終わった恋、はじめました
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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著者の本は一通り読んでます。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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メディアワークスの前3作と同様、ラストのどんでん返しは見事だ。 読み終えたらもう一度読み返して、ストーリーをたどりたくなる。 最後まで読んで、それから、読み返して初めて、この作家の構成力の確かさを感じる。 登場人物も、いそうでいない、いなさそうでいる、ありふれた等身大の人物だけど、 それぞれの人生のテーマに、凛として向かい合ってる。 読み終わったあと、心に残るほんわかとした余韻が、心地いい。 続編読みたくなるのだが、他の作品同様、続編書かないのは、この作家のポリシーみたい。 五つ星つけます。 | ||||
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大事な何かをどこかでなくしてしまった兄妹の自分探しの旅でしょうか。 現在と過去とが交互に描かれ、昔の恋人を探していきます。 なかなか良かったと思いますが、エピローグはもう少し欲しかったです。 | ||||
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メディアワークス文庫でデビューしながら3作ほど発表した後沈黙していた作家・小川晴央が講談社タイガで復活。 ハートフルな作風と最後にアッと言わされる構成の巧さで読ませてくれる作家さんだったという記憶を頼みに拝読してみる事に。 物語の主人公はスポーツ用品メーカーに勤める元陸上競技選手の成田拓斗。パワハラ上等な上司に振り回される日々の中で理想のシューズを作りたいという夢も色褪せ退職届を出した拓斗だったが、最悪な気分で目覚めた朝に妹の莉音から電話が入る。 一年ぶりに声を聴く妹は自分をつけ回している男から避難するために拓斗の住む大阪に向かっているというと剣呑な事情を打ち明けてくるが、駅で出迎えた莉音は自分が抱えた事情なんかどこ吹く風と言う感じで「タク兄仕事辞めちゃったんだって?」とからかってくる。 まだ話してない筈の退職の話を何故知っているのかと尋ねる拓斗に莉音は元同僚の朱美が拓斗の事情が見え見えの話をSNSに挙げていた事を明かした上で朱美が拓斗に告白してフラれた事に突っ込んでくる。「タク兄に好意を抱いてくれる物好きな人なんて滅多にいないのに」と前置きした上で「まだ沙夜さんの事が忘れられないの?」と8年前の出来事に触れる。 何も言えなくなった兄を前に莉音は「旅に出よう」と沙夜を探す旅へと拓斗を誘う。「今さら」と過去の事だと沙夜の話を断ち切ろうとする拓斗だったが「でも、未だに、なんでしょ?」と断ち切れない未練を見透かした妹の追及をかわし切れず沙夜を探す旅へと出る事に…… メディアワークス文庫で発表していた時代から相変わらず「どぎつさ」とは無縁の作風だなあ、と安心したというのが読み終えての第一印象。いわゆる「悪人」は出てこないし、憎悪や絶望みたいな刺々しい感情を掻き立てる様な展開にもならない。それじゃ印象の薄い話かと言えばさにあらず、人間臭さというか市井に生きる人間であれば誰もが持っているであろう弱さや臆病さの様な部分を優しいタッチで丁寧に描いて妙に身に染みる感じの作品に仕上がっている。 物語の方は陸上選手としてもサラリーマンとしても夢破れた存在である拓斗が妹の誘いに乗る形で高校時代に付き合ってはいたが別れたまま交流の途絶えていた女性・月野谷沙夜を探す旅に出るというある種のロードムービー的内容になっている。沙夜の趣味であったハーバリウムだけをヒントに当ての無い旅を続ける途上で拓斗が様々な「恋」に振り回される人々と交流する姿が怪我で入院した病院で出会った沙夜と過ごした8年前の日々の回想と交互に描かれる。 旅の途上で拓斗が出会う人々は一様に「弱さ」を抱えている。自分と同じ女の子を好きになりながら遠い土地で旅立つ親友の想いを伝えるかべきかと悩む少年であったり、同性の女の子を好きになりながらもその想いを打ち明けられないまま男女交際の中に潜ませていた少女であったりと立場や想う相手は様々ではあるが彼らが友情を裏切りそうになる自分の卑小さや想いを打ち明けられない臆病さといった自らの人間的な「弱さ」と向き合えずにいる点では共通している。 拓斗が妹と続ける旅は彼らが最終的に自分の「弱さ」と対峙した上で、自分が本当に何を為すべきかという真の想いに向き合うまでの姿に付き合う経験を繰り返す過程である訳なのだけど、その繰り返しは同時に拓斗自身の「弱さ」に向き合うまでの過程でもある。旅と入れ替わる形で描かれる拓斗と沙夜が過ごした8年前の日々が、少しずつ育んでいた筈の恋の日々が何故断ち切られてしまったのか? 序盤で妹に見透かされた様に拓斗自身は「もう過去の事だ」「終わってしまった恋だ」と言いながら沙夜との恋を未だに引きずっている。その未練が断ち切れないのは結局のところ旅の途上で出会った人々が最終的には向き合う事になった自分自身の「弱さ」や本当はどうしたいのか、という「真の想い」から逃げてしまったという悔いに根差している。 人間年齢を重ねれば重ねるほどに「あの時ああすれば良かった」「どうして自分のやりたい様にやらなかったのか」という未練ばかりが募ってしまう物であるし、大概はその未練にフタをしてやり過ごして生きている部分がある。本作はそんな未練を、自分自身の「弱さ」と向き合えなかったが故にフタをしてしまった想いと8年越しに向き合おうとした男の物語である。始まりは聡明な妹の挑発に乗る様な形ではあったけれども、旅の途上で出会った人々が自分の「弱さ」に立ち向かった姿から少しずつ勇気を分け与えて貰う形で拓斗が8年前に逃げた自分の想いに向き合うまでを描いた物語と言っても良い。 過去作ほどには終盤でのどんでん返し的な構成のパンチは強くなかったが、主人公の過去と現在を交互に描きながら少しずつ人間的な「強さ」を得ていく成長の物語として中々に興味深く読ませて頂いた。上にも書かせて頂いたが人間誰しも過去に「正解」を「自分が本当はどうしたいか」を知りながら様々な事情で逃げてしまった未練を抱えている部分はあると思う。そんな「痛み」を引きずっているという自覚のある方であれば間違いなく刺さる一冊。 | ||||
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