵はもう、死んでいる。 (MF文庫J)
二語十探偵はもう、死んでいる。 についてのレビュー
No.32: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

教会堂の殺人 ~Game Theory~の感想

堂シリーズ5作目。シリーズ全7作のうち後半へ向けての転換と整理作品。
本書はミステリというより、登場人物達の物語が主要で、まとめに入りました。
その為、登場人物達の設定や扱いが良い意味でも悪い意味でも整理されていると感じます。

堂に関するトリックが魅力的なシリーズ作品ですが、今回は設定の説明不足と既視感あるもので残念な結果でした。
あまり世の中の感想で見かけないのですが、この仕掛けと設定や舞台は某漫画で行われたものそのままですね。
漫画と小説の読者層の違い、両方の知名度からか、あまり気づかれなかったのかな。時期も同じ2000年代。集英社ヤングジャンプの騙し合いギャンブラー系の某漫画です。オマージュではなく劣化コピーに感じるのが残念。

という事もあり、本書は色々と残念に感じました。
残り2冊で物語がどう変わるのか期待です。

▼以下、ネタバレ感想
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教会堂の殺人 ~Game Theory~ (講談社文庫)
周木律教会堂の殺人 ~Game Theory~ についてのレビュー
No.31:
(4pt)

終わった恋、はじめましたの感想

著者の本は一通り読んでます。
過去作の傾向では、読みやすい文章と気持ちよい読後感、そして最後のちょっとした仕掛けがあり、とても好みです。

が。本書に限っては点数低いです。これは著者や作品に対してというより、出版社の宣伝による影響で、期待したものとちがうがっかり感を得てしまった為です。
本書は純粋な初恋に近しいピュアな恋愛小説です。
それを過去の作品傾向から、『シュレディンガーの猫』とか『青春恋愛ミステリ』で宣伝してますが本書にはそのような要素は感じられなかったです。あくまで個人の感想ですが、講談社タイガのレーベルには何度も過剰な宣伝と中身が違う事にがっかりさせられましたが本書もその1つだと思いました。売れる事は正義だったりしますので、その視点では宣伝は大成功なのですが信頼を失うでしょう。作品自体はよいのに変な宣伝と釣り方するから、反感を得てしまう。

という具合で、作品とは違う感想を得てしまった次第。
期待と違うものなので、中身はよくある恋愛小説という感想で落ち着いてしまい、何か刺激を受ける事はありませんでした。本書にだけあるような個性が見当たらないです。
話は綺麗にまとまってます。表紙も素敵です。それだけに残念な気持ちでした。
終わった恋、はじめました (講談社タイガ)
小川晴央終わった恋、はじめました についてのレビュー
No.30:
(4pt)

イヴリン嬢は七回殺されるの感想

タイムループ×人格転移のミステリ。
設定や緻密な構造、真相の仕掛けはとても面白い。
が、読んでいて楽しかったのかというと辛かったのが本音です。

小説としては複雑な構成で新鮮なのかもしれないですが、これはアドベンチャーゲームですね。
プレイヤーが異なるキャラクターを操作して、それぞれの場面を見ながら真相に迫っていく。イヴリン嬢が殺されたらゲームオーバーでやり直し。もしくは誰かに自分が殺されるかもしれない。そういうアドベンチャーゲームを小説にした印象でした。
ゲームの『やりなおし×別キャラクター操作』を『タイムループ×人格転移』という売りにしてPRしている作品です。

本書の評価は割れそうです。
要素要素はとても面白いのです。ただそれを小説にした本書は複雑というより状況の表現が分り辛く、楽しむのではなく理解する事を強いられる為に読書が辛い。悪い意味で2度読み必須な内容でした。設定の構造で評価する人。読み物で評価する人。どこに注目するかで感想が分れそうです。好きなテーマだっただけに期待し過ぎたのかもしれません。ちょっと合わなかったです。
イヴリン嬢は七回殺される
No.29: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

犯人IAのインテリジェンス・アンプリファー: 探偵AI2の感想

探偵AIシリーズ2作目。1作目はとても好みだったのですが今回は相性が悪かったです。

1作目は短編集でAIネタとミステリを短編でサクッと楽しめ、かつ初登場のAI相以ちゃんの誕生と成長が楽しめる作品でした。
本作は前作を把握している前提での長編作品となります。その為、前作と読書間隔が空いていると登場人物達の相関図が把握し辛かったです。(これは個人の問題。)ただ相性が悪かったのはそれだけでなく、本作はシリーズ作品というより、いつもの著者の作品にAI要素というか調べたITネタを足した感覚が強い為であると感じます。過去に著者作品で相性が悪かった『RPGスクール』と同じ感覚でして、作品の中だけで盛り上がっていて、状況や情景がよく分からず、読んでいて楽しめませんでした。後半はAIネタが活用されますが、そこ至るまでは舞台設定やキャラクターの説明が多く、たまにITネタを挟む。という流れでシリーズでの必要性がわかりませんでした。AIの相以や以相の話が読みたいのに、登場人物の警察官僚達や右龍家の物語をずっと読まされた印象が強く、求めている物が違った作品でした。
犯人IAのインテリジェンス・アンプリファー: 探偵AI2
No.28: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

閻魔堂沙羅の推理奇譚 落ちる天使の謎の感想

閻魔堂沙羅の推理奇譚の第5弾。
相変わらずの読みやすさと安定した物語で面白い。。。のですが、今回は厳しめでこの点数。
正直な所、第1弾で楽しかったミステリ要素はもうないですね。テンプレート化した話の流れが悪いわけではないですが、ミステリとしての伏線やら社会的メッセージなどまったくなく単純な他人のドラマを読む小説になったと感じました。良く言えばサクッとライトに楽しめる。悪く言えば中身がないです。心に残る何かがありませんでした。
1話目、2話目とも、推理ではなく、思いつきでかつそれが正しい前提で解決していきます。手がかりや謎もクイズ問題みたいで新鮮さは皆無。読んでいて新しい刺激を得る事がなかったです。

登場するキャラクター達の意識の高さは良くて好みですが、他のエピソードと被ったキャラ造形で新鮮さもない。
例えば本書3話目の土橋昇と2巻3話目の浦田俊矢は同じ社長設定で思考がほぼ同じで書き分けが感じられないです。2巻目はこの性格も含めて意味のあるストーリー展開でしたが、今回は必要性が特になく、なんとなくさを感じます。

刊行ペースが速いのはドラマ化など狙って話数を増やしているのかなと感じてしまいます。ミステリ要素はどんどん薄味になっているのは残念ですが、個々のストーリーは面白いのでそこは作者の手腕で見事。メディア化狙いや売り上げの為に量産が大事なのは今の出版状況から察する所ではありますが、著者には内容の濃いデビュー以降の代表作を作り上げてほしいなとも感じる次第でした。もっと面白い作品ができるはずと期待します。

▼以下、ネタバレ感想
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閻魔堂沙羅の推理奇譚 落ちる天使の謎 (講談社タイガ)
No.27:
(4pt)

IQの感想

アイゼイア・クィンターベイ。通称IQ。探偵役となるこの黒人青年は非常に魅力的でした。一見冷めた性格のようで内情は熱い一面もある。彼の行動を読む所はとても楽しめました。
個人的に馴染みのない黒人社会が描かれており、会話テンポのノリやラップ調なども含めて新鮮な世界観でした。ただ、文化的内容と事件が密接に絡んでくるかというとそういうのではないので、事件外の内容が楽しめるかが好みの別れどころかと思います。自身があまり興味を持てなかったのでノイズに感じたり頭に入らなくて楽しみ辛かったです。
シリーズ化を狙った1作目の為か、主人公の過去や伏線的に気になる内容が未解決で幕を閉じているのも気になるところ。1作で完結しているものが好きなので、色々と好みと逸れていた作品でした。
IQ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ジョー・イデIQ についてのレビュー
No.26:
(4pt)

首無館の殺人の感想

表紙の雰囲気とタイトルは抜群に良いです。世のミステリ好き読者を釣り上げる事間違いなし!と感じます。
中身は、、、好みの問題でちょっと名前負けしている気がしました。
読後に知りましたが本書は『使用人探偵シズカシリーズ』2作目でした。シリーズという事はあえて隠している気がします。知らずに本書から読んでも問題ありません。

切断される首の謎というのはミステリのテーマとして興味津々でした。
定番の首切り理由の数々を挙げながら何処に着地するのかがミステリとして楽しめました。
探偵役のシズカはアクが強く、犯人が首を切りたいなら首が切れないように対策しましょうとか、身元を隠すのが目的なら予め皆の顔を潰して犯人を困らせましょう、という具合に、ぶっ飛んだ発言をするのが面白い。あえての極論を提示しているのはわかります。既存の首無しミステリとは違った個性を感じました。
本書の特徴として感じたのは、犯行現場から真実をロジカルに解決するのではなく、犯人の次の手を予想し、対策したり犯人を挑発したりする点。この探偵は連続殺人を前提に話を進めており、場違いな傍観者をとても感じました。その為、読んでいて館の連続殺人にドキドキするような緊迫感はなく、他人事に感じる作品で惹きこまれませんでした。

真相の首無しテーマについては面白い所を突いてきて良かったのですが、そこに至るまでの全体像が把握し辛いのが難点。場景や登場人物が分り辛い為、もう少し読みやすくする為に、館の見取り図と登場人物一覧は欲しかったです。また、舞台となる1800年代に合わせてか、回復⇒恢復 という具合に難しい漢字を使い、人物名も読み辛くなっています。ページ後半では慣れかもしれませんが現代語に感じる為、序盤の読み辛さが緩和されて内容の把握がしやすければ、もっと作品に惹き込まれると思いました。
過去に著者の『月光蝶』を読んでおりますが、その時の読みやすさが本書では感じられなかったのが残念でした。

▼以下、ネタバレ感想
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首無館の殺人
月原渉首無館の殺人 についてのレビュー
No.25:
(4pt)

空ろの箱と零のマリアの感想

学園ループもの。シリーズ作品ですが続巻へ続く事なく本書単品で楽しめる作品です。
本作の特長はSFではなくファンタジー寄りのループ作品。
何でも願い事を叶えてくれる『箱』が存在する世界で、誰かがループ世界を実行している。表紙に描かれている転校生の音無彩矢が転校してくる日に閉じ込められた生徒の物語で、序盤は何故ループしているのか?何が起点と終点となっているのか?の謎を感じつつ、ループの世界に閉じ込められ何をしてもうまくいかない定番の失意を味わいながら物語は進行します。
世界の枠組みの謎がキーとなりますが、正直な所そのネタを楽しむ為には複雑過ぎるというか、理解し辛いのが難点でした。『箱』の存在が何でもありに感じられるとルールは意味がなくなる為、没入感は消えてどうでもよくなったような気持でした。

▼以下、ネタバレ感想
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空ろの箱と零のマリア (電撃文庫)
御影瑛路空ろの箱と零のマリア についてのレビュー
No.24:
(4pt)

川の深さはの感想

元マル暴で現在警備員、警察組織との折り合いがつかず抜けてから3年、辞めた時にバツイチとなり孤独に自堕落な生活を過ごす日々。そんな主人公が警備業務中にヤクザに追われていると思われる2人の男女を助けた事から陰謀に巻き込まれつつも人生を見出していく。
この序盤の主人公の過去・現在そして希望の無い人生の哀愁漂う雰囲気から、物語が一転する様子が楽しめました。ぶっきら棒な様で実は照れ隠し、言葉は汚いけれど人思いの主人公の優しさと熱さが魅力的でした。100kg越えの強面のおっさんなのですが味があります。序盤はハードボイルド模様。
中盤以降は、あらすじにある様な敵との戦いとなりますが、これは派手なアクション映画のようなドタバタ模様となり、著者が好きなんだと思われる機械や軍事ものの専門用語が飛び交います。
前半は"静"で後半は"動"と雰囲気が違う作品です。好みとなりますが、前半は面白かったのですが後半は好みに合いませんでした。
ただ、最後の最後は落ち着く所に落ち着いており、よい読後感でした。
川の深さは (講談社文庫)
福井晴敏川の深さは についてのレビュー
No.23:
(4pt)

魔の淵の感想

"密室物の名作"だったり、当時ミステリマガジン連載のみで書籍がなく入手困難で"幻の傑作"と言われていた本書。読む機会が出来たので読んでみました。
正直、期待値が高すぎた事や、70年以上前の作品である為か、今読んで面白いかと言われると首を傾げる次第。

前半はオカルトものです。交霊会が行われ、霊媒師が呼び出した死者と相続に関して真面目な会話が進みます。古い時代の作品なので仕方がないですが、今読むとなんか滑稽でした。その後、殺人事件や怪奇現象、雪に残る不可思議な足跡の存在が現れ、浮遊できる呼び出した霊でないと事象を説明できない状況が発生します。
"密室物"として名高くなった本所ではありますが、これは密室物ではないと思います。カーっぽいオカルト+不可能犯罪の状況です。まぁ雰囲気は好みでした。

事件解決方法やトリックについては、トンデモトリックで実際には無理でしょという机上の空論なのが残念。ただ、終盤の2人による舞台の裏側の背景は良かったのでそこだけ印象に残り加点です。

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魔の淵 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
ヘイク・タルボット魔の淵 についてのレビュー


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